企業の成長において、非常に重要な新卒採用。今年はどんな戦略でどんな施策を使って進めたら良いか、毎年新卒採用を行っている企業であっても悩むものです。
特に初めて新卒採用を行う場合、いざ「新卒採用をしよう!」と決まったものの、
「新卒採用はいつから行えばいいのか」
「何から始めたら良いのか」
「新卒採用に向けてどんな準備をしたら良いのか」
など悩みますよね。
新卒採用は、「募集して面接して採用して完了!」という短期決戦ではありません。
採用戦略やスケジュールを練り、さまざまな準備をして応募者を募り、面接をし、内定を出し、入社するまでフォローし、そして定着し活躍する人材まで育てる、という長期的な戦略が必要になります。
今回は初めて新卒採用を考えている企業の採用担当者に向けて、新卒採用のノウハウを流れに沿って詳しく解説します。
目次
採用スケジュールの確認
新卒採用においては、スケジュールの設定が鍵になります。では、いったい何を主軸にスケジュールを決めたら良いのでしょうか。
採用計画をもとにスケジュールを立てる
自社の経営戦略をもとにした採用計画から、入社後の研修までのスケジュールを立てておくことでスムーズに採用活動を進めることができます。以下の項目について3〜5年の計画で考えてみましょう。
- 採用したい人物像
- いつまでにどう育てるか
- 何名必要か
- 予算はどのくらいか
また、一般的な採用市場や動向について情報をキャッチしておくことも大切です。ただし、新卒の採用スケジュールは、市況や業界・業種などによって変化します。特に中小企業においては、変化に合わせた自社の採用計画をしっかりと立て、スケジュールに沿って進めることが必要でしょう。
採用スケジュールについては以下の記事で解説しています。
⇒採用スケジュールを立てよう!策定ポイントや注意点を解説
経団連のスケジュールをチェック
経団連に属している企業は、経団連の採用スケジュールに従う必要があります。一方で、経団連に属していない連非加盟企業や中小企業の場合は必ずしもそれに従う必要はなく自社の採用戦略に基づいてスケジュールを決定できます。
経団連加盟企業と選考時期が重ならないように早くから採用選考を開始し先に内定を出す企業もあります。経団連のスケジュールを把握しておくことで、全体的な採用スケジュールが俯瞰して見れるので必ずチェックしておきましょう。
採用フローの作成
採用フローとは応募、書類選考、面接、そして入社までの流れのことを指します。採用フローに決まりはなく、どうすればより多くの人材に魅力を感じて応募してもらえるか、どうすれば面接で優秀人材に動機付けを行えるか、自社で検証を繰り返しながらより良い採用フローを作っていきましょう。
採用フロー例
- 求人情報公開
- 会社説明会
- エントリーシートでの書類選考
- 筆記試験、適性検査
- 面接(複数回実施)
- 内定
採用ペルソナの設定
ペルソナとは架空の人物のことです。採用したい人材のイメージを明確にして採用ペルソナの設定をしましょう。「実際にいそうな採用したい人物像」をできるだけ具体的にイメージし設定しておくことで、選考の基準が明確になり、採用のミスマッチを防ぐことができます。
採用ペルソナ設定のポイント
採用ペルソナの設定で重要なのは、できるだけ具体的にしておくこと。以下の項目に沿って採用したい理想の人材をイメージしてみましょう。
- 性別や居住地などの基本情報
- 学歴
- 性格
- 人間関係や家族構成
- 趣味
- 価値観
- 見た目の印象
- 休日の過ごし方などのライフスタイル
採用ペルソナの調整
採用ペルソナを設定したら、採用後にどの部署に配属し、どんな活躍をしてほしいか、についても具体的に検討します。実際に対象部署のメンバーに採用ペルソナを確認してもらって調整できると良いでしょう。既存社員にとっても新入社員を迎え入れるための目線合わせとなります。
採用ペルソナを設定したら
採用ペルソナを設定したら、
- ペルソナはどんな企業を志望するか
- 自社に応募するとしたらどんなところに魅力を感じるか
- どんなふうにアプローチしたら興味を持ってもらえるか
についても考察しましょう。それをもとにどんな求人情報を記載したら良いか、どんなアプローチをしたら良いか決めることが重要です。
ただし、注意しなければならないのが、ペルソナはあくまでも理想の人物像であるということです。採用ペルソナと全く同じ人材を探し続けるのではなく、近しい特徴の人材や優先したい強みを持ち合わせた人材を採用できれば成功と考えましょう。採用ペルソナはあくまで採用活動を行う上での指針となるものです。
採用ペルソナについては以下の記事で解説しています。
⇒採用ミスマッチを回避!ペルソナを活かした求人票の作り方とは?
