中小企業のDX、認知進むも取り組みは停滞。人事採用業務にAIを「活用している」、「今後活用する」事業所は27.9%

企業競争力の向上にむけて、いまや必須の取り組みともいえるDX(デジタル・トランスフォーメーション)。大幅な賃上げが続く大手・中堅企業では、DXの浸透が着実に進んでおり、DXにおける重要なデジタル技術であるAIを導入する企業も急速に増加しています。

DXの取り組みやAIがビジネスシーンにさまざまな変化を起こす中、中小企業におけるDXの取り組みはどのような状況になっているのでしょうか。

株式会社ネットオンでは、採用業務クラウド『採用係長』の登録ユーザーである中小企業の採用担当者を対象に、「採用人事DX・AIに関するアンケート調査」を実施しました。

アンケート回答者属性

今回、アンケートにご回答いただいた事業所様の属性は以下の通りです。
従業員規模20名以下の事業所様を中心に「医療」、「建築・不動産」、「飲食」、「介護・福祉」など様々な事業所様にご回答いただきました。
また、地域につきましても、都市部を中心に全国的に散らばり、あらゆる地域の事業者様にご回答いただきました。

業種

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従業員規模

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都道府県

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54.4%がDXという言葉を「聞いたことがある」

はじめに、DXという言葉を聞いたことがあるかどうかについて質問したところ(n=79)、「はい(=聞いたことがある)」と回答した事業所は54.4%でした。

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株式会社ネットオンが過去に行った同調査では、2024年1月(n=363)は38.6%、2023年2月(n=172)は41.3%、2021年10月(n=294)は32.0%でした。
調査開始以来初めて、「はい(=聞いたことがある)」と回答した事業所が過半数を超える結果となっています。

「聞いたことがある」事業所の72.1%は、DXの意味も「知っている」

続いて、Q1で「はい(=聞いたことがある)」と回答した事業所へ、DXの意味を知っているかどうかについて質問しました(n=43)。
「はい(=知っている)」と回答した事業所は72.1%。前回調査(66.4%/n=140)から5.7ポイント増加しています。

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50%以上がDXに「取り組んでいる」または「今後取り組む予定」

Q1で「はい」と回答した事業所へDXの取り組みについて質問したところ(n=43)、「取り組んでいる」は27.9%、「今後取り組む予定」は25.6%です。

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前回調査(n=140)との比較では、「取り組んでいる」が3.5ポイント減、「今後取り組む予定」は3ポイント減と、いずれも減少。DXの認知が進む一方で、取り組みについては停滞していることが明らかになっています。

2024年1月の調査結果

導入している人事・採用系ツール1位は「給与計算」

Q3で「取り組んでいる」と回答した事業所へ、導入している人事・採用系ツールについて質問しました(n=12)。

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「給与計算」「勤怠管理(シフト管理、タイムカード)」「採用管理(採用サイト作成や応募者管理など)」「eラーニング」は、半数以上の事業所が導入しています。
前回調査(n=44)で22.7%だったマイナンバー管理は、41.7%。マイナンバーカードの普及が進む中、企業における適切な管理の必要性が高まっていることがうかがえるでしょう。

72.7%が、人事・採用系ツールの導入を予定してない

Q3で「取り組み予定」と回答した事業所へ、DXの取り組みとして人事・採用系ツールを導入する予定があるかどうかについて質問したところ(n=11)、「ある」と回答した事業所は、27.3%に留まりました。

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また、ツールの詳細については「勤怠管理(シフト管理、タイムカード)」「給与計算」「労務管理(入社手続き、社会保険手続き)」「マイナンバー管理」「人事評価」「採用管理(採用サイト作成や応募者管理など)」「eラーニング」の導入を予定していることが分かりました。

取り組み予定のない事業所の60.0%がDXに「興味がある」

Q3でDXに「取り組んでおらず、現時点では取り組む予定もない」と回答した事業所には、DXの取り組みに興味があるかどうかについて質問しています(n=20)。

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「ある」と回答した事業所は60.0%。前回調査(39.3%/n=56)から20.7ポイント増加しました。前回調査よりも有効回答数が少ない点には留意が必要ですが、DXへの関心は決して少なくないことが読み取れます。

