外国人を採用するとき、在留カードの確認は避けて通れません。ただ、確認といっても、カードを見せてもらってコピーを取れば済むのか、それ以上に何かやることがあるのかは、はっきりしません。
先に結論を書きます。企業がやる確認は3つあります。出入国在留管理庁が配布している読み取りアプリでICチップを読むこと、在留カード等番号失効情報照会でその番号が生きているかを調べること、そして券面を自分の目で見ること。3つは役割が違うので、どれか1つで済ませることはできません。
そしてもう1つ、いま特有の事情があります。2026年6月14日から交付が始まった新しい様式の在留カードでは、アプリで読み取っても在留期間が表示されません。表示できるようにする改修版の予定は公表されていますが、2026年7月28日の時点ではまだリリースされていません。
企業がやる確認は3つ。役割が違うので、どれか1つでは足りません。
目次
在留カード等読取アプリケーションで分かること
在留カード等読取アプリケーションは、出入国在留管理庁が無料で配布しているアプリです。在留カードのICチップに入っている情報を画面に出して、券面に書かれている内容と見比べることで、そのカードが偽変造されたものでないかを確認するために使います。
利用するときは、本人の同意を得たうえでカードの提示を受ける必要があります。黙って読み取るものではありません。
出入国在留管理庁のサポートページ(2026年7月28日確認)。アプリの配布元と対応環境はここで確認できます。
アプリに表示される項目
新様式の在留カードと特定在留カードを読み取った場合、アプリには次の項目が表示されます。
- 氏名
- 生年月日
- 性別
- 国籍・地域
- 住居地
- 在留資格
- 在留期間の満了日
- 在留カードの番号
- 在留カードの有効期限満了日
- 就労制限の有無
- 資格外活動許可を受けているときはその旨
ここで1つ注意があります。表示されるのは「在留期間の満了日」であって、「在留期間」そのものではありません。3年なのか1年なのかという期間の長さは、新様式では表示されません。このあと詳しく書きます。
使うために必要なもの
アプリはWindows版がMicrosoft Store、macOS版がMac App Store、Android版がGoogle Play、iOS版がApp Storeで配布されています。対応するOSは次のとおりです。
| 環境 | 条件 |
|---|---|
| Windows | Windows 11(ARM、x64対応) |
| Mac | macOS 13以降(Apple M1チップ以降を搭載したMac) |
| Android | Android 12.0以降 |
| iPhone | iOS 16.0以降 |
パソコンで使う場合は、非接触型のICカードリーダライタが別に要ります。しかも拡張APDUに対応した機種に限られます。スマートフォンで使う場合はNFCのType Bに対応した端末が必要です。
読み取れないときに考えられること
読み取れないときは、カードより先に環境を疑ってください。
パソコンの場合:ICカードリーダライタが拡張APDUに対応していない可能性があります。手元の機種の仕様を確認してください。
スマートフォンの場合:端末がNFCのType Bに対応していない可能性があります。NFC対応と書かれていても、Type Bに対応しているとは限りません。
OSのバージョン:上の表の条件を満たしていないと動きません。
環境に問題がないのに読み取れない場合は、カード側の問題も考えられます。判断に迷うときは、自社で結論を出さずに地方出入国在留管理局に問い合わせてください。
2026年6月14日から、新様式ではアプリでも在留期間が表示されません
ここがいま一番はまりやすいところです。2026年6月14日から、新しい様式の在留カード等の交付が始まりました。この新様式では、これまで券面に書かれていた次の4つが記載されなくなりました。
- 在留期間
- 許可の種類
- 許可年月日
- 交付年月日
これらはカードの中のICチップには記録されています。ところが、現在の読み取りアプリではこの3項目(在留期間・許可の種類・許可年月日)が表示されません。券面を見ても書いておらず、アプリで読んでも出てこない、という状態です。
出入国在留管理庁の告知(2026年7月28日確認)。新様式で在留期間をどう確認するかが案内されています。
在留期間を確認したいとき
出入国在留管理庁は、在留申請のオンライン手続についての案内のなかで、在留期間を確認する必要がある場合には申請人の住民票に記載された在留期間を確認するよう求めています。オンライン申請では在留期間が必須の入力項目で、正確に入力しないと申請できない仕様になっているためです。
この案内はオンライン申請の入力を念頭に置いたものです。雇用管理の場面で住民票を使ってよいかどうかまでは、同庁の資料に書かれていません。実務でどう扱うかを決めるときは、この点を踏まえたうえで判断してください。
許可年月日を確認したいとき
許可年月日は住民票に載りません。出入国在留管理庁は、在留期間満了日と在留期間から許可年月日を算出するツールを自庁のサイトに掲載しています。ただしこれで算出できるのは、在留資格変更許可を受けた場合に限られます。
