- 履歴書の保管期間は、不採用者と採用者によって異なる。
- 不採用者は保管義務はなし(半年~1年ほどの保管推奨)。採用者は保管義務があり雇用関係が解消した日から3年間は保管する義務があります。
- 仮に経歴詐称などの問題が発覚した場合、履歴書が重要な証拠となるため、紙or電子ファイル化して保管することをオススメします。
従業員の採用にあたっては、個人情報が盛り込まれたさまざまな書類を取り扱います。
その中のひとつが、履歴書です。個人情報が漏えいした場合、組織内外から信用を失い、企業にとって大きな損失となります。そのため、履歴書の保管方法に困っている担当者も多いでしょう。
本記事では、履歴書の保管期間と適切な保管方法を紹介します。履歴書の保管が重要な理由も解説するため、企業の人事・採用担当者は、ぜひ参考にしてください。
目次
履歴書の保管が重要な理由
履歴書の保管が重要な理由は、応募者とのトラブルを防止するためです。
経歴詐称などの問題が発覚した場合、履歴書が重要な証拠になります。応募者の主張が事実と食い違っていることを、履歴書の内容から証明できるのです。
また、入社に係る書類作成など、人事・労務管理のために必要なケースもあるでしょう。加えて、個人情報保護法では、個人情報を本人の同意を得ずに、特定の目的以外に利用してはならないと明記されています(個人情報保護法第15、16条)。そのため、コンプライアンスの面でも、履歴書が採用関係以外に使用されないよう、厳格な保管が重要です。
求人広告を掲載したい方へ
採用係長は最大5つの求人検索エンジン(求人ボックス、Googleしごと検索、スタンバイ、Career jet、キュウサク)にワンクリックで連携できます。ぜひ一度お試しくださいませ。
履歴書の保管期間
履歴書の保管期間は、不採用者と採用者によって異なります。履歴書を適切に保管するために、両者の違いを明確にしておきましょう。
不採用者・採用者ごとに、履歴書の保管期間と注意点を解説します。
不採用者の場合
はじめに、不採用者における履歴書の取り扱いから見ていきましょう。
保管期間
不採用者の場合、履歴書の保管義務はありません。ただし、不採用者から履歴書の返却を求められるケースがあります。そのため、一定期間は保管することが一般的です。
多くの企業は保管期間を6ヵ月と設定しています。必要以上に長い間保管すると応募者に不安を与えてしまうため、長くても1年以内が望ましいでしょう。
注意点
- 履歴書の取り扱いについて、応募者にあらかじめ明示しておく
- 保管期間を過ぎたら早めに処分する
- 処分日や処分方法を記録しておく
履歴書に関するトラブルを防止するために、保管期間などの基準について、応募者にあらかじめ明示しておきましょう。応募者によっては、「履歴書が悪用されるのではないか」と不安を抱く人もいます。
また、設定した保管期間を過ぎた履歴書は、早めの処分が望ましいです。処分を後回しにするほど、情報漏えいや紛失などのリスクが高まります。なお、処分する際は、処分日や処分方法などを記録しておくと良いでしょう。応募者から問い合わせがあったときにスムーズに対応でき、信頼できる企業だと認識してもらえます。
採用者の場合
次に、採用者における履歴書の取り扱いです。
保管期間
採用者における履歴書の保管期間は、退職や死亡などで雇用関係が解消した日から3年間です。(労働基準法109条、143条、同施行規則第56条)。そのため、おのずと雇用中は履歴書を保管する義務が生じます。
2020年4月1日付で施行された改正労働基準法のリーフレット内では、保管が必要な書類を取り上げています。
以下は、保管が必要な書類の例を引用したものです。
(1)労働者名簿
(2)賃金台帳
(3)雇入れに関する書類:雇入決定関係書類、契約書、労働条件通知書、履歴書 など
(4)解雇に関する書類:解雇決定関係書類、予告手当または退職手当の領収書 など
(5)災害補償に関する書類:診断書、補償の支払、領収関係書類 など
(6)賃金に関する書類:賃金決定関係書類、昇給減給関係書類など
(7)その他の労働関係に関する重要な書類:出勤簿、タイムカードなど
(8)労働基準法施行規則・労働時間等設定改善法施行規則で保存期間が定められている記録
「雇入れに関する書類」の例に履歴書が挙げられています。
労働基準法では、保管が必要な書類を「雇入れに関する書類」とのみ記載しているため、履歴書が対象となるか、解釈に迷ってしまうケースもあるようです。
しかし、上記より、国として履歴書保管の必要性を明らかにしていることがわかります。
注意点
- アルバイトやパートなど、雇用形態にかかわらず保管が必要
- 保管期間を過ぎた履歴書は電子データも含めて確実に処分する
履歴書の保管対象は、雇用形態にかかわらず全ての従業員です。アルバイトやパートなど、非正規雇用でも保管義務が発生するため、注意しましょう。
