68.8%が評価シートなどを「利用していない」。“面接官任せ”が適材確保の障壁に|中小企業の面接に関する実態調査

中小企業の面接に関する実態調査

人材採用を行ううえで、「面接」は非常に重要なプロセスです。そのため面接の事前準備や応募者フォローなど、採用担当者には採用成功の確率を高めるためにすべき業務が数多くあります。
ところが中小企業では、採用担当者が他の業務を兼務していることが珍しくありません。そうした多忙な状況において、中小企業の採用担当者はどのように面接業務に取り組んでいるのでしょうか。

株式会社ネットオンでは面接に関わる業務について、採用業務クラウド「採用係長」の登録ユーザーである中小企業の採用担当者を対象にアンケート調査を実施しました。

今回は「面接前(事前準備)」「面接時(面接直前と実施時)」「面接後(合否通知と内定後の対応)」の各フェーズに分けて、3回のアンケートを実施。本記事では、それぞれのアンケート結果とともに、そこからみえてきた中小企業における面接業務の実態と課題をお伝えします。

目次

1.面接前(事前準備)に関する調査/n=298

【結果概要】

  • 応募書類を確認し、事前に質問内容を考えている事業所は59.1%
  • 履歴書・職務経歴書の提出は「紙」が約6割。そのうちデータ化して管理している事業所は3割未満
  • 日程調整は「電話」が46.6%、「メールまたはメッセージ」も同率の46.6%

面接の事前準備は、より良い人材採用を行ううえで重要。ところが、中小企業の約4割は事前準備を行えていませんでした。
また書類管理や連絡方法など、アナログな手法が採用担当者の業務負担を増大させていることがうかがえます。業務効率化を図るツールの導入など、改善の余地が十分にあるのではないでしょうか。

「面接前(事前準備)に関する調査」の結果詳細は、以下の通りです。

履歴書を面接の前に取得している事業所は、4割未満

1-Q1.履歴書・職務経歴書は事前に郵送、もしくはデータにて送付してもらっていますか?

書類の事前送付について質問したところ、「いいえ(=送付してもらっていない)」が65.8%を占めました。

面接の事前準備をしている事業所は6割未満

1-Q2.面接前に履歴書や職務経歴書を確認し、質問内容を考えていますか?

面接前に応募書類を確認するかどうかについて質問したところ、「はい(=確認している)」と回答した事業所は59.1%でした。中小企業の約4割が面接の事前準備を行っていないことが明らかになっています。

履歴書と職務経歴書の提出方法は「紙」が過半数に

1-Q3.履歴書や職務経歴書はどのように提出してもらっていますか?

応募書類の提出方法についての質問では、「紙」と回答した事業所が57.4%に上っています。
一方で、14.1%は「提出は不要」としていることも分かりました。

応募書類を紙で受け取る事業所の72.8%がデータ保管をしていない

1-Q4.紙の履歴書・職務経歴書はデータ化して保管していますか?

1-Q3で応募書類の提出方法を「紙」または「紙かデータのいずれか」と回答した事業所(n=232)へ、保管の際にデータ化しているかどうかについて質問したところ、72.8%が「いいえ(=データ化していない)」と回答しました。

面接日程の調整は、「メールやメッセージ」と「電話」が同率でトップに

1-Q5.面接の日程調整はどのように行っていますか?

日程調整方法についての質問では、「メールやメッセージ」と「電話」が同率の46.6%でした。中小企業の大半がどちらかの方法で日程調整を行っていることが分かります。

1.面接前(事前準備)に関する調査
調査期間 2023年4月1日~4月30日
有効回答数 298

2.面接時(面接直前と実施時)に関する調査/n=205

【結果概要】

  • 面接の記録に「PC、スマホ、タブレット端末」を使用しているのは、「ノートやメモ用紙」の半数程度
  • 面接前の確認連絡は44.9%が「行っていない」。「電話」で事前連絡を行う事業所は20%以上
  • 面接時に評価シート・チェックシートを使用しない事業所が68.8%。さらに面接官が複数名いる事業所(全体の43.9%)のうち、43.3%は「評価にバラつきがある」と回答

面接の記録方法や評価方法など、面接が属人化している中小企業が少なくないことが読み取れる結果となりました。
また面接前の確認連絡を行っていない事業所が多く、中小企業の面接課題で多い「ドタキャン問題」にはこうした背景もあると考えられます。

「面接時(面接直前と実施時)に関する調査」の結果詳細は、以下の通りです。

面接の記録は、過半数が「紙やペン」を使用

2-Q1.面接時、内容を記録するために使っているものを教えてください

面接内容の記録方法について質問したところ、「ノートやメモ用紙などの紙とペン」と回答した事業所が58.5%に上りました。「PCやスマホ、タブレットなどの端末」は3割程度に留まっています。

68.8%が面接時に評価シートなどを「利用していない」

2-Q2.面接時、評価シートやチェックシートを利用していますか?

