新卒で大手ゼネコンに入社し、その後サイボウズへ転職。多様性を重視する組織だからこそ、メンバーのキャリアと真剣に向き合いたいと考える石川 憂季(いしかわ ゆうき)さん。
サイボウズの人事として、どのような想いで人事という仕事と向き合っているのか、お話を伺いました。
目次
大手ゼネコンの人事から、ITベンチャーの人事へ
ーーはじめに、石川さんの経歴について簡単に教えてください。
サイボウズの採用育成部に所属しています。採用業務を中心に、キャリアコンサルタントの資格を生かしてキャリア支援の研修企画や仕組みを構築する業務を行っています。また、社外では間借りカレー屋、Twitter人事交流会「#キャリアの語り場」の主催もしています。
ーーありがとうございます。少しさかのぼって石川さんの学生時代についてお聞きしても良いでしょうか。
大学時代はサークルや部活などしていませんでしたが、1年半ほど中国の上海に留学に行きました。留学中には、国際交流基金(ジャパンファウンデーション)にサポートいただきながら、また別の都市にある大学で日中交流イベントを企画・運営をしました。
ーー帰国したのち、前に働いていた会社に就職されたそうですが、なぜ建設会社を選ばれたのでしょうか?
海外に住んでみて、道路が舗装されている、すきま風が入らない住環境が当たり前ではないことに改めて気付かされました。日本の技術力の高さに憧れていたのと、また非常に多くの人と関わって1つのものを作りあげるものづくりである建設の仕事に魅力を感じ、入社しました。
ーーサイボウズに入社した経緯は?
前職の建設会社では、研修期間を経て人事部の採用と研修をするチームに配属になりました。人事を3年ほど経験したのち、財務部へ異動になりました。しばらく財務の仕事をしていましたが、財務という別の仕事をしてはじめて人事の面白さに気付けたんです。
人事のキャリアを築きたいという思いは日々高まっていって、人事のポジションで転職できる会社を探していました。
実は、日中交流イベントのときに情報共有の手段として「サイボウズLive(2019年4月15日をもってサービスを終了)」というグループウェアを使っていて、サイボウズのことはなんとなく知っていました。さまざまな想いを持った企業や組織、チームをサポートしていける製品を開発しているこの会社で人事ができたら面白そう!、そんな想いからサイボウズへの転職を決めました。
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メンバーの「これから」を応援するのが人事の役目
ーーもう少し、現在されている業務を詳しくお聞きしても良いでしょうか?
主に面接や書類選考、採用イベントの企画、運営、メンバーのキャリア支援の施策検討や研修企画などを行っています。サイボウズは個を尊重する社風です。例えば働き方では、自らが希望する働き方を提案して実行する「働き方宣言制度」と呼ばれる制度があります。キャリアについても本人が望まないような強制的な人事異動はありません。
逆に言うと、どのようなキャリアを形成していきたいか、一人ひとりが自立的に考え、行動や発信していくことを求められる厳しい環境でもあるので、メンバーを支援していける仕組みづくりをしています。
ーー今、特に注力している取り組みは?
今はオンラインコミュニケーションを中心に業務を進めています。その一方で次々と新しいメンバーが入社しており、1,000人を超える規模になりました。
そこで、キャリア支援の施策として、これまでさまざまなキャリアを気づいてきたメンバー一人ひとりの顔が見えるよう、仕事内容だけでなく、現在のポジションに付くまでの背景や経緯をインタビューし、社内に動画を公開しています。
また、採用施策では、現在サイボウズは各チームが主体的に多様な媒体を使って情報発信をしていますが、これだと候補者が必要な情報をキャッチアップしにくいため、発信している情報の整理やアップデート、採用サイトのリニューアルなどに取り組んでいます。
ーー大手建設会社から、中小規模のIT企業に転職されました。前職のスキルが活かせている場面ありますか?
同じ目線で相談に乗れる点ですかね。サイボウズは大手からの転職組も多いので。候補者やメンバーと同じ視点に立てるのは大きいかなと思います。
ーー大手企業から来ているメンバーも多いのは意外ですね。逆に新鮮に感じた点はありますか?
新鮮に感じた点は大きく3つあります。1つ目がオープンな風土ですね。サイボウズは人間関係も情報もオープンで、とても仕事がしやすく良い意味で戸惑いました。
2つ目が情報を残す文化です。弊社では業務改善プラットフォーム「kintone(キントーン)」を使って情報を逐一残します。前職では業務が属人化していて、紙文化が残っていたので、グループウェアを使ってテキストデータで記録を残す文化がそこまでなく、テキストで記録を残したり、相手に伝える難しさを痛感しています。手間ではありますが、引き継ぎや情報共有を素早く行えるため、必要な作業だと思っています。
3つ目がキャリア形成ですね。さきほどもお伝えしたように、強制的な人事異動がありません。つまり、メンバーがどうキャリアを形成したいか主体的に考えないといけません。
自分の理想とマネージャーに期待されていることをすり合わせるのは時間がかかりますが、やりがいや働きがいにつながることなので、なるべく常日頃から対話したり、自分が思い描く理想を伝えたりするようにしています。
評価したり選んだりしない。お互いが納得できるマッチングを作る
ーー採用業務や人事業務で大切にしているポイントや価値観があれば教えてください。
あくまで採用はお互いのマッチングだと思っているので、お互い納得した状態で迎え入れたいし、入社していただきたいですね。面接ではこちらが一方的に評価したり選んだりするのではなく、お互いが知り合う、というスタンスを大切にしています。
ーーサイボウズは、働き方改革の先進企業としてたびたびメディアに取り上げられています。そのため「働きやすそう」というイメージを持って入社を希望する方も多いと感じました。そういった候補者にはどのように対応されていますか?
