DX時代でも「手書き履歴書」はなくならない?400社以上に聞いた、履歴書に対する価値観とは

履歴書コラム

2020年秋、新卒採用で手書き履歴書が多い現状を疑問視する報道記事が公開されました。その記事をきっかけに、「手書き履歴書の是非」がTwitter上で大きな議論を呼びました。

実際の企業の採用現場では、履歴書に対してどのような価値観を持っているのでしょうか。クラウド型採用マーケティングツール『採用係長』を開発・提供する株式会社ネットオンは、400社を超える採用係長のユーザーを対象に2021年5月7日(金)~5月20日(木)まで「履歴書の形式についての実態調査」を実施しました。

本記事ではそのアンケート結果をもとに、履歴書の形式はどうあるべきなのかを考察したいと思います。

手書きとデータ、履歴書はどちらが良いのか

結論から述べると、履歴書の形式は手書きとデータ、どちらでも良いと言えます。
厚生労働省が示す履歴書の様式例に沿っていれば、受領形式はどちらの履歴書でも問題ありません。

自社の採用選考のターゲットがデジタルネイティブ世代で、ペーパーレスを目指しているため、データの履歴書を使用する。パソコンに不慣れな層を採用のターゲットとしているため、手書きの履歴書を使用する。各企業によってさまざまな理由が考えられます。

一方で、履歴書の形式を昔からなんとなく継続している場合は、自社の採用選考の中で履歴書がどのように使われているかを見直した方が良いでしょう。紙であるべきなのか、データであるべきなのかを採用フローの中で検討し、提出形式を最適化することで、書類や選考ステータスの管理がしやすくなるなど、業務の効率化につなげられます。

紙の履歴書を使用するのは、慣例を重視しているから?

2021年5月に行った『履歴書の形式についての実態調査』において、紙の履歴書のみを利用する企業にその理由を聞いたところ、「原本の管理がしやすい」という回答が意外と多く42.1%となりました。一方で「社内のデータ管理システムが整っていない」という回答は19.5%となり、社内のデジタル化が進んでいないために紙の履歴書を使用せざるを得ないわけではなさそうです。

Q.「紙の履歴書のみ」を受領している理由についてお聞かせください

手書きの履歴書を採用している理由も聞いたところ、3番目に多い理由として「昔からの慣習」という回答が35.9%となりました。「上司に納得してもらいやすい」という回答も7.7%の企業が選択しています。

Q.「手書きの履歴書を受領している」とお答えいただいた理由についてお聞かせくださいblank

これらの結果を合わせて考えると、紙の履歴書を採用している企業は昔から続く採用業務の流れを重視していることが見えてきます。紙の履歴書の場合は紛失や盗難のリスクが高くなりますが、それでも「管理がしやすい」という回答が意外と多いのは、これまで通りに管理をしていけば間違いが起きづらいという企業側の意識も含まれているのかもしれません。

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企業は手書きの履歴書で「その人らしさ」を見ている

アンケート調査によると、特に手書きの履歴書を採用している企業は64.1%が「筆跡から人柄が分かる」と回答し、手書きの文字から人となりを知ることを重視していることが判明しました。

採用選考における評価ポイントは、その企業のカルチャーや方針によってさまざまです。履歴書に書かれた筆跡から丁寧な仕事ぶりを推察するなど、採用候補者の人となりを知る補足材料として活用することは可能です。
ただ、履歴書に記載された志望動機の内容や面接での受け答えなどからも、採用候補者の人となりは知ることができます。筆跡は人柄を知る1つの手段として活用している企業が多いのではないでしょうか。

Q.「手書きの履歴書を受領している」とお答えいただいた理由についてお聞かせくださいblank

手書きの履歴書は応募者の負担にも

上記のような企業の価値観がある一方で、手書きの履歴書は応募者の負担になっている可能性もあります。データの履歴書と比べると、履歴書に記載する内容を考え、ボールペンなどで清書をする工程にかなりの時間がかかります。

手書きの履歴書のみで受領している場合、そもそも自社への応募を諦める人がいる可能性もあるため、応募者へのアンケートなどを通じて履歴書の提出形式への反応を見てみるのも良いでしょう。 反応によっては、履歴書の形式を再検討する必要があるかもしれません。

データの履歴書を指定するメリットは多い

自社目線で考えると、データの履歴書は紙を置くスペースが不要で、採用業務の効率化を図れるメリットがあります。送られてきた履歴書のファイル名に通し番号や候補者名を記載しておけば、必要な時に履歴書をすぐに見つけることができます。

