中小企業の54.2%が賃上げを実施予定。賃上げ率は「2〜3%未満」が最多|<2022年度>中小企業の賃上げ実態調査

令和4年度税制改正法案が成立し、賃上げに対する取り組みを支援する「賃上げ促進税制(賃上げ税制)」の施行が決定しました。
中小企業向けの要件は従来の制度よりも緩和され、さらに賃上げのための取り組みに応じた控除率が最大40%へと引き上げられます。

今回の税制改正では、中小企業の賃上げを強力に後押しすることが期待されていますが、長期化する新型コロナウイルスの影響により、未だに経営状況の見通しが絶たない中小企業が少なくないことも事実です。こうした状況の中、賃上げ対応における中小企業の動向が注目されています。

そこで、採用業務クラウド「採用係長」の登録ユーザーである中小企業の採用担当者を対象に、2022年度の賃上げ予定に関するアンケート調査を実施しました。

株式会社ネットオンでは、2021年12月にも賃金に関するアンケート調査を実施しています。今回の税制改正を受け、中小企業の対応には変化がみられるのでしょうか。
中小企業の賃上げ予定や賃上げ率、賃上げの有無に関するそれぞれの理由について、アンケート結果をもとに紹介します。

54.2%の事業所が賃上げを「実施予定」

はじめに2022年度の賃上げ予定について質問したところ(n=192)、54.2%の事業所が「実施予定」と回答。賃上げを予定している事業所が、賃上げしない事業所を上回ることが明らかになりました。

Q1.2022年度に賃上げ(賞与等の一時的な賃金も含む)を実施する予定はありますか?

円グラフ(Q1.2022年度に賃上げ(賞与等の一時的な賃金も含む)を実施する予定はありますか?)

また賃上げを予定している事業所(n=104)のうち、「賃上げ税制の要件に関わらず実施する」事業所は63.5%に上っています。

業種ごとの賃上げ対応については、以下のような違いが見られました(回答が10事業所以上あった業種のみをグラフ化しています)。
グラフ(業種別賃上げ予定)

「介護業」では、80.0%が賃上げを予定。また「建築・不動産業」「工場・製造業」においても、賃上げを予定している事業所が70%を超えています。

反対に「運輸業」では、30%を下回りました。業種間の対応差が鮮明になっています。

賃上げ内容は、1位「定期昇給」2位「ベースアップ」

次に賃上げ予定の事業所へ、賃上げ内容について質問しました(n=104)。もっとも多かった回答は、60.6%の「定期昇給」です。2位は「ベースアップ」で、39.4%でした。
一時的な賃上げよりも、従業員にとって長期的な安定につながる賃上げを優先した事業所が多い結果となりました。

Q2.賃上げの内容は何ですか?(複数回答)

グラフ(Q2.賃上げの内容は何ですか?)

さらに「定期昇給」と「ベースアップ」の実施予定について、賃上げの実施方法(賃上げ税制の要件に合わせて実施/関わらず実施)別に確認してみましょう。

グラフ(実施方法別賃上げ内容)

賃上げ内容の割合には、大きな差は見られません。いずれも20%近い事業所が「定期昇給」と「ベースアップ」の両方を実施する予定であることが分かりました。

また「一時的な賃金(賞与など)の増額」や「その他」を含め、2つ以上の賃上げを予定している事業所は24.0%です。
グラフ(賃上げ実施予定件数)

賃上げ率は「2~3%未満」が最多

賃上げ率についての質問では、「2~3%未満」がもっとも多く、次に「4~5%未満」、さらに1ポイント差で「5~10%未満」が続きました。

Q3.賃上げ率を年収換算ベースでお答えください

グラフ(Q3.賃上げ率を年収換算ベースでお答えください)
「2~3%未満」が1位であった点からは、多くの企業が中小企業における“30%税額控除”の適用要件(※)とされる、“前年度比で2.5%以上の増加”を踏まえて賃上げ率を検討したことがうかがえます。

一方で「4%以上」の賃上げを予定している事業所は、全体の40%に迫りました。中小企業の賃上げに対する積極性を感じられる結果ともいえるでしょう。

経済産業省「賃上げ促進税制」パンフレット(PDF)

賃上げの対象は「正規雇用・非正規雇用の両方」が半数以上

賃上げの対象となる従業員の雇用形態について質問したところ(n=104)、57.7%の事業所が「正規雇用・非正規雇用の両方」と回答。雇用形態に関係なく賃上げを実施する事業所が半数以上を占めました。

