通年採用とは?メリット・デメリットや成功する活用ポイントをわかりやすく解説

通年採用 とは

「人員不足」「即戦力となる人材の不足」「採用後のミスマッチ」などでお困りではないでしょうか?
本記事では、こういった悩みを解消できる「通年採用」について解説します。

通年採用とは

「通年採用」とは、期間を設定せず通年で中途・新卒採用活動を行うことです。

通年採用は、もともと欧米や外資系企業で行われてきました。海外では、日本のように新卒を一括採用するという慣行はなく、求人募集の方法も企業によってさまざまです。

海外の企業では、社内のポジションに空きが出たときに既卒(中途)・新卒を問わず求人募集を行います。経験が少ない人のためのポジションの募集はありますが、新卒者のみに限った枠ではありません。

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通年採用が普及した背景

「新卒一括採用」においては、知名度が高い有名企業や大手希望に学生が集まりやすい傾向があります。そのため、あえてタイミングをずらして採用活動を行う企業も増加していますが、経済環境・事業構造の変化や、人材の多様化などにより、画一的な採用ではなく「通年採用」の必要性が高まっています。

経団連と大学側の通年採用に対する合意

経済団体連合会(以下、経団連)は、2019年4月新卒の学生の就職活動について「通年採用」を拡大することで大学側と合意したことを正式に発表しました。従来の春季一括採用に加え、在学中に専門分野の勉強やインターン(就業体験)に時間を割いた学生らを卒業後に選考するなど複線型の採用を進めるようです。

通年採用を拡大したことにより、一括採用との差別化がどのように行われ、どのようなメリットが発生するのでしょうか。

通年採用を実施する目的

通年採用を実施する主な目的は、組織の状況に合わせて優秀な人材を柔軟に確保し、競争力を維持・向上させることです。特に、現在の採用市場が「売り手市場」である状況で、以下の目的が際立ちます。

■優秀な候補者を逃さない
売り手市場では競争が激しく、優れた候補者はすぐに他の企業に引き抜かれてしまうことがあります。通年採用を実施することで、いつでも優秀な候補者を迎え入れる体制を整え、競争相手よりも速く行動できます。

■採用の安定性
通年採用を実施することで、採用プロセスが安定し、急な人材需要にも対応できます。緊急的な欠員をはじめとした予測不能な要因に左右されず、組織の人材戦略を継続的に実行できます。

■選考の深化
時間に余裕がある通年採用では、選考プロセスを深化させ、候補者のスキルや適合度をより詳細に評価できます。これにより、ミスマッチを減少させ、採用した候補者の長期的な満足度を向上させます。

通年採用を導入している企業の割合

株式会社リクルートが公表したデータによると、2023年卒の通年採用の実施状況は下記のとおりです。4社に1社が通年採用を実施しており、検討中の企業も合わせると38.1%に上ります。

実施している 実施していない 検討中 わからない
26.7% 45.5% 11.4% 16.4%

(出典:新卒・中途採用横断レポート 2012年度~2021年度における、新卒と中途の採用比率は3対7|株式会社リクルート

なお、業種別に見ると、「医療・福祉」は67.6%、「建設業」では37.4%、「飲食店・宿泊業」で35.5%など、人手不足が課題となっている業界で通年採用が活発であることが分かります。

通年採用の実施時期

「通年採用」と言っても、一年中募集しているわけではなく、特定の時期に募集を集中させているケースもあります。通年採用のパターンは、下記のとおりです。

  • 年2回:春(3月~4月)と秋(9月~10月)
  • 年3回:春(3月~4月)と夏(7月~8月)と秋(9月~10月)
  • 年3回:春(3月~4月)と夏(7月~8月)と冬(1月~2月)
  • 一年中いつでも

通年採用と一括採用、中途採用の違い

「通年採用」と「一括採用」には、どのような違いがあるのでしょうか?

通年採用とは

企業が年間を通し、そのときの必要性に応じて自由に採用活動を行うことです。多様性への対応やグローバル人材の必要性が高まっている近年、通年採用によって優秀な人材の獲得を目指す企業が増えています。

一括採用とは

一般的な「新卒一括採用」のことで、企業が卒業予定の学生(新卒者)を対象に年度毎に一括して求人を募集し、在学中に採用試験を行って内定を出し、卒業後すぐに入社することです。実は、世界に類を見ない日本独特の雇用慣行と言われています。

通年採用のメリット・デメリット【企業側】

通年採用のメリットとデメリットについて、「企業側」の視点から見ていきましょう。

メリット

まず、通年採用におけるメリットを見ていきましょう。

  • 多様な人材からの応募が期待できる
  • 時間をかけて余裕を持った選考ができる
  • 最適な時期で必要なポジションの採用ができる
  • 内定辞退後のリカバリーが可能

