失敗しない内定通知書テンプレートと書き方ガイド! トラブルを防ぐコツ5選

失敗しない内定通知書テンプレートと書き方ガイド! トラブルを防ぐコツ5選

「内定通知書」は、採用が決まった候補者に対して企業が正式に「内定」を伝えるための重要な書類です。

とはいえ、中小企業やスタートアップ企業では「口頭やメールで済ませてきた」「新卒採用をやってないなら不要では?」と捉えている方も少なくありません。

法的義務はないものの、発行しておくことでトラブルのリスクを低減できる内定通知書。
転ばぬ先の杖として、どんな企業でも準備しておくとよいでしょう。

本記事では無料ですぐに使える内定通知書テンプレート(Word形式)とあわせて、書き方のコツや注意点を紹介します。

【無料ダウンロード可】内定通知書テンプレートと書き方

まずは実際に使える内定通知書テンプレートを紹介します。

以下よりダウンロードください。Word形式なので自由に編集いただけます。
今回は中途採用向けにしていますが、自社の採用状況に応じて変更ください。

内定通知書テンプレート ダウンロードはこちら

あわせて、書き方を簡単に紹介していきます。

内定通知書テンプレート

【内定通知書の書き方(主な項目)】
①日付や宛名
…発行日を明らかにしたうえで、宛名や社名を間違いのないように入力します。

②「内定」の事実の明記
…「採用決定」のニュアンスに捉えられないように注意します。

③内定承諾書の返送期日
…重要書類は期日を切って返送を求めましょう。

④内定取り消し事由
…内定を取り消す可能性があることおよび、その要因となる事項を明記します。

⑤条件詳細
…現状で確定している条件は項目立てて簡潔に記載しておきましょう。

なお、自社フォーマットがある場合はそちらをお使いください。
内定通知書のフォーマットに明確な決まりはなく、テンプレートの記載があなたの会社の要件を満たしているとは限りません

不安な場合は自社の法務担当などに問い合わせてみてください。

そもそも内定通知書とは

内定通知書について理解を深め、正しく作成するために、その役割や法的な位置づけ、類似する書類との違いを整理しておきましょう。

内定通知書の役割と法的な位置づけ

内定通知書とは、企業が採用選考を通過した候補者に対して「内定」を通知するための書類です。

この書類を通じて、企業は候補者に採用の意思を伝えるとともに、入社日や給与などの基本的な労働条件を提示します。

法的な観点から見ると、内定通知書は「始期付解約権留保付労働契約」の成立を示す証拠書類となります。

これは簡単に言えば「条件付きの労働契約」
あらかじめ明示した内定取り消し事由に当てはまった場合は取り消すこともできる契約となります(とはいえ、内定取り消しは企業側のリスクも高いため、慎重に判断が必要です)。

法的な観点からは、内定は「始期付解約権留保付労働契約」とされることが多く、条件付きの労働契約と説明されます。
もっとも、個別の事情や裁判例によって解釈が分かれる場合もあるため、「内定=採用決定」と言い切れるものではありません。

採用通知書や労働条件通知書との違いは?

「内定通知書」と混同されやすい書類に、「採用通知書」「労働条件通知書」があります。

これらは似ているようで、交付する目的とタイミングが異なります。

書類名 交付タイミング例 主な目的 法的義務
内定通知書 採用決定後〜入社前 内定の意思表示 義務なし(任意)
採用通知書 入社直前〜契約締結前 採用の意思表示 義務なし(任意)
労働条件通知書 雇用契約締結時 労働条件の明示 義務あり(労基法第15条)

採用通知書は内定通知書と同様に法的義務のない任意の書類です。
「採用」と名のつく書類ではあるものの、あくまで企業から候補者に対する「採用したい」という意思表示である点は注意しましょう。

入社を強制するものではなく、候補者への拘束力はありません。
トラブル回避の観点からは、内定通知書に代替することをおすすめします。

一方で労働条件通知書は、労働基準法第15条で交付が義務付けられている書類です。
これは雇用契約を結ぶ際に、企業が労働者に対して労働条件を明示しなければならないというルールに基づいています。

入社日、雇用契約締結時に労働条件通知書を交付する企業もありますが、内定通知のタイミングに交付する(内定通知書と兼ねる)ことも可能です。

条件詳細が固まっているのであれば、トラブル防止のために早めに発行することが望ましいでしょう。

内定通知書は必ず必要?