特定在留カードなら別のアプリで読める
特定在留カードは、マイナンバーカードとしての機能を付加するための措置が講じられた在留カードです。マイナンバーカードとみなされ、1枚で両方の機能を果たします。取得は任意で、義務ではありません。希望しない場合は新様式の在留カード等が交付されます。
この特定在留カードについては、マイナンバーカードの機能を持つことから、デジタル庁が配布している対面確認アプリで在留期間等の情報を読み取ることができると出入国在留管理庁が案内しています。同庁の案内の時点では、このアプリはiOS版のみです。
改修版は令和8年9月を目途
出入国在留管理庁は、在留期間・許可の種類・許可年月日を表示できる読み取りアプリの改修版を、令和8年(2026年)9月を目途にリリースする予定としています。あくまで予定として公表されているもので、2026年7月28日の時点ではまだ出ていません。
改修版が出れば、この空白は解消される見込みです。ただし提供時期は目途として示されているものです。自社の確認フローを組むときは、いま使える手段だけで回せるようにしておくほうが安全だと考えています。住民票を見る、算出ツールを使う、特定在留カードなら対面確認アプリで読む、のいずれかです。
しばらくは新旧のカードが混在します
2026年6月13日までに交付された在留カード等は、新様式の交付が始まったあとも有効期限までは有効です。特定在留カードや新様式への切替手続は必要ありません。
つまり現場には、券面に在留期間が書かれている旧様式のカードと、書かれていない新様式のカードが当分のあいだ並びます。応募者が持ってきたカードがどちらなのかで確認の手順が変わるので、両方を想定しておいてください。
アプリだけでは足りません。失効情報照会もあわせて使います
読み取りアプリを入れれば確認は終わり、と考えたくなりますが、そうではありません。出入国在留管理庁自身が、アプリを利用する場合は併せて失効情報照会も利用するよう求めています。
役割が違うからです。アプリは券面情報の確認、つまりそのカードが偽変造されていないかを見るためのもの。失効情報照会はカードの有効性、つまりその番号が生きているかを調べるためのものです。
在留カード等番号失効情報照会の入力画面(2026年7月28日確認)。カード番号と有効期間満了日を入れて照会します。
照会で分かること、分からないこと
在留カード等番号失効情報照会は、在留カード等の番号と有効期間の満了日を入力して、その番号が失効していないかを確認するものです。
ただし、照会の結果はそのカード自体の有効性を証明するものではありません。実在する番号を悪用した偽造カードも存在するためです。出入国在留管理庁も、照会結果にかかわらず読み取りアプリや券面の偽変造防止対策の確認もあわせて行うよう求めています。ここでも、1つの手段で完結させないという考え方は同じです。
在留期間の更新を申請中のとき
実務で効いてくるのがこれです。在留期間更新許可申請等を行っている場合、券面の在留期間満了日を過ぎていても、照会結果は「失効していません。」と表示されます。これによって、その人が在留申請中であることを確認できます。
満了日が過ぎているカードを見せられて判断に困る場面は起こりえます。そのときに照会を使えば、切れているのか申請中なのかを切り分けられます。
使えない時間帯があります
失効情報照会には、知らないと戸惑う制約がいくつかあります。
メンテナンス:毎日午後8時から午後11時までの約3時間は、データ更新のため使用できません。
当日に申請したカード:交付情報の更新は、土日祝日を除く原則平日の午後8時から午後11時にかけて行われます。そのため当日の申請であっても、午後11時以降であれば照会できます。土日祝日の申請処理結果は、翌営業日のデータ更新後に反映されます。夕方に照会して結果が出なくても、その日のうちに結論を出さないでください。
対応していない番号:外国人登録証明書番号には対応していません。
アクセス制限:令和8年1月5日以降、海外のIPアドレスやVPN・プロキシ等で匿名化された環境からのアクセスは制限されています。
なお、令和7年11月14日以降は、在留カード等読取アプリから失効情報照会を利用できるようになりました。アプリと照会を行き来せずに済みます。
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本物かどうかの次は、自社で働かせてよいかどうか
ここまでは、そのカードが本物かどうかの話でした。カードが本物だと分かっても、その人を自社で働かせてよいかどうかは別の問題です。アプリを使っても、こちらの答えは出ません。券面を見て判断する作業になります。
まず「就労制限の有無」欄を見る
外国人を雇用するときは、まず「就労制限の有無」欄を確認します。記載は次の4つのいずれかです。
| 記載 | 意味と次にやること |
|---|---|
| 就労不可 | 原則として雇用できません。ただしここで判断を終えず、資格外活動許可欄まで確認します。 |
| 在留資格に基づく就労活動のみ可 | その在留資格の範囲内で就労できます。在留資格が「特定技能」の場合は、指定書の確認も必要です。 |