多様な人材からの応募が期待できる

通年採用を行うことで、既卒、第二新卒や海外からの留学生、海外への留学経験者などへの対応が可能になり、多様な人材からの応募が期待できます。

時間をかけて余裕を持った選考ができる

採用時期を設定しないため、企業側・応募者側ともに時間をかけて選考を検討できます。そのため、企業側はその応募者が「本当に必要な人材なのか」を慎重に考えることが可能です。また、応募者側も「本当にその企業で働きたいのか」をじっくり考えられるので、通常よりもミスマッチを防ぐ採用を行えます。

最適な時期に必要なポジションの採用ができる

入社時期が固定される一括採用とは異なり、第二新卒や卒業時期が異なる留学生なども対象に入り、欠員時や事業拡大時など最適な時期での採用を行えます。また、数合わせのための内定を出す必要がありません。

内定辞退後のリカバリーが可能

通年採用の最大のメリットは、内定辞退後もすぐに候補者の補充が行えることです。一括採用の場合、辞退されることを想定して多めに内定を出さなければなりません。数合わせの採用となり、余剰人員が発生する可能性があります。

デメリット

次にデメリットについて、見ていきましょう。

  • 採用コストが高くなる
  • 採用担当者への業務負担が大きい
  • 応募数の低下、応募者の志望度の低下
  • 時期によっては一括採用に競り負ける
  • 教育・研修が非効率的

採用コストが高くなる

一年を通して分散した採用活動を行うことで、広告費用や研修などコストがかかります。

採用担当者への業務負担が大きい

採用活動の長期化により担当者への負担が大きくなります。研修や教育に関しても、固定された時期ではなく一人ひとりへの対応時期に差が出てしまいそれぞれに対応しなければなりません。その分の工数が増えてしまう場合もあります。

応募数の低下、応募者の志望度の低下

一括採用の時期に内定をもらえなかった学生や、滑り止めとしてさほど志望度が高くない求職者からの応募がくる可能性があります。

時期によっては一括採用に競り負ける

企業が一斉に一括採用を始める時期に採用活動に注力しないと他の企業に競り負ける(欲しい人材を先に獲得される)ことも考えられます。

教育・研修が非効率的

新入社員が入社するたびに教育・研修を実施しなければならず、コストや労力の負担が大きくなる可能性があります。

通年採用のメリット・デメリット【学生側】

次に「学生側」の視点で通年採用のメリット・デメリットを解説します。

メリット

まずはメリットについてです。

  • 自分のタイミングで就活に挑める
  • 選考への準備を万全にできる
  • 時間をかけて企業の比較検討ができる

自分のタイミングで就活に挑める

特定の採用シーズンに限定されず、自分のスケジュールに合わせて応募できるため、プレッシャーやストレスを軽減できます。急な転職を考える際にも、通年採用を実施している企業であれば応募が可能です。

選考への準備を万全にできる

履歴書や職務経歴書の作成、面接の練習、企業研究など、選考に向けた準備を焦ることなく進めることができます。これにより、求職者は自分の強みを最大限に発揮することが可能です。

時間をかけて企業の比較検討ができる

複数の企業を比較検討する時間を確保できます。企業の文化や価値観を探求し、将来的なキャリアゴールに合致する企業を選べるため、長期的に見て満足度の高い企業と出会えるでしょう。

デメリット

デメリットは下記のとおりです。

  • 効率的な就職活動になりにくい
  • 採用基準のハードルが高く感じる

効率的な就職活動になりにくい

候補者にとって選択肢が多すぎることがあるため、逆に就職活動を複雑化させ、効率性を損なう可能性があります。過剰な情報収集や面接のスケジュール調整が難しく、ストレスを増加させることがあります。

採用基準のハードルが高く感じる

通年採用では、長期間にわたって候補者を選考できるため、スキルや経験に対する要求が高まる傾向です。これが原因で、候補者は希望した企業から内定を得ることができないことがあります。

通年採用を成功させるための対策とポイント

それでは次に、通年採用を成功させるための5つ対策とポイントについて説明します。

採用体制を見つめなおす

採用活動にかかる工数や体制などを見直してみると良いでしょう。

  • 研修のマニュアル化
  • 求人広告など採用手法の再検討
  • 効率的な管理システム・ツールの導入

上記の方法を取り入れることで労力や工数を大幅に減らせます。

受け入れ体制を整える

通年採用は、一括採用のように合同で研修が行えないため、入社月をある程度固定したり、中途採用・新卒採用での合同研修などを行うことで、なるべく差がでないようにするのも一つの手です。また、入社してくる方へ個別に対応できるように体制を整える必要があります。

採用を強化する時期を設ける

一括採用が行われる時期は、志望度が高い求職者が集まりやすい傾向にあるので、採用を強化する時期を設定し、ターゲットに合わせて採用活動を行うことが効果的です。

求人募集をかけるにあたり効果的な時期については以下の記事で解説しています。
求人募集はいつが効果的?企業・求職者の動きの両方から徹底解説!

