えるぼし認定とは?認定基準や取得メリット、申請の流れを解説

「えるぼし認定」は、女性活躍推進法に基づいてスタートした制度で、一定の基準を満たしながら女性の活躍を後押しする企業に付与されます。

企業にとっては、付与されることで対外的なアピールができたりとメリットが多いこの制度。
実際にいま、「えるぼし認定の基準について詳しく知りたい」「企業にとってどんな良いことがあるのか知りたい」という方もいるでしょう。

そこで今回は、えるぼし認定を受けることで企業にどのようなメリットがあるのか、認定基準や申請の流れといった実務的な内容を含めて解説します。

えるぼし認定とは

えるぼし認定は、女性活躍推進法(女性の職業生活における活躍の推進に関する法律)に基づいて、女性の活躍推進に関する取り組みの実施状況が優良な企業に対して与えられる認定制度です。厚生労働省により2016年4月1日に施行されました。

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(出典:女性活躍推進法に基づくえるぼし認定 プラチナえるぼし認定のご案内|厚生労働省

えるぼし認定マークは、上記のように「L」の字が円の中にデザインされ、その上で星が輝くデザインです。「L」の字には「Lady(女性)」「Labor(労働)」「Lead(手本)」などの意味が込められ、働く女性を応援するものとなっています。
(出典:女性活躍推進法認定マークの愛称を決定しました|厚生労働省

なお、この認定制度の目的は以下の通りです。

  • 企業における女性の活躍推進を加速させること
  • 女性が活躍できる環境整備を促進すること
  • 優れた取り組みを行う企業を可視化し、社会的に評価すること

えるぼし認定の認定基準

えるぼし認定は、以下5つの評価項目の達成数に応じて付与されます。

  • 採用
  • 継続就業
  • 労働時間等の働き方
  • 管理職比率
  • 多様なキャリアコース

各基準の詳細について解説します。

※各基準の要件の中に「産業ごとの平均値」という記載がありますが、実際の数値は下記のページでご確認ください
女性の職業生活における活躍の推進に関する法律に基づく認定制度に係る 基準における「平均値」について|厚生労働省

採用

採用における男女の均等な機会を評価する項目です。
以下のいずれかの要件を満たす必要があります。

  • 男女別の採用における競争倍率が同程度であること(※)
  • 正社員に占める女性労働者の割合が産業ごとの平均値以上であること。加えて、正社員の基幹的な雇用管理区分における女性労働者の割合が産業ごとの平均値以上であること

※補足として、直近3事業年度の平均した「採用における女性の競争倍率×0.8」が、直近3事業年度の平均した「採用における男性の競争倍率」よりも雇用管理区分ごとにそれぞれ低い必要があります

継続就業

女性の継続就業に関する状況を評価する項目です。
期間の定めのない労働者について、次のいずれかに該当する必要があります。

  • 直近の事業年度における「女性労働者の平均継続勤務年数」÷「正社員の男性労働者の平均継続勤務年数」が雇用管理区分ごとに7割以上であること
  • 直近の事業年度における「女性労働者の継続雇用割合」÷「男性労働者の継続雇用割合」が雇用管理区分ごとに8割以上であること(※)

※2点目の「継続雇用割合」については、10事業年度前に採用された正社員のうち、継続して雇用されている者の割合を指します。

なお、上記の要件を算出することが難しい場合は、次の要件でも良いとされています。

  • 直近の事業年度において、正社員の女性労働者の平均継続勤務年数が産業ごとの平均値以上であること

労働時間等の働き方

労働時間や有給休暇取得など、働き方の状況を評価する項目です。

以下の要件を満たす必要があります。

  • 雇用管理区分ごとの労働者の法定時間外労働および法定休日労働時間の合計時間数の平均が、直近の事業年度の各月において全て45時間未満であること

管理職比率

管理職に占める女性の割合を評価する項目です。

以下のいずれかの要件を満たす必要があります

  • 直近の事業年度において管理職に占める女性労働者の割合が産業ごとの平均値以上であること
  • 直近3事業年度の課長級より1つ下の職階から課長級への女性の昇進割合が、直近3事業年度の課長級より1つ下の職階から課長級への男性の昇進割合の8割以上であること

多様なキャリアコース

女性のキャリア形成を支援する取り組みを評価する項目です。

以下の要件について、大企業は2項目以上、中小企業は1項目以上、直近の3事業年度内に実績を有することが要件です。

  • 女性の非正社員から正社員への転換
  • 女性労働者のキャリアアップに資する雇用管理区分間の転換
  • 過去に在籍した女性の正社員としての再雇用
  • おおむね30歳以上の女性の正社員としての採用

えるぼし認定のグレード

えるぼし認定にはグレードがあり、企業の取り組み状況に応じて、1段階目から3段階目まで認定されます。各段階の特徴と認定基準を詳しく見ていきましょう。

えるぼし(3段階目)