また、3年の保管期間を過ぎた履歴書は、本人への返却でも良いことになっています。
しかし、退職から3年経過して当時の履歴書を必要とするケースは、一般的ではないでしょう。連絡先や住所なども変わっている可能性があります。そのため、紙保管の場合はシュレッダーなど、電子データの場合は履歴が残らないように、確実に処分・削除してください。
履歴書の適切な保管方法
履歴書の保管方法は、法律などで決められている訳ではありません。しかし、個人情報が漏えいしないよう、高い安全性のもとで保管することが重要です。
ここでは、紙で保管する場合と電子化して保管する場合に分けて、適切な保管方法を紹介します。
紙で保管する場合
履歴書を紙で保管する方法は、以下のとおりです。
紙で保管する方法
- ほかの雇用関係書類と合わせて、個人ごとにファイリングする
- 必要な情報をすぐに見つけられるよう、氏名の五十音順に整理する
- 書庫やキャビネットに保管する
履歴書は、雇用契約書やほかの選考書類と一緒に保管しておくと良いでしょう。書類単位ではなく個人単位でまとめることで、管理の煩雑化を防げます。
また、紙で保管する場合、採用年度や当時の所属などで保管してしまいがちです。しかし、時間の経過や担当者の交代によって、採用年度はわからなくなります。さらに、異動により、多くの従業員が入社当初の所属から変わるでしょう。
五十音順に保管すると、氏名の頭文字から簡単に探せるため、必要な履歴書を見つけやすくなります。今後、担当者が変わった場合でも効果的です。
紙で安全に保管するポイント
- 人の目に付く場所には保管しない
- 必ず鍵がかかる場所に保管する
- 閲覧者を限定し、リスク管理を徹底する
紙で保管する場合は、保管場所の選び方が重要です。簡単に出入りができて、多くの人の目に付く場所は避けましょう。
さらに、担当者以外が利用できないよう、鍵がかかる場所に保管する必要があります。また、鍵の管理者を決める、鍵のパスワードを担当者だけで共有するなど、閲覧者を限定することもポイントです。関係ない従業員が持ち出せると、情報漏えいや紛失のリスクが高まります。
電子化して保管する場合
電子化して保管する場合は、紙の履歴書をPDFなどに変換します。電子データでの保管は、場所を取らずコストがかからない点や、紛失などのヒューマンエラーを防げる点が特徴です。さらに、データベース上で簡単に検索できるため、情報を探す際の速さ・手軽さにおいてもメリットがあります。
電子データで保管する方法
- ファイル形式(PDF、JPEGなど)やファイル名など、保存のルールを決める
- スキャナーなどで履歴書を電子化する
- 履歴書保管用のフォルダやクラウドに保存する
履歴書を電子化する際は、ほかのデータと混同しないよう、あらかじめ保存のルールを決めることがポイントです。ファイル名を採用年月日+氏名にして検索しやすくするなど、業務の効率性を高める工夫もできます。
ルールを決めたら、スキャナーなどで読み取って電子化し、特定のフォルダやクラウドに保存してください。
なお、原本は捨てずに保管しましょう。業務では電子データを使用し、原本は別途保管しておきます。
電子データで安全に保管するポイント
- アクセスや印刷機能を制限するなど、担当者以外が利用できないようにする
- 長期保存に適したフォーマットを利用する
- 文書管理システムやオンラインストレージの利用も検討する
安全に保管するためには、担当者しか利用できないよう、保存先のフォルダにアクセスや印刷機能の制限をかけておくことが大切です。
また、履歴書は長期間の保存が必要であるため、フォーマットにも配慮しましょう。例えば、国際標準規格(ISO19005)に基づいたフォーマットとして、PDF/Aがあります。PDF/Aは、暗号化や電子署名などの機能が制限され、書類の独自性が保たれます。デバイスやインターネット環境で表示が変わることもなく、オリジナルのまま長期間の保存が可能です。
さらに、文書管理システムやオンラインストレージを利用する方法もあります。アクセス管理や自動削除をはじめ、さまざまなニーズを満たす機能が付いているため、効率的で正確な文書管理が可能となるでしょう。
ただし、機能性や有料・無料などはシステムによって異なるため、事前の吟味が必要です。
まとめ
履歴書の保管は、採用者とのトラブル防止のために重要です。仮に経歴詐称などの問題が発覚した場合、履歴書が重要な証拠となります。
不採用者の履歴書には、保管期間の定めはありません。しかし、応募者から返却を求められる場合に備え、6ヵ月程度の保管が一般的です。
一方で、採用者の履歴書は、退職から3年後まで保管する必要があります。雇用形態にかかわらず、全ての従業員が対象です。
本記事では、履歴書を紙で保管する方法と電子化して保管する方法を紹介しました。安全に保管するためのポイントも解説しているので、ぜひ、自社で履歴書を保管する際に役立ててください。
同じカテゴリ内の人気記事