内定式は、法律で決められた行事ではありません。10月1日という日付も、政府が経済団体に出している要請にもとづくものです。
従業員300人未満の会社に決まった学生のうち、10月1日に内定式が開かれたと答えたのは48.8%でした。開催の予定がないという回答も16.3%あります。5,000人以上の会社では10月1日の開催が76.4%、予定なしは1.1%ですから、規模によって実態がかなり違います。
この記事では、開くかどうかの決め方、当日のプログラム、案内の出し方の順にまとめます。内定者側の持ち物や服装ではなく、会社が決めることだけを扱います。
目次
内定式は10月1日でなくてもいい
10月1日という日付の根拠
新卒採用の日程は、内閣官房・文部科学省・厚生労働省・経済産業省の連名で、経済団体や業界団体に向けて毎年出される要請で示されています。2027年3月に卒業する学生を対象とした要請(2026年3月24日付)には、次の日程ルールを原則とすると書かれています。
- 広報活動開始:卒業・修了年度に入る直前の3月1日以降
- 採用選考活動開始:卒業・修了年度の6月1日以降
- 正式な内定日:卒業・修了年度の10月1日以降
出典:内閣官房「2027(令和9)年度卒業・修了予定者等の就職・採用活動に関する要請」(2026年7月29日確認)
要請なので、守らなかったときの罰則は定められていません。日程を自社の事情で組むこと自体は可能です。
ただし、正式な内定日が10月1日以降とされている以上、それより前に内定式という名前の場を設けると、内定という言葉の使い方に無理が出ます。9月中に集まりを持つなら、内々定者の顔合わせや懇親会として案内するほうが実態に合います。
従業員300人未満では、10月1日の開催は半数以下
就職プロセス調査(2026年卒)では、就職先が決まった学生に、その会社の内定式がいつ開かれたかを聞いています。従業員規模別の結果は次のとおりです。
| 従業員規模 | 9月30日以前 | 10月1日 | 10月2日以降 | 開催の予定なし | 分からない |
|---|---|---|---|---|---|
| 全体 | 2.4% | 69.2% | 19.8% | 6.3% | 2.3% |
| 300人未満 | 7.5% | 48.8% | 21.3% | 16.3% | 6.1% |
| 300〜999人 | 2.2% | 67.5% | 20.5% | 8.0% | 1.8% |
| 1,000〜4,999人 | 0.6% | 77.8% | 17.1% | 3.0% | 1.5% |
| 5,000人以上 | 0.9% | 76.4% | 20.9% | 1.1% | 0.7% |
出典:株式会社インディードリクルートパートナーズ「就職プロセス調査(2026年卒)「2025年10月1日時点 内定状況」」(2025年10月9日発表・2026年7月29日確認)。2026年卒業予定の大学生を対象としたインターネット調査で、集計対象は大学生721人・大学院生257人。学生が自分の就職確定先について答えた結果であり、企業に実施率を聞いた調査ではありません。
300人未満の会社では、10月2日以降が21.3%、9月30日以前が7.5%と、日付が10月1日以外に散っています。開催の予定なしも16.3%あり、6社に1社ほどは内定式という形をとっていません。前の年(2025年卒)の同じ区分では20.0%でした。少人数の会社では、開かない選択も珍しくないということです。
大企業の日程に合わせて10月1日にこだわると、会場も日程調整も窮屈になります。学生にとっても、他社の内定式と重なりやすい日です。
内定式を開かなくても、内定は成立している
内定式で内定証書を渡すことが、内定が成立する瞬間だと説明されることがあります。労働契約の考え方では、そうはなっていません。
最高裁判所の判決(昭和54年7月20日・大日本印刷事件)では、会社の募集に対する応募が労働契約の申し込み、採用内定の通知がそれに対する承諾にあたり、誓約書の提出とあわせて、入社日を始期とし一定の場合に解約できる権利を留保した労働契約が成立する、と整理されています。式典は要件に入っていません。
