「リスキリング支援コース(事業展開等リスキリング支援コース)」は、新規事業の立ち上げや社内DX(デジタル化)等に必要な訓練を実施した企業に対し、訓練費用(経費)と訓練中の賃金の一部が助成され得る制度です。
ただし、『受講後』では原則間に合いません。申請は期限(計画届・支給申請)が重要で、要件を外すと不支給になり得ます。

目次
まずは要点(中小企業がまず押さえる3つ)
- 時限措置:本コースは令和4〜8年度の期間限定として創設(毎年度、運用・要件が見直される可能性があります)。
- 計画は“前”:原則、訓練開始日の6か月前〜1か月前の間に「職業訓練実施計画届」等を提出(受付=支給確約ではありません)。
- 締切は2つ:①計画届の期限、②訓練終了後2か月以内の支給申請期限。どちらも外すと不利です。
※本記事の数値(助成率・上限・賃金助成など)は、厚生労働省の最新リーフレット(令和7年4月1日版)に基づく前提で整理しています。制度改定が入る可能性があるため、申請前に最新情報をご確認ください。
3分セルフ診断:あなたの会社は“対象でしょうか”?(はい/いいえ)
まずは“申請が可能”かどうかを確認します。はいが多いほど可能性は上がります(最終判断は管轄労働局)。
STEP1:会社・対象者(雇用保険)の確認
- はい:訓練を受けるのは雇用保険被保険者(原則)である
- はい:会社は雇用保険適用事業所である
- はい:研修の時間中も賃金台帳・出勤簿など証憑を整備できる
STEP2:訓練内容(リスキリング支援コース“らしさ”)
- はい:訓練はOFF-JT(業務と区別して行う訓練)で実施できる
- はい:訓練時間は10時間以上を確保できる
- はい:内容が次のいずれかに明確に紐づく(説明できる)
└ 新規事業・新商品/サービスなど新たな分野に必要な知識・技能
└ 事業展開は行わないが、社内のDX(デジタル化)やGX関連業務に必要な知識・技能
STEP3:スケジュール(“期限から逆算”できるか)
- はい:訓練開始の1か月前までに計画書類一式を提出できる(できれば余裕を持つ)
- はい:訓練終了後、2か月以内に支給申請書類を提出できる
- はい:訓練費用は、支給申請までに全額支払できる(返金・値引きの取り扱いも理解している)
判定の目安
はいが7つ以上:かなり前向きに検討できる可能性があります。
はいが4〜6つ:制度設計(訓練の組み立て・証憑)でとおる可能性があります。
はいが3つ以下:まずは対象者・訓練時間・期限のどれかを満たす設計へ。
助成額の早見:上限・賃金助成
結論:中小企業は「経費75%」+「賃金1,000円/時」が基本(上限あり)
| 区分 | 中小企業 | 大企業 | 補足 |
|---|---|---|---|
| 経費助成率 | 75% | 60% | 訓練費用(対象経費)の一定割合 |
| 賃金助成額(1人1時間) | 1,000円 | 500円 | 上限時間あり(訓練メニューにより異なる) |
| 1事業所1年度あたり助成限度額 | 1億円 | 年度合計の上限 | |
受講者1人あたりの「経費助成」上限(訓練時間で決まる)
| 実訓練時間 | 中小企業(上限) | 大企業(上限) |
|---|---|---|
| 10時間以上100時間未満 | 30万円 | 20万円 |
| 100時間以上200時間未満 | 40万円 | 25万円 |
| 200時間以上 | 50万円 | 30万円 |
要注意:eラーニング・通信制・定額制(サブスク)は“経費のみ”になりやすい
- eラーニング/通信制/定額制サービスは、原則経費助成のみ(賃金助成は対象外)になり得ます。
- 定額制サービスによる訓練の経費助成は、受講者1人1か月あたり2万円が上限とされています。
- 制度改定で要件が追加・明確化されることがあります(例:eラーニングの情報公開、LMSでの進捗管理など)。

申請の流れ: “期限から逆算”で失敗を防ぐ
リスキリング支援コースは、「計画 → 実施 → 証憑 → 支給申請」の順。
とくに重要なのは、計画届の提出期限と支給申請期限です。
STEP0:社内の準備
- 職業能力開発推進者の選任
- 事業内職業能力開発計画の策定・社内周知
- 「今回の訓練が何のためか(新規事業/DX・GX)」を文章で説明できる状態にする
STEP1:計画届の提出(訓練開始の6か月前〜1か月前)
- 「職業訓練実施計画届」等を、訓練開始日の6か月前から1か月前までに提出
- 本コースでは、事業展開などの内容を記載した「事業展開等実施計画」の提出が求められます
