保育士の人材不足はいま社会的な注目を集め、官民を問わずさまざまな取り組みが行われています。保育園運営に携わる現場の担当者もどうやって保育士の採用を行うか、試行錯誤を重ねていることでしょう。
試行錯誤を重ねる中で、
- 保育士の採用単価は高騰化している?
- 平均的な採用単価はどのくらいなのか?
- どうやったら今よりも安く保育士を採用出来るのか?
とお考えの採用担当者もいらっしゃると思います。
今回は上記のような疑問やその解決方法について説明します。
目次
保育業界の現状
厚生労働省の「職業安定業務統計」によると、令和5年1月における保育士の有効求人倍率は「3.12倍」。これは、1人の求職者を3つの保育園で争っていることを意味します。
また、平成30年度~令和3年度における有効求人倍率の最大値は、下記のとおりです。
平成30年度 | 令和元年度 | 令和2年度 | 令和3年度 | 令和4年度 |
3.64倍 | 3.86倍 | 2.94倍 | 2.93倍 | 3.12倍 |
ここ数年、有効求人倍率が高いままで推移していることが分かります。
つまり、保育園はコストをかけてでも採用を強化する必要があり、採用単価が上がっているのです。
保育士を取り巻く採用競争は、今後も激しい状況が続くことが見込まれます。
保育士の採用単価はいくら?【採用方法別】
一口に保育士の採用単価と言っても、雇用形態や求人方法によって費用が変わってきます。
ここでは
- 人材紹介を利用した場合
- 求人媒体を利用した場合
- 転職フェアを利用した場合
これら3つのケースを取り上げ、保育士1人当たりの平均採用単価を算出してみます。
人材紹介を利用した場合
人材紹介を利用して保育士を採用する場合「成果報酬型」の料金形式です。つまり、採用が決定して候補者が入社した場合のみ紹介会社に料金を支払います。
紹介会社によって詳細は異なりますが、一般的に紹介手数料(報酬料金)は採用した人材の年収の約30~40%と設定されています。
ここで、保育士の平均年収を見てみましょう。厚生労働省が発表している2022年度の保育士の平均賃金は391.4万円(※)です。
(参考:賃金構造基本統計調査|厚生労働省)
※[きまって支給する現金給与]×12ヶ月分+[年間賞与、その他特別給与]
この数字をもとに手数料30%の紹介会社を利用し採用単価を計算すると以下の通りです。
年収391.4万円 × 紹介手数料30% = 約117万円
あくまで保育士の平均年収と紹介会社の一般的な料率をかけ合わせた金額なので、実際の採用単価は算出した料金から変動します。
参照:e-stat政府統計 政府統計窓口 賃金構造基本統計調査
上記のグラフは、コロナ禍前の2010年から2019年までに公表された保育士(保母・保父)の年収に、紹介会社の一般的な料率をかけた採用単価を年ごとに算出したグラフです。採用難の保育業界では給与の引き上げが起きているため、人材紹介における採用単価も年々高騰していると予想できます。
※下記の記事では、人材紹介サービスの料金や注意点について具体的に解説しています
→人材紹介の手数料の相場とは?注意点についても解説!
