ATS(採用管理システム)とは?機能とメリット・デメリット、導入費用まで解説

当記事では、ATS(採用管理システム)について、概要や主な機能、利用するメリット・デメリットなど、導入を検討する際に知っておきたい情報をまとめています。

ATSとは、採用活動における一連の業務を効率化できるシステムです。
採用活動では、求人作成や応募者管理、面接、内定者フォローとさまざまな業務が発生します。
近年は求人媒体や採用手法が多様化していることもあり、採用活動における業務の煩雑化に悩んでいる企業・飲食店は多いのではないでしょうか。

ATSを使うと、具体的に業務がどのように効率化するのかについて、実際にATSを選ぶ際の注意点も交えて解説しているので、ATSの導入を少しでも検討している企業・飲食店は、ぜひ当記事をお役立てください。

ATS(採用管理システム)とは?

ATSは、採用活動において発生する業務を一元的に管理できるシステムのことで、日本語では「採用管理システム」です。

下記3つの言葉の頭文字から、「ATS」と呼ばれています。

・Applicant(応募者)
・Tracking(追跡)
・System(システム)

ATSを利用すれば、煩雑化しやすい採用業務を仕組み化でき、多様な悩みを解決できます。

ATS(採用管理システム)を利用するのに向いているユーザー

ATSの利用が向いているユーザーは「企業の人事部門」と「人材派遣会社の職員」の大きく2つに分類されます。

企業の人事部門

採用業務を担う企業の人事部門は、ATSの中心的なユーザーです。
自社の採用業務を効率化させれば、限られた人員でも高い生産性を発揮できるようになり、組織としての採用力がアップします。
結果的に、自社が求める人材の獲得につながります。

人材派遣会社の職員

企業のニーズを踏まえて最適な人材を派遣する人材派遣会社の職員も、ATSの利用が向いているユーザーです。
人材派遣会社では、複数の求職者を同時に管理し、なおかつ人材の持つスキルや経験も正確に把握する必要があります。
ATSにより人材の情報を一元的に管理できるようになれば、日々の業務が効率化します。

ATS(採用管理システム)で可能になること

ATSを利用すれば、下記のように多くの業務が可能となります。

・求人の作成・運用
・求人の一元管理、応募者とのコミュニケーション・日程調整
・応募者情報の一元管理
・選考状況の一元管理
・内定者情報の一元管理

応募から採用、さらには内定後のフォローまで、ひとつのATSで管理することが可能です。

ATS(採用管理システム)が有する機能

ATSには、主に下記5つの基本機能が搭載されています。

求人の編集・公開機能

ATS上では、求人の作成や公開、編集など、求人運用にかかる一連の操作が可能です。
導入するATSによっては、Indeed求人ボックスといった求人媒体との一括連携もできます。

ATSを導入しない場合、自分たちで自社採用サイトを作成したり、料金を払って求人媒体に掲載したり、労力やコスト面での負担が大きくなります。
ATSの中には、ボタン1つで複数の求人媒体に求人を同時掲載できる製品もあるので、負担を大幅に抑えることが可能です。

採用候補者の管理機能・進捗管理機能

採用候補者の管理機能・進捗管理機能は、ATSを代表する機能の1つです。
応募から採用に至るまで、採用候補者の情報を端末ひとつで管理できるようになります。

多くの人事担当者にとって最も日常的に使用する機能になるため、「使いやすさ」が大切です。
可能であれば、事前に操作性や画面デザインを確認した上で、長期的に利用できるかどうかを判断しましょう。

データインポート機能

採用活動のデータをすべて手打ちで入力しようとすると、時間と手間がかかるため、ほとんどのATSにはデータインポート機能が搭載されています。
例えば、複数の求人媒体に求人を掲載している場合でも、データインポート機能を使えば、ATS上の簡単な操作で、各媒体の募集状況を一括取り込みできます。

コミュニケーション機能

データを管理するだけでなく、採用候補者とのメールのやり取りもATS上で行えるようになります。
採用活動期間中は、多くの求職者とやり取りするため、メールの見落としや返信漏れが起こることが珍しくありません。
コミュニケーションツールとしても十分に活用するには、対応済み・未対応のメールが分かりやすく表示される仕様のATSがおすすめです。

ATS(採用管理システム)が注目されている背景

ATSが近年注目されている大きな要因が、少子高齢化による採用競争の激化です。
数年前までは、1人あたりの求職者に対して求人数が少なく、企業が求職者を選べる構図になっていましたが、最近は求職者に対する求人数が多く、売り手市場の傾向になっています。