- 重要:計画届が受理されても、支給が確実になるわけではありません(審査は支給申請時に一括で行われる運用になっています)
STEP2:訓練の実施(OFF-JTとして切り分ける)
- 出勤簿・タイムカード等で、訓練時間と勤務時間が区別できる形に
- カリキュラム、受講記録、成果物など“訓練した証拠”を揃える
STEP3:費用の支払い(支給申請までに全額)
- 支給申請までに訓練経費を全額支払う
- 返金・実質値引きが発生すると、「全額負担」要件を満たさない扱いになり得るため要注意
STEP4:支給申請(訓練終了日の翌日から2か月以内)
- 支給申請書、助成額算定資料、OFF-JT実施状況報告書、振込通知書、賃金台帳、出勤簿などを提出
- 不足・不整合があると差し戻しや不支給リスクが上がるため、チェックリストで確認

不支給を防ぐチェックリスト(落とし穴20)
制度初心者の会社ほど、「要件は満たしていたつもり」で落ちやすいポイントがあります。提出前に、次をチェックしてください。
A. 訓練要件(内容・時間・形式)
- □ 訓練は10時間以上である
- □ OFF-JTとして、通常業務と区別できる(記録がある)
- □ 「新規事業」または「DX・GX」への関連性が説明できる(事業計画とつながる)
- □ 事業展開の内容は、訓練開始日から3年以内に実施予定または6か月以内に実施済みの範囲に収まる
B. 期限・提出(ここが最重要)
- □ 計画届は訓練開始日の6か月前〜1か月前に提出できている
- □ 支給申請は訓練終了日の翌日から2か月以内に提出できる
- □ 計画届の受理=支給確約ではないことを理解し、証憑を厚めに用意している
C. 経費(支払い・返金・相場)
- □ 支給申請までに訓練経費を全額支払っている(振込証憑がある)
- □ 研修会社から返金・実質的な値引き(ポイント還元等を含む)を受けていない/受ける予定がない
- □ 受講料が同種講座と比べて著しく高額ではない(説明資料を準備)
D. eラーニング/定額制(該当する場合)
- □ eラーニングの講座情報が、計画届提出時点で訓練機関のWeb上に公開されている(概要・連絡先・申込導線など)
- □ LMS等で、終了日・進捗率/進捗状況が確認できる
- □ 定額制サービスは2万円/月/人が上限であることを踏まえて試算している
E. 訓練機関(研修会社)
- □ 研修会社が、定款・登記簿等で事業目的に教育訓練事業が記載されている法人である(大学等の例外あり)
参考:助成金対象になり得る研修例(採用業務DX・AI活用講座)
リスキリング支援コースの「DX関連業務に必要な知識・技能」に沿う形で設計した、採用業務向けの研修例です。
※助成金の支給可否は最終的に管轄労働局の判断です(支給確約はできません)。
研修の選び方:制度の“DX定義”に沿う設計ポイント
リスキリング支援コースで通しやすい研修は、ざっくり言うと「事業計画の言葉で説明できる研修」です。
研修タイトルがDXっぽくても、事業展開等実施計画に落とせないと厳しくなります。
ポイント1:研修を「業務プロセス」に紐づける
- NG例:とりあえずAIの基礎を学ぶ(業務適用が曖昧)
- OK例:採用業務のうち「求人原稿作成」「応募者対応」「面接」「分析」のどこをDXするかを明確化
ポイント2:成果物(アウトプット)を先に決める
審査で強いのは、研修後に社内に残る“証拠”がある設計です。
- 求人票(改善前/後)
- スカウト文面テンプレ
- 日程調整の自動化フロー図
- 採用ファネル(歩留まり)分析シート
ポイント3:「研修会社の要件」と「形式」を早めに確認する
- 研修会社の定款・登記簿上の要件(教育訓練事業の記載)
- eラーニングの場合は賃金助成がつかない等、助成設計が変わる
- 同時双方向のオンライン研修など、形式ごとの扱いは労働局確認が安全

研修例:採用業務DX・AI活用講座(※支給確約はしません)
「採用業務」は、媒体費高騰・応募数減・事務作業増で、中小企業ほどDXの効果が出やすい領域です。
そこで研修例として、助成金の考え方(DX関連の業務に必要な知識・技能)に沿う形で設計した『採用業務DX・AI活用講座』をご紹介します。
講座の概要(営業資料ベース)
- 研修時間:合計18時間(座学9h+実践9h)
- 研修期間:週3〜6時間 × 4週間
- 実施最低人数:3名〜
- 研修費用:20万円/1名(税別)
- 想定する学習内容:採用業務のDX・AI実戦(求人検索エンジン対策、生成AIでの求人票・スカウト作成、応募者対応の自動化、面接DX、採用データ分析など)
