パートやアルバイトも社会保険の加入義務がある?条件や扶養内の働き方を解説

パート・アルバイトの採用にあたって問題になりやすいのが「社会保険の加入義務」。

正社員とは異なり、パート・アルバイトは労働条件によって加入義務が決まります。
そのため、手続きにあたって判断に困っている担当者は多いのではないでしょうか。

社会保険は公的制度なので、加入義務があるのに未加入のままだと、企業が罰則の対象となる可能性があります。
企業の担当者としては、パート・アルバイトの適用条件について明確に理解したうえで、適切な管理をすることが大切です。

今回は、パート・アルバイトの社会保険の加入条件や加入するメリットなど、企業の担当者が知っておきたい情報を網羅的に紹介します。
企業の担当者はもちろん、社会保険について知識を深めたい方はぜひお役立てください!

そもそも社会保険とは?

社会保険とは、企業で働く人を対象とする公的保険のことで、一般的に下記2つの捉え方に分かれます。

【狭義の社会保険】

社会保険=厚生年金+健康保険(介護保険)

【広義の社会保険】

社会保険=厚生年金+健康保険(介護保険)+雇用保険+労災保険

これらをどう捉えるかはケースバイケースなので、状況に応じて使い分けると良いでしょう。
なお、この記事では、「広義の社会保険」について解説します。

社会保険は事業所単位で適用され、その適用を受ける事業所は「適用事業所」と呼ばれます。次の段落からは、その適用事業所について詳しく解説します。

強制適用事業所に当てはまる場合

強制適用事業所とは、社会保険に加入する義務のある事業所のことです。
具体的に、下記の条件に該当する場合は「強制適用事業所」となります。

  • 株式会社や合同会社といった法人事業主
  • 従業員を5人以上雇用しており、法定16業種および士業(※)に該当する個人事業主
    ※士業に関しては令和4年10月1日以降、新たな対象となりました

また、強制適用事業所ではない事業所は「任意適用事業所」と呼ばれ、社会保険への加入は義務ではありません。ただし、下記の条件を満たせば社会保険に加入できます。

【任意適用事業所が社会保険に加入する条件】

事業所で働く半数以上の人が適用事業所となることに同意した状態で、年金事務所に申請する。その後、厚生労働大臣(日本年金機構)の認可を受けること。

なお、任意適用事業所の場合は、厚生年金・健康保険のうち、どちらか一つの加入でも問題ありません。

【参考】
健康保険・厚生年金保険の適用事業所における適用業種(士業)の追加(令和4年10月施行)|日本年金機構
任意適用申請の手続き|日本年金機構

パート・アルバイトの場合

パート・アルバイトも社会保険の加入対象となります。
ただし、正社員のように無条件で加入対象となるわけではなく、労働条件によって加入できる・加入できないが決まります(加入条件は後述)。

「社会保険の対象は正社員だけ」と勘違いされているケースも多いので、労働者が誤認している場合は、企業の担当者が丁寧に説明しましょう。

※下記の記事では、学生アルバイトの社会保険の取り扱いについて解説しています
【5分でわかる】学生バイトでも社会保険の加入は必要?手順や注意点を解説!

派遣社員の場合

派遣社員の場合も、社会保険への加入義務が生じます。
ただし、加入するのは「派遣元の企業」です。

派遣先の企業は現場の指揮監督権を持ちますが、社会保険の加入・管理は派遣元で行われるので、混同しないよう注意が必要です。
例えば「人材派遣会社・A社」が「コールセンター・B社」にスタッフを派遣しており、普段はB社に勤務している場合でも、A社の社会保険に加入することになります。

派遣社員を雇用する企業の担当者が社会保険の情報を知りたい場合は、派遣元の企業に確認する必要があります。

パート・アルバイトが加入しうる社会保険の種類

パート・アルバイトが加入対象となる社会保険は、下記の5種類です。

  1. 雇用保険
  2. 労災保険
  3. 厚生年金
  4. 健康保険
  5. 介護保険

各保険の概要と加入条件について解説します。

①雇用保険

雇用保険とは、失業した場合や休業した場合に、その生活を保障するための制度です。

例えば、離職した人が再就職するまでの期間に受給できる「失業給付金」は、雇用保険に加入している労働者しか受け取れません。

雇用保険は、雇用形態にかかわらず、下記の条件を満たす全ての労働者が加入します。

【雇用保険の加入条件】

  • 1週間の所定労働時間が20時間以上
  • 雇用期間の見込みが31日以上(短期契約を繰り返す場合も対象)
  • 昼間学生ではない(※)

