2024年夏季賞与、「昨夏より増額予定」は35.3%。「支給する」事業所割合は2023年調査より15.1%減少|中小企業の夏季賞与に関するアンケート調査

2024年の春闘(1次集計結果)では、大手企業の賃上げ率が33年ぶりの高水準となりました。まもなく多くの企業が支給時期を迎える夏季賞与についても、一人当たり平均支給額が昨年を上回ることが予想されています。

一方で指摘されているのが、大手企業と中小企業の格差です。
賞与の原資確保に苦戦する中小企業は少なくありませんが、2024年の夏季賞与についてはどのように計画しているのでしょうか。

株式会社ネットオンでは、採用業務クラウド「採用係長」の登録ユーザーである中小企業の採用担当者を対象にアンケート調査を実施しました。

アンケート回答者属性

今回、アンケートにご回答いただいた事業所様の属性は以下の通りです。
従業員規模30名以下の事業所様を中心に「建築・不動産」、「介護・福祉、「飲食」、「運輸」など様々な事業所様にご回答いただきました。
また、地域につきましても、都市部を中心に全国的に散らばり、あらゆる地域の事業者様にご回答いただきました。

業種

従業員規模

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都道府県

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賞与を「支給する」事業所は、47.9%

はじめに、2024年の夏季賞与の支給予定について質問したところ、47.9%の事業所が「支給する」と回答。「支給しない」事業所が過半数を占めることが明らかになりました。

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前回調査(2023年5月実施/n=108)との比較では、「支給する」が15.1ポイント減少する結果となっています。

35.3%が昨年の夏季賞与より「増額予定」と回答

続いて、Q1で夏季賞与を「支給する」と回答した事業所(n=116)へ、昨年の夏季賞与からの変動について質問しました。

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もっとも多かったのは「変わらない」で、60.3%の事業所が回答。「増額予定」は35.3%に留まりました。「増額予定」の事業所は、前回調査(2023年5月実施/n=68)と比べて7.3ポイント減少しています。 業種ごとの変動状況についても確認しておきましょう。 以下は、業種ごとの賞与額の変化を表したグラフです(ここでは、賞与を支給する21業種のうち、5事業所以上から回答があった9業種をグラフ化しています)。

グラフ(業種別賞与支給額の変化:昨年比)

※()内の数字は回答数を表示 9業種のうち、7業種において「変わらない」が半数以上を占めました。

一方、「商社・卸売」「その他」は、「増額予定」が「変わらない」を上回っています。 「減額予定」の回答があったのは、「介護」「医療」「その他」。中でも「医療」は、「減額予定」が20%に上っています。

増額理由1位は、「従業員の意欲向上のため」

Q2で夏季賞与を「増額予定」と回答した事業所(n=41)へ、増額理由について質問したところ、「従業員の意欲向上のため」がもっとも多く、75.6%の事業所が回答しました。

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また3位の「従業員の定着率向上のため」は、43.9%です。増額予定の事業所が「意欲向上」「定着率向上」の両方、またはどちらかを理由としている点からは、ほとんどが人材確保を目的に増額することが読み取れます。

増額した金額は「1万円~5万円未満」が最多

さらに、増額する金額について質問したところ(n=41)、もっとも多かったのは「1万円~5万円未満」です。増額予定の事業所の約半数が「1万円~5万円未満」の増額を予定していることが分かりました。

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基本給換算での増額幅は、半数以上が「0.5カ月~1.5カ月未満」

昨夏からの変動について、支給月数(基本給換算〇カ月分)での回答も求めました(n=41)。

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「0.5カ月~1カ月未満」および「1カ月~1.5カ月未満」が同率で他の支給月数を上回っています。半数以上が0.5カ月~1.5カ月未満の範囲で増額することが分かりました。

「減額予定」の事業所は、4.3%。理由は「業績の向上が見込まれていない」「物価高騰や円安の影響」

Q2で「減額予定」と回答した4.3%の事業所にも、理由や変動額について質問しています(n=5)。

【減額理由(複数回答)】
4事業所が「業績の向上が見込まれていないため」を理由として挙げ、2事業所が「物価高騰や円安の影響」と回答しました。

【減額する金額】
3事業所が「1万円~5万円未満」、1事業所が「5万円~10万円未満」です(残り1事業所は「わからない」と回答)。

【基本給換算での増額幅】
「0.5カ月未満の減額」が2事業所。「0.5カ月~1カ月未満の減額」「1カ月~1.5カ月未満の減額」がそれぞれ1事業所となっています(残り1事業所は「わからない」と回答)。

