ギグワーカーとは?意味やフリーランスとの違い、メリット・デメリットを解説

近年注目されている働き方のひとつに「ギグワーカー」があります。

ギグワーカーを採用すれば、人材不足やスキル不足に悩む企業にとって多くのメリットがあり、事業拡大や企業成長において大きな助けとなるでしょう。

一方で、最近になって生まれた働き方なので「そもそもギグワーカーについて詳しく知りたい」「企業と労働者にとってどのようなメリット・デメリットがあるのかを知りたい」と悩む方も多いと思います。

そこで今回はギグワーカーの概要や注目されている理由、企業・労働者双方へのメリット・デメリットなどを解説します。

ギグワーカーとは何か?

ギグワーカーとは、仕事を個人で受注し、プロジェクトごとに作業を行う労働者のことです。
特に、インターネット上のプラットフォームで仕事を受注する場合に多く使われます。
メジャーなところで言うと「(UberEats)ウーバーイーツ」がこれに該当します。

企業とギグワーカーは雇用関係になく、あくまで「仕事の発注者と受注者」という関係です。
例えば、「Webサイトを制作したいけれど、自社にリソースがない。Web領域に詳しい人材に外注しよう」というような流れでギグワーカーに仕事を依頼します。

自分のスケジュールや仕事を選択し、柔軟性のある働き方が可能であることから、副業としてギグワーカーという立場をとっている人も少なくありません。
詳しくは後述しますが、ギグワーカーによくある仕事の多くは「動画制作」や「ウェブデザイン」「ライティング」「配達代行」など、案件ごとに単発で受注できる仕事です。

ギグワーカーの歴史

元々、ギグワーカーの「ギグ(Gig)」という言葉は、音楽ライブにおいて一時的にメンバーが集まり、その場限りで行われるセッションに対して使われていました。
そこから派生して「単発で仕事を請け負う労働者」を表す言葉としても使われるようになりました。

ギグワーカーの歴史は、インターネットとデジタル技術の発展に密接に関連しています。
2000年代、アメリカで「ギグエコノミー」と呼ばれるインターネットを中心にオンライン上で仕事を受発注する働き方が広がりました。従来と比べてより柔軟な働き方をするこれらの労働者が「ギグワーカー」と呼ばれるようになりました。

日本においても、オンラインフリーランスプラットフォームの登場やコロナ禍でのテレワークの浸透、副業解禁の推進など、働き方が多様化する中でギグワーカーが広がっています。
これらのプラットフォームは、クライアントと労働者を容易に結びつけ、仕事のマッチングや支払いの処理を効率化しました。

また企業にとっても、ギグワーカーがいることで、専門スキルを必要とする短期プロジェクトを外部に委託しやすくなります。
この新しい労働形態は、従来の雇用概念を覆し、今後も進化し続けるでしょう。

ギグワーカーとして働ける仕事

ギグワーカーとして働ける仕事は、下記のように多岐にわたります。

  • 翻訳
  • Webページのデザイン
  • ライティング
  • グラフィックデザイン
  • マーケティング
  • ソフトウェア開発
  • 動画制作
  • イベントプランニング
  • インターネット調査
  • 配達代行
  • 家事代行
  • コンサルティング
  • 資料作成 など

上記はあくまで一例です。
ギグワーカーへの発注を悩んでいる企業は、自社の事業や業務を細分化したうえで、専門性や高度なスキルが求められるものを中心に、外注できないか検討するとよいでしょう。

ギグワーカーとその他の雇用形態との違い

ギグワーカーと混同されやすい雇用形態として「アルバイト」「日雇い労働者」「派遣労働者」「フリーランス」があります。
それぞれの雇用形態とギグワーカーの違いについて、具体的に解説します。

アルバイト

アルバイトは、特定の企業や店舗で一定期間雇用される労働者のことを指します。
企業と労働者が雇用関係にあり、長期にわたって雇用するケースもありますが、その多くは短期間です。

アルバイトは通常、定期的な給与を受け取り、場合によっては社会保険加入や福利厚生の対象となります。しかし、仕事の柔軟性やキャリアアップの可能性は限られており、労働環境が雇用主に依存しやすい傾向にあります。

日雇い労働者

日雇い労働者は、1日単位で仕事に従事して報酬を得る労働者です。
通常、給与支給も1日単位なので、仕事が終わればその日のうちに、あるいは決まった振込日に後日給与が支給されます。

