採用担当者は、自社に必要な人材を獲得するうえで最重要ポジションです。
担当者が自分の役割をまっとうすることが、企業成長に直結すると言っても過言ではありません。
しかし、中には「そもそも自分は採用担当者に向いているのだろうか……」「採用を成功させるにはどのようなスキルが必要なんだろう……」と悩んでいる方もいるでしょう。
そこで今回は、採用担当者の業務内容や必要なスキル、向いている人・向いていない人の特徴などを紹介します。
目次
採用業務とは
採用業務とは、新しい従業員を見つけて実際に雇用するまでのプロセス全体を指します。
「採用計画を立てる」「適切な候補者を見つける」「候補者を選定する」「内定者をフォローする」など、複数のステップから成り立っています。
採用業務の最終的な目標は、一言で表すと「企業を成長させること」です。
「事業を拡大させるうえでどんな人材が必要か」「人員不足が生じている部署に新たな人材を採用しよう」など、企業の現状や未来を見ながら業務に励みます。
なお採用業務は、人事部門の採用担当者によって実施されることが一般的です。
人事・採用担当者の業務内容
人事・採用担当者は、採用業務を成功に導くために幅広い業務に従事します。
主な業務内容は下記のとおりです。
- 採用計画の立案
- 採用に関する広報活動
- 求人広告の作成・運用
- 候補者の選定
- 面接官の調整、面接の実施
- 応募者とのコミュニケーション
- 給与交渉
- 入社手続き など
さらに、新しい採用ツールの導入など、採用プロセスを改善するための戦略的な仕事も行います。これらの多様な業務を担うことから、人事・採用担当者にはさまざまなスキルと知識が求められるのです。
採用業務の流れ
ここからは、採用業務の基本的な流れについて解説します。
採用業務のプロセスは、以下のステップで構成されます。
①採用計画
採用計画は、「どのような人材を採用したいか」を設定する段階です。
自社の現状や採用ニーズを整理しながら、「何人採用するか」「どのポジションをどのように埋めるか」「必要なスキルや資格は何か」などの詳細を明確にして、採用予算を確定させます。
ここで決めた採用計画に沿って一連の採用業務が行われます。
②採用戦略
採用戦略では、「採用計画で設定した人材に応募してもらう」ための戦略を考えます。
「求人広告の設計」「候補者へのアプローチ方法」など、どのような戦略で候補者を引き付けることができるかを考えましょう。
この段階で、自社のアピールポイントについても整理しておくことがおすすめです。
例えば「自社の良い雰囲気を伝えるには動画が有効だ」というように、自社の魅力を伝えるために最善の手法は何かを考えやすくなり、結果的に候補者の応募意欲を高めることにつながります。
※下記の記事では、採用戦略を立てる手順について紹介しています
→【採用戦略の立て方】具体的な8つの手順を徹底解説します!
③母集団形成
自社の情報を採用候補者に届け、応募に向けた関心を抱いてもらう段階です。
ここで大切なのは、むやみに集めようとせず、採用計画で定めた理想像に近い人材を集められるようにアプローチすること。母集団が大きくなりすぎると、応募数が増えて、選考がかえって大変になります。
母集団形成の方法としては、下記が一例です。
- オウンドメディアやSNSでの情報発信
- 既存従業員による紹介
- 合同説明会やセミナー
- 就職サイト・転職サイトなどの求人媒体
- 人材紹介会社
それぞれ予算や集客力などが異なるため、自社に合う方法を検討しましょう。
※下記の記事では、母集団形成の注意点や方法ごとのメリット・デメリットなどを解説しています
→母集団形成における注意点って?方法別メリット・デメリットは?