※下記に該当する場合は昼間学生であっても加入対象です

  • 卒業見込証明書を有していて、卒業後も同一の企業で勤務予定である
  • 休学中である(事実を証明する書類が必要)
  • 事業主の指示や承認のもと、大学院などに在籍中である
  • 通信教育/夜間/定時制の学校の学生である

なお、雇用保険と、次の段落で紹介する労災保険を合わせて「労働保険」と呼ばれることもあります。

②労災保険

労災保険とは、勤務中や通勤中などの、労働に関連した負傷や病気を補償するための制度です。保険料負担は事業主だけであり、従業員側の負担は一切ありません。

例えば、業務中に足を怪我して療養が必要になった場合、その期間に「療養(補償)等給付」が支給されます。

【労災保険の加入条件】

雇用形態にかかわらず全ての従業員

③厚生年金

厚生年金は、「厚生年金保険法」に基づき国によって管理・給付が行われる公的年金で、70歳未満で常時雇用されている労働者は、全員が加入することになっています。

厚生年金と健康保険の二つは「日本年金機構」が管轄しており、企業で取り扱う際も基本的にセットです。

パート・アルバイトが厚生年金・健康保険に加入するには、まず下記が前提となります。

(1)常時雇用されていること
(2)週の所定労働時間および1か月の所定労働日数が正社員の4分の3以上

そのうえで、下記の条件を満たす必要があります。

  • 週の所定労働時間が20時間以上
  • 給与月額が88,000円以上
  • 継続雇用期間(見込み)が2ヶ月以上
  • 学生ではないこと
  • 従業員数101人以上の特定適用事業所に勤務していること。従業員数100人以下の事業所であれば、パート・アルバイトの社会保険加入について労使間での合意があること

なお、原則として、保険料は月給に応じて事業主と雇用者で半分ずつ負担します。

④健康保険

健康保険とは、従業員が怪我や病気になった場合に、その生活を保障するための制度です。加入者には被保険者証(一般的にいう保険証)が渡され、医療機関で提示すれば一定の負担割合で受診することができます。

パート・アルバイトの健康保険の加入条件は、厚生年金と同じです。
また、保険料負担の考え方も同様で、月給に応じて事業主と雇用者で半分ずつ負担します。

⑤介護保険

介護保険は、介護を要する方に必要なサービスを提供するための保険制度です。社会全体で介護を支えるという考え方から成り立っており、40歳以上が加入対象で、保険料は健康保険と併せて徴収します。

厚生年金・健康保険と同じく、保険料は企業と労働者の折半です。

【介護保険の加入条件】

厚生年金・健康保険に加入している40歳以上の全ての従業員

社会保険の適用範囲の拡大について

社会保険のうち、「厚生年金」「健康保険」については、令和6年に適用範囲の拡大が予定されています。

令和5年9月現在、「従業員数101人以上の特定適用事業所に勤務していること」が条件の1つですが、令和6年10月からは、「被保険者数が51人以上の特定適用事業所」となります。
新たに適用対象となる事業所は、早めに準備しておくことがおすすめです。

【出典】
短時間労働者に対する健康保険・厚生年金保険の適用拡大のご案内|日本年金機構

パート・アルバイトで社会保険に加入したくない場合は?

従業員の中には、「扶養に入りたい」などの理由から社会保険に加入したくない人もいます。企業としては、そういったケースをあらかじめ理解したうえで、柔軟に対応することが必要です。

ここでは、社会保険に加入したくない場合の対応について紹介します。

月収8.8万円(年収106万円)を超えないように働く

パート・アルバイトが社会保険に加入する条件の1つである「給与月額が88,000円以上」。
これを年収にすると約106万円です。つまり、この金額を超えないように働けば、従業員は社会保険に加入しなくても問題ありません。

社会保険に加入したくない旨を伝えられた場合は、月収について本人と調整すると良いでしょう。ちなみに、106万円を少し超える程の収入であれば、社会保険の自己負担額は、年間で10万~15万円が目安です。

労働時間・日数が正社員の3/4を超えないように働く

パート・アルバイトが社会保険に加入する前提条件である「週の所定労働時間および1か月の所定労働日数が正社員の4分の3以上」を超えないように働く方法もあります。

例えば、「正社員の週の所定労働時間が40時間、1か月の所定労働日数20日」だとします。
この場合、「週の労働時間30時間未満、月の労働日数15日未満」であれば、社会保険に加入する義務は生じません。

