人手不足な業界と原因は? 人手不足の解決方法についても紹介

日本の労働市場において「人手不足」が大きな課題となっています。

「求人をかけても応募が集まらない……」
「採用に成功してもすぐに離職してしまう……」
業界問わず、このように悩んでいる企業は多いのではないでしょうか。

当記事では、人材不足の原因と、特に人手が減少している業界の動向について、実際のデータをもとにしながら解説します。
人手不足解消を図りたい経営者や人事担当者、就職活動中の方々は、現状把握と今後の方向性を考えるうえで参考にしていただけたら幸いです。

日本における人手不足の原因

日本の労働市場は深刻な人手不足に直面しています。
この状況は様々な要因が複雑に絡み合って生じていますが、主な原因として挙げられるのが以下の3つです。

  • 少子高齢化
  • 働き方や価値観の多様化
  • 都市部への人口集中

それぞれの原因について、具体的な動向を踏まえて解説します。

少子高齢化

最大の要因ともいえるのが、急速に進行する少子高齢化です。
総務省統計局の人口推計によると、2024年10月1日現在の日本の総人口は1億2379万人で、65歳以上の高齢者人口は3624万人。割合でいうと全体の約29%を占めています。
(出典:人口推計(2024年(令和6年)5月確定値、2024年(令和6年)10月概算値) |総務省統計局

65歳以上の人口が全体の21%を超えていると「超高齢化社会」に該当しますが、日本はその基準を大きく上回っています。

一方で、出生数は年々減少しており、2023年は過去最低となる72万7277人です。この傾向が続くと、今後さらに生産年齢人口(15〜64歳)が減少し、労働力不足が深刻化することが予想されます。

働き方や価値観の多様化

近年、若い世代を中心に、働き方や人生の価値観が多様化しています。
特にワークライフバランスを重視する傾向が強まっていて、給与をはじめとした待遇よりも、長時間労働や過度な残業を避けることを重視する人も少なくありません。

また、終身雇用や年功序列といった従来の日本型雇用システムは薄れ、転職はもちろん、フリーランスや副業など多様な働き方を選択する人が増加しています。これにより、特定の業界や職種で人材の確保が難しくなっている面があります。

都市部への人口集中

日本では長年にわたり、地方から都市部への人口流出が続いています。
例えば2022年から2023年にかけての人口増減率を見ると、上位5都府県が「東京都、沖縄県、神奈川県、埼玉県、千葉県」で、下位5県が「高知県、山形県、岩手県、青森県、秋田県」です。
(出典:人口推計(2023年(令和5年)10月1日現在)|総務省統計局

特に若年層の都市部への流出が顕著で、地方の人口減少に拍車をかけています。
この結果、地方では深刻な人手不足に悩まされる一方で、都市部では特定の業種に人材が集中し、業種間での人材の偏りが生じています。

人手が特に不足している業界

日本では多くの業界で人手不足が深刻化していますが、特に人手不足の業界は下記のとおりです。

  • 医療・福祉業界
  • 建設業界
  • 情報処理サービス業界
  • 運輸業・運送業界
  • 旅館・ホテル業界

人手が不足しているこれらの業界について、その要因や現状を解説します。

医療・福祉業界

【主な要因】

  • 高齢者人口の増加
  • 労働環境の厳しさ(夜勤、重労働など)
  • 給与水準の低さ

高齢化社会の進展に伴い比例的に需要が高まる医療・福祉業界は、人手が足りない業界の代表例だといえます。
すでに人手不足に悩む企業は増えていて、その傾向が顕著なのが介護領域です。

厚生労働省がまとめる「第9期介護保険事業計画」を参考にすると、2026年度時点で約240万人の介護人材を確保する必要がありますが、2022年度時点での介護職員数は215.4万人。令和2019年度から2022年度の3年間で約5万人しか増えていないことを踏まえると、計画に定めた人員には20万人ほど及ばないことが予想できます。
(出典:第9期介護保険事業計画に基づく介護職員の必要数について|厚生労働省

今後もこの傾向が続くと、介護職員の必要数と実際の確保数は、さらに差が開いていくでしょう。

※次の記事では、介護業界における人材不足の原因と対策についてより詳しく解説しています
介護業界の人材不足はなぜ?原因と対策を紹介
介護業界の人手不足を解消するには?深刻化する原因や対策、事例をご紹介

建設業界

【主な要因】

  • 3K(きつい、汚い、危険)イメージ
  • DXへの対応の遅れ
  • 季節によって仕事量の変動が激しい

建設業界も深刻な人手不足に直面しています。
3Kのイメージ(きつい、汚い、危険)が定着してしまっていることや、デジタル化が遅れていることにより、若者の業界への興味が薄れていることが大きな理由です。