④選考
面接や適性検査などを行い、候補者の能力や自社との適合度を評価します。
「選考」と聞くと企業優位に聞こえる人もいるかもしれませんが、「候補者が企業を選ぶ場」でもあります。
質問をしながら候補者を深掘りするだけでなく、候補者と対話しながら自社の魅力や思いを伝えることが重要です。
※下記の記事では、面接の基本的な流れやポイントについて解説しています
→【保存版】面接の方法と基本の流れ 面接官の役割や成功させる方法、質問例もご紹介
⑤評価・内定
選考プロセスを終え、最終的な内定を出す段階です。
内定者に労働条件を明確に提示して、入社を受け入れるかどうかが決まります。
なお、選考終了から内定連絡まで、できるだけスピーディーに進めることがポイントです。
期間が空くと、候補者が他社への入社を決めてしまったり、その間に入社意欲が落ちてしまったりします。
⑥内定者フォロー
内定を出した候補者に対して、フォローアップを行います。
結果通知を出したうえで、入社手続きをはじめとした次のステップへの案内をしましょう。
丁寧に内定者フォローを行うことで、候補者の自社へのエンゲージメントが高まり、入社を楽しみにしてくれるはずです。
※下記の記事では、面接後のフォローアップで行うことについて解説しています
→面接後に行うべきフォローアップとは?入社意欲を高めるための施策をご紹介
人事・採用担当者に必要なスキル
人事・採用担当者には多くのスキルが求められます。
候補者との円滑なコミュニケーションや優れたプレゼンテーション、的確な情報収集など、採用業務のさまざまな場面において、必要な能力は異なります。
人事・採用担当者に「必要なスキル」「必要な知識」について、具体的に解説します。
必要なスキル
コミュニケーション能力
人事・採用担当者にとって、優れたコミュニケーション能力は不可欠です。
面接では、候補者と円滑に対話しながら本質を見極めると同時に、自社について魅力的に分かりやすく伝える必要があります。また、書類のやり取りや選考中のフォローなど、日常的にコミュニケーションの機会があるのです。
候補者にとって、「採用担当者への印象=企業への印象」となります。
採用担当者が優れたコミュニケーション能力を持つことで、企業のイメージアップにもつながるでしょう。
プレゼンテーション能力
プレゼンテーション能力は、自社のことを魅力的に伝えるために重要です。
採用担当者は、組織のビジョンや文化、福利厚生などを明確に伝え、候補者の興味を引きます。基本的に候補者は複数の企業の選考を受けているため、自社に引き付けるには、魅力的なプレゼンテーションをすることが大切なのです。
また、選考チームや上司に対して候補者の評価をプレゼンテーションする際にも、的確な情報提供や説得力が求められます。
情報収集力
情報収集力は、候補者や市場トレンドに関する洞察を得るために不可欠です。
採用担当者は、適切な候補者を特定し、競合他社との差別化を図るために市場情報を収集し続けなければなりません。
また、面接という短い時間で、候補者のバックグラウンドやスキルを正確に評価するためにも情報収集力が必要です。
ヒアリング力
ヒアリング力は、候補者のニーズや要望を理解し、最適なポジションへのマッチングに役立ちます。
面接で的確な質問をするには、まず候補者が抱える課題やキャリア目標を聞きながら、正確に把握しなければなりません。
また、ヒアリング力のある採用担当者は、候補者の価値観や経験を尊重しながら聞く姿勢をとることができます。結果として、リラックスできる環境が醸成され、本音で話しやすくなります。
論理的思考力
論理的思考力は、候補者のスキルや経歴を客観的に評価するために不可欠です。
データと事実に基づいた判断を行い、候補者の適合性を正確に評価します。
また、論理的思考力を持つことで、複数の候補者を比較する場合に「採用計画に適した人材はどちらなのか」という視点で評価できます。
必要な知識
法令に関連する知識
まず挙げられるのが、法令に関する知識です。
労働基準法や男女雇用機会均等法をはじめ、労働関連の法律や規制を理解することは、採用プロセスの適法性を確保するために欠かせません。
適切な採用手続きや雇用契約書の作成など、採用担当者が法令を遵守しなければならない場面は多々あります。法律の変更にも敏感に対応し、組織を法的リスクから守る役割を果たします。
自社の情報
自社の情報に精通することも忘れてはなりません。
組織のビジョン、ミッション、文化、製品やサービスに関する深い理解は、候補者に対して組織の魅力を伝えるために不可欠です。
また、採用担当者は自社のニーズや戦略に合った候補者を見つけるために、部門やプロジェクトの要件に精通している必要もあります。
自社について知っているつもりでも、候補者に説明しようと思ったら深いところまで話せなかった、というケースが少なくありません。ぜひ一度、自社の情報を改めて収集することがおすすめです。
