製造業の求人に応募が来ないのはなぜ?理由と改善のポイントを徹底解説

製造業の人たちの写真

製造業界は現在、「技能人材の不足」が課題となっています。

経済産業省の「2023年版ものづくり白書(※)」によれば、2022年度において、56.3%の企業が「人手不足が事業に影響を与えている」と感じています。

製造業の採用状況を改善するためにはどうしたら良いのでしょうか。今回は製造業が抱える人手不足の課題とその解決方法についてご紹介します。

(※)2023年版ものづくり白書|経済産業省

製造業の人手不足の現状

まずは、有効求人倍率を元に、いかに製造業の人手が不足しているのか現状を確認しましょう。

有効求人倍率

まず、製造業全体の有効求人倍率は、ここ数年で下記のとおり推移しています。

(出典:2023年版ものづくり白書|経済産業省

ここ数年は常に1倍を超えており、1人の求職者を複数企業で争っている状況です。

次に、「生産工程の従事者」に絞って見ると、令和5年8月時点での有効求人倍率は「1.71倍」です。
さらに、生産工程の職業の中でも機械整備・修理の職業に絞って見ると「4.35倍」とかなり高いことが見てとれます。近年、全産業の平均と比較して、その差はより広がってきています。
(出典:一般職業紹介状況(令和5年8月分)について|厚生労働省

以上のことから、製造業の中でも特に機械整備・修理といった技能人材が足りていないことは明白でしょう。

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製造業に応募が来ない・採用が難しい理由

製造業で特に不足している技能人材とは、先述した機械整備・修理などのような、製造ラインで活躍し続ける人材を指します。技能人材が足りないと生産量の維持が難しくなり、業績に深刻なダメージを与えます。なぜ製造業では採用が難しいのでしょうか。

給料が安く休暇の融通が利きにくい

国税庁の「民間給与実態統計調査」によると、令和3年末における製造業の平均年収は516万円。他に過酷だと言われる飲食や介護に比べれば高い数値となっていますが、特別良くはありません。

さらに正社員だとボーナスが出る代わりに基本給が抑えられる傾向があり、派遣や期間工として働いたほうがメリットを感じる求職者が多いようです。

また土日祝日含めたシフトでの勤務のため、まとまった休日が取りにくいことも応募を敬遠される理由になります。

製造業に対する漠然とした不安感がある

製造業に対して「一日中立ちっぱなし」「作業現場が汚く危険」「残業が多く休みも少ない」というイメージを持っている求職者は多いです。

しかし現在、製造業の現場では5S活動を行うことでこのイメージを払拭しようとしています。5Sとは「整理・整頓・清掃・清潔・しつけ」のこと。これらを順番に行うことで現場の業務改善が効率的に働き、結果、従業員の負担が軽減されるのです。

そもそも求人が見られていない

応募がこない以前に、そもそも求人が見られていない可能性があります。

求人が見られていない原因は、「他の求人に埋もれている」「掲載している求人媒体のユーザーが少ない」「求人までの導線が作れていない」などが考えられます。

訪問者数を確認したり、自分たちで自社求人のことを検索したりして、そもそも求職者に求人が届いているのかを確認してみましょう。

仕事の魅力を伝えきれていない・魅力がない

求人が見られていても、仕事の魅力が伝わっていないと「応募したい」と思ってもらうことはできません。求職者の立場になって、「求人を見たときに魅力が伝わるか」を確認しましょう。

仕事の魅力を伝えるには、なるべく具体的に記載することがポイントです。
例えば「やりがいのある仕事」という記載だけでは、「なぜやりがいがあるのか」が分かりません。どのような部分にやりがいがあるのか、それは自社でなければ経験できないのか、などを記載します。