えるぼし認定の最高位である3段階目は、女性活躍推進の取り組みが最も進んでいる企業に与えられます。以下の5つの評価項目すべてを満たす必要があります。

  • 「採用」「継続就業」「労働時間等の働き方」「管理職比率」「多様なキャリアコース」の5つの基準を全て満たしていること
  • 5つの基準の実績について「女性の活躍推進企業データベース」に毎年公表していること。

※「女性の活躍推進企業データベース」とは、女性活躍推進法に関する各種データや事例などをまとめられた厚生労働省が運営するサイトです
女性の活躍推進企業データベース

えるぼし(2段階目)

2段階目の認定は、5つの評価項目のうち3つ以上を満たす企業に与えられます。女性活躍推進に積極的に取り組んでいると評価されます。

  • 「採用」「継続就業」「労働時間等の働き方」「管理職比率」「多様なキャリアコース」の5つの基準のうち3つか4つ満たしていること
  • 満たした基準の実績について「女性の活躍推進企業データベース」に毎年公表していること。
  • 満たしていない基準については、事業主行動計画策定指針に定められた取組の中から基準に関連するものを実施し、取組の実施状況について「女性の活躍推進企業データベース」に公表するとともに、2年以上連続してその実績が改善していること

えるぼし(1段階目)

1段階目の認定は、5つの評価項目のうち1つか2つを満たす企業に与えられます。
女性活躍推進の取り組みを始めたばかりの企業や、特定の分野で成果を上げている企業が該当します。

  • 「採用」「継続就業」「労働時間等の働き方」「管理職比率」「多様なキャリアコース」の5つの基準のうち1つか2つ満たしていること
    満たした基準の実績について「女性の活躍推進企業データベース」に毎年公表していること。
  • 満たしていない基準については、事業主行動計画策定指針に定められた取組の中から基準に関連するものを実施し、取組の実施状況について「女性の活躍推進企業データベース」に公表するとともに、2年以上連続してその実績が改善していること

えるぼし認定の各段階は、企業の成長に合わせてステップアップすることが可能です。
1段階目から始めて、徐々に取り組みを強化し、2段階目、3段階目と上がっていくことで、企業の女性活躍推進の進捗を社会にアピールできます。

なお、えるぼし認定の有効期間は取得から2年間です。認定の継続を希望する場合は、2年ごとに更新手続きが必要となります。更新時には、それまでの取り組み状況や成果を踏まえて、再度評価が行われます。

プラチナえるぼしとは

「プラチナえるぼし」は、えるぼし認定を受けた企業のうち、女性の活躍推進に関する取り組みの実施状況が特に優良な企業に与えられる最高位の認定です。

プラチナえるぼし認定の基準は、えるぼし認定の5つの評価項目に加えて、より高い水準が設定されています。具体的には以下の要件を満たす必要があります。

  • えるぼし認定(3段階目)を受けていること
  • 男女雇用機会均等推進者、職業家庭両立推進者を選任していること
  • プラチナえるぼしの継続就業や管理職比率の基準をすべて満たしていること
  • 女性活躍推進法に基づく一般事業主行動計画の目標を達成していること
  • 女性活躍推進法に基づく情報公表項目のうち、8項目以上を「女性の活躍推進企業データベース」で公表していること

「認定基準」については通常のえるぼし認定と同じく5つの項目がありますが、プラチナえるぼしは「継続就業」と「管理職比率」について下記のとおり条件の難易度が高くなります。

【継続就業】

  • 直近の事業年度における「女性労働者の平均継続勤務年数」÷「正社員の男性労働者の平均継続勤務年数」が雇用管理区分ごとに8割以上であること
  • 直近の事業年度における「女性労働者の継続雇用割合」÷「男性労働者の継続雇用割合」が雇用管理区分ごとに9割以上であること

【管理職比率】

  • 直近の事業年度において、管理職に占める女性労働者の割合が産業ごとの平均値の1.5倍以上であること
  • 1.5倍後の数字が「15%以下」の場合は、管理職に占める女性労働者の割合が15%以上であること。「40%以上」の場合は、管理職に占める女性労働者の割合が正社員に占める女性比率の8割以上であること

えるぼし認定を受けるメリット

えるぼし認定を受ければ、企業は採用活動や販促活動などにおけるさまざまなメリットを享受することができます。
特に注目したいメリットについて解説します。

求人票や求人情報画面に認定マークを表示できる

えるぼし認定を受けた企業は、認定マークを次のものに表示することができます。

【えるぼし認定マークを表示できるもの】

  • 商品
  • 役務の提供の用に供するもの(サービス提供時に着用する制服など)
  • 会社案内や商品案内などの広告(会社案内など)
  • 商品提供や取引などに用いる書類や通信(名刺、封筒など)
  • 商品提供や取引などに用いる書類や通信(名刺、封筒など)
  • 営業所や事務所、事業場
  • インターネットを利用した方法により公衆の閲覧に供する情報(自社のホームページなど)
  • 労働者の募集のための広告や文書(求人票など)