内定式を開かなくても内定は成立していますし、開いたからといって内定者が辞退できなくなるわけでもありません。内定式は、入社までの数か月を支えるための場です。そう考えると、開くかどうかも中身も決めやすくなります。
内定通知の出し方をあわせて確認したい場合
内定を伝えるメールの文面や、承諾期限の決め方は内定通知メールの例文にまとめています。
やるかどうかを決める3つの材料
何のために開くのかを一文で言えるか
目的が「他社もやっているから」だけだと、当日のプログラムが決まりません。内定者に何を持ち帰ってほしいかを一文にしてみると、判断がつきます。同期の顔と名前を覚えて帰ってもらう、入社までにやることを共有する、経営者の話を直接聞いてもらう。このどれかに当てはまるでしょうか。
一文にできないなら、式典の形にこだわらず、個別の面談や連絡で足りることもあります。
内定者が無理なく集まれるか
遠方の学生がいる場合、10月1日の平日午前に集まってもらうのは負担になります。卒業論文や研究、資格試験の日程とも重なります。移動と時間を求めるだけの中身があるかどうかは、先に考えておきます。
準備に人手を割けるか
会場、進行、書類、当日の受付と、内定式にはそれなりの手間がかかります。採用の担当者が他の業務と兼任している会社では、9月は次年度の募集準備とも重なります。無理に開いて準備が粗くなるくらいなら、日程をずらすほうが内定者への印象はよくなります。
60分で組む内定式のプログラム
60分の組み立て例
プログラムは、式典の部分と交流の部分に分けて考えると組み立てやすくなります。内定者が数人の会社なら、次のような60分でも形になります。
内定者が数人の会社での内定式プログラム例(60分)
- 開会・当日の流れの説明(5分)
- 代表からの挨拶(10分)
- 内定通知書または内定証書の交付(10分)
- 内定者の自己紹介(1人2〜3分・15分)
- 入社までの流れと提出書類の説明(15分)
- 閉会・写真撮影(5分)
内定証書を新しく作るかどうかは、会社の判断で構いません。すでに内定通知書を郵送しているなら、当日は改めて手渡す形にすれば足ります。書式を一から用意する余裕がなければ、通知書の交付だけで式の形になります。
代表の挨拶が長くなると、その後の予定が押します。話す内容と持ち時間は事前に共有しておきます。
内定者が5人以下のとき
人数が少ないと、壇上と客席を分ける形式は落ち着きません。会議室のテーブルを囲む形にして、自己紹介と質疑に時間を寄せると、同じ60分でも中身が濃くなります。
先輩社員を1〜2人同席させると、内定者の質問が出やすくなります。人事以外の社員が入ることで、入社後の仕事のイメージも伝わります。ただし、当日の進行役は採用の担当者が務めてください。時間の管理は主催者にしかできません。
オンラインで開く場合
同じ調査によると、内定式の実施形態は全体で対面92.5%、オンライン6.9%でした。300人未満の会社では対面89.4%、オンライン6.7%です。遠方の学生が多い、日程がどうしても合わないといった事情がなければ、対面が選ばれています。
オンラインで開くなら、自己紹介と質疑をどう回すかを先に決めておきます。画面越しでは沈黙が長く感じられるため、指名の順番を決め、1人あたりの時間を短く区切ると進みます。書類の提出や説明は、当日ではなくメールで完結させると確実です。
内定式の案内はいつ、何を書いて出すか
出す時期
9月は、学生にとって卒業論文の中間発表や他社の内定式と重なる時期です。日程と場所が決まったら、遅くとも3週間前には案内を出します。出席の可否を確認する期限も、同じ文面に入れておきます。
案内に書くこと
案内メールや案内状には、次の項目を入れておくと問い合わせが減ります。
- 日時(開始と終了の目安の両方)
- 場所(最寄り駅からの経路、受付場所、入館方法)
- 当日の流れ(所要時間の目安)
- 持ち物(提出書類がある場合はその一覧)
