スポットワーク(タイミーやシェアフルなどの単発の仕事)を使ってみると、「単発で終わってしまい、人がなかなか定着しない」と感じることがあります。ただ、実際には同じ職場に繰り返し入ってくれる人が出てきます。そうしたなじみのワーカーを直接雇用につなげられれば、慢性的な人手不足の解消につながります。
この記事では、スポットワークで来てくれた良い人材と顔なじみになり、直接雇用へ切り替えるまでの手順を、中小企業の目線で整理します。使える公式機能、紹介手数料や規約の注意点、労働契約や職業紹介の考え方、そして「続けて来てもらう」ための受け皿づくりまで、一次情報をもとにまとめました。
なお、検索では「引き抜き」という言葉がよく使われますが、これは公式でいう「長期採用」を指す俗称です。ルール上は認められている行為なので、この記事では「直接雇用」「長期採用」と呼びます。
目次
なぜ今「なじみのワーカーから直接雇用」なのか
スポットワークは「来て終わり」ではありません。実際には、同じ職場に繰り返し入る人が少なくないことが分かっています。
タイミー社が2026年3月に発表した、大阪府内の製造業8社での実証(2025年4月〜2026年1月)では、稼働の約7割が「リピーター」によるものだったと報告されています。特定の業種・地域での結果ではありますが、単発で終わらず繰り返し来てくれる人が多いことがうかがえます。この実証では、期間中に3名の長期雇用も生まれています。
中立的な調査でも傾向は同じです。パーソル総合研究所が2024年に行った調査では、スキマバイトで来た人を長期雇用(レギュラー化)につなげた経験のある店長・管理者は7割弱にのぼりました。一方で「もう一度その職場で働きたい」という再就業意向は5割弱にとどまっています。つまり、来てくれた人に「また来たい」と思ってもらえるかどうかで、なじみのワーカーが育つかどうかが分かれます。
採用する側の意欲も高くなっています。タイミーが2025年9月に発表した実態調査(同社調べ・事業者1,216人/働き手3,928人が対象)では、「良い人材なら長期採用したい」と答えた事業者は96.4%。実際に長期採用を打診した事業者のうち、61.6%が採用に至っています。働き手側も「良い職場なら長期就業したい」が72.0%で、雇う側と働く側の希望はそれほどずれていません。
スポットワークそのものの仕組みは、スポットワークとはの記事で解説しています。あわせて、定着率を上げる考え方はアルバイトの定着率を上げる対策も参考になります。
なじみのワーカーを増やす公式の仕組み
なじみのワーカーを増やすには、各サービスに用意された公式機能を使うのが基本です。気合いや口約束に頼る話ではありません。ここではタイミーを例に、主な仕組みを整理します。
お気に入り登録とグループ限定公開
もう一度来てほしいと思ったワーカーは「お気に入り」に登録できます。登録した人をまとめて「グループ」にし、そのグループだけに公開する求人(グループ限定公開)を出せば、勝手を知っている人に優先して声をかけられます。タイミーの公式ヘルプでも、グループの作成例として「リピーター(3回以上)」が挙げられています。
バッジ限定公開・初回ワーカー限定公開
「次回も頼みたい業務」として認定された数が多いワーカーだけに公開する「バッジ限定公開」もあります。逆に、直近2年間その店舗で働いたことのない人に向けた「初回ワーカー限定公開」もあり、新しい出会いとなじみづくりを使い分けられます。グループを段階的に広げて公開していく機能もありますが、これはベータ版として提供されているものです(2026年時点)。
タイミー以外のサービスでも「見極めて長期へ」
なじみのワーカーから直接雇用という流れは、タイミーに限りません。シェアフルでも、スキマバイトに来た人の仕事ぶりを見て、長期アルバイトへの転換につなげられると公式に案内されています。ただし、後述するように費用や規約は媒体ごとに異なります。各サービスの基本は、タイミーとは・シェアフルとはの記事で確認できます。
なじみのワーカーから「直接雇用」に切り替える手順
ここからが本題です。なじみになってくれたワーカーを直接雇用につなげるまでを、4つの段階で整理します。
4つの段階で進める
直接雇用は、いきなり打診するものではありません。①受け入れの質で「またここで働きたい」と思ってもらう→②公式機能でなじみのワーカーを増やす→③勤務の実績を踏まえ、本人の同意を得て直接雇用を打診する→④継続的に募集できる受け皿を用意する、という順番で進めるのが自然です。特に①の受け入れ体制は、初回の印象でなじみになるかどうかが決まるため、最初の1回を丁寧に扱うことが起点になります。

