春から進めてきた新卒採用が、計画した人数に届かないまま8月を迎えることがあります。ここから追加で募集をかけるかどうかを決めるのが、いわゆる秋採用です。
10月1日の時点で進路が決まっていない大学生は、1割強います。よく引用される内定率は同じ時点で9割を超えるので、その数字だけを見ると秋にはもう誰も残っていないように見えます。ただ、内定を持っていることと進路を決めていることは別です。
秋にどれくらいの学生が動いているのかを公的な調査で確認したうえで、追加募集をするかどうかの決め方と、決めたあとに募集をやり直す手順を順に見ていきます。
目次
秋にまだ動いている学生はどれくらいいるのか
秋に会えるのは、内定をまったく持っていない学生だけではありません。内定を持ちながら進路を決めきっていない学生も一定数いて、その分だけ母集団は広くなります。
内定率と進路確定率は別の数字
就職みらい研究所の就職プロセス調査(2026年3月卒業予定者が対象)では、内定率と進路確定率が次のように分かれています。
| 調査時点 | 就職内定率 | 進路確定率 |
|---|---|---|
| 2025年9月1日 | 94.8% | 86.3% |
| 2025年10月1日 | 93.9% | 88.2% |
内定率は内々定を含んだ数字です。9月1日時点の内定率は94.8%ですが、進路確定率は86.3%で、8ポイントほど開いています。10月1日時点でも進路確定率は88.2%にとどまり、1割強は進む先を決めていません。
この8ポイントの中身は、内定を1社以上持ちながら就職活動を続けている学生です。第一志望の結果を待っている人、条件を比べ直している人、そもそも内定がない人が、ここに混ざっています。秋に募集を出す会社が会えるのは、この層になります。
ただし、この調査はリクナビの会員から募ったモニターへのインターネット調査で、10月1日時点の有効回答は大学生721人です。母集団の性質は次に挙げる公的調査とは違うので、数字の出どころは分けて見てください。
出典:就職みらい研究所「就職プロセス調査(2026年卒)2025年10月1日時点 内定状況」(2025年10月9日公表)、同「2025年9月1日時点 内定状況」(2025年9月9日公表)
同じ10月1日でも調査によって内定率は20ポイント違う
文部科学省と厚生労働省が共同で行っている調査では、2025年10月1日時点の大学生(学部)の就職内定率は73.4%でした。前年の同じ時期より0.5ポイント高い水準です。
同じ日を切り取った数字なのに、先ほどの93.9%とは20ポイント以上違います。
この違いは調査のやり方から来ています。文科省と厚労省の調査は全国の大学から抽出した学生に聞き取る方式で、就職サイトに登録していない学生も対象に入ります。一方の就職プロセス調査は、就職サイトの会員から募ったモニターへの調査です。就職活動に積極的な層ほど回答に含まれやすく、内定率は高めに出ます。
どちらかが間違っているわけではありません。秋に募集をかけるかどうかを判断するときは、両方を並べて幅で見ておくほうが安全です。高いほうの数字で見ても3割弱、公的調査の水準で見れば4分の1以上の学生が、10月に入る時点で内定を持っていません。
同じ調査の10月1日時点の内訳は次のとおりです。
| 区分 | 就職内定率(2025年10月1日時点) |
|---|---|
| 大学(学部) | 73.4% |
| 国公立大学 | 71.2% |
| 私立大学 | 74.1% |
| 文系 | 73.4% |
| 理系 | 73.6% |
| 短期大学 | 38.4% |
| 専修学校(専門課程) | 62.5% |
短期大学と専修学校は大学より内定率が低く、秋の時点で進路が決まっていない割合が高くなります。四年制大学だけを見て母集団が尽きたと判断すると、狙える層を取りこぼします。
出典:文部科学省・厚生労働省「令和7年度大学等卒業予定者の就職内定状況調査(10月1日現在)」(2025年11月14日公表)
2027年3月卒はどこまで進んでいるか
いま募集の対象になるのは2027年3月に卒業する学年です。就職みらい研究所の調査では、2026年6月1日時点の内定率が77.2%、進路確定率が57.3%でした。5月1日時点からは10.2ポイント伸びています。
この学年についての次の調査は9月1日時点の見込みで、7月時点や8月時点の数字は公表されていません。8月中に判断するなら、前の学年が同じ時期にどう動いたかを目安にするしかない、という前提になります。
目を引くのは、内定率77.2%に対して進路確定率が57.3%にとどまっている点です。6月の段階では、内定を持っていても進む先を決めていない学生が2割ほどいます。この層が夏のあいだに動き、秋にかけて絞り込まれていきます。
出典:就職みらい研究所「2027年卒学生 就職内定率調査(2026年6月1日時点)」(2026年7月6日公表)
