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ジョブ型雇用とは?なぜいま企業でジョブ型雇用の導入が増えているのか?

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[公開日]2021.07.13
[更新日]2021.07.09

時代とともに雇用の在り方が多様化する中、最近増加している雇用方法のひとつが「ジョブ型雇用」です。ジョブ型雇用は、日本における従来の雇用方法とは異なる特徴を持っています。

市場競争が激しい現在、企業成長のためにジョブ型雇用の導入を考えている企業は多いでしょう。

本記事では、ジョブ型雇用の概要や導入が進んでいる背景を解説します。メリットや導入時の注意点も紹介するため、ジョブ型雇用の導入を少しでも検討している人事採用担当の方は、ぜひ参考にしてください。

ジョブ型雇用とは

ジョブ型雇用とは、仕事内容を定義したうえで人材を採用し、成果やスキルなどで評価する雇用方法です。ジョブ(job)は英語で「仕事」を意味するため、「仕事をベースとした雇用方法」と理解しておくと良いでしょう。

一般的に、ジョブ型雇用を実施する際には「職務記述書(ジョブ・ディスクリプション)」を活用します。職務記述書とは、特定の職種における業務範囲や採用時の条件を詳細に記載するものです。企業に最適な人材の確保や、適正な評価に役立てられます。

職務記述書(ジョブ・ディスクリプション)については以下の記事で解説しています。
ジョブディスクリプションって何?|メリットやポイントについて紹介

日本経済団体連合会(経団連)は、2021年の春季労使交渉における経営側の指針内にて、ジョブ型雇用の導入を推奨しました。ジョブ型雇用は労働市場全体で注目されており、多くの企業が導入を検討している状況です。
参考:https://www.nikkei.com/article/DGKKZO68507750W1A120C2EA1000/

従来型雇用との違い

従来型雇用は、業務範囲を指定せずに人材を確保し、採用後に担当業務や配置を決める雇用方法を指します。「メンバーシップ型雇用」とも言われており、新卒一括採用が代表例です。

ジョブ型雇用とメンバーシップ型雇用の違いは、下記のとおりです。

ジョブ型雇用と従来型雇用(メンバーシップ型雇用)の違い
  ジョブ型雇用 メンバーシップ型雇用
仕事の割り振り方 仕事に人をあてる 人に仕事をあてる
給与の決め方 仕事内容や責任の度合いによって決める 年齢や勤続年数によって決める
異動の有無 無し、もしくは少ない 有り
重視される能力 スキルや知識の専門性 スキルや知識、人間性などの幅広い要素
教育の機会 少ない(あらかじめ専門性を有しているため) 多い(企業内での育成が前提であるため)
キャリア構築の在り方 転職が前提 終身雇用が前提

ジョブ型雇用は、欧米で昔から主流だった雇用方法です。欧米では「成果主義」の概念が強く、日本のように年齢や勤続年数は評価されません。仕事ありきで人材を雇用するため、人材の流動化が激しく、転職も当たり前です。
ジョブ型雇用とメンバーシップ型雇用は、雇用に関する根本的な考え方が異なるといえます。

ジョブ型雇用の導入が増えている背景

最近は、メンバーシップ型雇用からジョブ型雇用に移行しようとする企業が増えています。
ジョブ型雇用が増えている主な理由が、DXの推進や、新型コロナウイルスの流行です。

デジタル技術の進化により、近年は各業界でDXが進んでいます。DXに必要な高い専門性を持った人材を確保するためには、必要なスキルや業務領域を明確にしたうえでの雇用が効果的です。
また、新型コロナウイルスの流行は、ジョブ型雇用の導入を加速させるきっかけとなりました。テレワークでは、仕事への態度や労働時間などを正確に確認できません。しかし、ジョブ型雇用の場合は「成果」が重視されるため、テレワーク下においても評価しやすい特徴があります。