応募者を待つ「守り」の採用活動では、他の企業に採用競争をリードされるため、企業からアプローチをかける「攻め」の採用活動が求められています。
攻めの採用を実施するには、ノンコア業務をできるだけ効率化させ、採用戦略の立案や面接など、重要な業務に集中できる体制を整えることが重要です。

ATS(採用管理システム)を導入するメリット

ATSを導入すると、企業に多くのメリットがもたらされます。
特に大きなメリットは、下記の5つです。

採用活動を効率化できる

属人化されていた業務が一元管理できるようになり、採用業務が効率化します。
採用活動では、採用計画の立案から始まり、募集や面接、入社後のフォローまで、数か月にわたりさまざまな業務を行います。

そのため、採用活動を効率化できれば時間や人員の余裕が生まれ、本来重視したい業務に集中できるようになります。
結果として、採用活動にとどまらず、人事部門全体の生産性がアップするでしょう。

社内での情報共有がスムーズになる

チーム内での情報共有がスムーズになることもメリットの1つです。
例えば、応募者と面接の日程調整が完了したら、ATSにすぐ入力すればリアルタイムでチームメンバーへと共有でき、認識のズレや遅れがなくなります。
特に近年は、リモートでの面接も増えているので、メンバーが離れた場所にいても採用を効率的に進める上で重要な機能です。

ヒューマンエラーを防止できる

採用活動では、応募者の個人情報や面接日をはじめ、さまざまなデータを取り扱うので、手動で管理しようとすると、どうしてもヒューマンエラーが発生しやすくなります。
ATSを活用すれば、応募者の情報が自動的にシステムへ反映されるため、ヒューマンエラーの防止が可能です。
手動で入力した際などにもしヒューマンエラーが発生しても、一元管理されていることで、周囲がフォローしやすくなります。

採用コストを抑えられる

ATSの導入や利用には一定のコストがかかるものの、多くの場合、将来的に採用コストが抑えられます。
例えば、転職希望者専用の求人サイトに求人を掲載する際、媒体によっては1か月あたり数十万円の掲載料金が発生しますが、ATSで自社採用サイトを作れば、求人サイトを利用する必要がなくなるかもしれません。
他には、業務が効率化するため、採用活動にかかる人件費も抑えられます。

採用活動を分析して今後に生かせる

採用活動の結果を分析し、ノウハウとして蓄積することも可能です。
例を挙げると、どのような経路で応募につながっているのかを分析できれば、流入数が多い経路の求人を強化することで、さらに応募者を増やせます。
自社に応募する人材の傾向が分かれば、採用計画や面接官の対応改善に生かせるでしょう。
ノウハウがどんどん蓄積されれば、自社の採用力の底上げにもなります。

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ATS(採用管理システム)を導入するデメリット

ATSの導入にはデメリットもあるため、メリットとどちらが大きいかを考えながら、導入を検討することが重要です。

導入・運用に費用がかかる

導入・運用にあたっては、一定の費用がかかります。
長期的に見るとコストパフォーマンスが上回るケースは多いものの、直近の支出をなるべく抑えたい場合は、費用面が導入の障害となりやすいでしょう。

導入費用や利用料金は、ATSによって異なります。
費用面の負担を軽くしたい企業は、製品ホームページや問い合わせなどで料金をよく確認した上で、導入を検討することがおすすめです。

使い方に慣れるまで時間が必要

操作方法はATSによって異なるため、多くの場合、自社の従業員が慣れるまでに一定の時間を必要とします。
特に、これまで外部のツールを使用してこなかった企業や飲食店は、スムーズに浸透するかどうか不安が大きいはずです。

慣れるまでの時間を短縮させたい場合や、そもそも正しく導入できるか不安な場合は、サポートが充実しているATSを選ぶとよいでしょう。
検討段階で実際に問い合わせてみて、対応の手厚さや心地よさなどもチェックしてください。

ATS(採用管理システム)の種類

ATSは「クラウド型」と「オンプレミス型」の2種類に分けられるため、どちらが自社に合うのかを検討する必要があります。
それぞれの概要やメリット・デメリットなどを解説します。

クラウド型

クラウド型とは、インターネット上で利用する形態のことです。
サービスの導入もインターネット上で行うので、サーバーの設置は必要ありません。

クラウド型のメリットは、導入をオンラインで進められるため料金が安価に設定されている製品が多く、スムーズに利用を開始できる点です。
一方で、十分なセキュリティ対策が講じられていないと、情報漏えいなどのトラブルに発展する可能性があります。
会社ごとに対策をするか、セキュリティが強固な製品を選ぶ必要があります。

