2020年4月1日に改正健康増進法が全面施行され、対象となる施設では受動喫煙を防止するための対策がとられるようになりました。
喫煙スペースの設置や標識の掲示はほとんどの方が理解されていると思いますが、今回の法改正で受動喫煙対策を求人票内で明示することが義務化されたことはご存じでしょうか。
これには法令の適用外となっている、喫煙を主目的とする施設も含まれています。
今回は「求人票のことは、初耳だった!」という方のために、求人票に明示すべき内容や対策に関する書き方や注意点、違反した場合の罰則規定などを紹介します。
目次
受動喫煙対策とは
受動喫煙対策とは、望まない受動喫煙を防止するための取り組みです。
これまでは各自治体の条例として取り組まれてきた受動喫煙対策ですが、健康増進法の一部改正によって日本全体での取り組みに変わりました。
2019年1月から段階的に施行されており、2020年4月1日の全面施行からは、対象となる施設で「敷地内禁煙」や「屋内禁煙(喫煙専用室などの設置)」などが始まっています。
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求人募集にも関わる受動喫煙対策
改正健康増進法の全面施行によって、求人票の記載項目にも変化が生じています。
求人票を掲載する際に、受動喫煙に関する対策内容を明示することが求められるようになりました。
ハローワークの求人は先行して1月からこの運用が始まっており、4月1日以降は求人広告や自社ホームページなどすべての求人票において適用されています。
受動喫煙対策を求人票に明示する理由
求人票と受動喫煙対策には、どのような関係があるのでしょうか。
求人票へ受動喫煙対策に関する記載が必要な理由についても触れておきましょう。
「健康増進法の一部を改正する法律(平成30年法律第78号) 概要」では、以下のように従業員に対する受動喫煙対策が定められています。
○ 多数の者が利用する施設等では、施設等の類型・場所ごとに禁煙措置や喫煙場所の特定を行うこととするが、喫煙可能場所のある施設の従業員の「望まない受動喫煙」を防止するため、以下の施策を講ずる。
1 20歳未満の者(従業員含む)の立入禁止 多数の者が利用する施設等の管理権原者等は、20歳未満の者(従業員を含む)を喫煙可能場所に立ち入らせてはならないこととする。
2 関係者による受動喫煙防止のための措置 関係者(※)に受動喫煙を防止するための措置を講ずる努力義務等を設ける。その上で、これらの努力義務等に基づく対応の具体例を国のガイドラインにより示して助言指導を行うとともに、助成金等によりその取組を支援する。 ※上記1の施設等の管理権原者等及び事業者その他の関係者
この内容からも分かるとおり、受動喫煙対策には従業員の受動喫煙を防ぐ対策も含まれています。
求人票に受動喫煙対策についての記載があれば、求職者は状況を理解したうえで応募することが可能です。
つまり、望まない受動喫煙をなくす手段のひとつとして、求人票への明示が義務化されているのです。
求人票に受動喫煙対策の記載が求められる業種
求人票への記載は、基本的にすべての業種で必須です。 改正健康増進法では施設を以下のように分類し、施設タイプに応じた受動喫煙対策を求めています。
施設の類型 | 施設の種類 | 施設例 |
第一種施設 | 子供や患者等に特に配慮すべき施設 | 病院、学校、児童福祉施設、行政機関 など |
第二種施設 | 上記以外の施設事業所 | 飲食店、ホテル・旅館、旅客運送事業船舶、鉄道、国会、裁判所 など |
喫煙目的施設 | 喫煙を目的とする施設 | 喫煙が主目的のバー・スナック、たばこ販売店 など |
この中で喫煙目的施設は、喫煙スペースの設置などの措置を講じる必要がありません。
しかし、従業員の受動喫煙防止の観点から、求人票への明示は義務づけられています。
求人票を作成する際は、記載を忘れないように注意しましょう。
求人票を作成する際の受動喫煙対策の書き方
求人票に記載すべき内容は、就業場所の形態ごとに定められています。
画像出典:厚生労働省・都道府県労働局・ハローワーク『求人申込み時の留意点』
上記はハローワークの仕様に準じた表記方法です。
一般の求人サイトなどで募集を行う際は、各媒体の規定に従って受動喫煙対策の有無と対策内容を明記してください。
例えば第二種施設にあたる建物内での事務求人の募集で、屋内に喫煙室が設置されている場合は、勤務地欄内に「<受動喫煙対策あり>屋内原則禁煙(喫煙専用室設置)」などと記載しましょう。
参考として、現在公開されている求人票の記載内容を確認してみましょう(いずれも2020年4月1日時点)。
まずは、ハローワークインターネットサービスの飲食店の求人票です。
次は大手転職サイトに掲載されている求人票。医療施設の求人では、以下のような表記が確認できました。
受動喫煙対策について、きちんと明示されていましたね。
喫煙可能区域での業務がある場合
就業場所に禁煙区域と喫煙可能区域がある場合は、喫煙可能区域内での業務の有無を求人票に記載することが推奨されています。
記載例: 「喫煙可能区域での業務あり」 「喫煙可能区域での業務なし」
これは必須ではありませんが、入社後のミスマッチを防ぐ観点からも、記載するメリットはあるでしょう。
求人票に受動喫煙対策を明示する際の注意点
記載事項に関する主な注意点は、以下の3つです。
- 実際の就業場所における受動喫煙対策を明示する。
- 複数の場所での就業が予定されている場合は、それぞれの就業場所における受動喫煙対策を明示する(出張や将来的な転勤は除く)。
- 移動が前提の業務(バス・タクシー、鉄道、船舶、航空機の乗務員など)は、恒常的に立ち寄る場所(ターミナルなど)および業務場所(車内、機内など)の状況をそれぞれ明示する。
これらの記載事項に加え喫煙可能区域での業務がある場合は、20歳以上の求職者を採用しなければならないことにも留意しておきましょう。
その場合の年齢制限の理由は、「健康増進法により20歳未満立入禁止のため」と表記します。
求人票への明示義務に違反した場合の罰則
求人票への記載は、職業安定法施行規則によって4月1日から義務化されています。
明示しなかった場合は、法令違反とみなされるため注意が必要です。
法令に違反した場合、ハローワークでは求人の公開と職業紹介が中止されます。一般の求人サイトなどでは、法令に準ずる記載が求められるでしょう。
違反者は訂正指導を受ける可能性があるため、自社ホームページなどの求人票は採用担当者がしっかりと確認してくださいね。
まとめ
改正健康増進法が4月1日から全面施行され、求人票に受動喫煙対策を明示することが義務化されました。
これから自分で求人票を作成する採用担当者は、忘れずに記載しましょう。
記載項目が増えることで少し手間が増えるかもしれませんが、求職者の立場にたった情報提供は、採用を成功させるうえで有効です。
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