応募者の評価について
応募者に対してどのように評価するか、採用活動に関わる全員で共通認識を持つ必要があります。そのためには採用基準の設定を行い可視化することや実際の選考時に使用する評価シートの作成が必要です。
採用基準の設定
各面接官の主観や感覚で合否を判断してしまうと、採用のミスマッチが発生する可能性があります。採用に関わる全員で共通の判断基準を持つために、設定した採用ペルソナをもとに「採用に必要な条件・資質」を一覧にしましょう。
そして、その項目ごとに「当てはまる・やや当てはまる・どちらとも言えない・やや当てはまらない・当てはまらない」のように5段階に分け、点数化します。採用基準を明確にすることで、複数人で面接を行っても一定の基準で合否を判定できます。
ただし、応募者が採用基準をクリアしていてもミスマッチは起こり得ます。採用ペルソナだけを基準とするのではなく、既存社員とのバランスも考慮し設定しましょう。優秀な人材を採用するのではなく、あくまで自社に合う人材、自社で定着し活躍する人材を採用するということを共通認識として持つことが重要です。
採用基準につきましては以下の記事で解説しています。
⇒採用基準の作り方は?|マッチする人材の見極めと定着のポイント
面接評価シートの作成
採用基準を設定したら、面接官全員の目線を合わせるため面接評価シートを作成しましょう。どういったポイントで応募者を見るか、なぜこの項目が必要か、など選考が始まる前に意図や目的を共有しておきます。
面接評価シートには、以下のような項目に自社オリジナルの採用基準を盛り込むと良いでしょう。
面接評価シート項目例
- 応募者情報
- 第一印象(身だしなみ・視線・表情)
- 話し方や声の大きさ
- 志望動機
- 自己PR
- 成功体験
- 失敗体験
- 主体性
- 行動力
- 課題発見力
- コミュニケーション能力
- 向上心
- ストレス耐性
- 面接官所見
- 合否
採用サイトの作成
「この会社で働いてみたい」と興味を持ってもらえるような採用サイトを、企業サイトとは別で作成できると良いでしょう。採用サイトがあることで、会社概要や基本情報を紹介するだけではなく、求職者へのメッセージや求める人物像についてより詳しく伝えることができます。
また、求人媒体を利用するだけでなく、自社の採用サイトで求職者へ向けてアピールを行い、エントリーまで誘導できると良いでしょう。入社したい業界や職種を決めている意識の高い応募者ほど、代表的な求人媒体だけでなく、検索エンジンなどキーワード検索し情報収集する傾向にあります。
応募者集めのための媒体選定
応募者を集めるために利用する求人媒体を選定します。リクナビやマイナビなどの新卒向け就活サイトへの掲載が代表的ですが、以下のような方法も合わせて検討すると良いでしょう。
- 新卒生向けの合同企業説明会に出展
- 大学の就職課・キャリアセンターへの求人掲載
- 自社求人サイトをリスティング広告などのネット広告に出稿
- Indeedに掲載
面接の実施
面接は応募者と企業が一番初めに一対一で接点を持つ場です。スケジュールや心構えを面接官の間で共有し、事前準備をしっかり行いましょう。
また、面接官は複数いることが望ましいです。面接での進行や応募者を見るポイントなど役割を分担することができ、面接内容のフィードバックし合うこともできます。合否に関しても複数の目があった方が偏りなく候補者を判定できます。
面接官の心構え
企業も評価されている
面接官が応募者を評価する、と考えがちですが、応募者も企業を評価しています。「この会社に入りたい」と意欲を持ってもらえるよう、企業も評価されているという視点を忘れないで臨みましょう。自然と立ち振る舞いや姿勢にも現れ、応募者にも伝わるはずです。
企業の魅力と仕事の厳しさ両面を開示する
応募者を惹きつけるために企業の良い点・魅力ばかりを伝えるのではなく、時には仕事の厳しさや企業の課題も開示することも大切です。
マイナス面を開示する理由は、入社後に「イメージと違う」と早期退職が起こるとお互いにとってデメリットが大きいためです。企業の実情を理解してもらった上で、ビジョンに共感し、共に頑張れる仲間を採用しましょう。
面接官は会社の顔である