支給額は「1~1.5カ月未満」が最多

夏季賞与を「支給する」すべての事業所(n=116)へ、支給額について質問したところ、もっとも多かったのは「1~1.5カ月未満」でした。

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前回調査との比較では、「1カ月未満(前回7.4%)」が19.3ポイント増加し、「1.5~2カ月未満(前回5.9%)」は12.2ポイント増加。一方、「2~2.5カ月未満(前回19.1%)」は、7ポイント減少しました。
賞与を支給する事業所の60.3%が1.5カ月未満(「1カ月未満」または「1~1.5カ月未満」)での支給を予定しており、同範囲での支給は前回調査と比べて19.1ポイント増加しています。 さらに、昨夏からの変動状況別に支給額を確認しましょう。

グラフ(2024年夏季賞与の支給額:昨年からの変動状況別)

昨年の夏季賞与額と「変わらない」事業所の支給額は、「1カ月未満」がもっとも多く、「増額予定」の事業所については「1~1.5カ月未満」が最多であることが分かりました。

賞与支給に関する意見・課題は、「支給額を上げたいが難しい」「増額のさじ加減が難しい」など

全ての事業所へ賞与支給についての課題や意見を聞いたところ、30件の回答を得ることができました(自由回答/n=242)。 ここではその中から一部を抜粋して紹介します(可読性を高めるため、文言を調整済み)。

賞与を「支給する」事業所
※カッコ内は、業種/従業員規模/所在地

・プラスで手当の支給を考えている(医療/~4名/熊本県)

・夏期賞与は当社の決算時期のため、成績連動で基本賞与+決算賞与を支給している(その他専門・技術サービス/10~19名/福岡県)

・賞与+特別支給を年4回に分け、お金が必要と思われる時期に支給している(小売/10~19名/山形県)

・増額のさじ加減が難しい(商社・卸売/~4名/埼玉県)

・支給額を上げたいが現状では難しい(医療/~4名/千葉県)

・メディアで取り上げられるような上場企業ではなく、中小企業がどれだけ増額したかを知りたいし、基準にした方が良いと思う(医療/5~9名/大阪府)

賞与を「支給しない」事業所
※カッコ内は、業種/従業員規模/所在地

・夏季賞与という形では今のところ考えてはいないが、処遇改善手当として昨年の年収よりベースアップして支給し、今年度の成績によって年末・年度末の賞与を考えている(介護・福祉/50~99名/山形県)

・支給したいが、業績が伸びない(小売/5~9名 沖縄県)

・利益が出れば支給する(電気・ガス・石油・水道/~4名/岩手県)

・ある程度売上が上がれば支給する予定(運輸/5~9名/愛知県)

まとめ

今回の調査では、2024年夏季賞与についてアンケートを実施しました。その結果、「支給する」と回答した事業所は47.9%。そのうち増額を予定している事業所は、35.3%です。前回調査との比較では、「支給する」「増額予定」の事業所の割合がいずれも減少する結果となりました。

2023年以降、大手企業では賃上げが進んでおり、2024年の夏季賞与についても増額が予想されています。しかし今回の調査結果は、その流れが中小企業まで広がるにはまだ時間が必要であることを示しているようです。

賞与の増額理由1位(従業員の意欲向上のため)からも読み取れるように、賞与は人材確保の観点からも重要な要素です。賞与の原資を確保し、賞与を含めた持続的な賃上げを実現するために、生産性向上や適切な価格転嫁は今後ますます求められていくでしょう。 政府が賃上げを推進するために実施している「賃上げ促進税制」は、支援内容が2024年4月から拡充されています。持続的な賃上げ、ひいては企業成長に欠かせない人材を確保するには、こうした支援策の積極的な活用も有効ではないでしょうか。

株式会社ネットオンは、今後も継続的な調査を通じて中小企業の動向を見守り、全国の事業所が抱える採用課題の解決に寄り添うサービスの提供に努めてまいります。

調査名 2024年夏季賞与に関するアンケート調査
調査対象 『採用係長』利用事業所の人事・労務担当者様
有効回答数 242
調査期間 2024年5月20日(月)~6月2日(日)
調査方法 インターネット調査
調査結果の注意点 %を表示する際に小数点第2位で四捨五入しているため、単一回答の場合は100%、複数回答の場合は合計値に一致しない場合があります。

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この記事を書いた人
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馬嶋 亜衣子(samusillee)

採用・キャリア関連、医療分野を中心に執筆を行うフリーランスライター。 各種メディアの取材ライティングやSEOライティング、採用HPのライティングなどに携わっています。

監修者
監修者
辻 惠次郎

ネットオン創業期に入社後、現在は取締役CTOとしてマーケティングからプロダクトまでを統括。
通算約200社のデジタルマーケティングコンサルタントを経験。特に難しいとされる、飲食や介護の正社員の応募単価を5万円台から1万円台に下げる実績を作り出した。
Indeedはもちろん、インターネット広告やDSP広告を組み合わせた効率的な集客や、Google Analytics等の解析ツールを利用した効果分析、サイト改善を強みとしている。

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