結論から言うと、法的義務がないため「不要」です。
しかし、書面で残すことで企業・求職者双方にとって多くのメリットがあるでしょう。

簡単に言えば、内定通知書は「あった方が安心」な書類です。
作成の手間はかかりますが、それ以上に得られるメリットが大きいため、採用プロセスの一部として取り入れてみてください。

企業が内定通知書を用意すべき理由

内定通知書は法的義務ではないものの、企業が用意すべき理由は主に3つあります。
特に、これから採用規模を拡大していく企業にとっては、早い段階で内定通知書の運用を始めることをおすすめします。

企業としての信頼性・安心感を高めるから

内定通知書の交付は、企業の信頼性を示す重要な機会。
法的義務のない書類であってもきちんと発行することは、企業としての誠実さや組織としての成熟度を示すメッセージになり得るでしょう。

会社の規模を問わず、整ったフローで丁寧な対応を行える会社は採用ブランディングにおいても優位に働きます。

特にスタートアップ企業や中小企業の場合、「規模は小さくてもしっかりしているんだ」とプラスの印象を与え、内定辞退率の改善にもつながるかもしれません。

トラブルやリスクを回避するから

内定通知書は、企業と候補者の間で起こりうるトラブルを未然に防ぐ役割も果たします。

よくあるトラブルは「言った・言わない」の認識齟齬
口頭でのやり取りだけでは、どちらの認識が正しかったのかを証明することが困難になります。

一方で、内定通知書に条件を明記しておけば、雇用契約の前に認識をすり合わせ、ズレを防ぐことが可能。
双方が同じ文書を見て確認できるため、「面接ではこう聞いていた」というトラブルが起きにくくなります。

また万が一、内定取り消しが必要になった場合にも、内定通知書は重要な証拠となるでしょう。

内定取り消しは法的に厳しく制限されており、正当な理由なく取り消すと損害賠償を請求される可能性があります。

しかし、内定通知書に「必要な資格が取得できなかった場合」「健康上の理由で業務遂行が困難な場合」などの取り消し事由を明記しておけば、やむを得ず取り消す際の法的リスクも軽減できます。

普段から時間がない採用担当者が、「言った・言わない」のトラブルに巻き込まれると大変なことになりかねません。
事前に書面で合意しておくことで、無用な争いを避けることができるでしょう。

採用プロセスの効率化につながるから

内定通知書の作成は、一度テンプレートを整えてしまえば、その後の採用活動を効率化できる可能性が高まります。

採用人数が増えてくると、一人ひとりに条件を説明し、メールで詳細を送り、さらに質問に個別対応する、という作業は非常に煩雑になります。

内定通知書という標準化されたフォーマットがあれば、必要事項を記入するだけで内定者に必要な情報を漏れなく伝えられるでしょう。

また、採用業務を経営者ひとりで行っている場合でも、将来的に採用担当者を置くことになるならば、内定通知書のテンプレートがあることで引き継ぎがスムーズになるでしょう。

「内定を出すときはこの書類を使う」というルールが明確になっていれば、新人担当者でも一貫したクオリティの対応が可能です。

内定通知書作成時に気をつけたい5つの注意点

内定通知書を作成する際には、いくつかの重要なポイントがあります。

ここでは、トラブルや法的リスクを最小限に抑え、工数を削減するための5つの注意点を解説します。

  1. 決定している条件は具体的に書く
  2. 「採用決定」といった誤解を招く表現は避ける
  3. 内定取り消し事由​を明記する
  4. 書類返送期日を記載する
  5. 電子署名ツール・PDF送付などデジタル対応も検討する

1:決定している条件は具体的に書く

内定通知書を交付する時点で確定している労働条件は、具体的かつ明確に記載しましょう。
項目立てて書面にて整理しておくことで、候補者に分かりやすく伝えることが可能です。

たとえば、以下のような項目が挙げられます。

  • 給与…基本給、月給制か年俸制か、みなし残業代を含むのか、賞与の支給条件など
  • 試用期間…期間は何ヶ月か、試用期間の給与は本採用後と異なるのかなど
  • 雇用形態…正社員、契約社員など
  • 入社日…具体的な日付
  • 勤務地…最初に配属される予定の勤務地
  • 休日…土日祝日や年末年始など規定の休日があれば記載