また、紙で郵送だと候補者とのコミュニケーション開始にタイムラグが生じますが、データ送付であれば受領した段階ですぐにメールなどでコミュニケーションを取ることが可能で、採用活動のスピードアップにもつながります。

応募者目線でもメリットがあります。Wordなどで履歴書を作成すれば書く手間は減り、内容のブラッシュアップに時間をかけることができます。また、メールやフォームから手軽に応募できるため、入社したい企業が見つかった時にすぐにアクションにつなげることができます。

データの履歴書は不正アクセスによる個人情報漏洩のリスクも

一方で、データの履歴書は、主に個人情報の保護に関してリスクがあることがデメリットといえます。

履歴書は氏名や住所、連絡先のほか、これまでの経歴も詳細に記載されています。大切な個人情報が多数記載されているからこそ、データで扱う場合は自社のパソコンや採用活動に使用するシステムなどのセキュリティを堅固なものにする必要があります。

また、社内で限られた人しか見れないフォルダを作成したり、社内外にメールを送る際に誤って添付をしないようにするなど、小さなミスや情報漏洩にも気を付けることが重要です。

履歴書の形式は「応募者ファースト」で決めるのがベスト

履歴書の形式を紙とデータのどちらにするかは、自社の採用選考の応募者層によって判断することが大切です。

応募者の年齢層が高かったり、専門業務の職員やパート社員を募集する場合、個人間でデジタルスキルの差が大きい可能性を考慮して紙の履歴書とデータの履歴書を併用することも有効です。多様な応募者の獲得につなげることができるでしょう。

しかし、応募者が比較的若い年齢層である場合は、履歴書もデジタル化を進めた方が良いかもしれません。若年層はデジタルツールを使いこなしており、合理的な行動を好む傾向にあります。便利なツールがある中で、明確な理由なく手書きや紙の履歴書を採用していると、古い価値観の企業だと一方的に判断されてしまいかねません。

「応募者ファースト」で履歴書の提出形式を決めていきましょう。

履歴書のデジタル化は進む可能性が高い

さまざまな領域でデジタルトランスフォーメーション(DX)が求められるなかで、履歴書についても今後デジタル化が進む可能性は高いといえます。

先日の『履歴書の形式についての実態調査』によれば、企業の履歴書のDXへの関心はとても高いことが判明しています。「これから履歴書のデータ化は一般化するか」という設問では、「まあまあ思う」という回答が最も多く39.0%となり、「とても思う」と合わせても、履歴書のDXが進むと考える企業は63.0%にものぼりました。

Q.これから、履歴書の記入や送付はデジタル化が一般化されると思いますかblank

履歴書の提出形態の現状も、紙との併用を含めれば63.9%の企業がデータの履歴書をすでに活用しています。

Q.貴社が受領する履歴書の提出方法に指定はありますかblank

特に地方企業に比べて都市部企業では、履歴書の受領形態を「データのみ」と答えた割合が5.3%多くなり、履歴書のデジタル化は都市部でより進んでいる状況が見えてきます。

(地方企業)blank

(都市部企業)blank

これから、さまざまな業界でデジタル化がさらに進み、デジタルネイティブ世代も毎年次々と社会人になっていきます。履歴書が完全デジタル化される未来もそう遠くないことなのかもしれません。

履歴書の形式に関する実態調査について、詳細な結果はこちらの記事で紹介しています。ぜひご覧ください。
履歴書の完全デジタル化は3.9%のみ。多くの企業で紙とデータの併用中 | 履歴書の形式についての実態調査

デジタル化を念頭に置いたうえで、最適な選択を

履歴書は採用活動の中で何度も使用するからこそ、自社にとっても応募者にとっても使いやすい形式で運用していきたいものです。

自社の応募者や採用のターゲット層に合わせて、どのような履歴書の形式がベストかを判断するのが良いでしょう。ただ、あらゆる分野でDXが進む中で、採用業務も今後ますますデジタル化が進むと予想されます。履歴書も近い将来、完全デジタル化となる可能性を念頭に入れながら、現状はどのような形式を採用するのか考えていただければと思います。

本記事の内容を参考に、履歴書の形式と採用業務の流れについても再検討してみてはいかがでしょうか。

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採用Webマラボ編集部

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監修者
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辻 惠次郎

ネットオン創業期に入社後、現在は取締役CTOとしてマーケティングからプロダクトまでを統括。
通算約200社のデジタルマーケティングコンサルタントを経験。特に難しいとされる、飲食や介護の正社員の応募単価を5万円台から1万円台に下げる実績を作り出した。
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