概算シミュレーション(中小企業・3名受講の例)
※下記は制度要件を満たした場合の概算です。支給を確約するものではありません。最終判断は管轄労働局です。
| 項目 | 計算式(例) | 金額(概算) |
|---|---|---|
| 研修費用総額 | 20万円 × 3名 | 600,000円(税別) |
| 経費助成(中小企業 75%) | 60万円 × 75% | ▲450,000円 |
| 賃金助成(1,000円/時) | 1,000円 × 18時間 × 3名 | ▲54,000円 |
| 実質負担額 | 600,000円 − (450,000円 + 54,000円) | 96,000円(= 1人あたり約32,000円) |
この講座は、実訓練時間が10時間以上で、かつ経費助成上限(10〜100時間未満:中小企業30万円/人)にも収まりやすい設計です。
もちろん、計画届の期限・証憑・研修内容の紐づけが崩れると不支給になり得るため、申請前に労働局確認をおすすめします。
参考:助成金対象になり得る研修例(採用業務DX・AI活用講座)
リスキリング支援コースの「DX関連業務に必要な知識・技能」に沿う形で設計した、採用業務向けの研修例です。
※助成金の支給可否は最終的に管轄労働局の判断です(支給確約はできません)。
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FAQ(よくある質問)
Q1. 「リスキリング支援コース」とは何ですか?
A. 人材開発支援助成金の一つで、新規事業の立ち上げや社内DX・GX等に必要な知識・技能を習得させる訓練を実施した場合に、訓練経費や訓練中賃金の一部が助成され得るコースです(最終判断は管轄労働局)。
Q2. どんな会社・従業員が対象になり得ますか?
A. 原則として、雇用保険適用事業所の事業主が、雇用保険被保険者に対して訓練を実施するケースが基本です。役員や雇用保険に入らない対象者は対象外になり得るため、事前に労働局で確認しましょう。
Q3. 助成額はどれくらいですか?
A. 代表的には、中小企業で経費助成75%、賃金助成1,000円/時が目安です。さらに経費助成には「訓練時間帯別の上限(30万/40万/50万円など)」があるため、研修単価と時間のバランスが重要です。
Q4. eラーニングや通信講座でも使えますか?
A. 対象になり得ますが、eラーニング・通信制・定額制サービスは「経費助成のみ」になるなど扱いが変わりやすく、追加要件(情報公開、LMSでの進捗管理等)もあるため、必ず最新要件を確認してください。
Q5. 計画届はいつまでに出せばいいですか?
A. 原則、訓練開始日の「6か月前〜1か月前」の間です。ギリギリ提出は差し戻しが致命傷になるため、余裕を持って逆算するのが安全です。
Q6. 計画届が受理されれば、必ず支給されますか?
A. いいえ。計画届の受理は支給確約ではありません。審査は支給申請時に一括で行われるため、訓練の実態・証憑・経費負担などで不支給になり得ます。
Q7. 研修費を後から返金してもらった場合はどうなりますか?
A. 返金や実質的な値引き(ポイント還元等を含む)があると「事業主が経費を全額負担した」とみなされず、支給対象経費から外れる可能性があります。契約条件は事前に確認してください。
Q8. 研修会社はどこでも良いですか?
A. 制度改定で、研修会社(教育訓練機関)に要件が設けられる場合があります(例:定款・登記簿等に教育訓練事業の記載がある法人)。候補の研修会社が要件を満たすかは早めに確認しましょう。
まとめ:最短で失敗しないコツは「期限→設計→証憑」
- 期限:計画届(6か月前〜1か月前)と支給申請(終了翌日から2か月以内)を逆算
- 設計:DX・GX/新規事業の“事業計画の言葉”で研修を説明できる形に
- 証憑:OFF-JTの実態、出勤簿・賃金台帳、カリキュラム・成果物、支払い証憑を厚めに
参考:助成金対象になり得る研修例(採用業務DX・AI活用講座)
リスキリング支援コースの「DX関連業務に必要な知識・技能」に沿う形で設計した、採用業務向けの研修例です。
※助成金の支給可否は最終的に管轄労働局の判断です(支給確約はできません)。
参考:申請前に必ず、厚生労働省の「人材開発支援助成金」ページと、最新の「事業展開等リスキリング支援コース」リーフレット/詳細版を確認してください(年度改定の可能性あり)。
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