離職率とは?下げる方法や計算方法もご紹介。|実際の計算例をあわせて紹介

離職率とは

少子高齢化による人手不足や人材の流動化を背景に、従業員の定着が重要視されています。従業員を定着させるための指標となる数値のひとつが「離職率」です。離職率の低下は、企業や店舗を経営する人にとって、今後の成長における鍵となります。

離職率が高い背景には、かならず何らかの要因が隠れているため、まずは要因の解明が大切です。
人材が定着するようになれば、採用コストや教育コストの節約、さらには組織全体のパフォーマンス向上など多くのメリットがあります。「要因の解明に手間がかかるから……」と後回しにされやすい問題ですが、企業や店舗にもたらす長期的なメリットを考えれば、早期の改善が重要なのです。

離職率が高い要因を明らかにするには、はじめに離職率を正しく理解したうえで、解決に向けて動く必要があります。離職率について理解するだけで問題意識が生まれるため、最終的な課題解決に大きく影響してくるのです。

今回は、離職率の概要や計算方法、低下させるための具体的な取り組みを紹介します。

離職率とは?離職率の計算方法

離職率とは、一定期間内において、全体に占めるどれほどの従業員が離職したかを示す数値です。離職率の計算は、「従業員が働きやすい職場かどうか」を明らかにするために行い、数値が高いほど、自社に「働きづらさ」があることを意味します。離職率の算出自体が大切なのではなく、算出結果を職場改善に活かすことが大切です。

<入職率・離職率の推移>

(出典:令和2年雇用動向調査結果の概況|厚生労働省)

厚生労働省の公表によると、2020年における離職率は上図のとおり14.2%です。2019年の15.6%から大きく減少しており、2006年以降で最も低い数値となっています。

離職率の計算方法

離職率の計算方法は、法律で定められていないため、企業・店舗ごとに自由に決めて問題ないとされています。下記の計算方法が、もっとも一般的です。

【一般的な離職率の計算方法】
離職率=算出したい期間内の離職者数÷起算日における従業員数×100%

上記の式は、「新卒社員の3年間における離職率」「2020年4月から9月における20代女性社員の離職率」など、離職率を算出したい期間に応じて柔軟に活用できます。下記が計算例です。

【例】
2020年10月1日時点で120人の従業員が在籍しており、2021年3月末までに20人の従業員が離職した場合

離職率=20人÷120人×100%=16.666=17%(小数点以下の取り扱いは自社で決める)

なお、期間内に入社した従業員は計算に含めないよう注意が必要です。たとえば上記の例を用いて10月~3月の離職率を求める場合は、起算日である10月1日時点での従業員数を基準にし、10月2日~3月31日に入社した従業員は計算に含めません。

離職率が高い業種について

離職率の高さは、業種によって傾向が異なります。厚生労働省が実施している雇用動向調査では、最新の令和2年上半期の入職率・離職率を下記のとおり公表しています。

<産業別入職率・離職率(令和2年上半期)>

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(出典:令和2年上半期雇用動向調査結果の概要|厚生労働省)

「宿泊業・飲食サービス業」の数値が15.3%ともっとも高く、「教育・学習支援業」「サービス業(他に分類されないもの)」「生活関連サービス業・娯楽業」が続いています。令和2年上半期より過去の雇用動向調査においても、似たような傾向です。

雇用動向調査の結果を踏まえると、離職率が高くなりやすい業種の傾向は、大きく下記の3点だといえます。

対人業務が多い業種

対人業務が多い業種は、日常的にストレスを感じやすくなります。目に見える形で成果が表れない場合も多いため、スキルが向上している実感を得にくい点も離職率の高さに影響しているでしょう。

対策としては、ストレスをセルフケアする方法の共有や、周囲がケアできる体制の構築があります。また、人事評価制度を見直し、従業員が自分の成長を実感しやすい環境を作ることも重要です。

拘束時間が長く、休日が少ない業種

プライベートの時間が取れないと、ストレスや疲れが溜まる一方です。特にサービス業や教育業は休日が少ない傾向にあるため、負担が重くなってしまい、結果として離職者が増えやすくなります。

人事担当者としては、まず従業員の拘束時間が長くないか、適切な休憩が取れているかをアンケートや面談などで確認すると良いでしょう。そのうえで、現行の勤務時間を見直す必要があります。

給与が低い業種

将来を考えたときに、給与の低さはどうしても不安要素のひとつになりがちです。たとえば、「結婚して子どもを持ちたい」と考えている場合、給与が低いと将来設計がしにくくなってしまいます。

しかし、給与をすぐに上げることが難しい企業は多いでしょう。その場合「昇給・昇格のルールを作る」「給与以外の待遇を充実させる」など、給与以外の待遇改善を検討してみてください。

離職率が高いことで生じるデメリット

離職率が高いと、企業には特に下記のデメリットが生じます。

・採用コストが無駄になる
・教育コストが無駄になる
・既存従業員(店員)のモチベーションが下がる

目に見える形で生じるデメリットとして、採用した人材が短期間で辞めてしまうことで、採用コストや教育コストが無駄になります。逆に言うと、離職率を抑えてコストの浪費を減らせれば、これまで以上に効率的な予算運用が可能です。

