皆さんは、ここ最近で徐々に耳にすることの多くなってきた「エッセンシャルワーカー」という言葉をご存知でしょうか?
今回は近年注目の集まりつつある「エッセンシャルワーカー」という言葉が指す職種の人々の一部を紹介するとともに、この記事を呼んでくださっている方で「エッセンシャルワーカー」の採用に難儀している事業者向けに、それぞれの採用のポイントをご紹介していきます。
目次
エッセンシャルワーカーとは?
エッセンシャルワーカーとは、「欠くことのできない、必須の」という意味のある“エッセンシャル(essential)”と、「労働者」という意味のある”ワーカー(worker)”を組み合わせた造語で、「人々の日常生活における、必要不可欠な仕事を担う人」を指す言葉です。
2020年、世界は新型コロナウイルス感染症の影響により大きく変わりました。
外出の自粛やロックダウン、日本では3密を避ける呼びかけなどにより、リモートワークの導入をはじめとした非対面での業務が促進されてきています。
しかし、そんな中でも感染リスクと戦いながら、外で私たちの生活を支えてくれている人々がいます。それが、「エッセンシャルワーカー」と呼ばれる方々です。
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エッセンシャルワーカーに該当する業種・職種一覧
医療福祉 業種
- 医師
- 看護師
- 保育士
- 薬剤師
- 介護士
行政・保安 業種(教育・生活インフラ)
- 市や区の職員、ごみ収集業者
- 警察官
- 消防士
- 警備員
- 教員
- 保育士、幼稚園教諭
- 電力、水道、ガス、通信に関連する職種
小売 業種
- スーパーマーケットの店員
- コンビニエンスストアの店員
- ドラッグストアの店員
- ガソリンスタンドの店員
運輸・物流 業種
- ドライバー
- 倉庫スタッフ
金融 職種
- 銀行員
- 証券会社の社員
- 保険会社の社員
- クレジットカード会社の社員
- 信用金庫の社員
冠婚葬祭 職種
- 結婚式場の職員
- 葬儀場の職員
- 火葬場の職員
- 遺体の事後処理に関わる職員
メディア・マスコミ 職種
- テレビやラジオの情報発信に関わる職員
- 新聞社の職員
- インターネット上での情報発信に関わる職員
メンテナンス・セキュリティ 職種
- ビルメンテナンスのスタッフ
- セキュリティ会社の職員
サービス 職種
- ホテルマン
- 旅館経営に関わるスタッフ
- 銭湯経営に関わるスタッフ
- 美容師、理容師
エッセンシャルワーカーが注目されている背景
「エッセンシャルワーカー」という言葉は、日本における少子高齢化の影響で、元々、少しずつ注目されてきていました。
労働人口の減少に伴い、エッセンシャルワーカーの希少性は高まり、同時に高齢者が増えることで、医療福祉の需要が高まってきたのです。
エッセンシャルワーカーへの注目度を急加速させるきっかけとなったのが、新型コロナウイルスの流行です。
感染者への対応をする医療従事者、オンラインショッピングの需要高騰に伴い商品を届ける運送・物流スタッフは、特に注目を集めています。
2020年にはエッセンシャルワーカーが新語・流行語大賞候補にノミネートされたように、今やすっかり多くの人に知られる言葉となりました。
エッセンシャルワーカーの共通点と現状の課題
エッセンシャルワーカーには、全体に共通している特徴があります。
また、必要不可欠な仕事を担っている特性から、現状で生じている課題もあるため、ここで整理しておきましょう。
今後の需要も見込まれている
エッセンシャルワーカーの担う仕事は、専門性が必要で、かつ人の手で行われることが求められる特徴があります。
そのため、将来的にもAIに代替されにくいと考えられ、今後も高い需要を誇るとされています。
特に需要が高い業種が、医療福祉です。
少子高齢化は今後も進行すると見込まれているため、社会において一層欠かせない存在となるでしょう。
社会基盤や生活基盤を支えている
社会基盤や生活基盤を支えており、人々が豊かな暮らしを続けるうえで、欠かせない存在であることも、すべてのエッセンシャルワーカーに共通しています。