国土交通省が公表する建設労働需給調査結果から「過不足率」を見ると、平成23年1月以降、ほとんどの月で「不足」という結果になっています。
(出典:建設労働需給調査結果(令和6年9月調査)|国土交通省

また、下記は建設業の年齢層分布を示したグラフです。
29歳以下の人材が全産業平均より少ない一方で、55歳以上の人材は多く、高齢化が進んでいることが分かります。

(出典:建設業就業者の高齢化の進行|一般社団法人日本建設業連合会

※建設業において採用活動を成功させるポイントを知りたい方はこちら
建設業の若者離れの原因と対策を分かりやすく解説!
建設業の採用方法とは?採用難と言われる中で採用活動を成功させるポイントや求人媒体を解説

情報処理サービス業界

【主な要因】

  • デジタルトランスフォーメーション(DX)の加速
  • AI、IoT、ビッグデータなどの新技術の台頭
  • 教育機関でのIT人材育成の遅れ

情報処理サービスとは、IT技術を活用してシステムの企画や開発、保守などを行うことです。
デジタル化の進展に伴い、IT人材の需要が急増しており、一方でその業務には専門性が求められることから需要に対して供給が追いついていない状況です。
経済産業省の報告によると、2030年には最大約79万人のIT人材が不足すると予測されています。
(出典:IT人材育成の状況等について|経済産業省

運輸業・運送業界

【主な要因】

  • 2024年問題
  • 給与水準の低さや不規則な勤務形態
  • 若年層の職業としての魅力の低下

eコマースの拡大に伴い、物流需要が増加しているにもかかわらず、運輸業・運送業では深刻な人手不足が続いています。
下記のとおり、トラックドライバーの有効求人倍率はここ数年、全職種平均を大きく上回っています。

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(出典:トラック運転者の仕事を知ってみよう 統計からみる運転者の仕事|自動車運転者の長時間労働改善に向けたポータルサイト

運輸業・運送業界の人手不足を加速させているのが「2024年問題」です。

2024年問題とは、ドライバーの残業時間上限が年間960時間(従来は上限なし)になることで生じる「輸送能力の低下」「人手不足の深刻化」といった問題の総称で、企業が賃金体系を変えない限り、労働時間が減少する分、ドライバーの収入も減少することにつながります。

そうなると、ドライバーは「収入が減ると生活が苦しくなる」「家族を養えない」といった不満を抱き、転職活動を始める可能性が高くなります。

※「2024年問題」についてより詳しく知りたい方はこちら
物流・運送業界「2024年問題」をわかりやすく解説。拘束時間(労働時間)や給料など変更点と必要な対策について

※ドライバーの採用を成功させるためのコツを知りたい方はこちら
ドライバー採用を成功させるポイントとは?効果的な採用手法や成功事例、注意点も解説

旅館・ホテル業界

【主な要因】

  • シフト制や深夜勤務などの労働環境
  • 季節変動の大きさ
  • 外国語対応など、求められるスキルの多様化

インバウンド需要の増加にもかかわらず、旅館・ホテル業界では人手不足が深刻化しています。そもそもこの業界は元々離職率が高かったのですが、近年のワークライフバランスが求められる動きの中で、変則的な勤務が多い旅館やホテルへの就業を望まない人材が増えているのです。

観光需要の回復に伴い宿泊施設の稼働率が上昇しているため、今後も対応するスタッフが不足する傾向は続くでしょう。
そうなると「1人あたりの業務負担が増える→離職する→さらなる人手不足に」という悪循環に陥っていく可能性があります。

※旅館・ホテル業界において人手不足を解消するための取り組みを知りたい方はこちら
ホテル・旅館業界の人手不足を解消する方法とは? 明日から取り組める対策と事例

※具体的な求人方法を知りたい方はこちら
ホテル・旅行業界でアルバイトなどの求人を募集するには?

人手不足の解決方法

人手不足を解決するための方法に「これ!」という答えはなく、企業の現状を踏まえて最適なアプローチを検討する必要があります。ここでは、企業が取り組むべき人手不足の解決方法について、特に効果的な下記5つの方法を紹介します。

  • 業務効率化
  • リスキリング
  • 働き方の多様性の確保
  • 労働環境や労働条件の改善
  • 採用ホームページの活用

業務効率化

業務を効率化すれば、限られた人手で成果を出せるようになります。
特にコロナ禍以降、業務の自動化やリモート化はどんどん進んでいます。アナログ業務が多い企業は、時間がかかっている業務を洗い出したうえで、ツールの導入や外部への委託などを図ることが、人手不足を補う手だてとなるでしょう。