一方で、まだ確定していない条件を無理に記載する必要はありません。
むしろ、未確定の情報を断定的に記載するとトラブルリスクが高まります

詳細が決まっていない項目については、「詳細は入社時に交付する労働条件通知書による」「当社規定による」といった表現でも問題ありません。

2:「採用決定」といった誤解を招く表現は避ける

内定通知書の文言選びには十分な注意が必要です。
特に「採用決定」「正式採用」といった表現は避けるべきです。

前述の通り、内定は「始期付解約権留保付労働契約」であり、入社日までに一定の条件下では取り消しができる状態です。

しかし、「採用決定」という表現を使ってしまうと、「無条件で雇用契約が成立した」と候補者に解釈される可能性があります。

内定通知書ではあくまで「採用することに“内定”した」という表現にとどめ、正式採用との違いを明確にしておきましょう。

「入社手続き完了後に正式な雇用契約を締結する」という旨も添えておき、まだ雇用契約は完了していないことも伝えます。

3:内定取り消し事由を明記する

内定取り消しは法的に厳しく制限されていますが、正当な理由がある場合には認められます。
その理由を内定通知書に明記しておくことで、万が一の際の法的リスクを軽減できます。

内定取り消しが認められる主な事由としては、以下のようなものがあります。

【内定者側の内定取り消し事由】

  • 健康上の理由により業務遂行が困難になった
  • 犯罪行為や重大な非行が発覚した
  • 履歴書や面接での虚偽申告が判明した
  • 正当な理由なく入社を辞退または連絡が取れなくなった
  • 卒業できなかった(新卒採用の場合)
  • 採用条件となっていた必須資格を取得できなかった

【企業側の事由】

  • 経営状況の著しい悪化
  • 事業の廃止や縮小
  • 天災その他やむを得ない事由

これらを内定通知書に記載する際は、「万一、以下の事由が発生した場合には、内定を取り消すことがございますので、ご了承ください」といった前置きをしたうえで、具体的に列挙するのが一般的です。

ただし、「採用方針が変わったから」「他にいい人材が見つかったから」といった主観的な理由での内定取り消しは法的に認められず、内定者側から訴えられてしまう可能性があります。

透明性のある内定取り消し事由を示し、内定者との信頼関係を築きましょう。

4:書類返送期日を記載する

内定通知書と内定承諾書を同封する場合には、返送期日を必ず記載しましょう。
期日を設けることで、内定者の意思確認を明確に行い、採用計画をスムーズに進めることができます。

一般的には、内定通知書を発行してから1週間から2週間程度の期間を設けることが多いです。
しかし、候補者の転職活動の状況が聞けている場合は、選考スケジュールに配慮した期日を設けてもいいでしょう。

あまり長すぎると候補者の温度感が下がってしまう可能性があるため、バランスが重要です。

なお、期日を記載する際は「1週間以内に」といった相対的な表現ではなく、「令和7年3月15日までに」のように、具体的な日付で記載しましょう。

5:電子署名ツール・PDF送付などデジタル対応も検討する

近年は、内定通知書のやりとりを郵送ではなくオンラインで完結させる企業も増えています。
コストや工数削減の観点から導入を検討してもよいでしょう。

クラウドサインやDocuSignなどの電子契約サービスを利用すれば、内定承諾書の署名や管理も簡単です。

また、Wordで作成した通知書をPDF化してメール送付するだけでも形式的には問題ありません。

社内規定や候補者の希望に応じて、紙面と電子のどちらかを柔軟に選択できるようにしておくとよいでしょう。

内定通知書テンプレートでトラブルを防ぎ、信頼を生む採用活動を

今回は内定通知書のテンプレートから書き方、作成時の注意点まで、網羅的に解説しました。

まずは本記事で紹介したテンプレートをベースに、自社の実態に合わせて必要最低限の項目を埋めることから始めてみてください。

内定通知書は「正解の書き方」が法で決まっているものではありません。
実際に運用してみるなかで、追加したほうがいい項目や変更したい項目が出てきたら、自社のスタイルに合わせてテンプレートをブラッシュアップしていきましょう。

企業と内定者が安心して入社へのステップを進んでいくためのツールとして、内定通知書テンプレートをぜひ活用してみてください。

内定通知書の作成をはじめ、採用全体のフローや体制を整えていきたいと考えている企業には、採用支援ツール採用係長の活用がおすすめ!

求人作成から応募者の管理まで、採用活動をサポートする機能がオンラインに揃っているため、業務効率の改善や属人化防止に役立つでしょう。

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この記事を書いた人
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安光あずみ

求人広告代理店で7年間務めたのち、フリーライターとして活動中。代理店在籍時は掲載型媒体やIndeedの営業、採用広告バナーのディレクション等を担当。さまざまなニーズの求人広告を取り扱った知見を活かし、採用に役立つ記事を執筆します。

監修者
監修者
辻 惠次郎

ネットオン創業期に入社後、現在は取締役CTOとしてマーケティングからプロダクトまでを統括。
通算約200社のデジタルマーケティングコンサルタントを経験。特に難しいとされる、飲食や介護の正社員の応募単価を5万円台から1万円台に下げる実績を作り出した。
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