介護業界の人手不足を解消するには?深刻化する原因や対策、事例をご紹介

介護士とご婦人が笑っている写真

近年、介護業界の人手不足が深刻です。
介護業界の有効求人倍率は全業種の平均と比べて高く、加えて定着率も低いので、多くの施設が頭を抱えています。

介護業界の採用状況を改善するためにはどうしたら良いのでしょうか。今回は介護業界が抱える採用課題と、その解決方法についてお伝えします。

介護業界の人手不足の実態

厚生労働省がまとめる第8期介護保険事業計画によると、介護職員の必要数は2023年度に約233万人、2025年度には約243万人です。この数値を達成するには、毎年約5万人の増員が必要になります。

しかし、2021年度時点での介護職員数は214.9万人。しかも令和元年度から令和3年度の2年間で約4万人しか増えておらず、現時点で必要数を確保するのは難しいことが見込まれます。

(出典:介護人財確保に向けた取組|厚生労働省

地方と都市部の人手不足の差

次に、地方と都市部の人手不足の傾向について紹介します。

下記は平成30年時点のものではありますが、各都道府県の有効求人倍率がまとめられた表です。

【地域別の介護職の有効求人倍率(平成30年8月)】

(出典:介護人材の処遇改善について|厚生労働省

有効求人倍率がもっとも高いのは、東京都の有効求人倍率6.97倍。これは、1人の求職者を約7つの事業所が争っていることを意味します。他にも、愛知県6.49倍、大阪府5.01倍など、介護職の人材確保に悩んでいるエリアは都市部に多い傾向です。

とはいえ、全国的に見ても2倍を切っている都道府県はなく、すべてのエリアで人手が足りていないことが分かります。

介護を必要とする高齢者の人口は都市部で増加傾向に

下記は高齢社会白書より、都市の規模別に2045年までの推移予測がまとめられた表です。

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(出典:令和3年版高齢社会白書(全体版)高齢化の状況|内閣府

今後、65歳以上の人口は大きな都市ほど増加する傾向にあります。規模が小さい都市ではすでに65歳以上の人口が増えきっており、今後は横ばいか減少の動きになるとみられています。

労働人口は限られているため、ただ人手を増やすだけでは拡大するニーズに対応できません。「限られた人材で業務をこなすための工夫」と「人材確保」の両輪で対応策を考えることが大切です。

なぜ介護業界は採用が難しいのか?その原因

介護業界で新規の人材を採用するのが困難な理由はなんでしょうか。ボトルネックとなっている要因を探りました。

3K職場のイメージ

多くの人は、介護業界に対して、きつい、汚い、危険の3拍子そろった3K職場のイメージを持っています。きついと汚いに関しては三大介護といわれる「入浴介助・食事介助・排泄介助」が当てはまり、介護職として現場に臨む上で避けては通れません。

また、介護中に介護者が腰を痛めたり、認知症の被介護者に傷つけられる可能性があるなど危険も伴います。もちろん、被介護者の転倒や迷子、容体急変などの危険な場面に遭遇することもあります。

こういった業務のハードルの高さで人手が足りないにも関わらず、なかなか応募が集まりません。

人間関係に問題がある

介護現場の人間関係に悩む人は少なくありません。

令和4年度 介護労働実態調査結果によると、介護仕事の離職理由について、「職場の人間関係に問題があったため」と回答した人は、男性が29.6%、女性が26.9%。全体で27.5%であり、数ある退職理由の中でトップの数値です。
(出典:令和4年度 介護労働実態調査結果について|公益財団法人 介護労働安定センター

視点を変えると、人間関係が良い職場は多くの求職者にとって魅力的だと言えるでしょう。介護の仕事はスタッフ同士の密な連携が必須であるため、良好なコミュニケーションが定着のカギになりそうです。

他業種に比べて低賃金

介護職の給与はその過酷な労働内容の割に非常に安いことは周知の事実です。

平成30年の厚生労働省の調査では、介護職の給与が初の平均30万円越えをしたことが明らかになりましたが、実際のところは賞与や一時金を含めた金額からの算出のため、月給30万円が支給される介護職員は少ないでしょう。