Q4.賃上げを実施する雇用形態を教えてください

円グラフ(Q4.賃上げを実施する雇用形態を教えてください)

賃上げ理由1位は「従業員の定着率向上(引き留め)のため」

賃上げ理由の1位は「従業員の定着率向上(引き留め)のため」で、54.8%が回答しています(n=104)。2位は「人材採用のため」、3位には「業界の給与水準に合わせるため」が続き、人材確保に関わる回答が上位に並びました。

Q5.賃上げを実施する理由を教えてください(複数回答)

グラフ(賃上げを実施する理由を教えてください)
一方、「業績が伸びた(回復した)ため」は21.2%、「賃上げ促進税制による税額控除を受けるため」は、9.6%です。

この結果からは、賃上げの状況が整っているかどうかに関わらず、その必要性から賃上げを行うことが分かります。人材確保の厳しさの現れともいえるのではないでしょうか。

賃上げをしない理由は「現在の賃金が適切であるため」が最多

賃上げを実施しない事業所に対しても、その理由について質問しました(n=88)。もっとも多かった理由は、「現在の賃金が適切であるため」で、賃上げを実施しない事業所の約半数が回答しています。

一方、2位以下には「景気回復の見通しが立っていない」「業績の悪化」「人件費以外の経費を優先する(した)」が続いており、現在の業績や今後の見通しが賃上げ実施の有無に影響していることが見て取れます。

Q6.賃上げを実施しない理由を教えてください(複数回答)

グラフ(Q6.賃上げを実施しない理由を教えてください)

まとめ

令和4年度税制改正法案の成立にともなう「賃上げ税制」の施行を受け、賃上げに関するアンケート調査を実施しました。その結果、54.2%の事業所が賃上げを予定していることが明らかになりました。賃上げ理由は、上位3つがいずれも人材確保に関する内容です。賃上げ内容については、一時的な賃上げよりも「ベースアップ」や「定期昇給」が多く、24.0%は2つ以上の賃上げを予定。さらに「4%以上」の賃上げを行う事業所が39.4%に上るなど、賃上げに対する積極性を感じられる結果となっています。

一方で、「賃上げを実施しない」事業所は全体の45.8%を占めました。そのうち半数以上が「現在の賃金が適切である」ことを理由としており、賃上げに慎重な中小企業の姿勢も浮き彫りになっています。

株式会社ネットオンが2021年12月に実施した賃金に関する調査では、「賃上げ済み」または「賃上げ予定」の事業所が59.6%でした。また半数以上の事業所が挙げた理由は、人材確保に関わる内容です。中小企業にとって人材確保が重要課題であり、その対策として賃上げが必要な状況であることは、前回の調査時と変わりありません。

ただし、賃上げ予定の事業所のうち、20%近くが「賃上げ税制の要件に合わせて賃上げを実施」と回答しており、この点からは今回の法案の成立が賃上げ実施を後押ししたとみることもできるのではないでしょうか。

賃上げを含め、従業員の採用や定着に向けた取り組みの重要性は、今後もさらに高まっていくはずです。株式会社ネットオンは、そうした中小企業の取り組みをサポートし、採用業務クラウド『採用係長』の提供を通じて採用課題の解決に貢献してまいります。

調査概要

調査名 2022年度の賃上げ予定に関するアンケート調査
調査対象 『採用係長』利用事業所の人事・労務担当者様
有効回答数 192
調査期間 2022年3月18日(金)~3月24日(木)
調査方法 インターネット調査
調査結果の注意点 %を表示する際に小数点第2位で四捨五入しているため、単一回答の場合は100%、複数回答の場合は合計値に一致しない場合があります。

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この記事を書いた人
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馬嶋 亜衣子(samusillee)

採用・キャリア関連、医療分野を中心に執筆を行うフリーランスライター。 各種メディアの取材ライティングやSEOライティング、採用HPのライティングなどに携わっています。

監修者
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辻 惠次郎

ネットオン創業期に入社後、現在は取締役CTOとしてマーケティングからプロダクトまでを統括。
通算約200社のデジタルマーケティングコンサルタントを経験。特に難しいとされる、飲食や介護の正社員の応募単価を5万円台から1万円台に下げる実績を作り出した。
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