ホワイト企業と思われがちですが、自由で働きやすそうに見える一方、自立や責任が伴うため厳しい環境であると思います。入社後のミスマッチを防ぐためにも、面接時にサイボウズの文化や大切にしている価値観などは率直にお話ししています。
私たちがが採用で大事にしているのは「覚悟とスキル」です。サイボウズのビジョンに共感していることはもちろんですが、サイボウズが今後どうするべきか、そしてそのためには自分は何をするべきか、なにができるのか、そしてなにがやりたいのかなどを書類や面接で教えていただきながらチームとのマッチングを検討しています。
ーーサイボウズは良くも悪くも、メンバーが主体的に考える会社だからこそ、人事のあり方やバリューを出すのが大変そうですね。
人事主導で一方的にルールを変えるのではなく、メンバーが困っていることや要望を拾い上げて制度を追加したり作り替えたりしています。多様なメンバーがいるなら、制度も多様で良いわけですよね。サイボウズはまだ未完成の組織なので、やれることはまだまだたくさんあると思います。
“読み手の気持ち”を想像してSNSを使おう
ーーSNSの発信で心がけていることはありますか?
自分が発信したいことを言うようにしています。モヤモヤと溜め込むよりは、思ったことを発言したほうが良いですよね。何か良いことを言わなきゃと考えると、荷が重くなるので、「親しいメンバーと仲良く話せれば良い」くらいのテンションで運用しています。
ーーフォロワーですべてを測れるわけではないですが、現在、石川さんはフォロワーが4,000人いらっしゃいます。運用で心がけていることはありますか?
みんな思っているけど口にしないことをつぶやくことですかね。あとは、基本的なことですが、朝と夜に1回ずつのツイートは欠かさないようにしています。
また、Twitterの名前の横に自分が好きなカレーのアイコンを付けていますね。人事というよりはカレーの人と認識されているかもしれませんが(笑)自分の好きなことや興味のあることを露出しておけば、コミュニケーションの糸口にもなるかなって。
ーーTwitterを通して知り合えたつながりも多いですか?
たくさんいますね。共通の知り合いがいるフォロワーさんとリプ欄で仲良くなって、縁がつながることはあります。最近は、フォロワーの方から連絡いただくことも増えて、なかなか個別に対応することも難しくなりました。そこで「#キャリアの語り場」というイベントを定期開催し、人事の横のつながりができる機会を作っています。人事は社内でなかなか相談しにくく、自身のキャリアの悩みはもちろん、他の会社がどのような評価基準や人事制度で運用しているのか、お互いに共有できて、とても良い場になっていると思います。
ーーこれだけフォロワーが多いと炎上のリスクも考えてしまいそうです……。トラブルが起こらないよう、日頃から気をつけていることはありますか?
誰かの意見を否定しないことですかね。意見を誰かに押し付けたいわけではなくて、こういう意見の人いますか?くらいの気持ちでツイートしているので。
よくサイボウズ社内でも「想像責任」という言葉を使います。これは、相手が自分の発言をどう受け止めるか想像して発言しようということで、私も意識しています。
特に文章は受け手の読解力に依存します。ひとたび間違えれば誤解を招きトラブルに発展します。だからこそ、発信者は読み手の気持ちを想像して情報を発信する義務があると思います。
ーー最後に、今後の展望について教えてください。
まず、会社の展望についてお話しすると、サイボウズは事業規模の拡大とともに、各本部の採用ニーズも年々高まり、人手が足りない状況です。どれだけサイボウズに興味がある方や働きたい方を多く受け入れられるかが今後の課題ですね。例えば、複業やフルリモートのように時代に適合した新しい採用の形を作れたらいいし、入社したメンバーが挑戦できる仕組みもあわせて構築できたら良いなと思います。
個人の展望としては、最近はありがたいことに他社さまからも人事業務を手伝って欲しいとお声がけいただいているので、キャリアコンサルタントの資格を生かした、自分にしか発揮できない価値を出せるような仕事をしたいですね。
編集後記
人事という職務や肩書きにとらわれず、メンバーが抱える悩みを受け止め、それを制度に反映させる。多様性を重んじる組織の人事としてあるべき姿なのかなと感じました。サイボウズ株式会社様、石川様、今回の取材に応じていただきありがとうございました!
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