面接を評価するためのチェックシートを利用しているかどうかについて質問したところ、「はい(=利用している)」と回答した事業所は31.2%に留まりました。「利用していない」事業所が7割に迫っています。

71.9%が自社独自の評価シート・チェックシートを作成している

2-Q3.どのような評価シートやチェックシートを利用していますか?

2-Q2で評価シート等を「利用している」と回答した事業所へ(n=64)、評価シートについて質問したところ、「独自で作成したもの」を利用している事業所が71.9%に上っています。
また1割程度は、面接用のシステムやツールを利用していることも分かりました。

面接前の確認連絡は、「メール」または「電話」が中心。「行っていない」も40%以上に

2-Q4.面接前に応募者へ面接に関する確認の連絡をしていますか?

面接前の確認連絡について質問したところ、「メールをする」が31.7%、「電話をする」が23.4%でした。
過半数が事前連絡を行っている一方で、44.9%は「行っていない」ことが明らかになっています。

約2割の事業所が面接を2回以上実施している

2-Q5.面接は複数回行っていますか?

面接を複数回行っているか質問したところ、「はい(=複数回行っている)」と回答した事業所は20.5%。中小企業では、1回のみの面接が主流であることが分かります。

複数の面接官で面接を実施している事業所は43.9%。

2-Q6.面接官は複数名いますか?

面接官が複数名いるかどうかについて質問したところ、43.9%の事業所が「はい(=複数名いる)」と回答しました。
今回のアンケートでは、1人が面接を行っている事業所がわずかに上回る結果となっています。

複数の面接官がいる場合は、「評価にバラつきがある」と回答

2-Q7.面接官によって面接の評価にバラつきはありますか?

2-Q7で「はい(=面接官が複数名いる)」と回答した事業所へ(n=90)、評価のバラつきの有無について質問しました。その結果、56.7%の事業所が「いいえ(=バラつきはない)」と回答しました。
「いいえ」が過半数を占めてはいるものの、バラつきがある事業所は43.3%に上っており、面接における課題が浮き彫りになっています。

73.7%の事業が「評価ポイント」を明確に決めている

2-Q8.面接での評価ポイントは明確に決められていますか?

面接の評価ポイント(例:目を見て話せるかどうかなど)の有無についての質問では、73.7%が「はい(=評価ポイントを決めている)」と回答しました。
チェックシートの利用は3割程度に留まりましたが、評価ポイントについてはあらかじめ決めている事業所が多いことが分かります。

2.面接時(面接直前と実施時)に関する調査
調査期間 2023年4月1日~4月30日
有効回答数 205

3.面接後(合否通知と内定後の対応)に関する調査/n=183

【結果概要】

  • 面接後に合否に関して迷うことが「たまにある」または「とてもある」事業所が70.5%に。一方で複数人の合格者がいる場合には、77.0%が「選考の判断基準がある」と回答
  • 面接結果や内定通知は、いずれも「電話連絡」が最多。メールなど複数の連絡方法を併用する事業所も
  • 79.8%の事業所が面接内容や質問の改善を実施。多くの事業所が結果の振り返りを行っている

多くの事業所が面接後に合否を迷っていることが明らかになりました。2-Q2の結果(評価シートなどを「利用していない」が68.8%)からも読み取れるように、客観性のある評価を行う仕組みがないことにその原因があるといえます。
しかしそれだけでなく「面接できる人が少なく、不合格にしづらい」「悪くはないが、あと少し待てばもっと良い人材から応募があるかもしれない(ないかもしれない)」など、中小企業の採用選考ではそうした葛藤が生じている可能性も十分に考えられます。

「面接後(合否通知と内定後の対応)に関する調査」の結果詳細は、以下の通りです。

70.5%が面接後の合否判断に迷うことが「ある」と回答

3-Q1.面接後、合格か不合格かで迷うことはありますか?

面接後に合否について迷うことがあるかどうかについて質問したところ、「たまにある」事業所が50%を超えることが明らかになっています。
一方、「まったくない」事業所は、わずか6.6%でした。

複数の合格者から採用する人を選ぶ際の基準は「ある」が77.0%

3-Q2.複数人の面接合格者の中から採用を選考する際、選定基準や判断基準はありますか?