なじみのワーカーから直接雇用までの4つの段階
打診の作法
タイミーの公式ヘルプでは、働きに来たワーカーについて、本人の同意が得られれば長期採用(直接雇用)が可能で、その際に会社への報告義務や紹介料は一切必要ないとされています。想定されている流れは「勤務の実績がある→本人が同意する→直接雇用」です。

出典:タイミー公式ヘルプ「ワーカーさんを長期採用したい」(2026年7月時点で取得)
大切なのは、断られても関係を壊さないことです。検索では「スポットワーク 直接雇用 断る」「うざい」といった言葉も見られます。強引に誘うのではなく、「もし興味があれば」と選択肢として伝え、相手が続けたいと思えるように受け入れの質を上げることが、遠回りのようで確実です。
費用は媒体によって違う
直接雇用に切り替えるときの費用は、サービスによって考え方が異なります。「どこでも無料」と思い込まず、使っているサービスの公式案内で確認してください。
タイミーの場合、働きに来たワーカーを本人同意のうえ長期採用する際は、報告義務も紹介料も一切不要とされています。一方シェアフルは、スキマバイトに来た人の長期アルバイトへの転換自体に追加の紹介手数料はかからないとしつつ、スキマバイトで就業した分に対しては日給の30%が成功報酬として発生する仕組みだと、公式の案内(2026年3月時点)で説明されています。同じ「直接雇用」でも費用の構造が違うため、媒体ごとに確認するのが安全です。

直接雇用に切り替えるときの費用構造の違い
守るべき規約と労務のルール
なじみのワーカーを直接雇用につなげること自体は認められた行為ですが、やり方によっては規約違反になったり、労働法に触れたりします。ここは丁寧に確認しておきましょう。以下はタイミーの公式ヘルプ・利用規約をもとにした整理です(サービスによって細部は異なります)。
「最初から採用目的だけ」の利用はできない
タイミーでは、最初から長期採用だけを目的とした利用は認められていません。面接や面談を主な業務内容とする求人(就職・転職相談の面談や説明会を含む)や、「長期で働ける方のみ」を対象にした募集は掲載できないと案内されています。あくまで「実際に働きに来てもらい、その結果として長期採用につながる」という順番が前提です。
アプリを介さない支払い・個人名の指名はできない
タイミーを介さずにワーカーへ直接賃金を支払うことや、マッチングをキャンセルしてサービスの外で働かせることは、利用規約で禁止されています。また、「〇〇様限定」のように個人名を出した指名求人も、個人情報保護の観点から認められていません。一方で、過去にタイミー経由で雇用契約を結んだ人が再び応募すること自体は禁止されていません。
急なキャンセルには休業手当が要る
厚生労働省のリーフレットでは、面接などを経ずに先着順で成立するスポットワークの働き方では、応募の時点で労働契約が成立すると一般的には考えられる、と整理されています。そのため、企業側の都合でキャンセルした場合は、労働基準法にもとづく休業手当(平均賃金の6割以上)が必要になります。スポットワーク協会の考え方では、直前のキャンセル(就労開始の24時間前を下回るもの)は原則として認められないとされています。
なお、直前のキャンセルや賃金の未払いをめぐっては、2026年に訴訟も起きています。事業者としては、約束した仕事はきちんと果たす、という基本を守ることが欠かせません。
直接雇用と職業紹介、労働契約の考え方
「アプリ経由の人を直接雇っていいのか」「職業紹介にあたって手数料が要るのでは」と不安に感じる方もいます。基本的な考え方を、公的な資料をもとに整理します。
労働契約は「会社とワーカー」の間で成立している
厚生労働省が公表しているスポットワークの労務管理リーフレット(使用者向け)では、スポットワークは事業主とスポットワーカーが直接労働契約を結ぶものであり、仲介するアプリ事業者は労働契約の当事者ではない、と明記されています。スポットワーク協会のよくある質問でも、利用企業と労働者の関係は雇用契約関係だと整理されています。つまり、スポットワークで来ている時点で、すでに「あなたの会社が雇っている」状態です。それを継続的な雇用に切り替えるのは、自然な延長線上の行為だといえます。