採用マーケティングに関する知識
採用マーケティングに関する知識も求められます。
採用マーケティングとは、ターゲットとなる候補者を集めて自社に応募するよう、必要なアプローチを策定・実施することです。
特に母集団形成において、効果的な採用マーケティング戦略を策定する必要があります。
「適切な求人広告の設計」「ソーシャルメディアの活用」「採用ページの改善」などがこの一例です。
また、競合他社との差別化を図るためのマーケティング戦略も重要です。競合他社とは異なるアプローチを選択して、自社ならではの魅力を伝えることで候補者を引き付けます。
人事・採用担当者に向いている人
人事・採用担当者に向いている人は、特定の資質とスキルを持っています。
ここでは、向いている人の具体的な特徴について紹介します。
自分の言葉で自社の魅力を伝えられる
採用担当者が組織の魅力を候補者に伝えるうえで大切なのが、「自分の言葉で伝えること」です。
テンプレートのような言葉では、候補者の心に響きませんし、どの候補者にも同じように説明していると思われかねません。
一人ひとりの候補者のバックグラウンドを踏まえ、「自社で一緒に働きたい」という思いがストレートに伝わるように話しましょう。
会社の顔として対応できる
採用担当者は、採用業務において会社の「代表」です。候補者との最初の接点であり、組織の顔として振る舞う必要があります。
礼儀正しさや真摯な態度、信頼性などが求められ、それらが伴っていることで「会社の顔」として候補者に良い印象を与えられます。
責任感があり、臨機応変に対応できる
人材が「人財」と財産になぞらえて表記されることもあるように、採用業務の成功は企業成長に直結します。
担当者は、「重要な業務を担当している」という責任感を持つことが大切です。
また、採用担当者は、多くのタスクを管理しながら、厳密なスケジュールに沿って業務を遂行する必要があります。
例えば、候補者から「面接予定日に体調を崩し、日程を変えてほしい」と連絡があった場合、ほかの業務予定を踏まえて柔軟に日程を調整しなければなりません。
このように採用プロセスは動的であり、予測不可能な状況に臨機応変に対応できる柔軟性が必要です。
各方面との調整業務に負担を感じない
人事・採用担当者は、候補者や人事部のメンバー、上司、法務などさまざまなステークホルダーと連携しながら採用プロセスを進めます。
そのため、円滑なコミュニケーションと調整能力があり、かつそれを負担に感じない人が向いています。協力的な姿勢と調整力が、最終的な採用成功の鍵となるのです。
人材業界の流れを察知できる
採用担当者は、人材市場や業界のトレンドを把握し、組織に適切な戦略を提供する役割を担います。そのため、人材業界の変化や競争状況に敏感であり、新たな採用ツールやアプローチ方法に対する理解が求められます。
最新のトレンドや流れを察知して、自社ならではの取り組みを進めることは、他社との差別化にもつながります。
周囲を巻き込んで仕事を進められる
個人だけでなく、チームや他の部門と協力して仕事を進める必要があります。
そのため、他のメンバーやステークホルダーを巻き込みながら目標を達成するためのリーダーシップが求められます。
「周囲を巻き込む」と言っても、独りよがりになってはいけません。協調性を持って、周囲の価値観や意見を尊重することが大切です。
人事・採用担当者に向いていない人
一方で、人事・採用担当者に向いていない人も存在します。特に、以下の特性や行動が多く見られる場合は、向いていない可能性が高いといえます。
指示待ちでルーティン業務が好き
人事・採用担当者の仕事は多岐にわたり、予測不可能な状況や複雑な課題が発生します。そのたびに自分で課題を解決しなければなりません。
指示待ちの姿勢では適切に対処できないことがあります。ルーティンな業務に安心を感じ、自己発信や主体的なアクションを取るのが苦手な人は、採用担当者に向いていないでしょう。
自身の影響力を考えずに行動してしまう
採用担当者は、候補者や他の部門と協力し、組織の成功に向けて影響力を発揮する存在です。
向いていない人は、自身の行動が組織全体に与える影響を考えずに行動します。
例えば、面接官に対して採用計画の説明が十分でなければ、「何を基準に評価したら良いのか」が分からず、ミスマッチが生じるでしょう。
組織内での協力と連携が不足すると、採用プロセスや人事業務全体に悪影響を及ぼすのです。
周囲を巻き込むのが苦手
人事・採用担当者は候補者や組織内の他のメンバーと連携し、採用プロセスを円滑に進める必要があります。
しかし向いていない人は、協力的な姿勢を持たず、他の人とのコミュニケーションや協力が苦手です。これが原因で情報共有の不足や対立が生じ、組織内でのトラブルや問題が増える可能性があります。
採用業務の繁忙期はいつ?