日雇い労働者は、オフラインでの需要が高く、建設現場やイベント会場のように人手が求められる業種において定期的に募集されています。
仕事自体は一時的なものであるため、社会保険や福利厚生がなく、雇用機会も安定しないことがほとんどです。

派遣労働者

派遣労働者は、派遣会社に登録したうえで、その派遣会社からクライアント企業に派遣されて仕事に従事する形態です。クライアント企業で仕事を行いますが、雇用関係は派遣会社との間にあります。

給与や福利厚生などの待遇関連は派遣会社によって管理され、現場における指揮監督権をクライアント企業が持つことが特徴です。
「新規プロジェクトが終了するまで専門性を持ったメンバーがほしい」「コールセンターの繁忙期にスタッフを増員したい」というように、長期のプロジェクトや一時的な労働需要に対応します。

フリーランス

フリーランスは、組織から独立したプロフェッショナルとして、クライアントから仕事を受注し、プロジェクトごとに作業を行います。その多くが、個人事業主でもあります。

自分たちでサービスを構築したうえで、スケジュールや料金を自由に設定できることが特徴です。事業計画やクライアント獲得など、事業活動における全てに責任を負い、収益の管理も自身で行う必要があります。

ギグワーカーの現状と注目されている背景

ギグワーカーが注目を集めている背景には、いくつかの社会的要因があります。
ここでは、ギグワーカーの現状とその背後にある要因に焦点を当て、なぜ重要な存在となっているのかについて解説します。

高齢化社会の深刻化

日本は少子高齢化によって労働人口が減っており、この傾向は今後も続くと見込まれています。

労働市場全体で人材が減っている中、正社員として人材を雇用するには、かなりの労力やコストを要します。
ギグワーカーであれば、プロジェクト単位で仕事を発注できるため、労力やコストをかけずに自社のニーズを満たせるのです。

また、年齢を問わず、柔軟な働き方を選択できるギグワーカーは、高齢者が働く機会を得るうえでも効果的です。
高齢者が、これまで培った専門知識や経験を活かして仕事をする場が提供され、労働市場に多様性が生まれます。

雇用に対する不安

日本の経済成長が伸び悩んでいることなどから、「自分の勤務先もいつか倒産するんじゃないか」「今後給料が下がるんじゃないか」などの不安を抱く人は少なくありません。

ギグワーカーであれば、複数の仕事を同時に持つことでリスクを分散できます。プロジェクトごとに収入を得るため、雇用に対する不安を軽減することができるのです。

また、ギグワーカーとして働いた経験やスキルを、今後のキャリアチェンジやキャリアアップに生かすこともできます。キャリアの可能性が広がることで、将来への不安が和らぐでしょう。

副業の解禁

ここ数年、多くの企業で副業が解禁され、ギグワーカーの台頭を後押ししています。

「収入を増やしたい」「新たなスキルを身に付けたい」など、一人ひとりが自分のニーズを実現させる方法として、ギグワーカーが重要な選択肢のひとつなのです。

副業の制限がなくなる社会的な動きは、今後も拡大すると見込まれます。
ギグワーカーとして副業に取り組む労働者は、これからますます増加するでしょう。

ギグワーカー向けのプラットフォームの普及

ギグワーカー向けのプラットフォームは、労働者と企業が効率的につながるための重要なツールとなっています。

企業は、プラットフォーム上に案件を掲載することで、理想的なスキルや経験を持った人材を見つけることができます。また、プロジェクトのマッチングだけでなく、連絡や支払い管理、勤怠管理などもプラットフォーム上で実施できる場合があり、これひとつでギグワーカーの管理ができます。

以下、一部の注目すべきプラットフォームを紹介します。

Timee


(出典:タイミー公式サイト

労働者の「働きたい時間」と企業側の「働いてほしい時間」をつなぎ合わせる、スキマバイトのマッチングサービスです。マッチング率が90%以上と高く、当日の募集であっても求める人材が見つかるほどのマッチング力が魅力的です。

【特徴】

  • 500万人のユーザーの中からマッチング
  • 勤務実績が優れたユーザーが先行公開されるため安心
  • 長期アルバイトとしての引き抜きも無料で可能

UberEats(ウーバーイーツ)

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(出典:UberEats公式サイト

『UberEats』は、アプリ上で料理を注文して、会計、配達までを完結させられるサービスです。労働者は、配達パートナーとしてUberEatsに登録して、自転車や原付バイクなどで料理を配達することで収入を得られます。