まずは正社員の労働時間の3/4を算出して、社会保険に加入しなくていい基準を明らかにしましょう。

130万円の壁を超えないように働く

「130万円の壁」という言葉に聞き覚えのある方もいるでしょう。
これは、社会保険の扶養に関する壁です。

収入が130万円を超えると、配偶者の社会保険の扶養に入ることはできません。
そのため、勤務先で自分自身が社会保険に加入する必要があります。

パート・アルバイトの社会保険の加入メリット

では、労働者目線で見たときに、社会保険の加入にはどのようなメリットがあるのでしょうか。ここでは、パート・アルバイトが社会保険に加入するメリットについて解説します。

保険料を抑えられる

まず一番のメリットとも言えるのが、公的保険の負担が軽くなることです。

社会保険であれば「保険料は企業と労働者の折半」となります。しかし、パート・アルバイトが社会保険に加入せず、扶養にも入らない場合は、自ら国民健康保険・国民年金に加入しなければならず、全額自己負担です。

例えば年金で言うと、令和5年度の国民年金保険料は16,520円。
一方で、報酬月額が15万円だと仮定した場合、厚生年金保険料の従業員負担は13,725円です。報酬月額が15万円未満であれば、保険料はさらに下がります。

社会保険料の負担が増えると企業としては人件費がかさみますが、労働者が出してくれる成果を考えると、必要経費と言えるでしょう。

【参考】
国民年金保険料|日本年金機構
保険料額表(令和2年9月分~)(厚生年金保険と協会けんぽ管掌の健康保険)|日本年金機構

万が一の事態に保障が受けられる

怪我や病気、出産をはじめ、仕事ができない状況になった際に保障が受けられるというメリットもあります。

例えば「出産手当金」は、産前42日・産後56日の期間、標準報酬日額の3分の2が支給されます。他にも例を挙げると、「傷病手当金」は、3日以上連続して仕事を休んでいる場合に、4日目から標準報酬日額の3分の2に該当する金額が支給される制度です。

社会保険に加入していない場合、こういった保障は受けられないため、貯蓄などで補うことになります。社会保険による保障は、心身の安心をもたらしてくれるのです。

もらえる年金額が増える

厚生年金は「2階部分」と表現されるように、国民全員が加入する国民年金(1階部分)に上乗せされます。そのため、会社員は「厚生年金」と「国民年金」の2つに加入していることになり、将来、受け取れる年金が増えるのです。

下記は、そのイメージ図です。


(出典:公的年金制度の種類と加入する制度|日本年金機構

パート・アルバイトの社会保険の加入デメリット

労働者にとって良いことが多い社会保険の加入ですが、「手取り額が減る」というデメリットもあります。
しかし、前述したように万が一のときにさまざまな保障を受けることができますし、将来的に受け取れる年金も増えます。

また、自分で国民年金・国民保険に加入したほうが金額的負担が大きい場合が多いため、広い視野で考えると、手取り額が減ることはそこまでデメリットではないでしょう。

パート・アルバイトが社会保険に加入する際の注意点

パート・アルバイトが社会保険に加入するにあたって、企業として押さえておきたい注意点があります。ここでは、特に注意すべきポイントを紹介します。

加入義務を拒否することはできない

従業員が社会保険の加入条件を満たしている場合、加入義務を拒否することはできません。
「加入対象だけど、手取り額を減らしたくないから加入しない」というような判断は認められないのです。

加入義務を拒否した場合、加入期間をさかのぼって社会保険を徴収しなければならない可能性があり、そうすると企業・従業員の双方にとって大きな負担となります。

また、例えば健康保険・厚生年金に加入させなかった場合、悪質だと認められれば、企業に「6か月以下の懲役、もしくは50万円以下の罰金」が課せられる可能性があります(健康保険法第208条)。他にも、雇用保険に関しても罰則があったりして、企業に多くの負担が生じます。
加入対象となる従業員は、確実に加入の手続きをしましょう。

130万円の壁は掛け持ちの合計で計算される

社会保険の扶養に入れる「130万円の壁」は、勤務しているすべての事業所の収入を合算して判断されます。
例えばダブルワークをしている場合、それぞれの収入を足して130万円以上であれば、扶養から外れる必要があるのです。

本来、収入が130万円を超えることが分かった時点で従業員から申告する必要があります。しかし、中には制度を理解しておらず、申告をしていない人もいるでしょう。
二か所以上から収入を得ている従業員がいる場合は、企業の担当者が本人に収入の目安を確認するなど、適宜調整が必要です。

まとめ

パート・アルバイトにも社会保険の加入義務があり、条件を満たしている場合は本人の意思にかかわらず加入する必要があります。
社会保険は「労災保険」「雇用保険」「厚生年金」「健康保険」「介護保険」があり、それぞれ加入条件は異なるので、必要な手続きを確実に済ませましょう。

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