これらにえるぼし認定を表示することで、下記のように求職者や消費者からの見られ方が変わってきます。

【えるぼし認定マークを表示するメリット】

  • 企業の女性活躍推進への積極的な姿勢が一目で分かる
  • 消費者から見た企業の信頼度が高まる
  • 就職活動中の女性求職者に対して、働きやすい環境であることをアピールできる
  • 男女問わず、ワークライフバランスを重視する求職者への訴求力が高まる

公共調達における優遇措置がある

えるぼし認定企業は、国や地方公共団体の公共調達において、様々な優遇措置を受けることができます。
例えば、総合評価落札方式や企画競争による調達やワークライフバランス等推進企業を評価する調達において、えるぼし認定企業が加点評価されます。
ただし、加点評価の詳しい内容については調達ごとの問い合わせ先に確認が必要です。
調達情報一覧|厚生労働省

日本政策金融公庫による低利融資を受けられる

えるぼし認定企業は、日本政策金融公庫による「働き方改革推進支援資金」を通常よりも低金利で利用できます。
具体的には、通常の貸付利率から最大0.65%の金利引き下げが可能です。

【出典】
認定のメリット|厚生労働省

えるぼし認定の申請方法

えるぼし認定を申請するには下記のステップを踏む必要があります。

  1. 一般事業主行動計画の策定・届出
  2. 女性の活躍に関する情報を公表
  3. えるぼし認定の申請

各ステップで取り組み内容について具体的に解説します。

一般事業主行動計画の策定・届出

「一般事業主行動計画」とは、従業員の仕事と子育ての両立を図るために、どのような取り組みを行うのかを具体的な計画として定めるものです。
下記の流れで策定・届出を進めます。

自社の女性の活躍に関する状況の把握、課題分析

まずは自社の女性活躍に関する取り組みの現状を整理して、課題を分析します。
下記については「基礎項目」として必ず把握しなければなりません。

  • 雇用管理区分ごとの採用した労働者に占める女性の割合
  • 雇用管理区分ごとの男女の平均継続勤務年数の差異
  • 労働者の各月の平均残業時間(健康管理時間)の状況
  • 管理職に占める女性労働者の割合

一般事業主行動計画の策定、社内周知、外部公表

明らかにした課題を改善するための一般事業主行動計画を策定します。計画には以下の内容を盛り込む必要があります。

  • 計画期間
  • 数値目標
  • 取組内容
  • 取組の実施時期

行動計画の内容は男女雇用機会均等法に違反しないことが大前提です。
策定した計画は、社内の全労働者に分かりやすく周知するとともに、「女性の活躍推進企業データベース」や「自社ホームページ」などを使って外部にも公表する必要があります。

一般事業主行動計画を策定した旨の届出

行動計画の策定と周知が完了したら、「一般事業主行動計画策定・変更届」を都道府県労働局に提出します。
郵送や持参のほか、電子申請も可能です。

女性の活躍に関する情報を公表

えるぼし認定を受けるためには、女性の活躍に関する情報を公表することが求められます。公表すべき情報は「えるぼし認定の認定基準」で紹介した5つが基準となっており、この中から1つ以上選択することが必要です。

なお、「女性の活躍に関する情報公表」については、常時雇用する労働者数が101人以上の事業主については義務、100人以下の場合は努力義務となります。

えるぼし認定の申請

以上の準備が整ったら、えるぼし認定の申請を行います。
「基準適合一般事業主認定申請書」に添付書類を用意して、都道府県労働局に提出します。
認定が決定すると、認定通知書が交付され、認定マークを使用する権利が与えられます。

※さらに詳しい流れについては下記ページでご確認ください
女性活躍推進法特集ページ(えるぼし認定・プラチナえるぼし認定)|厚生労働省

まとめ

えるぼし認定は企業の女性活躍を後押しすることに加え、採用活動の強化にもつながる制度です。性別による垣根がなくなってきている近年、働きやすい職場を整備したい企業は、これを機にえるぼし認定を取得を検討してみてはいかがでしょうか。

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コンノ

公務員として4年間、人事労務の実務経験あり。 これまで100名以上の事業者をインタビューしており、「企業や個人事業主が本当に悩んでいること」を解決できる記事を執筆します。

監修者
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辻 惠次郎

ネットオン創業期に入社後、現在は取締役CTOとしてマーケティングからプロダクトまでを統括。
通算約200社のデジタルマーケティングコンサルタントを経験。特に難しいとされる、飲食や介護の正社員の応募単価を5万円台から1万円台に下げる実績を作り出した。
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