追加募集をするかどうかを決める
秋採用をやるかどうかは、残りの人数と、いつまでに決めたいかの2つを先に固めると判断しやすくなります。募集を出してから考えると、選考が10月以降にずれ込んで学生が動かなくなります。
残りの人数と期限を先に決める
まず、当初の採用計画に対して何人足りていないかを数え直します。このとき内定辞退の見込みも織り込んでおきます。10月1日の内定式を境に辞退の連絡が入ることは珍しくないので、10月に入ってから足りないと気づく形は避けたいところです。
次に、いつまでに決めたいかを決めます。年内に決めたいのか、翌年3月の卒業直前まで粘るのかで、使う手段も出す先も変わります。期限を決めずに募集を出し続けると、担当者の負荷だけが増えていきます。
他社の内定式が集中する10月1日
就職プロセス調査によると、民間企業への就職が確定している学生のうち、10月1日に内定式が開催されると答えた割合は65.5%でした。9月30日以前が1.6%、10月2日以降が18.1%、開催予定なしが4.9%です。実施形態は対面が85.8%を占めています。
10月1日は、多くの会社にとって内定者を固める日です。募集する側から見ると、この日を境に他社の内定者が動きにくくなります。秋に採るなら、10月1日より前に接触を作れるかどうかが分かれ目になります。この日が秋採用の締切というわけではありませんが、越えたあとは条件が一段厳しくなると考えておくほうが安全です。
一方で、10月1日の内定式をきっかけに辞退が出る会社もあります。自社で欠員が出るのもこのタイミングです。10月に入ってから急いで募集を組み立てるより、9月のうちに受け皿を用意しておくほうが間に合います。
今年の求人市場をどう読むか
リクルートワークス研究所の第43回ワークス大卒求人倍率調査によると、2027年3月卒業予定の大学生・大学院生を対象とした大卒求人倍率は1.62倍でした。前年の1.66倍から0.04ポイント下がり、2年連続の低下です。求人総数は74.8万人(前年76.5万人)、民間企業への就職希望者数は46.2万人でした。
従業員規模別に求人数を見ると、300人未満の企業が38.5万人で前年より1.4万人(3.5%)減っています。300〜999人が15.1万人(1.6%減)、1,000〜4,999人が15.8万人(1.4%減)、5,000人以上が5.5万人(4.0%増)で、減少幅が最も大きいのは300人未満の区分です。
この減り方には、読み方が二つあります。採用をあきらめた会社が増えたとも読めますし、同じ規模の会社と競り合う場面が去年より少ないとも読めます。どちらに近いかは業種や地域で変わるので、自社の春の応募状況と突き合わせて判断してください。
もう一つ、今年から変わった点があります。リクルートワークス研究所は2026年3月卒まで従業員規模別・業種別の求人倍率も公表していましたが、2027年3月卒からこれを取りやめました。調査対象を変更したことと、学生の志望が規模や業種の一つの区分に収まらなくなっていることを理由に挙げています。求人数の時系列比較のほうは続けています。
秋採用を扱う記事のなかには、中小企業の求人倍率は何倍という数字を挙げているものがあります。2027年3月卒についてはその数字が存在しないので、社内で説明する資料に使うときは何年卒の数字なのかを確かめてください。
出典:リクルートワークス研究所「第43回 ワークス大卒求人倍率調査(2027年卒)」(2026年4月23日公表)
募集のどこを変えるか
春に出した求人をそのまま秋に延長した場合、届かなかった条件と出し先で募集を続けることになります。人数が埋まらなかった理由が条件にあるのか、出し先にあるのか、選考のスピードにあるのかを分けて、動かす場所を決めます。
卒業後3年以内の既卒者まで対象を広げる
秋にいちばん手をつけやすいのが、応募できる人の範囲です。若者雇用促進法にもとづく指針では、事業主が次のように対応することが求められています。
学校等の卒業者についても、学校等の新規卒業予定者の採用枠に応募できるような募集条件を設定すること。当該条件の設定に当たっては、学校等の卒業者が卒業後少なくとも三年間は応募できるものとすること。
厚生労働省告示第406号「青少年の雇用機会の確保及び職場への定着に関して事業主、特定地方公共団体、職業紹介事業者等その他の関係者が適切に対処するための指針」第二 三(一)
この指針は罰則をともなう義務ではありませんが、卒業後3年以内の人を新卒枠で受け付ける考え方は広く定着しています。募集要項に「2027年3月卒業見込みの方」とだけ書いていると、卒業したばかりで就職先を探している人や、大学院に進んでから方向を変えた人が応募できません。「卒業後3年以内の方も新卒枠で受け付けます」と1行足すだけで、応募できる人の範囲は変わります。
第二新卒まで視野に入れる場合は、選考の見方も変わります。社会人経験が1〜2年の人をどう評価するかは、新卒とも中途とも違う判断になるためです。
