中小企業の外国人採用、93.1%が助成金などを「利用していない」または「知らない」。支援制度の普及が課題に

外国人労働者数は2021年10月末時点で約173万人に上っており(厚生労働省発表)、2007年に届出が義務化されて以降、過去最高を更新しています。

国内では新型コロナウイルス対策の行動制限解除によって、有効求人倍率が継続的に上昇。今後は水際対策の緩和に伴うインバウンド需要の本格的な回復も見込まれています。
外国人採用ニーズのさらなる高まりが予想される中、中小企業における外国人採用の取り組みは進んでいるのでしょうか。

株式会社ネットオンでは、中小企業における外国人採用の実施状況について、採用業務クラウド「採用係長」の登録ユーザーである中小企業の採用担当者を対象にアンケート調査を実施しました。

目次

アンケート回答者属性

今回、アンケートにご回答いただいた事業所様の属性は以下の通りです。
従業員規模が20名以下の事業者様を中心に、「建築・不動産」、「飲食」、「介護・福祉」、「工場・製造」など様々な事業者様にご回答いただきました。また、地域につきましても、都市部を中心に全国的に散らばり、あらゆる地域の事業者様にご回答いただきました。

業種

従業員規模

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都道府県

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「現在、外国人採用を行っている」事業所は、33.3%

Q1.外国人採用の実施状況を教えてください

グラフ(Q1.外国人採用の実施状況を教えてください)

はじめに、外国人採用の実施状況について質問したところ(n=234)、33.3%の事業所が「現在、外国人採用を行っている」と回答。「外国人採用を行ったことがない」事業所が過半数を占めました。

外国人を採用する理由の最多は、「人手不足を解消するため」

Q2.外国人採用を行っている理由を教えてください(複数回答)

次に、Q1で「現在、外国人採用を行っている」と回答した事業所(n=78)へ、理由について質問しました。

グラフ(Q2.外国人採用を行っている理由を教えてください)

もっとも多かったのは「人手不足を解消するため」で、75.6%の事業所が回答。2位の「国籍を問わず優秀な人材を採用するため」は60%に迫りました。

外国人採用をしない理由は、「定着しなかった」「採用の実績がない」

外国人採用を実施していない事業所にも、その理由について質問しました。

Q3.外国人採用を行わない理由を教えてください(複数回答)

「現在は行っていない」事業所(n=24)は、「採用したが定着しなかったため」がもっとも多く、半数以上の事業所が理由として挙げています。

グラフ(Q3.現在、外国人採用を行っていない理由を教えてください)

一方、「外国人採用を行ったことがない」事業所(n=132)については、「外国人採用の実績がない」「外国人従業員向けの教育や研修が整っていない」がいずれも半数を超えました。

グラフ(Q3.これまで、外国人採用を行ったことがない理由を教えてください)

採用した従業員の国籍1位は「ベトナム」

Q4.採用した外国人従業員の国籍を教えてください(複数回答)

外国人採用経験のある(「現在、外国人採用を行っている」+「現在は行っていない」)事業所へ(n=102)、外国人従業員の国籍について質問したところ、「ベトナム」がもっとも多く、43.1%の事業所で採用されていることが分かりました。2位は「中国(37.3%)」、3位には「インドネシア(28.4%)」が続いています。

グラフ(Q4.採用した外国人従業員の国籍を教えてください)

また採用実施状況別に国籍の割合を比較したところ、以下のような違いがみられました。

グラフ(採用実施状況別「採用した従業員の国籍」)

「現在は行っていない」事業所は、「ベトナム」「中国」「フィリピン」が同率1位。「インドネシア」と「ネパール」は0%でした。

「販売・接客等のサービス職」「建築・土木の技術職」での就業が多い

採用した従業員の職種については(n=102)、「販売・接客等のサービス職」「建築・土木の技術職」が多いことが分かりました。

Q5. 採用した従業員の職種を教えてください(複数回答)

グラフ(Q5. 採用した従業員の職種を教えてください)