ほかにも、労働力不足の進行や企業競争の激化も、ジョブ型雇用が注目されている要因です。企業を取り巻く環境が激しく変化している中、ジョブ型雇用は企業成長に向けた一手となり得るでしょう。

ジョブ型雇用のメリット

ジョブ型雇用を効果的に導入・運用するためには、企業への影響を押さえたうえで綿密に計画を立てる必要があります。自社におけるジョブ型雇用の必要性を深掘りするためにも、メリット・デメリットを見ていきましょう。

ジョブ型雇用の主なメリットは、下記の3つです。

  • 長時間労働の防止
  • 専門性を活かした事業目標の達成
  • 人事戦略の効率化

長時間労働の防止

ジョブ型雇用は、長時間労働を防ぎやすいメリットがあります。業務範囲が定められていることで、自分が遂行すべき業務が明確になるためです。

メンバーシップ型雇用では、細かい業務範囲を決めないため、上司の裁量やチームの進捗状況に応じて、従業員にかかる負担が変わります。「この仕事お願い」「〇〇さんの仕事手伝って」など、突然仕事を任されるケースもあるでしょう。
長時間労働の防止は、従業員の満足度向上にも有効です。人材定着を促すうえでも、ジョブ型雇用のメリットは大きいと言えます。

専門性を活かした事業目標の達成

自分の専門分野を活かして仕事ができるため、組織全体の専門性・生産性を高められます。高い専門性を持った人材を確保できれば、組織に新たな価値をもたらしてくれるでしょう。

たとえば、組織のデジタル化を進めたい場合、専門的なデジタル技術を持った人材の確保が必要です。ジョブ型雇用では、システムを設計する「アーキテクト」や、システムの実装を行う「エンジニア」など、必要な人材を明確にできるため、事業計画がスムーズに進みます。

メンバーシップ型雇用の場合は、採用した従業員の中から適任を見つけて育成する方法が一般的です。育成にかかる費用や時間の面を考えても、ジョブ型雇用の方が短期間で事業目標達成に近付けます。

人事戦略の効率化

人事戦略が効率化する点も、ジョブ型雇用のメリットです。職務記述書の内容を踏まえて採用するため、業務分担や配置を考える手間がなくなります。即戦力として活躍できる人材を前提としており、教育にかかる負担が小さいことも特徴です。
また、採用活動における効率も高まります。企業が求める人材を細かく分析したうえで採用活動を進めるため、理想的な人材が見つかりやすくなるでしょう。

ただし、専門性が高い人材は貴重なうえに、労働力不足も相まって人材の獲得競争は激しくなっています。条件を限定し過ぎると求める人材が見つからない可能性があるため注意してください。

ジョブ型雇用のデメリット

ジョブ型雇用には、良い面だけでなく、いくつかのデメリットもあります。良い面だけを見てジョブ型雇用を導入すると失敗につながるため、欠点も押さえておきましょう。

ここでは、ジョブ型雇用のデメリットを3つ紹介します。

  • 協力意識の低下
  • ゼネラリストの不足
  • 上司の評価能力に対する不安

協力意識の低下

業務範囲が限定されていることで、協力意識がなくなる可能性があります。協力意識が欠けると、従業員同士の不和や連携ミスが生じやすくなるでしょう。結果として、かえって生産性が低下する場合もあります。

企業としては、各自が自分の業務に集中しながらも、チームとして目標達成に向かう意識をもってもらう取り組みが必要です。

ゼネラリストの不足

ゼネラリストとは、知識やスキルなどを限定せず、幅広い領域に対応できる人材です。ジョブ型雇用では、専門分野に特化しているスペシャリストが求められるため、ゼネラリストが不足するデメリットがあります。

ゼネラリストがいないと、「繁忙期で人手が足りない」「急病によって欠員が出た」などの緊急時に対応できません。無理にスペシャリストを異動させれば、範囲外の業務を行うことに不満を感じるでしょう。

