中小企業の賃上げ、「実施予定」は66.7%。約7割が価格転嫁で原資を確保|<2025年度>中小企業の賃上げ実態調査

2025年度の春季労使交渉(春闘)では、大手企業は昨年同様、満額または要求を上回る回答、過去最高のベースアップなどが続きました。賃上げ率は2年連続で5%台。定着しつつある賃上げの流れがどこまで広がるのか注目が集まっています。

中小企業における労使間交渉が本格化する中、中小企業は2025年度の賃上げについてどのように対応するのでしょうか。

株式会社ネットオンでは、採用マーケティングツール『採用係長』の登録ユーザーである中小企業の採用担当者を対象に、2025年度の賃上げ予定に関するアンケート調査を実施しました。

アンケート回答者属性

今回、アンケートにご回答いただいた事業所様の属性は以下の通りです。
従業員規模20名以下の事業所様を中心に「建築・不動産」、「工場・製造」、「運輸」、「小売」など様々な事業所様にご回答いただきました。
また、地域につきましても、都市部を中心に全国的に散らばり、あらゆる地域の事業者様にご回答いただきました。

業種

従業員規模

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都道府県

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66.7%の事業所が賃上げを「実施する予定」

はじめに全事業所へ2025年度の賃上げ予定について質問したところ、66.7%が「実施する予定」と回答。賃上げを実施する事業所が7割近くに達することが明らかになりました(n=114)。

賃上げ実施の予定

前回調査(2024年3月実施/n=557)との比較では、「実施する予定」の事業所が10.6ポイント増加。株式会社ネットオンが本調査を開始した2022年以降、賃上げ実施予定の事業所が60%を超えたのは今回が初めてです。

賃上げ予定を業種ごとに確認したところ、以下のような違いが見られました(回答が6事業所以上あった業種のみをグラフ化しています)。

グラフ(業種別賃上げ予定)
※( )内の数字は事業所数

賃上げ予定の事業所の割合がもっとも多かった業種は、同率で「医療」「小売」です。回答が6事業所以上あった8業種のうち、6業種において「実施する予定」の事業所が「実施しない予定」の事業所を上回りました。

51.3%が「正規雇用・非正規雇用の両方」を賃上げ

続いて、賃上げを実施する雇用形態について質問したところ、「正規雇用・非正規雇用の両方」と回答した事業所が51.3%を占めました(n=76)。

グラフ(Q2.賃上げを実施する雇用形態を教えてください)

両方の雇用形態で賃上げを実施する事業所は、前回調査から4.8ポイント減少。一方で「正規雇用のみ」と回答した事業所は38.2%で、前回調査よりも5.1ポイント増加しました。限られた原資の中で賃上げの対象を選択する傾向がみられます。

賃上げ内容は「ベースアップ」が半数以上

賃上げ予定の内容については、半数以上の事業所が「ベースアップ」と回答しています。

グラフ(Q3.賃上げの内容を教えてください)

「ベースアップ」を実施する事業所の割合は、前々回調査(2023年3月/n=183)は51.4%、前回調査(2024年/n=326)が54.9%、2025年は51.3%となり、同水準を維持しています。

賃上げ率は「2~3%未満」が最多。約7割が1~5%未満の範囲で実施

賃上げ率について質問したところ、もっとも多かったのは「2~3%未満」です。次に「4~5%未満」、「5~10%未満」が続きました。
全体の約7割が1~5%未満の範囲で賃上げを行うことが明らかになっています。

グラフ(Q4.賃上げ率を年収換算ベースで教えてください)

賃上げ理由1位は「従業員の生活を支えるため」

賃上げ理由については、「従業員の生活を支えるため」が最多です。2位には「従業員の定着率向上(引き留め)のため」が続き、いずれも半数以上の事業所が回答しました。

グラフ(Q5.賃上げを実施する理由を教えてください)

前回調査との比較では、前回4位の「物価高騰による生活費増加に対応するため」が3位となり、14ポイント増加。「業績が伸びた(回復した)ため」は昨年と同順位ですが、10.3ポイントの減少となっています。
人手不足と物価上昇が続く現在の社会情勢を背景に、業績に関わらず賃上げをせざるを得ない中小企業の状況を示す結果といえるでしょう。