求人媒体・求人サイトを利用した場合
求人媒体を利用する場合の料金体系は、人材紹介と同じ「成功報酬型」と「掲載報酬型」の2パターンです。
「成功報酬型」の求人媒体は、人材紹介と同じく採用が決定して候補者が入社した場合のみ料金が発生します。求人の掲載自体は無料となっていることが多いです。
報酬料金に関しては、これもまた人材紹介と同じく媒体によって異なりますが、少なくとも人材紹介よりも高いということはないでしょう。
「掲載報酬型」は求人媒体に求人広告を掲載する際に料金が発生します。上位表示の頻度や掲載サイズ、掲載期間によって料金プランが異なり、大手求人媒体のほとんどはこの「掲載報酬型」を採用しています。
「掲載報酬型」の求人媒体に求人広告を掲載した場合の正社員保育士とパート保育士の採用単価については、以下で細かく解説します。
※下記の記事では、無料で求人掲載をスタートできる15種類のサイトを紹介しています
→無料で求人広告を出せる15種類のサイト | 効果の出し方や有料版との違いについて
正社員雇用
マイナビ中途採⽤状況調査2023年版によると、保育・教育・通訳分野において、採用者1人当たりの求人広告費は、近年下記のとおりの結果が出ています。
2022年 | 2021年 | 2020年 | 2019年 |
23.9万円 | 43.0万円 | 41.8万円 | 30.9万円 |
出典:マイナビ中途採⽤状況調査2023年版|株式会社マイナビ
教育・通訳業務も含まれていますが、求人媒体に出す際の採用単価は25万~40万円ほどであることが分かります。
人材紹介と比較すると安く感じられますが、掲載報酬型の求人広告は、仮に応募が0件でも掲載費用がかかる点に注意する必要があります。つまり、いくら費用をかけて求人を掲載しても、内容や条件次第では「応募が1件も来ない」「採用実績ゼロ」という事態もありえるのです。
アルバイト・パート雇用
保育士の求人を専門に掲載している保育士の求人の【保育パートナーズ】様では、アルバイト・パート保育士の採用に成功した場合の報酬料金を13.2万円と設定しています。
(参考:プラン・機能一覧|採用ご担当者の方|保育士の求人の【保育パートナーズ】)
一概には言えませんが、アルバイト・パート保育士の採用単価はだいたい13万円程度が相場と認識して問題ないでしょう。
しかし、保育士は人手不足による採用難から、他の業種に比べて採用単価が年々高騰しています。それでは、高騰する保育士の採用単価を抑え、安く採用する良い方法はないのでしょうか。
転職フェアを利用した場合
転職フェアとは、人材を募集したい企業が一つの会場に集まり、求職者に情報提供をするイベントです。
求職者は会場内の企業ブースを回りながら自分に合う応募先を探し、企業は求職者と直接コミュニケーションを取りながら自社に引き込みます。
転職フェアの料金は、例えば東京開催だと50万~70万円が相場で、ブースサイズによっては150万~200万円ほどかかることも珍しくありません。また、料金は、地方開催であるほど低い傾向です。
中には、自社サービスへの求人掲載とのセット料金にしている場合もあるため、お得なプランがないかを問い合わせ時に確認すると良いでしょう。
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保育士の採用単価を抑える7つの方法
深刻な人手不足による採用単価の高騰は、小規模な保育園にとって大きな負担です。上記で述べたように、保育士を採用する場合、少なくとも1人当たり100万円程度の投資を覚悟する必要があります。
では、採用にそこまで費用をかけられない保育園は、どうやって限られた予算内で保育士の採用単価を抑えながら、採用活動を行っていけばよいのでしょうか。
採用単価を抑える方法として、
- ハローワークに求人を掲載する
- リファラル採用・アルムナイ採用を利用する
- 保育士専門の求人サイトを利用する
- 求人検索エンジンに掲載する