視点を変えると、責任の大きい立場であるとも言えます。
エッセンシャルワーカーは、人々のより良い暮らしを実現させるために、日々、責任感を持って働いているのです。
また、企業としては、そんなエッセンシャルワーカーたちがスキルを十分に発揮できるよう、全面的にサポートすることが重要です。
業務内容に待遇が見合っていない
エッセンシャルワーカーを取り巻く課題として挙げられるのは、待遇が見合っていないケースが多いことです。
例えばここ最近、テレビなどで保育士の低賃金が報道されることが増えました。
SNSでは、「保育士やめたい」というハッシュタグが使われていることも珍しくありません。
子どもの命を預かるという責任のある仕事で、かつ肉体的な負担が大きい仕事であるにもかかわらず、待遇水準は決して高くない傾向にあります。
待遇を改善することは簡単ではありませんが、企業としてできるだけ良い条件を設定することが求められます。
負担が大きくなっている
専門性が求められ、社会にとって欠かせない役割を担っているということは、裏を返せば、替えが効かない存在であるとも言えます。
例えば、休みを取りたい日に、エッセンシャルワーカーしかできない仕事が入れば、休むのは難しいでしょう。
貴重な存在であるが故に、エッセンシャルワーカー本人の負担が大きくなっているのです。
需要高騰や注目度の高まりに併せて、近年、負担はさらに大きくなっています。
企業としては、職場環境の見直しや福利厚生の整備などを図り、負担をできるだけ軽くする工夫が必要です。
エッセンシャルワーカーの人手不足と採用ヒント
看護師の人手不足
新型コロナウイルス感染症をとりまく最前線で戦いながら、医療従事者をはじめとした看護師。彼らは、私たちの命を守り、つなげるエッセンシャルワーカーです。
しかし、家庭との両立の難しさや身体的な負担から、資格保有者数が増加しているにも関わらず、人材の確保/定着においては厳しさを増しています。
【対策】
看護師の人手不足対策としてもっとも有効だと考えられるのは、離職の原因となっている「働く環境」の改善です。以下のような例を参考に、家庭との両立ができる勤務形態や、身体的な負担を軽減する働き方を実現することで、在籍中のスタッフの離職を防止することはもちろん、復帰を希望する看護師の就職を促すことも可能となるでしょう。
- 働く時間の長さが選べる(短時間正職員/変形労働時間/ワークシェアリング)
- 働く時間帯・曜日が選べる(時差出勤/フレックスタイム)
- 交代制の働き方が選べる(同一の病棟内で2交代、3交代/夜勤の時間帯・回数の選択/日勤のみ・夜勤のみ勤務)
- 業務にバリエーションがある(学校などで講義や技術演習を担当/専門看護師としての対外的な活動)
- 常勤と非常勤、勤務形態が選べる(雇用形態や勤務形態の容易な変更)
- 働く場所が選べる(勤務地限定職員)
(参考:看護師の深刻な人材不足の現状|看護の人材確保に向けたおすすめの対策とは?)
保育士の人手不足
働く親たちに変わり、新型コロナウイルス感染症対策を徹底しながら、子供を預かり世話をする保育士は、エッセンシャルワーカーです。
しかし、これまでに保育士不足を解消するためのさまざまな取り組みが政府主導で行われてきましたが、保育需要の増加と反比例するかのように、依然として慢性的に人手不足に陥っている業種です。
【対策】
保育士の人手不足対策としてもっとも有効だと考えられるのは、離職の原因となっている「賃金に対する不満」や「待遇面」の改善です。以下のような例を参考に、資格をもちながらも他の仕事に就いている潜在保育士へのPRをおこなっていくことが、有効な手段となるでしょう。
- 給与や休日日数(労働時間)の改善
- 学生や潜在保育士に向けた採用PR(職場の様子を間近で見られる見学会/先輩保育士への質問会などのイベントの開催/働きやすい環境づくりへの取り組みに関するSNSでの発信)
(参考:保育士の人手不足の原因と要因とは?|保育士採用のための対策を解説)
介護士の人手不足
少子高齢化に伴い、増加の一途を辿る高齢の方々を、新型コロナウイルス感染症対策を徹底しながら支える介護士は、エッセンシャルワーカーです。