採用活動を行うエリアの拡大

首都圏エリアに限らず、地方や留学中の学生に向けてなど、採用を行っていることを多くの求職者に知ってもらうことが重要です。そのためには、求人の露出を増やすことが不可欠です。

通年採用の事例をチェックする

通年採用は浸透しはじめて間もないことから、各社で試行錯誤が繰り広げられています。既に通年採用を導入している企業の事例をチェックし、自社にとって適切な手法を取り入れてみるのも良いでしょう。

通年採用の導入企業事例

「一括採用」から「通年採用」への変化に対応して、通年採用を導入している企業がどのように通年採用を行っているのでしょうか?ここからは、各社の事例を紹介していきます。

ソフトバンク株式会社様

ソフトバンク株式会社様
画像出典:ソフトバンク新卒採用

ソフトバンク様では、「ユニバーサル採用」という名称で「通年採用」を導入しています。「ユニバーサル採用」とは、主体的に行動・選択ができる人材を採用することを基本に、以下の考えで行っています。

将来を担う人財には、自分の可能性を限定せず、意思を持って主体的に進路を考え、選んでほしい。企業は、必要な時に、必要な人財を採用する。それを実現するのが、本来あるべき普遍的(ユニバーサル)な採用だと確信し、ソフトバンクは2015年より「ユニバーサル採用」をスタートいたしました。
(ソフトバンク株式会社HP新卒採用ページより引用)

■採用形態
採用方法:30歳未満の新卒/既卒/就業者へのポテンシャル採用
入社時期:4月、7月、10月
採用人数:300~400人

ソフトバンクは、ユニバーサル採用以外にも「No.1採用」や「就労体験型インターンシップ」など、独自の選考にも力を入れています。

株式会社ファーストリテイリング様

ファーストリテイリング株式会社様
画像出典:LIFEatFR|ファーストリテイリンググループ採用情報

ユニクロに代表されるファーストリテイリング様では、採用方式を「グローバルリーダー社員」「地域正社員」の2種類の募集形態に分けています。

「グローバルリーダー社員」の採用については通年で行われています。グローバルリーダー社員を通年採用することで、応募者が「自分にとってふさわしい仕事は何か」についてしっかり考える機会を与える狙いです。

一人ひとりが仕事について真剣に考え、主体的に行動し、納得した将来が送れるように、ユニクロでは、一年中いつでも応募を受けつけています。学年、新卒・中途、国籍を問わないオープンな採用方法にすることで、みなさんが、自分にふさわしい仕事とは何かを考えるチャンスを増やし、一人ひとりが主体的に、自由に応募できるようにしています。
(株式会社ファーストリテイリングHP通年採用ページより引用)

■採用形態
採用方法:新卒/中途を問わないポテンシャル採用
入社時期:3月、9月
採用人数:200~300人

2011年12月より通年採用を開始しましたが、「新卒一括採用」という体制に疑問を感じ、早い時期から優秀な学生と働けるシステムを作ることが目的であったようです。

大学1・2年生でも選考を受けることができ、店舗でのアルバイトや長期インターンなども積極的に行っています。また、選考通過者には3年以内であればいつでも最終面接を受けられる「ユニクロパスポート」を発行するなどユニークな取り組みも。

ヤフー株式会社様

ヤフー株式会社様
画像出典:ポテンシャル採用-採用情報

ヤフー様では、2016年から新卒一括採用を完全に廃止し、「ポテンシャル採用」と「キャリア採用」を通年採用として行っています。

ヤフーは2016年10月から「新卒一括採用」を廃止し、新卒、既卒、第二新卒など経歴にかかわらず30歳以下の方であれば応募できる「ポテンシャル採用」として、通年採用を行っています。これまでの「新卒採用」と就業経験を重視する「中途採用」では、第二新卒や既卒などの方に対して平等な採用選考機会の提供ができないこと、また昨今、海外留学生や博士号取得者など就職活動の時期が多様化していることから、従来よりも柔軟な採用の枠組みが必要であるとヤフーは考えています。
(ヤフー株式会社HPポテンシャル採用ページ引用)

■採用形態
採用方法:応募時30歳以下、入社時18歳以上へのポテンシャル採用
入社時期:4月、10月
採用人数:不明※HP上に記載なし

通年採用を導入することで、各学生のスケジュールに合わせて選考を行える体制を整えており、従来の一括採用よりも優秀な人材に出会う機会を増やしています。

ポテンシャル採用については以下の記事で解説しています。
ポテンシャル採用とは?メリットや注意点を解説!【導入前にチェック】

まとめ

通年採用について、ポイントや導入事例を本記事では紹介しましたが、あくまでも自社に合った事例を取り入れることが大切です。そして、通年採用を行う上で必要なのは、「より多くの求職者に求人募集を見てもらう」ことです。

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この記事を書いた人
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コンノ

公務員として4年間、人事労務の実務経験あり。 これまで100名以上の事業者をインタビューしており、「企業や個人事業主が本当に悩んでいること」を解決できる記事を執筆します。

監修者
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辻 惠次郎

ネットオン創業期に入社後、現在は取締役CTOとしてマーケティングからプロダクトまでを統括。
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