「その他」でよく見られた回答は、「製造関連」「清掃」「販売・接客以外のサービス業」です。

さらに採用実施状況別でみると、「現在は行っていない」事業所と「現在、外国人採用を行っている」事業所では、採用職種に違いがあることが確認できます。

グラフ(採用実施状況別「従業員の職種」)

中でも、「販売・接客等のサービス職」「事務職」「営業職」の採用割合は、「現在は行っていない」事業所のほうが多かったことが分かりました。

「総合求人サイト」を中心に複数のサービスを利用している

Q6.利用した採用手段について教えてください(複数回答)

外国人採用経験のある(「現在、外国人採用を行っている」+「現在は行っていない」)事業所へ(n=102)、採用手段について質問しました。

グラフ(Q6.利用した採用手段について教えてください)

もっとも多かった採用手段は、「総合求人サイト」です。44.1%の事業所が利用していると回答。「自社の採用サイト」「ハローワークなど公的機関」はいずれも30%近くの事業所が利用しており、「総合求人サイト」を中心に複数の採用手段を利用していることが読み取れます。

さらに、「現在、外国人採用を行っている」事業所と「現在は行っていない」事業所において、それぞれが利用した採用手段の割合を比較しました。

グラフ(採用実施状況別「利用した採用手段」)

大きな差があるのは、「総合求人サイト」「人材紹介会社」「その他」です。
「現在は行っていない」事業所の「その他」の回答には、「知り合い(知人)からの紹介」が数多く見られました。

外国人採用の課題は、「求めている日本語能力を持っている人材が少ない」が最多

Q7. 外国人採用に関してどのような課題を感じていますか?(複数回答)

外国人採用を「現在行っている」事業所(n=78)へ、外国人採用に関する課題について質問したところ、53.8%の事業所が「求めている日本語能力を持っている人材が少ない」と回答しました。

グラフ(Q7.外国人採用に関してどのような課題を感じていますか?)

「雇用手続きが煩雑であるため担当者の負担が大きい」「離職率が高く定着しない」も30%を超えており、中小企業における外国人採用の課題が少なくないことが分かります。

外国人採用のための助成金や支援制度を「利用したことがない」または「知らない」事業所は、93.1%

Q8.外国人採用で利用できる、中小企業向けの助成金や支援制度は利用しましたか?

外国人採用における支援制度の利用状況については、外国人採用の経験がある(「現在、外国人採用を行っている」+「現在は行っていない」)事業所のうち、助成金や支援制度を57.8%の事業所が「利用していない」と回答しました。
さらに35.3%は「知らなかった」と回答。活用されていない実態に加え、支援制度の認知度の低さも明らかになっています。

グラフ(Q8.外国人採用で利用できる、中小企業向けの助成金や支援制度は利用しましたか?)

さらに採用実施状況別に支援制度の利用状況を確認したところ、「現在は行っていない」事業所における認知度は一層低く、「知らなかった」が41.7%。「利用した」に至っては1事業所もありませんでした。

グラフ(採用実施状況別「支援制度の利用状況」)

未実施事業所の61.5%が「採用の予定がある」または「予定はないが、興味はある」と回答

Q9.今後、外国人採用を行う予定はありますか?

外国人採用を行っていない(「現在は採用していない」+「一度も採用したことがない」)事業所(n=156)へ、今後の方針について質問したところ、「採用の予定がある」または「予定はないが、興味はある」と回答した事業所が61.5%に上りました。

グラフ(Q9.今後、外国人採用を行う予定はありますか?)

「予定はないが、興味はある」と回答した事業所は46.8%ですが、これは予定のない事業所(n=133)の54.9%が興味を示していることになります。外国人採用に取り組む中小企業が将来的に増えることを示唆する結果といえるのではないでしょうか。

また、採用実施状況別では、以下のような違いが見られました。

グラフ(採用実施状況別「今後の方針」)

「現在は行っていない」事業所(グラフ左)は、「採用の予定がある」が41.7%です。
「一度も行ったことがない」事業所(グラフ右)の「採用する予定」は9.8%に留まりましたが、「興味がある」が過半数を占める結果となっています。

今後の期待は「多国籍の人材を受け入れて互いに成長」「就労ビザの緩和」など

Q10.外国人採用への期待やご意見があればご記入ください(自由回答)