しかし、介護業界の有効求人倍率は3.9倍と、全業種と比べて2倍以上も高く、人手不足が特に深刻です。
【対策】
介護士の人手不足対策としてもっとも有効だと考えられるのは、離職の原因となっている「賃金に対する不満」や「働き始めた後のミスマッチ」の改善です。以下のような例を参考に、ミスマッチの少ない状態で採用を進めていくことが、有効な手段となるでしょう。
- 応募者には事前に業務内容を明確に伝える
- 現場の要望を考慮して採用活動を行う
- 入社前・入社後の不安を徹底して取り除く
- 表彰式などでモチベーションを上げる(賃金面の改善が難しい場合は、頑張った職員をしっかりと承認する)
(参考:介護業界が抱える人手不足の課題を解決するための4つの採用ポイント)
警備員の人手不足
新型コロナウイルス感染症の感染リスクの高い屋外で、人々の安全を守るために働いている警備員は、エッセンシャルワーカーです。
しかし、新しい施設の建設、ホームセキュリティの導入増加などにより警備員の必要性が高まる一方で、体力や将来性への不安から、就職先候補として外されてしまいがちな業種です。
【対策】
警備員の人手不足対策としてもっとも有効だと考えられるのは、「体力面や将来性への不安」の改善です。以下のような例を参考に、あらかじめターゲットを絞り込んで採用を進めていくことが、有効な手段となるでしょう。
- 警備員のメリットの訴求(資格が必要ない/ノルマがない/定時であがりやすい など)
- 「労働条件」の明確化(夜勤の有無、夜勤がある場合は週に何回ほどか、時間帯、シフトの融通、休暇日数 など)
- 「待遇面」の明確化(手当を含む給与や昇給・賞与、キャリアアップについて、福利厚生施設の有無 など)
- 「労働環境」の明確化(工事現場か、屋内勤務か、空調設備、社員の年齢層 など)
- 「仕事内容」の明確化(交通誘導・施設警備員・輸送警備などの詳細 など)
(参考:なぜ警備員は人手不足になりやすいのか|採用を成功させるためのポイント)
運送ドライバーの人手不足
外出自粛に伴い通販サイトの需要が高まりつつある昨今、注文した商品を日夜私たちのもとへ届けてくれる運送ドライバーは、エッセンシャルワーカーです。
しかし、配送荷物が増えていくのに対して反比例するかのように、宿泊・飲食サービス業界に次ぎ人手が足りていないと言われる業種です。
【対策】
運送ドライバーの人手不足対策としてもっとも有効だと考えられるのは、「低賃金・長時間労働イメージ」の改善です。以下のような例を参考に、採用の段階でマイナスイメージを払拭するようなアピールをしていくことが、有効な手段となるでしょう。
- 女性ドライバーの採用(トラガール促進プロジェクト/産休・育休/負担軽減/職場の清潔感アピール など)
- 職場や労働環境の改善(長時間労働/体力的な負担/職場の人間関係/休日の取りやすさ など)
- イメージアップのためのPR(働きやすい制度や社風/社員の人間関係の良さ/特徴的な待遇 など)
(参考:運送業界の人手不足の現状と対策|なぜ人が足りなくなるのか?)
小売業の人手不足
私たちが生きていくために必要な、食料品をはじめとした生活必需品を、感染リスクの高い現場で日々提供してくれている小売業従業員は、エッセンシャルワーカーです。
しかし、労働環境や待遇面での不満から、離職が多くなったり、復職の可能性が低くなってしまいがちな業種です。
【対策】
小売業従業員の人手不足対策としてもっとも有効だと考えられるのは、離職の原因となっている「労働環境」や「待遇面」の改善です。以下のような例を参考に、他にも採用人材のバリエーションの拡大や、業務の自動化なども有効な手段となるでしょう。
- アルバイト・パート従業員の給与・待遇を改善する
- 労働環境を整える(早出・遅出の2交代制の導入/月に取得する有給休暇の日数を定める/子育てや介護のある従業員への配慮 など)
- シニア世代・外国人労働者の積極的な雇用
- ITシステムの導入で効率アップ(無人レジやセルフレジの設置/タッチパネル注文 など)
※小売業界の人手不足について、原因や対策をさらに詳しく知りたい方は、下記の記事を参考にしてください
⇒小売業が人手不足になる原因とは?対策方法も解説!