初任給などの条件を見直す
先ほどのワークス大卒求人倍率調査によると、2026年4月に入社した大学卒の平均初任給は月額23.7万円で、前年の22.8万円から3.9%上がりました。2023年4月入社以降、4年続けて増えています。従業員規模別では、規模が大きいほど金額も上げ幅も大きい傾向がありました。
春に設定した金額のまま秋も募集するなら、その水準が今年の相場からどれくらい離れているかは一度見ておく価値があります。金額を動かせないときは、休日数や勤務地、育成の体制など、金額以外で伝えられることを求人票に具体的に書きます。
選考のスピードを上げる
秋に動いている学生は、春から就職活動を続けてきて疲れている人と、いったん別の進路を目指してから切り替えた人が中心です。どちらも早く決めたい気持ちが強く、選考に何週間もかかる会社は途中で離脱されます。
面接の回数を減らす、日程を先に押さえておく、結果連絡を翌営業日までに出す。このあたりは条件を変えるより早く実行できます。応募から内定までを2週間以内に収められるかどうか、社内で一度確認してみてください。
どこに出し直すか
出し先は、春に使った媒体を延長するか、別の経路を足すかの2択で考えます。春に応募が来なかった媒体をそのまま延長しても、母集団は増えにくいためです。
春に使った媒体を延長するか、別の媒体を足すか
新卒向けのナビ媒体は、秋以降のプランや掲載枠が春とは別建てになっていることがあります。掲載を延長する前に、秋の枠でいくらかかるのか、掲載期間はいつまでかを押さえておきます。媒体ごとの無料枠や料金の考え方は、次の記事で比較しています。
お金をかけずに出せる先を足す
秋は採用予算を使い切っている時期でもあります。追加の予算が取れないときは、無料で出せる経路を足すところから始められます。
ハローワークは費用をかけずに求人を出せます。手続きの流れと必要な書類は次の記事にまとめています。
求人検索エンジンや無料掲載枠のあるサービスも、費用をかけずに露出を増やす手段になります。
自社の採用ページを整える
秋に応募を検討する学生は、春よりも会社を細かく調べます。他社の選考を経験してきているぶん、比較の目が厳しくなっているためです。募集要項だけのページと、働く人や仕事の中身が分かるページでは、応募までの歩留まりが変わります。
媒体に出す求人票と自社の採用ページの内容がずれていないかも見ておきます。媒体では触れていない仕事の中身や育成の流れを自社ページに載せておくと、比べられる場面で読んでもらえます。
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秋の日程を逆算する
秋採用は、いつまでに何人という締め切りが先に決まっている募集です。入社日から逆算して、動ける期間を先に区切ります。
秋採用は入社日から逆算して動ける期間を区切ると判断しやすくなります
10月1日と入社日から逆算する
目安としては、8月中に残りの人数と期限を確定し、9月のうちに募集を出して接触を作ります。10月1日の内定式で他社の内定者が固まることを踏まえると、9月中に会えているかどうかが一つの分かれ目です。
年内に決めきれなかった場合は、卒業直前の1月から3月にもう一度動く選択肢があります。この時期は進路が決まっていない学生の数は減りますが、卒業を控えて決めたい気持ちが強くなるため、条件が合えば短期間で決まります。
年内に決まらないときは通年採用に切り替える
秋に採りきれない年が続いているなら、時期を区切った募集そのものを見直す手もあります。通年で募集する形に変えると学生の動きに合わせて選考できるようになりますが、選考の体制を1年を通して維持する必要が出てきます。自社で回せるかどうかを含めて検討してください。
まとめ
秋採用を判断するときに押さえておきたい点を整理します。
- 10月1日時点でも進路が決まっていない大学生は1割強いる(進路確定率88.2%)
- 同じ10月1日時点の内定率でも、公的調査は73.4%、就職サイトのモニター調査は93.9%と差がある
- 2027年3月卒については6月1日時点の内定率77.2%・進路確定率57.3%までしか公表されていない
- 10月1日は締切ではなく、他社の内定者が固まる日。9月中に接触を作れるかどうかが分かれ目になる
- 春と同じ条件・同じ出し先では結果は変わらない。対象範囲、条件、選考スピードのどれを動かすかを決める
- 卒業後3年以内の既卒者を新卒枠で受け付ける考え方が、若者雇用促進法にもとづく指針に書かれている
人数が届かなかったこと自体は、秋に動く会社にとって珍しいことではありません。残りの人数と期限を決めて、春と違うやり方に一つでも変えられれば、秋の3か月はまだ使えます。
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