- 服装(スーツか私服か。指定しないなら「服装は問いません」と書く)
- 欠席・遅刻の連絡先(担当者名と電話番号)
- 交通費の扱い(支給するかどうか、支給する場合の精算方法)
服装と交通費は、書いていないと必ず質問が来ます。指定しないと決めたなら、その旨をはっきり書いてください。
欠席と交通費の扱い
内定式は入社前の行事で、内定者はまだ働いているわけではありません。参加できない事情がある学生に、出席を強く求めることは避けます。欠席した内定者には、当日の資料と説明内容を個別に送れば足ります。
交通費に支給の義務はありませんが、遠方から呼ぶなら実費の扱いを先に決めておきます。当日になって自己負担だと伝えるより、案内の段階で書いておくほうが親切です。
案内と当日で気をつけること
保護者の同意を取り付けない
内定式で保護者向けの説明や、保護者の同意書の提出を求める会社があります。政府の要請では、内定の承諾に保護者の同意を強要することは、学生の職業選択の自由を妨げる行為に該当し得ると明記されています。いわゆるオヤカクと呼ばれる運用です。
保護者に会社を知ってもらうこと自体が問題なのではなく、同意を条件にすることが問題になります。案内を送る、会社案内を渡すといった形にとどめてください。
他社の選考をやめるよう求めない
同じ要請では、内定や内々定と引き換えに他社への就職活動をやめるよう強要する行為(オワハラ)についても、行わないよう求めています。内定式の場で、他社の選考状況を全員の前で確認するような進行は避けます。
10月1日は、ハラスメント防止が義務になる日でもある
2026年10月1日から、改正男女雇用機会均等法が施行され、すべての事業主に、求職者等に対するセクシュアルハラスメントを防ぐための雇用管理上の措置が義務づけられます。主な対象は採用面接や会社説明会ですが、内定式や内定者懇親会も、入社前の学生と社員が接する場です。懇親会での言動については、参加する社員にも事前に共有しておきます。
内定式を開かない場合の代わりの打ち手
式典を開かないと決めた場合でも、10月からの数か月を放っておくと、内定者の不安は増えます。次のような形に置き換えると、手間を抑えながら接点を保てます。
- 内定者ごとの個別面談(30分程度・オンライン可)
- 入社までの予定と提出書類を1通のメールにまとめて送る
- 配属予定の部署の社員との顔合わせ(少人数の食事会など)
- 入社前の課題や資格取得の案内(強制はしない)
接点の作り方は、内定者フォローの施策例や内定者研修の組み立て方にまとめています。式の代わりに何をするかを考えるときの材料になります。
内定辞退が出たときの募集の立て直し
内定式やその後の面談で、辞退の申し出が出ることもあります。10月の時点で欠員が分かったなら、次の募集は早く動かすほど選択肢が残ります。新卒の追加募集を検討するなら、秋採用の進め方も参考になります。
中途やアルバイトで補うなら、まず求人を出す先を決めることになります。
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まとめ
内定式は法律で決められた行事ではなく、10月1日という日付も政府の要請にもとづくものです。従業員300人未満の会社では10月1日の開催は48.8%、16.3%は開催の予定がないと答えています。日程と形式は自社の事情で決めてかまいません。
開くと決めたら、目的を一文にしてからプログラムを組みます。内定者が数人なら60分でも形になります。案内は日程が決まった時点で出し、服装と交通費、欠席の連絡先まで書いておくと問い合わせが減ります。
保護者の同意を条件にすることや、他社の選考をやめるよう求めることは、政府の要請で避けるべき行為とされています。2026年10月1日からは求職者へのセクシュアルハラスメント防止も義務になります。当日に関わる社員にも、事前に共有しておいてください。
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