年齢による昇給などもあまり期待できない業界のため、40代でも50代でも20万円前半での雇用スタートとなる企業も多いです。

直接雇用されることのメリットが少ない

介護現場で長期にわたって活躍し、介護福祉士などの資格を取得している介護職は重宝されますが、スキルの高い介護士の多くは派遣会社を通しての就労を選ぶ傾向にあります。

圧倒的に人員が不足しているため、派遣介護士を必要とする現場がなくなる可能性が低いことと、直雇用で働くよりも倍近くの手取りになることもあるからです。

直雇用を経験し現場での人間関係にうんざりするケースもあり、派遣会社を通した方が気が楽と感じる介護士も少なくありません。

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なぜ介護業界は人材が定着しないのか

次に入社してもすぐやめる人材が多い理由を見ていきます。厚生労働省の「令和3年介護労働実態調査」によると離職者の約59%が3年未満でやめており、そのうち35%近くが1年未満で離職しています。せっかく入職したのに定着しないため、増員のハードルが非常に高いのが現実です。

介護業務にミスマッチの人材が入職している

介護業界では、その人手不足から来るもの拒まず採用するといった施設もあります。職歴や学歴等一切不問のため、一般的な採用市場では選考を通過できない人材でも入社できる可能性が非常に高いです。

しかし、「なんでもいいから職につければいい」という人材は前段で述べたような厳しい労働条件をよく理解していないケースも多く見受けられます。

「実際に現場に入ったら排泄介助が生理的に難しかった」「高齢者や障がい者に対して不適切な振る舞いを行なった」など適性やモラルの問題で継続して勤務が不可能な人材も、未経験採用の場合には多くの割合で存在します。

こういった層は早期退職につながってしまうミスマッチの人材です。

入社前のイメージと違った

その過酷なイメージを払拭するために、実際の現場とはかけ離れた理想的な文言や写真、業務内容を脚色して募集をかける施設も存在します。しかし、これでは長期的には良い結果を生みません。

また、募集をかける人事や事務方の担当が現場の状況をよくわかっておらず実態に即さない採用活動を行なってしまうケースも多く、これも早期離職につながります。

割りに合わないと感じる賃金

そして最大の問題はやはり賃金です。介護職としての適性があり長期的に働きたいと思っても、ほとんど昇給に期待できずステップアップのチャンスも薄い職場では能力が高い介護職員ほど離職しやすくなります。

職員のスキルアップのために、資格取得や外部の研修受講を奨励し、費用は施設が負担するケースは非常に多いです。しかし、休日や業務時間外に講習のための時間を割き、それでどの程度昇格・昇給が期待できるのかを考えると、割には合わないと感じるかもしれません。

長期勤続しても大幅な昇給はほとんど期待できないため、能力がある介護士は賃金が高い介護施設やマネージャー職での採用を目指して離職します。また他の業界で働ける能力がある場合は、業界自体を離れてしまうことも多くなってきました。

人手不足の課題解決にむけて取り組む7つポイント

ここまで介護業界の人材難に対する内容が続きましたが、それだけ人材確保が難しい状況だということです。少しでも採用率・定着率を上げるために、何ができるのか考えてみましょう。

応募者には事前に業務内容を明確に伝える

まず、離職率が高い原因であるミスマッチを防ぐために、選考時に業務内容をしっかり理解してもらうことが大切です。

特に事前に介護職員初任者研修を受講していない未経験者の場合、「食事介助・入浴介助・排泄介助」といった三大介護についても理解していない可能性が高いので、そこに対する生理的な嫌悪感がないかなども確認が必要です。

また、チームで動くためコミュニケーションが苦手な人も向いていません。

要介護度が比較的高い入居者が多い施設の場合、あまり外部に施設の内部を見せたがらないケースが多いですが、少なくとも採用候補者には現場を見学してもらうことは必要でしょう。施設によっては選考過程で1〜2日現場を体験してもらう制度を取り入れています。