賃上げしない理由1位は「現在の賃金が適切であるため」

Q1の質問で賃上げを「実施しない予定」と回答した事業所にもその理由について質問しています(n=38)。

グラフ(Q6.賃上げを実施しない理由を教えてください)

1位は「現在の賃金が適切であるため」で、半数以上の事業所が回答。2位の「物価高や円安によるコスト増加のため」は前回調査時(3位)からひとつ順位を上げ、19ポイント増加しました。

65.8%の事業所が「価格転嫁できている」

Q1で賃上げを「実施する予定」と回答した事業所(n=76)へ、価格転嫁の状況について質問したところ、「多少なりとも価格転嫁できている」が過半数を占めました。「価格転嫁できている」と回答した事業所を合わせると、65.8%の事業所が何らかの形で価格転嫁を実施していることが分かります。

グラフ(Q7.賃上げのための原資確保に向けて価格転嫁ができていますか?)

一方で、「全く価格転嫁できていない」事業所は25.0%。賃上げを行う事業所の4分の1は、価格転嫁をしたくてもできない状況であることが読み取れます。

価格転嫁率は「2割以上5割未満」が最多

Q7で「価格転嫁できている」または「多少なりとも価格転嫁できている」と回答した事業所へ、人件費の上昇分に対する価格転嫁率について質問しました(n=50)。

グラフ(Q8.人件費の上昇分に対して何割を転嫁できましたか?)

最も多かったのは「2割以上5割未満」で40%、次いで「2割未満」が32.0%です。人件費の上昇分をすべて(=10割)転嫁できた事業所は、わずか2%に留まっています。
価格転嫁できた事業所の7割以上が、人件費上昇分の半分未満の転嫁であることが分かりました。

6割以上の事業所が「販売価格の値上げ」で原資を確保

Q7で「価格転嫁ができている」と回答した事業所(n=50)へ、賃上げの原資確保に向けた取り組みについて質問したところ、62.0%が「販売価格の値上げ」と回答しました。

グラフ(Q9.賃上げのための原資確保に向けて、原資確保に向けて実施する(した)取り組みがあれば教えてください)

2位以下には「既存の人事制度や給与制度の見直し」「助成金や補助金の活用」「設備投資」「新たな人事制度の導入」が続いています。価格転嫁を実現している事業所の多くが販売価格の値上げだけでなく、複数の取り組みを組み合わせて原資確保に努めていることが読み取れる結果となっています。

価格転嫁していない事業所は、「実施している取り組みはないが賃上げに踏み切った」が最多

Q7で「全く価格転嫁できていない」または「価格転嫁をするつもりはない」と回答した事業所にも、賃上げの原資確保の取り組みについて質問しました(n=26)。

グラフ(Q10.賃上げのための原資確保に向けて、原資確保に向けて実施する(した)取り組みがあれば教えてください)

もっとも多かったのは「実施している取り組みはないが賃上げに踏み切った」で、4割近い事業所が回答。「価格転嫁ができている」事業所との違いが鮮明になっています。

賃上げは「人材確保のために必要」「中小企業は厳しい状況」など

すべての事業所へ賃上げに対する意見や感想を聞いたところ、34件の回答を得ることができました(n=114)。ここではその一部を紹介します(可読性を高めるため、文章の一部を調整済み)。

<自由回答・一部抜粋>※カッコ内は、業種/従業員規模/所在地

賃上げに関する意見

  • やる気ある従業員は賃上げしたい(小売/10~19名/千葉県)
  • 時代の流れだと思う(運輸/5~9名/愛知県)
  • 大企業(マスコミ)の影響で、少しでも上げなければいけないという厳しい状況にある(工場・製造/30~49名/滋賀県)
  • 我々のような小さい会社での賃上げはかなり難しい(電気・ガス・石油・水道/~4名/兵庫県)
  • 中小企業は大変なのではないか。大手企業だからできることだと思う(工場・製造/10~19名/大阪府)
  • 中小企業は賃上げが難しい。最低賃金のあまりにも急な上昇についていけない(人材/500~999名/岐阜県)
  • 今は賃上げができているが、社会保険料が今後どうなるのかが大きな課題(小売/20~29名/埼玉県)