採用条件が厳しい

採用条件が厳しすぎる場合もあります。

例を挙げると、希少性が高い資格を採用条件に設定してしまうと、そもそもそういった人材が市場に少ないので応募が集まりません。
選考課程も見直すべきポイントのひとつで、例えば、2つの企業が同じ求人条件の場合、「面接が2回」の企業と「面接が3回」の企業では、面接が2回の企業が選ばれやすいはずです。

一度採用条件を見直して、基準を優しくすることも必要です。

下記の記事では、Indeedが工場・製造業の派遣の人材募集に向いている理由について解説しています。
Indeedが工場・製造業の派遣の人材募集に向いている理由

なぜ製造業は人材が定着しないのか

せっかく採用した人材が定着しないのも製造業の悩みです。ディップ株式会社様の調査によると製造業への転職者のうち1年未満で退職している割合は6割、1ヶ月未満で退職している割合は22%に達します。何が定着を妨げているのでしょうか。

給与が安い

まず、給料が安いのは定着を阻害する大きな要因です。また、入社の時点では契約社員としての雇用だったが、実際に業務を経験し先輩社員の雇用状況を見て、「正社員になれないのではないか」「正社員になっても条件が良くならないのではないか」と将来に不安を持つケースもあります。

体力・金銭面の現実を目の当たりにし、長く続ける自信がない層は早期退職につながるのです。

昇給やキャリアアップの制度がない

中小の製造業では「中長期で継続的に勤務しても昇給や昇格がない」「何を頑張ればキャリアアップできるのかわからない」と感じて辞める従業員も多いです。製造ラインでルーティン作業を一生続けるのは、収入面での希望が持ちにくいのです。

スキルアップにつながらない

「働いていて自分の成長を実感できない」のも社員が離職する原因となります。特にルーティン作業が主で仕事内容に変化のない職場の場合、社員のスキルアップも特に必要ないかもしれません。

大手の製造業であれば安泰かもしれませんが、中小企業の場合は会社の将来性に不安を抱いた従業員が自分のスキルにも不安を抱くようになります。スキルアップにつながらなければ仕事のやりがいも感じづらく、転職の際に不利になるので、手遅れになる前に成長できる環境を求めるのです。

課題解決に向けて取り組む8つのポイント

製造業の人手不足を解決するためには「製造業への就業意欲が高い人の採用」「従業員が職場にいて明るい未来を描けるかどうか」が鍵になります。企業としてはどのような取り組みが必要なのでしょうか。

採用ターゲットを明確にする

「どのような人材を採用したいのか」を明確にしましょう。
ターゲットを明確にすることで、どのような方法でアプローチすると良いかが整理できます。

効果的なのは「ペルソナ」を設定することです。
ペルソナとは、理想的な人材を条件化したもので、下記はその代表的な内容です。

【ペルソナ設定において具体化すべき項目】

  • 職種
  • 年代
  • 経歴
  • 性格
  • 任せたい業務
  • 求めるスキル など

※下記の記事では、ペルソナ設定の具体的な方法について解説しています
応募が来ない時に試すことはペルソナ設定!求人票の書き方のコツをご紹介

求人方法・媒体を見直す

現在の求人方法や利用している求人媒体を見直すこともポイントです。
近年は採用手法が多様化しているため、自社が定めた「ターゲット」に適した手法を採用することで、応募につながる可能性を高められます。

例えば、「品質保証の経験者」を採用するために総合型求人サイトを利用したけれど、初心者からの応募ばかりだったとします。その場合、製造業に特化した求人サイトを使えば、ユーザーに経験者が多いためターゲットに自社求人が届き、応募を増やすことができるでしょう。

求人の内容を見直す

求人内容を見直して、「ターゲットに刺さる」求人であるかを確認することもポイントです。
求人がどれだけ魅力的であっても、ターゲットが興味を持てない内容であれば、応募につながりません。

例えば、「部下の育成も担えるベテラン職人」をターゲットとする場合、スキル・経験はすでに豊富であるため、研修制度や資格取得制度をアピールしても、興味を引くことはできません。一方で、「未経験者をゼロから丁寧に育てること」を想定しているのであれば、教育制度についてアピールするのが効果的でしょう。