エッセンシャルワーカーの待遇支援に関する取り組み事例
エッセンシャルワーカーを取り巻く課題を解決するためには、企業ごとの「待遇支援」が欠かせません。
とはいえ、どのような支援方法があるのか、イメージが湧かない人もいるでしょう。
そこでここでは、エッセンシャルワーカーの待遇支援について、いくつかの取り組み事例を紹介します。
事例1:タクシー会社が運転手に2万円支給
2020年4月、九州地方でタクシー事業を中心に展開する国際興業グループは、約1200名の運転手に対して2万円を支給しました。
新型コロナウイルス流行に伴う外出自粛により、ドライバーの収入は減少。
企業全体の売り上げも減少している中でしたが、従業員への支援を決定したそうです。
【参考】
九州のタクシー会社、運転手に2万円支給 生活支援|日本経済新聞
事例2:同居する医療従事者に特別手当を支給
2020年7月、不動産会社のハウスコム株式会社は、従業員の同居家族に新型コロナウイルス関連の治療などにあたる医療従事者がいる場合、1人10万円の特別手当を支給する制度を実施しました。
エッセンシャルワーカーとして働く家族へ支援をした事例です。
【参考】
賃貸仲介のハウスコム、従業員に同居家族新型コロナウイルス感染症医療従事者手当を支給
事例3:厚労省が最大20万円の慰労金を支給
都道府県から役割を設定され、新型コロナウイルス感染症の医療提供をする機関に勤務する医療従事者や職員などに対して、最大20万円の慰労金が支給されるものです。
「新型コロナウイルス感染症対応従事者慰労金」と呼ばれ、その他の病院や診療所などに勤務していても対象となる場合があります。
【参考】
「新型コロナウイルス感染症対応従事者慰労金交付事業」について|厚生労働省
事例4:約5万人の看護職に復職メールを送信
公益社団法人日本看護協会が、2020年4月7日の緊急事態宣言を受け、e ナースセンター求職登録者・届出制度登録者約5万人に復職依頼のメールを一斉送信した事例です。
実際に696人が就業しており、人手がほしい施設側と復職を望む看護職側の、双方のニーズを満たす形となりました。
【参考】
ナースセンター登録者へ一斉メール、その成果|公益社団法人日本看護協会
事例5:警備会社が従業員に特別感謝金を支給
横浜に本社を置く警備会社の株式会社KSP・WESTは、2020年4月、全従業員に「新型コロナウイルス禍緊急特別感謝金」を支給しました。
社会基盤を支えるエッセンシャルワーカーである従業員に心から感謝する、という思いから実施された取り組みです。
【参考】
新型コロナウイルス禍 緊急特別感謝金|株式会社KSP・WEST
事例6:東京都ではエッセンシャルワーカーの確保をサポート
東京都では、コロナ禍で1割以上の欠員が生じたスーパーまたはコンビニが、人材派遣で代替要員を確保した場合に、派遣料金の一部を助成する制度をはじめました。
「エッセンシャルワーカーに係る緊急人材確保サポート事業」と題したこの事業は、資本金5,000万円以下または常時使用する従業員が50人以下の企業が対象です。
【参考】
エッセンシャルワーカーに係る緊急人材確保サポート事業|東京都
事例7:大手スーパーがコロナ禍で総額3億円の感謝金
スーパーの「ライフ」を運営するライフコーポレーションでは、2020年4月に、約4万人の全従業員に総額3億円の感謝金を支給しています。
パート・アルバイトも対象で、当時外出自粛が続いていた中、心理的な不安を軽減させる目的があったようです。
【参考】
3億円でありがとう スーパー「ライフ」、従業員に支給|朝日新聞DIGITAL
まとめ
エッセンシャルワーカーとして、日夜私たちの生活を支えてくれている人々は、その仕事の重要度からも在宅勤務が難しく、常に新型コロナウイルス感染症の感染リスクと隣り合わせの現場で働いています。一方で、その仕事の大変さから人手不足に陥りがちでもあります。
全ての業種に言えることですが、今の時代での採用活動においては「ITシステムの導入で効率化・感染リスクを減らす」「シニア世代・外国人労働者の積極的な雇用」「採用手法の見直し」なども重要になってきます。
今回の記事を通して、エッセンシャルワーカーの皆さんの存在を知っていただくとともに、エッセンシャルワーカーの採用面でお困りの採用担当の方へ、少しでも採用のヒントになるような情報をお届けできていましたら幸いです。
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