人事・採用業務のAIツールは、72.2%が「活用しておらず、予定もない」

全事業所へ、人事・採用業務におけるAIツールの活用状況について質問したところ(n=79)、「活用している」事業所はわずか5.1%でした。「活用を検討中」の事業所と合わせても30%を下回っています。

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AIツールを「活用している」または「活用を検討中」と回答した事業所における具体的な活用シーンについては、以下のような回答がありました。

活用しているAIツール

採用関連

  • 求人票の作成・文面作成(ChatGPT)
  • 採用サイトの作成

労務管理関連

  • 勤怠管理(打刻管理)
  • 交通費精算
  • 給与計算
  • インセンティブ計算
  • シフト管理

その他

  • 法令検索
  • 紙ベースの書類のWeb化

検討中のAIツール

  • 採用管理
  • 人事管理全般

DX、AIの取り組みに関しては「今のところ予定なし」「興味はあるが、よく分からない」など

DXの取り組みに関する考えを聞いたところ、11件の回答を得ることができました。ここではその一部を紹介します(可読性を高めるため、文章の一部を調整しています)。

※カッコ内は、業種/従業員規模/所在地

  • AIも良い方法だが、今は必要とする規模ではない(その他/~4名/兵庫県)
  • AI技術に興味はあるが、人事領域では今のところ予定がない(IT/5~9名/東京都)
  • RPA(ソフトウェアを使った業務の自動化技術)の活用を検討中(医療/20~29名/北海道)
  • 興味はあるが、よく分からない(警備/10~19名/三重県)
  • 人を相手にする仕事にはいろいろなパターンがあるため、簡単には受け入れられない(医療/5~9名/茨城県)

まとめ

今回の調査では、中小企業におけるDXの取り組みとAIツールの活用状況についてアンケートを実施しました。結果は「DXという言葉を聞いたことがある」事業所が54.4%。過去の調査と比べて認知度の高まりを確認することができました。一方で、DXに「取り組んでいる」および「今後取り組む予定」の事業所は減少しており、認知の広がりが必ずしも取り組みの進展にはつながっていないことが分かります。

また人事・採用業務でのAIツールの活用状況については、全体の72.2%が「活用しておらず、予定もない」と回答。さらにDX・AIに対する意見(自由回答)では、「興味はあるが、よく分からない」「良いとは思うが、必要ない」といった声が散見されました。関心の高まりと実践との間にあるギャップは大きな課題であり、大手企業との賃上げ格差のさらなる拡大が懸念されます。

DXは中小企業にこそ必要とされる取り組みです。「よく分からない」状態から脱却し、取り組みへの一歩を踏み出すには、さらなる支援と働きかけが必要かもしれません。

株式会社ネットオンは、採用マーケティングツール『採用係長』の提供を通じて採用業務のDX化をサポートし、中小企業の変革に向けた取り組みを後押ししてまいります。

調査名 2024年人事採用DX/AIに関するアンケート調査
調査対象 『採用係長』利用事業所の人事・労務担当者様
有効回答数 79
調査期間 2025年1月9日(木)~1月26日(日)
調査方法 インターネット調査
調査結果の注意点 %を表示する際に小数点第2位で四捨五入しているため、単一回答の場合は100%、複数回答の場合は合計値に一致しない場合があります。

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この記事を書いた人
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馬嶋 亜衣子(samusillee)

採用・キャリア関連、医療分野を中心に執筆を行うフリーランスライター。 各種メディアの取材ライティングやSEOライティング、採用HPのライティングなどに携わっています。

監修者
監修者
辻 惠次郎

ネットオン創業期に入社後、現在は取締役CTOとしてマーケティングからプロダクトまでを統括。
通算約200社のデジタルマーケティングコンサルタントを経験。特に難しいとされる、飲食や介護の正社員の応募単価を5万円台から1万円台に下げる実績を作り出した。
Indeedはもちろん、インターネット広告やDSP広告を組み合わせた効率的な集客や、Google Analytics等の解析ツールを利用した効果分析、サイト改善を強みとしている。