<2023年度>中小企業の賞与支給に関する実態調査|冬季賞与を「支給する」は53.9%。昨年冬季より「増額予定」は14.7ポイント増加

2023年も年末に差しかかり、冬季賞与の支給時期が近づいてきました。昨年から続く円安や海外情勢の緊迫化による仕入価格の上昇、賃上げや社会保障の適用拡大に伴う人件費の増加など、中小企業を取り巻く環境は依然として厳しい状況です。

そうした中、今冬の賞与支給について、中小企業はどのように計画しているのでしょうか。 株式会社ネットオンでは、2023年冬季賞与について、採用業務クラウド「採用係長」の登録ユーザーである中小企業の採用担当者を対象にアンケート調査を実施しました。

アンケート回答者属性

今回、アンケートにご回答いただいた事業所様の属性は以下の通りです。
従業員規模が20名以下の事業所様を中心に、「飲食」、「建築・不動産」、「介護・福祉」、「医療」など様々な事業所様にご回答いただきました。
また、地域につきましても、都市部を中心に全国的に散らばり、あらゆる地域の事業者様にご回答いただきました。

業種

従業員規模

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都道府県

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冬季賞与を「支給する」は、53.9%

はじめに、2023年の冬季賞与の支給予定について質問しました(n=284)。

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その結果、53.9%が「支給する」と回答。昨年冬季(61.5%)より7.6ポイント減少することが明らかになっています。
さらに賞与支給の有無を業種別に確認したところ、業種ごとに以下のような違いが見られました(ここではアンケート対象の22業種のうち、8事業所以上から回答があった12業種をグラフ化しています)。

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※()内の数字は回答数を表示
上記の12業種のうち、7業種において「支給する」が「支給しない」を上回っています。「工場・製造」「医療」は、80%以上が支給予定です。

一方、昨年冬季に62.5%が「支給する」と回答した「運輸」は、支給予定の事業所が30%未満に留まりました。大幅な減少からは、燃料価格の高騰の影響がうかがえます。

約4割が昨年冬季と比べて、賞与額を「増額する」

続いて、Q1で「支給する」と回答した事業所(n=153)へ、昨年の賞与支給額からの変動について質問したところ、「変わらない」がもっとも多く、49.7%を占めました。

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「増額予定」と回答した事業所は、39.9%。昨年(25.2%)よりも14.7ポイント増加しています。

増額理由の1位は「従業員の意欲向上のため」

Q2で「増額予定」と回答した事業所(n=61)へ、その理由について質問しました。
もっとも多かったのは「従業員の意欲向上のため」で、70.5%が回答。2位は「業績が好調のため」(50.8%)。3位には「物価高騰による生活費増加に対応するため」(42.6%)が続いています。

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今回50.8%の事業所が選択した「業績が好調のため」は、昨年のアンケートでは半数以下(48.6%)でした。
昨年から2.2ポイント増加しており、賞与を支給する事業所においては経営環境の改善がうかがえます。
一方で「物価高騰による生活費増加に対応するため」は、昨年冬季(29.7%)より12.9ポイント増加。物価高騰の影響を賞与に反映する事業所が大幅に増加しています。

減額理由は「業績の向上(回復)が見込まれていないため」が1位

Q2で「減額予定」と回答した事業所(n=16)にも理由を質問しました。

グラフ(Q4.減額額由として当てはまるものを選択してください(n=16/複数回答))

減額理由の1位は、「業績の向上(回復)が見込まれていないため」。2位は「物価高騰や円安の影響」です。
1位および2位の回答を選択した事業所の割合は、いずれも昨年より増加。特に「物価高騰や円安の影響」は、昨年(31.3%)より18.7ポイント増加しており、減額した事業所の半数が物価高騰の影響を受けていることが分かります。

支給額の最多は、基本給の「1ヵ月未満」

Q1で「支給する」と回答した事業所(n=153)へ、賞与支給額(基本給換算〇カ月)について質問したところ、「1ヵ月未満」がもっとも多く、僅差で「1カ月以上1.5カ月未満」が続きました。
賞与を「支給する」事業所の56.9%が1カ月以上2.5カ月未満での支給を予定。2.5カ月以上支給する事業所は、10.4%でした(「その他」「未定」を除く)。

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以下は、昨年冬季の賞与支給額(基本給換算〇カ月)のグラフです。

グラフ(2022年冬季賞与の支給額)

昨年との比較では「1カ月以上1.5カ月未満」が10.0ポイント減少し、「1カ月未満」が18.1ポイント増加するなど、大きな違いが見られます。

また1.5カ月以上の支給額においてもそれぞれ増加していることが分かりました(「その他」と「未定」を除く)。 さらに支給額別の変動(変わらない/増額/減額)についても確認しておきましょう。

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2.5カ月以上支給する事業所は、それぞれ50%以上が「増額」と回答。1カ月以上2.5カ月未満の事業所においても40%以上が「増額」であることが分かりました。