全事業所へ外国人採用に対する意見や今後の期待について聞いたところ、54件の回答がありました。
ここではその一部を抜粋して紹介します(可読性を高めるため、文言を調整済み)。

<自由回答・一部抜粋>※カッコ内は、業種/従業員規模/所在地

  • 製造業における技能者不足はさらに悪化すると予想予想しており、外国人労働者の活用は必須だと考えている(工場・製造/20~29名/静岡県)
  • 多国籍の実習生を受け入れることで、お互いに競争して上達してくれるとうれしい(工場・製造/100~199名/熊本県)
  • winwinの関係を作って共存共栄していきたい(その他専門・技術サービス/~4名/千葉県)
  • どんどん採用したいが、面接を組む段階では日本語レベルが分からない点が課題。事前に分かればありがたい(ホテル・旅館/30~49名/宮城県)
  • 在留資格(就労ビザ)の緩和に期待している(出版・印刷/10~19名/山口県)
  • 助成金について知りたい(建築・不動産/~4名/愛知県)
  • 技能実習生は3年で契約期間が終了する。せっかく戦力になってきた頃に帰国してしまうのは痛手だ(建築・不動産/5~9名/神奈川県)
  • まずはアルバイトとして、学生ビザをお持ちの方を雇用してみたい(工場・製造/~4名/東京都)

まとめ

今回の調査では、外国人採用に関するアンケート調査を実施しました。その結果、「現在、外国人採用を行っている」事業所は33.3%。外国人雇用が過去最高を更新する中、中小企業における外国人採用は3割程度に留まることが分かりました。
その要因のひとつとして考えられるのが、支援制度の認知度の低さです。助成金などの支援制度を「利用した」事業所はわずか6.9%でした。さらに4割近くが制度自体を「知らなかった」と回答。外国人採用に関する情報不足や助成金の利用低迷など、外国人採用市場全体の課題が浮き彫りになっています。

外国人採用を行っていない事業所の今後については、「採用予定がある」は14.7%と低い水準ではあるものの、46.8%は「予定はないが、興味がある」と回答しました。助成金や採用にかかる支援体制の充実に加え、その認知が広がることで、中小企業における外国人採用はさらなる増加が予想されるでしょう。

人手不足は多くの中小企業が抱える共通の課題であり、外国人採用はその解決策のひとつです。今回のアンケート結果は、外国人採用が人手不足の解消に一定の役割を果たしていることが読み取れる内容でした。そして同時に、外国人採用に取り組みさえすれば、すべての課題を解消できるわけではないことも示しています。
外国人採用を自社の成長につなげるためには、人材獲得の手法だけでなく、手続きや受け入れ体制、定着のためのサポート、支援制度の活用も含めて、しっかりと準備を行ったうえで採用活動を始めることが重要です。採用後までを見据えた取り組みができれば、人手不足に悩む中小企業の状況も変化していくのではないでしょうか。

採用業務クラウド『採用係長』を運営する株式会社ネットオンは、人材確保に取り組む中小企業を支援し、採用成果を高めるサービスの提供を通じて中小企業の成長に貢献してまいります。

調査概要

調査名 外国人採用に関するアンケート調査
調査対象 『採用係長』利用事業所の人事・労務担当者様
有効回答数 234
調査期間 2023年1月5日(木)~1月18日(水)
調査方法 インターネット調査
調査結果の注意点 %を表示する際に小数点第2位で四捨五入しているため、単一回答の場合は100%、複数回答の場合は合計値に一致しない場合があります。

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この記事を書いた人
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馬嶋 亜衣子(samusillee)

採用・キャリア関連、医療分野を中心に執筆を行うフリーランスライター。 各種メディアの取材ライティングやSEOライティング、採用HPのライティングなどに携わっています。

監修者
監修者
辻 惠次郎

ネットオン創業期に入社後、現在は取締役CTOとしてマーケティングからプロダクトまでを統括。
通算約200社のデジタルマーケティングコンサルタントを経験。特に難しいとされる、飲食や介護の正社員の応募単価を5万円台から1万円台に下げる実績を作り出した。
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