現場の要望を考慮して採用活動を行う

施設によっては募集自体を本社一括で行なっていたり、事務所と現場が離れていることで、採用活動自体が現場での要望を全く考慮していないケースも多いです。人数の穴埋めすることだけが目標になっているため、採用後に現場でのミスマッチが発生し早期離職につながってしまいます。

募集前に現場の要望をヒアリングする、面接に現場の長が同席するなど、現場とのミスマッチをなくすための取り組みが必要です。

入社前・入社後の不安を徹底して取り除く

内定後の辞退や、入社後の早期離職には「漠然とした不安」も大きく影響しています。

特に未経験者の場合、ほとんどが「本当にやっていけるのだろうか」と感じており、体力やフォロー体制、上司や同僚とのコミュニケーション、現場の雰囲気など、「離職のスイッチ」が入る要因には事欠きません。

ですので、内定後・入社後はしっかりコミュニケーションをとり、不安を取り除き道を示してあげる取り組みが必要になります。

特に独り立ちするまでの研修の進め方は大変重要で、ベテランに任せる等の属人的な方法に頼っていると離職する危険性が高くなります。チームで研修を進めるノウハウを構築することが必要です。

表彰式などでモチベーションを上げる

賃金の問題は一朝一夕には解決できません。給料が上がり、昇給・昇格への道筋が明らかならば、長期勤務することのモチベーションになりますが、多くの施設でそれは期待できないでしょう。

そういった場合にモチベーションをあげる方法は職員を承認することです。成果をあげた職員、頑張った職員を表彰し、定性的な面を評価します。

介護現場で数字のような定量的な評価をすることは難しいですが、職員の頑張りを表彰という形で承認してあげることでモチベーションをあげることは可能です。

ITツールの導入で課題を見える化する

ITツールの導入による職場環境の改善も、人手不足を解決するための有効な手段です。
例えば、利用者情報を紙で管理している場合、介護支援システムを導入すればクラウド上での一元管理が可能となります。情報をリアルタイムで更新できるため、職場内でのコミュニケーションがスムーズになって、業務の効率化にもつながります。

また、採用時のマッチ度を高めたいのであれば、採用管理システムを活用するのも一つの手です。応募者管理を効率化しつつ、自社の魅力を十分に伝えられる求人作成が可能で、豊富なノウハウを持つ専門家にサポートしてもらえる場合もあります。

相談窓口を設ける

悩みを抱えた際に解決できる場として、社内あるいは施設内に相談窓口を設けることも重要です。外部の専門家に委託するか、社内で最適な人材を決めて必要なスキルを身に付けてもらいましょう。

相談窓口を設置するだけでなく、従業員に確実に周知することも大切です。
自社に相談窓口があることを知らない人が意外と多いため、担当者や連絡先など、利用に必要な情報とともに伝えましょう。

外国人採用も検討する

日本で仕事を探している外国人を採用する方法もあります。近年、介護・福祉の分野で外国人採用を図る企業が増えており、人手不足を解決するうえで有効な方法となっています。

ただし課題もあり、例えば、在留資格によっては在留期間が決められているため、将来的に帰国しなければならない場合があります。また、文化や価値観が異なるため、受け入れ体制をしっかりと整えて、お互いのことを尊重できる雰囲気を醸成することが必要です。

まとめ

介護業界の人手不足を解決するためには採用と定着両方の課題を解消する必要がありますが、こと早期退職に関しては採用時のアプローチによって軽減することができます。

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コンノ

公務員として4年間、人事労務の実務経験あり。 これまで100名以上の事業者をインタビューしており、「企業や個人事業主が本当に悩んでいること」を解決できる記事を執筆します。

監修者
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辻 惠次郎

ネットオン創業期に入社後、現在は取締役CTOとしてマーケティングからプロダクトまでを統括。
通算約200社のデジタルマーケティングコンサルタントを経験。特に難しいとされる、飲食や介護の正社員の応募単価を5万円台から1万円台に下げる実績を作り出した。
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