60.9%が年収の壁・支援強化パッケージを「知らない」

今回のアンケートでは、2023年10月から開始した「年収の壁・支援強化パッケージ」(※)についても質問しています。
すべての事業所(n=284)へ、「年収の壁・支援強化パッケージ」を知っているかどうかについて質問したところ、「知らない」事業所が過半数を占める結果となりました。中小企業の人手確保を支援する施策でありながら、十分に認知されていない現状が明らかになっています。

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※年収の壁・支援強化パッケージは、年収の壁(106万・130万円)による働き控えの当面の対策として2023年10月から実施されている政府の施策です。 社会保険への加入による手取り収入の減少や、年収増によって配偶者の扶養から外れることを回避するために、企業への助成金支給および被扶養者認定の円滑化が行われます。

3割超が年収の壁を意識せずに働ける環境づくりに「取り組んでいる」

年収の壁・支援強化パッケージについての説明を行ったうえで、今後の活用予定について質問したところ(n=284)、61.6%が「取り組む予定がない」と回答しています。

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一方、「すでに取り組んでいる」事業所は7.0%。「取り組む予定」がある事業所を含めると38.3%です。人手不足の解消に向けて積極的な姿勢の中小企業も少なくないことが明らかになっています。

賞与支給に関する意見・課題は、「原価が上がり支給できない」「多く支給しても税金が高い」「制度の改正・改善が必要」など

賞与支給についての課題や意見(自由回答)を求めたところ、業績に関する課題や現行の制度についての意見などの回答がありました(n=284)。 ここでは33件の回答の中から、一部を抜粋して紹介します(可読性を高めるため、文言を調整済み)。

経営状況が厳しい
※カッコ内は、業種/従業員規模/所在地

・物価上昇で原価が上がり、支給できなくなった(飲食/~4名/高知県)
・コロナ禍以降思うように売り上げが回復しないため出したくても出せない(飲食/10~19名/静岡県)

給与・賞与額をアップしたい
※カッコ内は、業種/従業員規模/所在地

・もう少し支給額を上げたい(運輸/~4名/静岡県)
・もう少し賞与額を増やしたい(介護・福祉/5~9名/東京都)
・もっと売上を上げて、従業員の給料も上げるようにしたい(飲食/30~49名/京都府)

現行の制度に関する意見
※カッコ内は、業種/従業員規模/所在地

・介護報酬の内容が給与や賞与を増やすためには厳しい。年収の壁・支援強化パッケージについても事業所の負担を増やす(介護・福祉/10~19名/茨城県)
・パート労働者は賞与を出すとその分勤務期間を減らすことになるため、評価がしづらい(医療/~4名/神奈川県)
・今の介護報酬制度では職員が満足できる給与、賞与は支給できない(介護・福祉/~4名/宮城県)
・ボーナスを多めに支給しても、賞与に対する税金が高すぎる(建築・不動産/10~19名/東京都)

まとめ

今回の調査では、2023年冬季賞与の支給についてのアンケートを実施しました。
その結果、53.9%の事業所が賞与を支給することが分かりました。前年の冬季賞与と比べて7.6ポイントの減少となった一方、支給額については「増額する」事業所が昨年より14.7ポイントの増加となっています。
コロナ禍以降、ウクライナ侵攻や円安、中東情勢の緊迫化など、中小企業にとって厳しい状況が続いており、賞与支給にもその影響が出ていることは間違いないでしょう。

しかし、今回のアンケートでは「増額予定」の事業所が増加するなど、プラスの要素を確認することもできました。

また賞与の支給理由1位は、昨年と同じく「従業員の意欲向上のため」です。賞与の重要性を認識している中小企業が多く、その考えは自由回答からもうかがえます。

さらに今回のアンケートでは、「年収の壁・支援強化パッケージ」についての質問を実施。施策の認知不足が明らかになりましたが、4割程度は取り組みに前向きな姿勢であることも分かりました。
施策の認知拡大や活用する事業所の増加によって、パート・アルバイト従業員の活躍の場が広がり、業績の向上ひいては賞与の支給・増額へとつながっていく。そんな良い連鎖が生まれることを期待したいところです。

採用業務クラウド『採用係長』を運営する株式会社ネットオンは、採用業務の効率化や人材確保を支援するサービスの提供を通じて、中小企業の成長に貢献してまいります。

調査名 2023年冬季賞与の支給に関するアンケート調査
調査対象 『採用係長』利用事業所の人事・労務担当者様
有効回答数 284
調査期間 2023年11月2日(木)~11月24日(金)
調査方法 インターネット調査
調査結果の注意点 %を表示する際に小数点第2位で四捨五入しているため、単一回答の場合は100%、複数回答の場合は合計値に一致しない場合があります。

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馬嶋 亜衣子(samusillee)

採用・キャリア関連、医療分野を中心に執筆を行うフリーランスライター。 各種メディアの取材ライティングやSEOライティング、採用HPのライティングなどに携わっています。

監修者
監修者
辻 惠次郎

ネットオン創業期に入社後、現在は取締役CTOとしてマーケティングからプロダクトまでを統括。
通算約200社のデジタルマーケティングコンサルタントを経験。特に難しいとされる、飲食や介護の正社員の応募単価を5万円台から1万円台に下げる実績を作り出した。
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