| 指定書により指定された就労活動のみ可 | 在留資格「特定活動」の場合の記載です。法務大臣が個々に指定した活動が書かれた指定書を確認します。 |
| 就労制限なし | 就労の内容に制限はありません。 |
「就労不可」でも終わりではありません
「就労不可」と書かれていても、そこで判断を終えないでください。資格外活動許可欄に「許可(原則週28時間以内・風俗営業等の従事を除く。)」などの記載があれば、就労時間や就労場所の制限つきで就労できます。
この週28時間には注意点があります。複数のアルバイト先がある場合、合計で週28時間以内でなければなりません。自社での勤務時間だけを見て28時間に収まっていても、他社での勤務と合わせると超えることがあります。
資格外活動許可欄がカードのどこにあるかは、カードの種類によって異なります。通常の在留カードと特定在留カードでは同じではありません。表面だけ、あるいは裏面だけを見て終わりにせず、その人のカードの実物で欄の位置を確かめてください。
在留カードを持っていない人もいます
在留カードを所持していなくても就労できる場合があります。次のようなケースです。
- 旅券に、後日在留カードを交付する旨の記載がある人
- 「3月」以下の在留期間が付与された人
- 「外交」「公用」等の在留資格が付与された人
これらの場合は、在留カードではなく旅券等で就労の可否を確認します。カードが無いから雇えない、と機械的に判断しないでください。
仮放免許可・監理措置決定は在留資格ではありません
仮放免許可や監理措置決定は、在留資格ではありません。出入国在留管理庁のリーフレットは、監理措置決定や仮放免許可を受けた外国人について、退去強制手続中の立場であるため原則として就労することはできない、としています。
例外もあります。監理措置決定を受けた外国人は、退去強制令書の発付前に限り、生計の維持に必要な範囲内で、就労先を指定するなど一定の厳格な要件のもとで就労が許可されることがあります。その可否は、本人が所持する監理措置決定通知書の記載で確認します。
いずれの場合も、就労の可否に疑義があるときは自社で判断せず、最寄りの地方出入国在留管理局に問い合わせてください。
不法就労助長罪と、確認を怠った場合の責任
ここまでの手順を面倒に感じるかもしれません。それでも確認する理由が、不法就労助長罪です。
出入国管理及び難民認定法(入管法)第73条の2第1項は、同項各号のいずれかに該当する者を、三年以下の拘禁刑若しくは三百万円以下の罰金に処し、又はこれを併科すると定めています。
問題は、知らなかったで済むかどうかです。同条第2項は、第1項各号に当たる行為をした人について、その外国人の活動が在留資格に応じたものでないことなどの事実を知らないことを理由として処罰を免れることはできない、と定めています。ただし条文には「ただし、過失のないときは、この限りでない。」という但書があります。
では、何が過失にあたるのか。出入国在留管理庁はリーフレットのなかで、外国人を雇用しようとする際に、当該外国人が不法就労者であることを知らなかったとしても、在留カードを確認していない等の過失がある場合には処罰を免れません、と説明しています。
確認したかどうかが、過失があったかどうかの分かれ目になります。ここまで手順を細かく並べてきたのは、そのためです。
厳罰化について:法定刑を五年以下の拘禁刑若しくは五百万円以下の罰金に引き上げる改正が、e-Gov法令検索に未施行の条文として登録されています(施行日は2027年4月1日として登録)。まだ施行されていないものなので、現時点で適用されるのは三年以下の拘禁刑若しくは三百万円以下の罰金です。
採用が決まったあとの手続き
在留カードの確認は採用前の作業です。実際に雇い入れたあとには、外国人雇用状況の届出という別の手続きが待っています。提出先や期限、書き方は次の記事にまとめてあります。
外国人雇用状況の届出とは? 届出書の書き方や提出方法、提出期限と3つの注意点
飲食店で外国人スタッフを迎える場合は、業種特有の論点をこちらでも扱っています。
飲食店で外国人スタッフを雇用するメリットや手続きの注意点を解説
まとめ:確認の順番
最後に、採用前にやることを順番に並べておきます。
- 本人の同意を得て、在留カードの提示を受ける
- 読み取りアプリでICチップを読み、券面の記載と見比べる(偽変造の確認)
- 在留カード等番号失効情報照会で、番号が失効していないかを調べる
- 「就労制限の有無」欄を見る。「就労不可」なら資格外活動許可欄まで確認する
- 「指定書により指定された就労活動のみ可」や在留資格「特定技能」なら、指定書を確認する
- 新様式のカードで在留期間そのものが要るときは、住民票や算出ツールなど別の手段を使う
- 判断に迷ったら、自社で結論を出さずに地方出入国在留管理局に問い合わせる
2026年6月14日の様式変更で、確認の手順は一段ややこしくなりました。改修版のアプリが出るまでは、アプリだけに頼らない組み立てにしておくのが現実的です。不法就労助長罪の但書にある過失の有無は、こうした確認を実際にやったかどうかで分かれます。
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