コスト増・価格転嫁に関する意見

  • 社の規模が小さいため、値上げ交渉がなかなか受け入れられない(警備/10~19名/三重県)
  • 下請けまで回ってこない(建築・不動産/~4名/兵庫県)
  • 中小企業の運送業は荷主からの運賃が上がらなければ売上も上がらない(運輸 /30~49名/北海道)
  • ガソリン代が高騰しているのに値上げをしていただけない状態がつらい(運輸/~4名/兵庫県)
  • ガソリンの値上げや物価高で、売り上げが上がらない(そのほか生活関連サービス/10~19名/東京都)
  • 最低賃金や固定費・流動費の上昇で、賃上げ幅を増やすことが難しい(そのほか生活関連サービス/~4名/静岡県)

政策・制度に関する意見

  • 公平な税制と公務員の削減が先(その他専門・技術サービス/500~999名/神奈川県)
  • 大企業との賃金の格差はますます広がっている。大企業から中小企業への利益還元が進むよう政府に取り組んでもらいたい(人材/300~499名/大阪府)
  • 中小企業の現状を理解したうえで政策を行わなければ、中小企業は壊滅的なダメージを負うことになると思う(その他専門・技術サービス/~4名/東京都)
  • 公定価格が決まっている時点で、賃上げはかなり難しい。効率化や生産性向上による利益が還元されないことは問題だと思う(介護・福祉/10~19名/千葉県)
  • 医療・福祉分野は定価が国によって決められているため、その範囲で運営するしかない。社会保険料の増加と連動して定価も上がらなければ会社運営ができない(介護・福祉/5~9名/神奈川県)
  • 中小企業の資金確保が厳しい旨と下請けの現状を取り上げて、弱い立場をサポートする対応が必要(その他/5~9名/福岡県)

まとめ

今回の調査では、中小企業における2025年度の賃上げ予定に関するアンケートを実施しました。結果は、賃上げを「実施する予定」と回答した事業所が66.7%。2024年3月に実施した前回調査から10.6ポイント増加し、本調査の開始以来初の60%台となりました。この結果からは、大手企業において定着しつつある賃上げが中小企業にも波及していることがうかがえます。

しかし賃上げ理由は、「従業員の生活を支えるため」が56.6%。「物価高騰による生活費増加に対応するため」は前回調査から順位を上げ、その割合も14ポイント増加しています。一方で「業績が伸びた(回復した)ため」は10.3ポイント減少しており、社会情勢を考慮した賃上げであることが実情でしょう。
依然として厳しい経営状況の中での賃上げであり、多くの中小企業にとって賃上げが経営負担となっていることは間違いないようです。

そうした状況の中、賃上げのための価格転嫁が進んでいることは良い傾向といえます。転嫁率には課題があるものの、賃上げを実施する事業所の約7割が価格転嫁を実施している点は、明るい兆しといえるのではないでしょうか。

去る3月11日、構造的な価格転嫁の実現に向けた下請法の改正案が閣議決定されました。政策と企業努力の相乗効果による価格転嫁の広がりに期待し、中小企業においても大手企業と同様に賃上げの定着が進むことを望みます。

株式会社ネットオンは、採用マーケティングツール『採用係長』の提供を通じて採用課題の解決に貢献し、中小企業の持続的な成長を支援してまいります。

調査概要

調査名 2025年度の賃上げに関するアンケート調査
調査対象 『採用係長』利用事業所の人事・労務担当者様
有効回答数 114
調査期間 2025年2月26日(水)~3月25日(火)
調査方法 インターネット調査
調査結果の注意点 %を表示する際に小数点第2位で四捨五入しているため、単一回答の場合は100%、複数回答の場合は合計値に一致しない場合があります。

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この記事を書いた人
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馬嶋 亜衣子(samusillee)

採用・キャリア関連、医療分野を中心に執筆を行うフリーランスライター。 各種メディアの取材ライティングやSEOライティング、採用HPのライティングなどに携わっています。

監修者
監修者
辻 惠次郎

ネットオン創業期に入社後、現在は取締役CTOとしてマーケティングからプロダクトまでを統括。
通算約200社のデジタルマーケティングコンサルタントを経験。特に難しいとされる、飲食や介護の正社員の応募単価を5万円台から1万円台に下げる実績を作り出した。
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