求人の項目ごとに、ターゲットに適した内容であるかを確認しましょう。

競合と差別化した内容にする

業界全体が人手不足であり、1人の求職者に対して、複数企業が獲得を図っている状況が続いています。そのため、「競合といかに差別化するか」が自社への応募を増やすために重要です。

差別化にあたって大切なことは2つ。
1つ目は「自社だけの魅力」を伝えることです。
同エリアにある競合他社の求人を一覧にまとめるなどして、「自社にしかアピールできないこと」を整理し、求人内に盛り込みましょう。

2つ目は「印象に残るキャッチコピー」を考えることです。
多くの求人がある中で自社の求人に注目してもらうためには、まず自社の求人を目に留めてもらう必要があります。自社の特徴や魅力を一言で表すユニークなキャッチコピーを考え、求人タイトルなどに記載してみてください。

「特定技能」の外国人の採用

現在製造業の現場では外国人採用を行うことによって、社員の充足を図るケースが増えています。日本人は製造業にネガティブなイメージがありますが、外国人にはありません。

2019年の改正出入国管理法の施行により、外国人を雇用するハードルが下がりました。「産業機械製造業」「素形材産業」「電気・電子情報関連産業」「飲食料品製造業」に該当する製造業は、製造業の特定技能のビザを持つ外国人を雇うことができます。

それ以外には技能実習生として3年間従事した外国人を雇うことも可能です。

※下記の記事では、外国人労働者受け入れのメリット・デメリットについて解説しています
【採用ノウハウ】外国人労働者受け入れのメリット・デメリット

従業員に資格取得支援などスキルアップの機会を与える

従業員に対して資格取得支援を行うことで、スキルアップを図ることができます。これは、必ずしも現在行なっている業務に直結する必要はありません。近い領域の資格の取得を奨励することで、従業員の成長はもとより業務における視野を広げることがあります。

例えば、製麺所の社員にパン製造技能士の資格取得をさせたことで、仕事においての視野が広がってモチベーションが向上したり、新たな事業部の創出につながったケースがあります。もちろん最終的には従業員の意欲に委ねられることになりますが、やる気のある人材にはチャンスがあることを示すことにもつながるのです。

従業員の評価制度の構築

従業員の昇給やキャリアアップについて明確な評価制度を構築することも必要です。

従業員がモチベーション高く勤務を継続するためには、短期的・長期的な目標設定が重要です。定量的・定性的な評価基準を設定し、昇給や昇格の道筋を明文化しましょう。

外注も検討する

自社だけで課題を解決するのが困難な場合、外注を検討することもおすすめです。
採用業務を代わりに行う業者は「採用代行」と呼ばれ、「RPO(Recruitment Process Outsourcing)」とも表されます。

「求人作成・運用」「採用候補者の管理」「書類選考」「面接」「内定者フォロー」など、採用業務を一貫して任せることもできれば、一部を委託することも可能です。

外注することで自社にノウハウが蓄積されるメリットもあるので、「最初は外注して、ノウハウを身に付けたら自走する」という選択肢もあります。

※下記では、アウトソーシングのひとつ「面接代行サービス」について詳しく解説しています
面接代行サービスのメリット・デメリット選び方や比較ポイントも解説

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まとめ

製造業の人手不足を解決するためには、製造業に対するイメージや現在と将来の生活への不安を払拭する必要があります。そして、外国人労働者の採用などに取り組む姿勢も大切です。

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この記事を書いた人
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コンノ

公務員として4年間、人事労務の実務経験あり。 これまで100名以上の事業者をインタビューしており、「企業や個人事業主が本当に悩んでいること」を解決できる記事を執筆します。

監修者
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辻 惠次郎

ネットオン創業期に入社後、現在は取締役CTOとしてマーケティングからプロダクトまでを統括。
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