面接は選考の場でありますが、合否に関わらず応募者は企業のイメージを何かしら持ち帰ります。特に新卒採用であれば仲間うちで共有したり、SNSで情報交換も積極的に行う時代です。面接官であると同時に会社の顔であるという心構えが大切です。
また、採用担当者や面接官が魅力的で、「一緒に働きたい」と入社を志望するケースも考えられるでしょう。しかし、入社後に机を並べて一緒に働けるとは限りません。そのため、どの応募者に対しても公平な態度で接することが必要です。
面接の事前準備
面接を行うにあたっての事前準備を行いましょう。ただし、選考を進めていくうえで改善した方が良いことが発生した場合は、その都度柔軟に見直すことも必要です。
事前準備
- 面接場所は明るく清潔感のある部屋を選ぶ
- 面接の進め方・流れを決める
- 作成した面接評価シートを基に面接での質問内容を考えておく
- 面接官は複数にし、役割りを決めておく
- 面接ロープレの実施
また、採用にはスピード感も大切です。「応募したけど企業側から何もリアクションがない」となると他社へ流れてしまう可能性もあります。必要な準備・段取りを丁寧かつスピーディに行い、応募者との接点を継続して持つことがポイントです。
オンライン面接の導入
新型コロナウイルス対策により、採用活動のオンライン化が急速に進んでいます。オンラインにすることで、会場費や準備などのコスト削減や採用活動のスピード化・効率化、地方採用が可能になります。今後はオンライン面接の導入も視野に入れましょう。
そのためには、オンラインに適した採用プロセスの構築やオンライン面接のためのツールを揃えることが必要になります。
オンライン面接につきましては以下の記事で解説しています。
⇒非対面のオンライン採用とは?メリット・注意点・オンライン面接ツールをご紹介!
面接で聞いてはいけないこと
面接では応募者に対して聞いてはいけないことがあります。採用基準やスケジュール、採用ペルソナの共有と合わせて、選考に関わる全員に共有しておく必要があります。
本人に責任のないこと
- 本籍、出生地について
- 家族について(職業、続柄、健康、病歴、地位、学歴、収入、資産など)
- 住宅状況について(間取り、部屋数、住宅の種類、近郊の施設など)
- 生活環境、家庭環境について
自由であるべきこと
- 宗教について
- 支持する政党について
- 人生観、生活信条について
- 尊敬する人物について
- 思想について
- 労働組合、学生運動、社会運動などの加入状況や活動歴について
- 読んでいる新聞、本、雑誌について
内定通知について
企業が採用したい人材に対して、内定したことを伝える大切なお知らせです。書面の郵送、電話、メールなどを使用して通知します。応募者は並行して複数企業の選考を受けていることがほとんどのため、内定が決まった時点でなるべく早く通知しましょう。素早く心のこもった対応を心がけ、他社への流出を防ぐ必要があります。
内定通知の構成
- 選考結果
- 内定式、入社日などのスケジュール
- 入社までに必要な書類
- 機械的な文章でなく、担当者の思いを伝える (なぜ採用に至ったか、入社後の期待など)
内定者に対して行うこと
「内定通知後は、入社まで待つだけ」と安心はできません。内定者が「本当にここに入社して良いのか」と入社までの間に悩んでしまう可能性があります。その間に企業側から何もフォローを行わなければ、不安に陥った結果、内定辞退につながりかねません。
そこで内定者に対して懇親も兼ねた研修を行うことをオススメします。内定者研修を行うことで、入社への意欲を高め、「この企業に入社して良いのだ」といった内定者の不安を解消できます。また、入社までに仕事の基本や心構えを教育することも同時にできます。
内定者研修の具体例
- 内定者懇親会
- ビジネスマナー研修
- 職場見学ツアー
- 内定者グループワーク
入社前の期間を有効活用し、意欲を高めることで内定辞退を防止しましょう。内定者研修が有意義であれば、入社後に活躍する人材へと一歩成長することにもつながります。
まとめ
いかがでしたでしょうか?
新卒採用は長い戦いであり、費用も人手も時間もかかるため、企業が一丸となって目標に向けて取り組む必要があるでしょう。
この記事が少しでも初めて新卒採用を行う企業の担当者様の参考になれば幸いです。
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