【特徴】

  • 自転車や原付バイクで手軽に働ける
  • 好きな時間に稼働できる
  • 週単位で賃金が支払われる

シェアフル

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(出典:シェアフル公式サイト

自分がスキマ時間で働きたい日時を入力して応募するだけで、すぐにバイトを始められるサービスです。
企業側の利点として、求人掲載の料金形態は成果報酬型なので、実際に働いてもらうまで費用がかかりません。

【特徴】

  • ダウンロード数350万以上の人気ぶり
  • 就業条件の明示から勤怠管理、給与計算、振込代行まで、一連の業務がすべてシェアフル内で完結
  • 実際に働いてもらってから料金が発生する成果報酬型なので、掲載自体は無料

LINEスキマ二

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(出典:LINEスキマ二公式サイト

『LINEスキマ二』は、コミュニケーションツールとして有名な『LINE』と同じ会社によって運営されているサービスです。学生や主婦をはじめ、幅広い層から利用されています。

【特徴】

  • 面接や履歴書不要ですぐに働ける
  • 働いたあと、賃金がすぐに入金される
  • マッチングの手軽さから学生や主婦など幅広い層から人気

クラウドワークス

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(出典:クラウドワークス公式サイト

『クラウドワークス』は、企業と個人をつなぐクラウドソーシングプラットフォームです。さまざまな業種の仕事を扱っており、利用者数も多いことから、企業の人材不足を解消するうえで人気のサービスとなっています。

【特徴】

  • 各業種のプロが多数利用
  • 仕事を掲載するだけでプロからの応募を集めることができる
  • ユーザー数は業界トップの規模

企業がギグワーカーを雇うメリット

現代のビジネス環境では、企業がギグワーカーを積極的に採用することに多くのメリットがあります。
ここでは、「なぜ企業がギグワーカーを採用すべきなのか」という視点でメリットについて説明します。

採用活動のコスト削減

ギグワーカーを採用することで、企業は従来の雇用形態に比べて採用コストを削減しやすくなります。

まず大規模な採用プロセスを必要としないため、採用にかける人件費や広報費などがかかりません。
採用プロセスが迅速になり、必要なスキルセットに合致した専門家を簡単に見つけられるため、採用活動自体を効率化できるのも利点です。

社会保険や福利厚生などが適用されないため、ギグワーカーに対して継続的な人件費がほとんどかからないこともコスト削減につながります。

人手不足の解消

多くの企業が直面している課題の一つが人手不足です。

ギグワーカーを活用することで、プロジェクトごとに必要なスキルや専門知識を迅速に補完できます。結果として、業務の遅延や品質の低下を防ぐことができるでしょう。

人手不足の解消は、企業の競争力を維持し、成長を支える要因となります。
事業拡大や企業成長において、ギグワーカーの採用による人手不足の解消が大きな助けとなるはずです。

企業がギグワーカーを雇うデメリット

一方で、企業がギグワーカーを雇うことにはいくつかのデメリットも存在します。
ギグワーカー採用に伴う潜在的な課題について詳しく説明します。

人材のバラつき

ギグワーカーに頼りすぎると、自社の従業員のスキルや経験が偏る可能性があります。組織力が底上げされず、かえって「ギグワーカーに頼り続けないといけない」という状況になりかねません。

また、異なるギグワーカーがプロジェクトに参加するため、品質や成果物の一貫性を維持するのが難しい場合があります。
企業には、厳格な品質管理やコミュニケーション戦略が求められます。

ノウハウ継承の遅行

ギグワーカーの多くはプロジェクト単位で仕事を行いますし、新たなギグワーカーが常に入れ替わります。そのため、企業内での長期的なノウハウの継承が難しい場合があります。

本来であれば、ギグワーカーへも発注せずに、自社内で仕事を遂行できるのが理想です。
ギグワーカーは、現時点で自社にないノウハウやスキル、経験を持っています。密にコミュニケーションを取りながら、自社にノウハウを蓄積する工夫が必要です。

情報漏洩のリスク

外部のギグワーカーに情報を共有することで、情報漏洩のリスクが増加します。
特に、企業の機密情報にアクセス権を与えることは、リスクを大幅に増加させるでしょう。

適切なセキュリティ対策を講じない場合、知的財産や機密データが漏洩する可能性もあります。企業はギグワーカーの選定と情報セキュリティの確保に注意を払うことが大切です。

ギグワーカーの労働者側のメリット

ギグワーカーとして働くことには、多くの魅力的なメリットがあります。
ここからは、ギグワーカーとしての仕事が「労働者」にもたらす利点について詳しく解説します。

ストレスを回避できる

ギグワーカーとして働くことで、ストレスを回避する機会が増えます。
通勤ストレスやオフィスの人間関係の問題から解放され、自分のペースで仕事を進めることが可能です。心身の健康を維持し、仕事と生活のバランスを取りやすくなるでしょう。