採用業務は1年を通じてさまざまなピークと低調期がありますが、特に業務が忙しくなりやすい時期があります。
一般的に、採用業務の繁忙期は以下の時期に集中します。
■3月~6月の就活スタート期
例年、3月に就活が解禁され、多くの企業が大学生や大学院生を対象とした新卒採用を本格化させます。これは繁忙期の典型例で、大手企業から中小企業までさまざまな組織が競争し、優秀な新卒を採用しようとします。
■4月および10月の中途採用活発期
中途採用は通年で行われますが、採用活動が特に活発になるのは、上半期と下半期の開始時期です。一般的に、4月と10月は中途採用のピークとされており、これらの前後は採用業務が煩雑しやすくなります。
■プロジェクトの開始に伴う採用期
一部の業界やプロジェクトベースの仕事では、プロジェクトが開始または終了するタイミングに応じて、短期間で多くのスキルを必要とします。そのため、プロジェクトの進行に連動して採用業務がその時期に集中することがあります。
人事・採用担当者が抱える業務課題
人事・採用担当者はさまざまな業務課題に直面します。
あらかじめ起こり得る業務課題について理解したうえで、発生時に迅速に対応することが重要です。
■選考プロセスの複雑化
求職者数の増加や採用手法の多様化により、選考プロセスが複雑化しています。候補者の適性を正確に評価し、選考を効率的に進めるための戦略が必要です。
※下記の記事では、近年注目されている採用手法の「リファラル採用」と「アルムナイ採用」について紹介しています
→リファラル採用とは?メリット・デメリット・成功させるための促進方法まで徹底解説!
→「アルムナイ」とは?アルムナイ制度のメリットや活用事例をご紹介!
■ミスマッチの防止
近年は、求職者一人に対して求人の数が多いという、求職者優位の「売り手市場」になっています。そのため、企業は適切な候補者を見つけることが難しくなっており、マッチングの課題が生じています。
■採用ブランディング
採用競争が激しくなっている中、組織の魅力度を高めるためのブランディング活動が重要です。「他社にはない自社の魅力」を明確に伝え、「この企業で働きたい」と優秀な候補者を引き寄せる戦略が求められます。
■法的コンプライアンス
SNSを中心として企業の情報が簡単に広がるようになっており、採用担当者にはこれまで以上に法令遵守の意識が求められます。ただでさえ業務が忙しい中ですが、各法令を適宜確認しながら業務を遂行することが必要です。
採用業務を効率的に行う方法
採用業務をより効率的に遂行するためには、以下の方法が役立ちます。
採用管理システムの導入
採用業務を効率化し、プロセスをスムーズにするために、採用管理システムの導入が有効です。母集団形成、求人広告の掲載・管理、面接スケジュールの調整など、多くのタスクを自動化し、人事担当者の負担を軽減します。
また、採用に関するデータが一元化され、組織全体での情報共有が容易になり、迅速な意思決定が可能となります。
採用代行の利用
採用代行サービスを利用して、採用業務を外注する方法もあります。
採用代行サービスは、求人広告の設計から候補者の選定、面接の実施、候補者とのやり取りなど、企業のニーズに合わせて各プロセスを担ってくれます。これにより、内部の人事担当者は他の業務に集中でき、採用業務の効率化と生産性向上が期待できるのです。
他にも、「自社にノウハウを蓄積できる」「質が良い人材を採用できる」などのメリットもあります。
※下記の記事では、おすすめの採用代行サービスについて紹介しています
→採用代行サービス厳選10選を徹底比較!アウトソーシングで採用活動を効率化しよう
人材紹介サービスの活用
人材紹介サービスは、優れた候補者との出会いを生むための手段の一つです。
人材紹介会社は、特定の職種やスキルに特化した専門知識を持ち、組織のニーズに合致する候補者を提供します。
利用のプロセスとしては、まず採用担当者が自社の要件を伝えたうえで、人材紹介会社が適切な候補者を紹介します。母集団形成や求人活動を、自分たちで行う必要がないのです。
これにより、採用プロセスの時間短縮と候補者の質の向上が期待できます。
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まとめ
採用担当者は、自社に最適な人材を見つけ、実際に採用するまでのさまざまな業務を担います。
企業成長に直結する存在であるため、責任の大きい仕事であると同時に、やりがいも感じられるでしょう。ぜひ、当記事の内容を、これからの採用業務にお役立てください。
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