【業務効率化の方法】

  • 現在の業務プロセスの見直しと改善
  • ITツールやソフトウェアの導入
  • 自動化システムの活用
  • AI(人工知能)の導入

※こちらの関連記事では、採用分野での「DX」について必要性や役立つツールを紹介しています
採用領域におけるDXの現状と役に立つ支援ツールをご紹介

リスキリング

リスキリングとは、既存の従業員に新しいスキルを習得させることで、特にDX人材を確保するうえで効果的だと言えます。
デジタル技術は日々進歩しており、少し前まで一般的だった知識や技術が気付けば時代遅れになっていることがあります。そういったとき、新たな人材を採用しようと思えば時間もコストもかかりますが、既存従業員にリスキリングの機会を提供して育てることができれば、人材不足の解消とともに、本人のキャリアを広げることにもつながります。

【リスキリングのメリット】

  • 従業員の能力向上
  • 新たな人材採用コストの削減
  • 従業員のモチベーション向上
  • 企業の競争力強化

働き方の多様性の確保

人材の多様化が進んでいる中、正社員やアルバイトといった雇用形態に関係なくさまざまなタイプの人材を受け入れる土壌をつくることが、人材確保につながります。
ここでは「女性」「シニア層」「外国人」の3つの採用対象に分けて、職場で実施できる取り組みについて紹介します。

女性

女性の活躍推進は、人材不足解消の大きな可能性を秘めています。
出産や育児をはじめとしたライフイベントも考慮して、女性がキャリアを継続できる仕組みをつくることがポイントです。

【女性の採用・定着のための取り組み】

  • 育児・介護との両立支援
  • 管理職への登用促進
  • 職場環境の改善
  • キャリア形成支援 など

シニア層

高齢者の就労促進も人手不足対策として注目されています。
長年のキャリアから得た知見やスキルを生かしてもらうことが企業成長の助けとなるでしょう。
シニア層に活躍してもらうには体力面をカバーするために職場環境を整えることが重要で、製造業界でいうと「パワーアシストスーツの活用」や「ロボットの導入」などが一例です。

【シニア層の採用・定着のための取り組み】

  • 定年延長や再雇用制度の導入
  • 短時間勤務やフレックスタイム制の導入
  • 高齢者向け職場環境の整備(特に体力面)
  • シニア向け研修プログラムの実施 など

外国人

少子高齢化が進んでいる日本において、今後はますます人材のグローバル化が進む可能性が高いと言えます。以下のような取り組みを実施して、優秀な外国人を採用することが人材不足解消につながります。

【外国人の採用・定着のための取り組み】

  • 在留資格の確認と適切な手続き
  • 多言語対応の職場環境整備
  • 文化の違いへの配慮
  • 日本語教育支援 など

※外国人雇用の具体的な手続きについて知りたい方はこちら
外国人雇用状況の届出とは? 届出書の書き方や提出方法、提出期限と3つの注意点

労働環境や労働条件の改善

ワークライフバランスを重視する若者が増えている近年、労働環境や労働条件の見直しが人材定着に直結することがあります。
労働者の目線に立ち、どんな制度があったらここで長く働きたいと思うかを考えることがポイントです。
効果的な取り組みの一例を下記にあげています。

  • 給与・福利厚生の改善
  • ワークライフバランスの推進
  • キャリアパスの明確化
  • 社内コミュニケーションの活性化
  • 健康経営の推進 など

採用ホームページの活用

人手不足を解決するための重要な手段の一つとして、採用ホームページの活用があります。

今は求職者が自ら情報をひろいにいける時代です。その多くは求人サイトなどで気になる企業を見つけたら、さらに詳しい情報を集めるために採用ホームページを閲覧します。
つまり「この企業が気になっている」という求職者を応募に向けて後押しするために、採用ホームページが必須だと言っても過言ではありません。

また、採用サイトをはじめとした求人広告には限られた情報しか掲載できませんが、採用ホームページには自社が載せたい情報を自由に掲載できます。そのため、余すことなく魅力を伝え、ミスマッチを防止するうえでも最適です。

※採用サイトの作り方について具体的に知りたい方はこちら
採用サイトの作り方完全ガイド!作成の流れや優秀な人材を確保するコツを解説

まとめ

人材不足の多くは自然に回復するものではなく、企業がなんらかの対策をとらない限り、今後ますます大きな問題になると予想できます。ぜひ、当記事でご紹介した施策を組み合わせながら自社にとって最適なアプローチを検討してみてください。

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この記事を書いた人
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コンノ

公務員として4年間、人事労務の実務経験あり。 これまで100名以上の事業者をインタビューしており、「企業や個人事業主が本当に悩んでいること」を解決できる記事を執筆します。

監修者
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辻 惠次郎

ネットオン創業期に入社後、現在は取締役CTOとしてマーケティングからプロダクトまでを統括。
通算約200社のデジタルマーケティングコンサルタントを経験。特に難しいとされる、飲食や介護の正社員の応募単価を5万円台から1万円台に下げる実績を作り出した。
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