オンプレミス型

オンプレミス型は、ソフトウェアを購入した上で、自社のサーバーにインストールする形態を指します。

メリットは、基本的に自社で管理するため、セキュリティ面でのトラブルが少ない点です。
デメリットとしては、初期費用が高くなりやすい点や、Webサーバーなどのインフラ整備が必要であるため導入までに時間がかかる点が挙げられます

ATS(採用管理システム)の雇用形態別の種類

ATSを導入する際には、雇用形態に合わせた製品を選ぶことが重要です。
ここでは、雇用形態別に、どのような特徴を持つATSがおすすめかを紹介します。

採用業務全般管理型

採用業務全般に活用する場合は、年間でどの程度の人数を採用するかに応じて、優先する機能を検討するとよいでしょう。
例えば、年間を通して数名程度しか採用しないのであれば、コミュニケーション機能よりも、求人作成や他求人媒体との連携性などの「集客力」を重視したほうがよいと言えます。

新卒採用特化型

新卒採用は、数種類ある採用活動の中でも、最も多くの求職者とコミュニケーションを取るため、「やり取りのしやすさ」に長けているATSがおすすめです。
加えて、応募者の管理画面が見やすく、情報をすぐに把握できるかどうかも重視しましょう。

アルバイト採用特化型

アルバイトの採用は、新卒採用のように一律でスケジュールを組むわけではなく、募集があった人から順に面接を行うことが一般的です。
募集状況をすぐに更新できるよう、求人の編集が手軽に行えるATSがおすすめです。

リファラル採用特化型

リファラル採用の場合は、自社従業員の紹介から採用活動を始めるので、求人管理の機能は重視する必要がありません。
自社に合う人材かどうかを客観的に見極める必要があるので、社内でスムーズに情報共有できるATSを選ぶとよいでしょう。

ATS(採用管理システム)を導入するときの注意点

ATSを導入する際には、下記の2点を押さえて製品を選ぶことが大切です。

現在利用しているサービスとの連携が可能か

ひとつめの注意点は、現在利用しているサービスとの連携性を確認した上で製品を選ぶことです。
すでに何らかの求人媒体を利用しているのであれば、連携可能なATSを選ぶと応募者の管理が一元化します。
slackなどの社内で使っているコミュニケーションツールと連携できるATSを選べば、採用活動中の情報共有がより円滑になるでしょう。

サポートの内容を確認する

どんなに使いやすいATSを選んでも、日々使用する中で、使い方が分からない場面が出てくるはずです。
疑問や悩みをすぐ解決できるよう、サポートの内容も確認しておきましょう。

例えば、外部ツールの使用に慣れていない企業や飲食店であれば、導入時から手厚いサポートがあり、かつすぐに相談できる窓口のあるATSがおすすめです。
自分たちで解決しながら使いたい場合は、マニュアルや操作ページの充実度を確認するとよいでしょう。

ATS(採用管理システム)を導入するときにかかる費用

ATSの導入にあたってかかる費用は、0円~数万円とさまざまで、企業の使用方法に合わせて導入費用が設定される場合もあります。
一律での金額は明確にできませんが、多くの製品は10万円以内で導入可能です。
なお、中にはお試し無料期間を設けているATSもあるので、無料期間に操作性を確認した上で、自社に合っているかどうかを判断するとよいでしょう。

導入後の月額料金も、金額設定はATSごとに異なっており、数千円の製品から10万円を超えるような製品もあります。
操作性や搭載機能など他の要素も踏まえながらコストパフォーマンスを判断し、自社にとって最適なATSを導入してください。

まとめ

ATSは、採用業務を一元的に管理できるシステムのことで、日本語では「採用管理システム」と呼ばれます。
「求人の編集・公開機能」「採用候補者の管理機能・進捗管理機能」などのさまざまな機能が搭載されており、業務効率化や採用コストの節約といった、多くのメリットをもたらします。

ATSの導入が自社にとって最適かどうかは、企業・飲食店ごとの判断が必要ですが、採用競争が激化している近年、優秀な人材を確保するために効果的なケースは多いはずです。

中には安価で導入できるATSもあるため、ぜひ当記事の内容を参考に、自社での導入を検討してみてください。

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この記事を書いた人
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コンノ

公務員として4年間、人事労務の実務経験あり。 これまで100名以上の事業者をインタビューしており、「企業や個人事業主が本当に悩んでいること」を解決できる記事を執筆します。

監修者
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辻 惠次郎

ネットオン創業期に入社後、現在は取締役CTOとしてマーケティングからプロダクトまでを統括。
通算約200社のデジタルマーケティングコンサルタントを経験。特に難しいとされる、飲食や介護の正社員の応募単価を5万円台から1万円台に下げる実績を作り出した。
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