企業は、新たな人材を雇用するか、既存従業員の業務量を増やして対応する必要があり、いずれにせよコストや手間がかかります。

上司の評価能力に対する不安

ジョブ型雇用では、専門性や能力をこれまで以上に細かく、かつ正確に評価する必要があります。評価内容によって昇給・昇進に影響が出るため、従業員からすると上司の評価能力は大きな不安材料です。

自分の能力が正しく評価されていないと感じた従業員は、より適正に評価してくれる企業を求めて離職するかもしれません。ジョブ型雇用においては、主観による評価を排除して、従業員を正しく評価できる工夫が必要です。

ジョブ型雇用を導入するうえでの注意点

ジョブ型雇用の特徴を把握したうえで、導入を前向きに検討している企業もあるでしょう。そこで最後に、ジョブ型雇用を導入する際の注意点を解説します。

特に注意すべき点は、下記の3つです。

  • 人事評価制度を再構築する
  • 特定の層や部署に対して試験的に導入する
  • コミュニケーションの活発化を図る

人事評価制度を再構築する

ジョブ型雇用を正しく機能させるために、これまでの人事評価制度を見直してください。

ジョブ型雇用のもとで有効な評価制度のひとつが「360度評価」です。360度評価では、上司から部下だけでなく、部下・上司・同僚と、自分が業務上関わる人から、多角的に評価されます。上司の思い込みを防止できるため、評価の精度が高まる点がメリットです。
また、幅広い視点で評価されることで、従業員が自身のスキル向上に活かせる利点もあります。

特定の層や部署に対して試験的に導入する

労働者の多くはメンバーシップ型雇用に慣れているため、いきなり組織全体をジョブ型雇用に移行すると、生産性が低下する恐れがあります。

そのため、まずは特定の層や部署に対する、試験的な導入がおすすめです。特に、高い専門性が必要な管理職や技術系職種を対象にすると、ジョブ型雇用の効果が分かりやすいでしょう。ジョブ型雇用を試験的に実施したら、問題点を抽出して改善策を講じてください。課題を解決したうえで全体に導入することで、組織へのスムーズな浸透が実現します。

コミュニケーションの活発化を図る

コミュニケーションの活発化も重要です。ジョブ型雇用のもとでは協力意識が薄れやすくなるため、相互にコミュニケーションをとりながら業務を進める仕組みを作ってください。

たとえば、定期的な情報交換や進捗報告の機会を設ける方法があります。テレワークを実施している場合は、オンラインツールの活用も有効です。

特にテレワーク下では、従業員が孤独を感じてメンタルヘルス不調を引き起こすケースもあります。ジョブ型雇用のもとでテレワークを実施する企業は多いため、健康保持の意味でも、コミュニケーションをとりやすい環境が重要です。

まとめ

ジョブ型雇用とは、仕事内容を定義したうえで人材を雇用する制度です。業務範囲が職務記述書によって定義され、仕事の成果やスキルを対象に評価が行われます。

これまでの日本では、採用後に仕事を割り振る「メンバーシップ型雇用」が一般的でした。しかし、近年はDXの推進や新型コロナウイルスの流行などを背景に、日本でもジョブ型雇用の導入が進んでいます。

ジョブ型雇用は、「組織の専門性向上」や「人事戦略の効率化」などのメリットがあります。一方で、「協力意識の低下」「ゼネラリストの不足」といったデメリットもあるため、導入は慎重に検討してください。

もし導入を前向きに検討している場合は、人事評価制度を再構築したうえでの、試験的な導入がおすすめです。一度課題を洗い出すことで、より自社に合ったジョブ型雇用を構築できるでしょう。

この記事を書いた人

紺野天地

紺野天地

フリーランスのライター。4年間地方公務員として人事労務を担当し、1年間の民間企業勤務(教育系)を経てフリーライターに。人事労務の実務経験や自身の多様な働き方を活かし、HR系のメディアを中心に記事を執筆しています。

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