面接合格者が複数人いた場合に、人材選定の基準があるかどうかについて質問したところ、77.0%が「はい(=基準がある)」と回答しました。

面接結果の連絡は「電話」が最多。結果によって使い分ける事業所も同程度

3-Q3.面接の結果はどのように通知していますか?

面接結果の通知方法についての質問では、「電話をしている」がもっとも多く、僅差で「結果によって使い分けている」が続きました。
メールやメッセージのみでの連絡は20%未満に留まっています。

過去の面接実施者の情報をデータ管理している事業所は半数以下

3-Q4.過去面接を行ってきた応募者の情報をデータで管理していますか?

過去に面接を行った応募者の情報をデータ管理しているかどうかについて質問したところ、データ管理をしていない事業所のほうが多いことが分かりました。

79.8%が面接の内容や質問の改善を行っている

3-Q5.過去の面接結果から面接の質問や内容の改善を行っていますか?

過去の面接結果をもとに面接の内容や質問の改善を行っているかどうかについて質問したところ、79.8%が「はい(=改善している)」と回答しました。
面接をより良くしていくために、多くの事業所が前向きに工夫しているようです。

内定通知の方法は「電話」がトップに。「郵送」で実施する事業所も約1割

3-Q6.内定通知はどのように行っていますか?

内定通知の方法について質問したところ、もっとも多かったのは「電話で伝えている」です。
一方、約10%は郵送で送付していることも明らかになっています。

86.3%が内定者フォローツールを「利用したことがない」

3-Q7.内定者フォローのツールを利用していますか?または過去利用したことがありますか?

内定者フォローツールの利用経験について質問したところ、「はい(=利用している/利用経験がある)」と回答した事業所は、13.7%に留まりました。
採用人数が多く、内定者フォローに注力する新卒採用では、フォローツールがよく活用されています。現時点では、内定者フォローツールを必要としている事業所は多くないようです。

78.7%の事業所が内定者向けの課題を「出さない」

Q8.入社までの期間に内定者へ課題を出すことはありますか?

入社までの期間に内定者へ出す課題については、78.7%が「いいえ(=出さない)」と回答しています。
内定者への課題は新卒採用で実施することが一般的なため、中小企業では中途採用が多いことを示す結果とみることもできるのではないでしょうか。

3.面接後(合否通知と内定後の対応)に関する調査
調査期間 2023年4月12日~6月18日
有効回答数 183

まとめ

今回のアンケートでは、中小企業の採用面接に関するアンケートを「面接前」「面接実施」「面接後」の3回に分けて実施しました。
その結果、「事前準備が不足している」「記録と評価の方法が標準化されていない」「面接前の連絡を行っていない」「合否の判断に迷う」「アナログ業務が多い」などの課題が明らかになりました。
人材確保に苦戦する中小企業は少なくありませんが、その中には採用業務を行う体制の改善が必要な企業も多いことが分かります。採用のプロセスを見直し、改善に取り組むことが採用活動の質を高めることにつながるのではないでしょうか。

また中小企業では、他の業務と兼任している採用担当者も少なくないため、業務負担の軽減は採用成功と同じく重要な課題です。しかしながら、今回のアンケート結果ではデジタル化が進んでいない中小企業の現状が浮き彫りになっています。そうした現状が面接の属人化を生む原因にもなっているのでしょう。

煩雑な業務の多い採用活動こそ、より良い結果に導くための仕組みが欠かせません。採用業務の効率化を支援する株式会社ネットオンは、今後も多角的な視点から中小企業の採用に関わる調査を行い、課題解決に寄り添うサービスの開発・提供を通じて、中小企業の成長に貢献してまいります。

調査名 面接前に関する調査関するアンケート調査
調査対象 『採用係長』利用事業所の人事・労務担当者様
調査期間 2023年4月1日(土)~ 6月18日(日)
調査方法 インターネット調査
調査結果の注意点 %を表示する際に小数点第2位で四捨五入しているため、単一回答の場合は100%、複数回答の場合は合計値に一致しない場合があります。

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この記事を書いた人
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馬嶋 亜衣子(samusillee)

採用・キャリア関連、医療分野を中心に執筆を行うフリーランスライター。 各種メディアの取材ライティングやSEOライティング、採用HPのライティングなどに携わっています。

監修者
監修者
辻 惠次郎

ネットオン創業期に入社後、現在は取締役CTOとしてマーケティングからプロダクトまでを統括。
通算約200社のデジタルマーケティングコンサルタントを経験。特に難しいとされる、飲食や介護の正社員の応募単価を5万円台から1万円台に下げる実績を作り出した。
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