- 保育士・保育所支援センターを利用する
- 保育士専門学校・大学に呼びかける
- 採用管理システムを導入する
以上7つの採用手法をご紹介します。
ハローワーク
日本全国に展開するハローワーク(公共職業安定所)に、無料で求人を掲載する方法です。また、ハローワークインターネットサービスにより、インターネット上からも求人情報を掲載できます。
※ハローワークで求人掲載を行う具体的な方法については、以下の記事で解説しています。
→ハローワークの求人の出し方は?申し込み手続きの流れと記入のコツを解説
2020年1月よりハローワークインターネットサービスに大幅なリニューアルが行われ、採用活動を行う事業者はインターネット上で「求人者マイページ」を開設出来るようになりました。求人者マイページの開設はハローワークインターネットサービスのトップ画面、もしくはハローワーク窓口より行えます。
求人者マイページで出来ることは以下の通りです。
- 求人の申込み(仮登録)
- 求人内容の変更
- ハローワーク経由の応募者を管理
- ハローワークからの紹介者とのメッセージのやりとり
- 求職者の検索
求職者の検索が可能になったことにより、職種や勤務地など条件にマッチした求職者を見つけ出し、ハローワークを通して紹介してもらうこともできます。
(参考:求人者マイページ利用者マニュアル)
ハローワーク経由で採用まで至った場合は、求人広告費や紹介手数料などの採用における外部コストは一切かからず、人件費といった内部コストのみで済みます。
リファラル採用・アルムナイ採用
リファラル採用・アルムナイ採用については、言葉を聞いたことがなくても、既に自然と取り入れている保育園は多いかと思います。それぞれについて詳しく、メリット・デメリットを踏まえながら解説します。
リファラル採用
リファラル採用とは、自社に勤める社員に知人や友人を紹介してもらう採用手法です。
特に保育士は横のつながりが強く、保育専門学校や大学の同級生といったルートからの紹介での採用が見込めます。
リファラル採用のメリットは、保育の現場経験者からの紹介であるためマッチ度が高く、既に知人や友人がいることで不安がなく定着しやすい点です。求人広告費や紹介手数料、その他採用にかかる外部コストの削減もできます。
デメリットは、紹介する側の保育士がいま働いている環境に満足していなかったり、紹介したいと思わなければリファラルが行われない点です。
上記のようなデメリットを解消する施策として、紹介する側へのインセンティブを設けると良いでしょう。株式会社MyRefer様の調査によると、多くの企業がリファラル採用成功時のインセンティブとして1万~30万円を設定しております。
(参考:リファラル採用の報酬(インセンティブ)の設定方法|リファラル採用活性化サービスのMyRefer)
※下記の記事では、リファラル採用について詳しく解説しています
→リファラル採用とは?メリット・デメリット・成功させるための促進方法まで徹底解説!
アルムナイ採用
アルムナイ採用とは、さまざまな理由で企業を離職・退職された方をいつでも元の企業で再雇用できる採用手法です。ヤフー株式会社様が導入したことでニュースにもなりました。
育児や介護など家庭の事情、体を痛めてしまった、定年退職といった理由で退職してしまった保育士に対し定期的に情報を発信し、本人の希望があれば再雇用します。
アルムナイ採用のメリットは、過去に雇用していた人材を再雇用するため、採用に費用はかからない点です。また、もともと保育園をよく知っている人材であるため、マッチ率が高く、雇用側も求職者側もお互いの情報を持った状態で円滑にコミュニケーションが取れます。
デメリットは、離職者・退職者に対して良好な関係を維持しなければ再雇用に至らないため、関係を維持するためのコミュニケーションコストがかかる点です。
アルムナイ採用の詳細については以下の記事で解説しています。
⇒「アルムナイ」とは?アルムナイ制度のメリットや活用事例をご紹介!