また、ストレスのない環境で働くことが創造性と生産性を高める要因ともなります。
結果として、ギグワーカーを採用した企業にとってもメリットがもたらされるのです。

自由度が高い

自由度の高さもメリットのひとつとなります。

スケジュールを自由に調整できますし、仕事の選択肢も多岐にわたります。特定のプロジェクトやクライアントに制限されることなく、自分のキャリアを自分でコントロールできるため、仕事に対するモチベーションが高まるでしょう。

自分の専門知識や経験、興味関心に合った仕事を選ぶことができるため、ギグワーカーとして自由度高く仕事をする中で、心も満たされやすくなるはずです。

収入増加が期待できる

ギグワーカーとして新たな労働機会を得ることで、収入増加につながります。
そればかりか、スキルや経験が高まるにつれてプロジェクトの報酬をアップさせることも可能で、努力した分だけ収入が増えるかもしれません。

また、複数のプロジェクトやクライアントから仕事を受けることで、収入源を多角化できるため、収入が不安定になりにくくなります。
複数の収入源を確保できることは、労働者の「安心」につながり、日々の満足度を向上させるでしょう。

ギグワーカーの労働者側のデメリット

多くのメリットがあるギグワーカーとしての働き方ですが、一方でデメリットも存在します。ここからは、ギグワーカーとして働くことのデメリットについて紹介します。

出来高制で収入が不安定

ギグワーカーの中には、仕事の報酬が出来高制で支払われる場合があります。
また、単発で仕事を受注するため、「当月は多くの仕事を受注したけれど、来月は受注がない」という可能性もあるのです。これが収入の不安定さを招くことがあります。

さらに、プロジェクトの受注状況やクライアントの支払い遅延によって、収入が不安定になることもあります。予測困難な経済的リスクがある点には注意が必要です。

自己責任・自己負担

ギグワーカーは、自己責任と自己負担を背負う必要があります。
従業員として働くときのように、常に周囲に相談できたり、フォローしてもらえたりできるわけではありません。自分の言動や成果に対して、自分がすべての責任を負うことになります。

また、健康保険や年金などの社会制度への加入や、税金の計算と支払いなどは、労働者自身が管理を行います。
長期的なキャリアプランニングやリタイアの準備も自己責任であるため、自らのキャリアを長期的に見つめたうえで仕事のバランスを考える必要があります。

ギグワーク3.0とは?

「ギグワーク3.0」とは、その時代におけるギグワーカーの働き方を表す用語のひとつです。
具体的に、ギグワーク3.0は「企業が独自のプラットフォームを形成したうえで、労働者とつながることができる時代」であることを指します。

「3.0」と付けられているように、過去には「ギグワーク1.0」「ギグワーク2.0」という用語もあり、それぞれ下記の内容を表します。

ギグワーク1.0 ギグワーク2.0 ギグワーク3.0

社会的にインターネットが浸透してきたことで、個人がオンライン上でスキルを活用できるようになった時代。

ギグワーカーとして働ける仕事は限定的で主に一部のフリーランスが該当する働き方だった。

スマホアプリや位置情報といったモバイルを活用した働き方が可能になった時代。

リアルタイムでの仕事の受発注が可能になった。

企業や雇用主が独自のコミュニティを形成できるようになった時代。

受発注できる仕事内容がより多様になり、各業界・業種においてギグワークが広がっている。

まとめ

ギグワーカーとは、主にインターネット上のプラットフォームを利用して、単発で仕事に従事する労働者のことです。インターネットの発展や働き方の多様化により、近年、ギグワーカーは増えています。

企業にとっては、採用コストの節約や人員不足の解消など、さまざまなメリットがあるため、ぜひギグワーカーの採用を検討してはいかがでしょうか。

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コンノ

公務員として4年間、人事労務の実務経験あり。 これまで100名以上の事業者をインタビューしており、「企業や個人事業主が本当に悩んでいること」を解決できる記事を執筆します。

監修者
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辻 惠次郎

ネットオン創業期に入社後、現在は取締役CTOとしてマーケティングからプロダクトまでを統括。
通算約200社のデジタルマーケティングコンサルタントを経験。特に難しいとされる、飲食や介護の正社員の応募単価を5万円台から1万円台に下げる実績を作り出した。
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