見落としがちですが、離職率の高さは「既存従業員のモチベーション低下」にもつながります。
離職率が高い状態が続くと、「この企業は人材を大切にしていない……」「人が離れるような問題を抱えているのかな……?」と、従業員間で組織に対する不信感が広がります。離職率上昇の連鎖を引き起こすうえに、パフォーマンスの低下による業績悪化にもつながるため、企業成長において大きな悪影響を及ぼすでしょう。

離職率を下げるために行うべきこと

離職率を下げるために、まず取り組むべきなのは「現状確認」です。離職する理由は人によって異なるうえに、多くの場合は明確な退職理由を会社に告げません。そのため、働きにくいと感じている点を既存従業員にヒアリングし、企業・店舗の方から「職場環境をより良くする姿勢」を見せるだけでも、結果は大きく変わってきます。

ヒアリングの方法としては、上司と部下による1対1での定期的な面談、いわゆる「1on1」がおすすめです。複数人がいる環境よりも本音で話しやすくなり、部下と上司の認識ズレも把握できます。
たとえば、「上司が部下の自主性を尊重していたつもりでも、部下にとっては指示がなく働きにくかった」のように、よかれと思っていた行動が負担になっている場合もあるのです。

伝え方としては、疑問や不信感を抱かせないためにも、「会社(店舗)をよくしたいから」と正直な理由を話すことが望ましいといえます。ヒアリングを終えたら、まずは把握した問題の改善に努めることが第一歩です。問題をすべて叶えるのは難しい場合もあるため、「給与を上げてほしい→福利厚生を充実させる」のように、多角的なアプローチを検討してください。

その次には、下記のような一般的な対策を実施し、働きやすい職場のさらなる構築を目指しましょう。

賃金や福利厚生の見直し
働き方の見直し
職場環境の改善
評価制度の見直し

賃金や福利厚生の見直し

賃金は従業員の生活に直結する要素であるため、金額が少なければ生活そのものが困難になってしまいます。基本給や賞与のアップなど、可能な範囲で賃金を見直すことが離職率の低下に効果的です。

福利厚生の充実も、有効な対策のひとつだといえます。最近は福利厚生のアウトソーシングサービスが増え、低コストで充実した制度を導入しやすくなっています。従業員のニーズや組織の課題に応じて、自社に合った福利厚生の導入を検討してみてください。

働き方の見直し

離職率が高い背景には、働き方が影響しているケースもあります。残業が多い場合や休日が少ない場合は、従業員にとって負担となっている可能性は高いでしょう。残業時間やサービス残業の有無、有給休暇の取得率などをあぶり出し、改善に努める必要があります。

フレックスタイム制やテレワークの導入など、働き方を柔軟にする取り組みも効果的です。ワークライフバランスを重視した働き方が可能になれば、満足度が高まり、職場に定着してくれる従業員が増えるでしょう。

働き方への不満は、従業員から切り出しにくいケースも多くあります。企業・店舗側から従業員の意見をくみ取る姿勢を見せることが重要です。

職場環境の改善

職場環境の改善に向けた取り組みも、有効な対策のひとつです。職場の人間関係や雰囲気が合わないことを理由に離職する人も多い傾向にあります。

職場環境の改善を図る際は、初めに問題の把握が必要です。アンケートや面談などを通して、職場環境への悩み・不満を把握すると良いでしょう。現状の問題を把握したうえで、指導や研修など問題改善に向けた取り組みを実施します。

改善策に取り組んだ後も、実際に職場環境が改善されているかを確認し、必要に応じてさらなる対策を講じる必要があります。PDCAを繰り返しながら、より効果的な内容を検討しましょう。

評価制度の見直し

従業員の能力が正しく評価され、待遇に適切に反映されているかを見直すことも大切です。自分の能力が適切に評価されていないと感じた従業員は、不満を抱いて離職する可能性があります。

逆に言うと、評価が正しく行われていれば、従業員のモチベーションアップや生産性向上につながります。結果として「ここで長く働きたい!」と思ってもらえる可能性が高まるのです。

評価制度を見直す際は、評価者である上司への教育も必須です。評価者が部下の能力を適切に見極められるよう、組織全体に目を向けた取り組みが重要となります。

まとめ

少子高齢化による人材不足が深刻化している昨今、企業・店舗が成長を続けるためには離職率の改善が重大な意味を持ちます。

離職率の高さを根本的に解決するには、時間と労力が必要です。しかし、離職率を改善できれば、コスト削減や従業員のモチベーションアップにつながり、長期的に見て企業に大きなメリットがあります。定着率の高さや働きやすい職場環境は、求人票でアピールできる要素でもあるため、採用における課題の解決にもなるでしょう。

企業・店舗の明るい未来のために、なるべく早めに離職率の改善に努めることが重要です。

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採用Webマラボ編集部

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監修者
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辻 惠次郎

ネットオン創業期に入社後、現在は取締役CTOとしてマーケティングからプロダクトまでを統括。
通算約200社のデジタルマーケティングコンサルタントを経験。特に難しいとされる、飲食や介護の正社員の応募単価を5万円台から1万円台に下げる実績を作り出した。
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