保育士専門の求人サイト
総合型求人サイトはあらゆる業界の求職者が利用しているので、自社が求人を出す場合、まずは保育人材に見てもらうための工夫が必要です。
一方で、保育士専門の求人サイトには、保育業界に就職したいと考えている求職者だけが登録されています。そのため、総合型求人サイトを使うよりも保育士にダイレクトでアプローチでき、自社求人を見てもらえる可能性が高まります。
また、保育業界の採用事情に詳しいスタッフがそろっているので、自分たちの魅力を余すことなく伝えられるでしょう。
少ない労力で多くの人材を採用できれば、結果的に採用単価を抑えられます。
求人検索エンジンに掲載する
Indeedや求人ボックスといった求人検索エンジンは無料で求人を作成・掲載できます。既に採用サイトをお持ちの場合は、求人検索エンジンと連携すれば、自動で求人掲載を行うことも可能です。
特にテレビCMなどで知名度を上げているIndeedでは、約25万人が保育士の求人を検索していると言われています(2020年5月Indeed採用市場レポートより)。
また、求人検索エンジンの多くは無料で求人を掲載するだけでなく、「スポンサー広告」といった有料オプションを利用して、より採用効果を高めることもできます。
「Indeedの業界別クリック単価相場について」によるとIndeedで保育士の求人をスポンサー掲載した場合、クリック単価相場は40円~250円となります。仮にクリック単価を200円と仮定し、1000クリックで5人の応募があった場合、応募単価は以下になります。
200円×1000クリック÷5応募=40,000円
5応募のうち1人採用に至った場合、採用単価は以下のように算出されます。
40,000円(応募単価)÷1/5(採用者/応募数)=200,000円
先程紹介したクリック単価はあくまで2018年度の弊社調査によるものであり、またクリック単価は常に変動していることから、一概に20万円が保育士の採用単価だとは言い切れません。
ですが、人材紹介会社や求人広告媒体を利用した場合よりも採用単価を下げて採用できる可能性は十分にあります。
Indeedを利用して保育士の採用単価を下げることに成功した例
Indeedの「スポンサー広告」を利用することによって保育士の応募単価を約8,300円まで下げられた事例もあります。詳細はこちらのページで解説しております。
⇒Indeed有料広告で応募単価を大幅に下げることに成功【保育士業の求人成功事例】
保育士・保育所支援センターの利用
保育士・保育所支援センターとは、保育士としての就職に悩んでいる求職者、あるいは保育士を採用したい企業をサポートする機関で、各自治体に設置されています。
保育士・保育所支援センターの魅力は、そのエリアの保育士事情に精通していること。
利用することで、求人掲載をはじめとした採用強化を支援してもらえるため、一度気軽に相談してみると良いでしょう。
イベント・講習会を定期的に開催しているので、そこに参加して求職者と出会える場合もあります
保育士専門学校・大学への呼びかけ
保育士専門学校や大学にアプローチする方法もあります。
どこに連絡すればいいか分からない場合は、キャリアセンターなど学生の就職支援をしている部署に連絡してみましょう。その学校が運営しているサイトや掲示板に求人を掲載してもらえる場合があります。
また、学校の就職担当部署と繋がりを築くことで、学生におすすめの就職先として紹介してもらったりするケースもあるため、長期的な関係性を視野に入れることがおすすめです。
採用管理システムを導入する
採用管理システムとは、応募から入社までに関わる「求人情報」「応募者情報」「面接の選考管理」「応募者に対する採用担当者の評価」「内定者の管理」業務を一元管理できるシステムのことです。導入に費用がかかるものもあれば、無料で利用できるものまでさまざまな種類のシステムが存在します。
採用管理システムを利用することで、煩雑な選考管理や個々の応募者へのメッセージなど、採用業務の効率化ができ、採用コストの中の人的リソース削減につながります。
もし、有料で導入する場合は、月額2万円~6万円といった比較的安価な料金を設定しているところが多いです。
(参考:採用管理システムを徹底比較【70選】|特徴・料金から最適なサービスを導入しよう)
採用管理システムを導入するメリットについては、以下の記事で解説しています
⇒採用管理システムを導入するメリット|採用業務の効率化のために
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まとめ
社会的に注目される保育士の人手不足により、今後も保育士の獲得競争は続いていきます。
また、グラフで紹介した保育士の採用単価も競争の激化に比例して上がっていくでしょう。厳しい採用市場の中で、必要な人数の保育士を採用し保育園の運営を続けていくためには、採用単価を抑え効率よく採用していくことが求められます。
この記事でご紹介した方法を参考に、いまの採用を見直し効率の良い保育士の採用に取り組んでみてははいかがでしょうか。
保育士業務の中で、採用マーケティングの目線を持ち採用管理を行っていくのであれば、上記で紹介した『採用係長』を利用することをおすすめします。2分で無料登録できるので、保育士の採用に苦戦している採用担当者、採用単価を下げられる方法をお探しの担当者は一度お試しください。
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