出典:厚生労働省「『知らない』では済まされない『スポットワーク』の労務管理」使用者向けリーフレット(2026年7月時点で取得)
自社で働いた人を自社で雇うのは「職業紹介」とは別
職業安定法でいう「職業紹介」とは、求人者と求職者の間に立って、両者の雇用関係の成立をあっせんすることを指します。自分の会社で実際に働いた人を、自分の会社が直接雇うのは、第三者が間に立ってあっせんする行為とは性質が異なります。そのため、一般的には職業紹介の規制の対象にはならないと考えられます。派遣(雇う会社と指揮命令する会社が分かれる仕組み)とも異なるため、派遣特有のルールの話とは切り分けて考えるのがよいでしょう。判断に迷う場合は、社会保険労務士など専門家に確認すると安心です。
切り替えるときの手続き
直接雇用に切り替えるときは、労働条件をきちんと示す必要があります。労働基準法では、契約を結ぶ際に労働条件を明示することが義務づけられており、労働条件通知書を交付するなどの対応が求められます。また、なじみになって働く時間が増える場合は、雇用保険や社会保険の加入も検討します。雇用保険は「週の所定労働時間が20時間以上」かつ「31日以上の雇用見込み」が加入の目安とされています(詳しい要件はハローワークで確認してください。なお週20時間の基準は、2028年10月に週10時間以上へ広がる予定です)。はじめて人を直接雇う場合は、人を雇いたいときにまず決めることもあわせてご覧ください。
なじみのワーカーを「増やし続ける」には自社の採用ページが要る
直接雇用は、一度きりで終わりではありません。なじみのワーカーに「次も来てほしい」「そのまま長く働いてほしい」と伝え続けるには、その都度スポットで募集をかけるだけでは足りません。
いつでも応募を受けられる自社の採用ページがあると、直接雇用したあとの追加募集や、なじみのワーカーからの紹介の受け皿になります。求人広告を出すたびに費用をかけるのではなく、自社の入口を一つ持っておくイメージです。採用係長なら、そうした求人ページを無料で作成でき、作った求人は主要な求人検索エンジンにも連携できます。
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求人票の具体的な書き方は、求人票の書き方や求人票のテンプレートの記事も参考にしてください。
よくある質問
タイミーで働きに来た人を、そのまま直接雇用できますか?
できます。タイミーの公式ヘルプでは、ワーカー本人の同意が得られれば長期採用(直接雇用)が可能で、タイミーへの報告義務や紹介料は一切不要とされています。前提は、実際にスポットワークで働きに来た人であることです。
スポットワーカーの「引き抜き」にペナルティはありますか?
働きに来たワーカーを本人の同意を得て長期採用すること自体は認められた行為で、ペナルティはありません。一方、最初から長期採用だけを目的とした利用や、アプリを介さない直接の賃金支払いは規約違反になります。
スポットワークの雇用契約は、誰と誰の間で成立していますか?
事業主とスポットワーカーの間で直接成立します。厚生労働省のリーフレットでは、仲介するアプリ事業者は労働契約の当事者ではないと明記されています。労働基準法などを守る義務は、雇い主である事業主の側にあります。
直接雇用への切り替えに紹介手数料はかかりますか?
サービスによって異なります。タイミーは報告義務・紹介料とも一切不要としています。シェアフルは長期アルバイトへの転換自体に追加の手数料はかからないものの、スキマバイトで就業した分には日給の30%が成功報酬として発生すると公式に案内しています(2026年3月時点)。使っているサービスの公式案内で確認してください。
まとめ:単発の縁を、続く関係に変える
スポットワークは、人手が足りないときの応急処置にとどまりません。来てくれた人の仕事ぶりを見て、合う人となじみになり、本人の同意を得て直接雇用につなげれば、採用の一つの入口になります。
進め方は、①受け入れの質→②公式機能でなじみのワーカーを増やす→③本人同意での打診→④継続募集の受け皿、の順番です。規約と労務のルールを守りながら進めれば、無理なく人手を確保できます。まずは、なじみのワーカーをいつでも受け止められる自社の採用ページを用意することから始めてみてください。
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