飲食業界は採用・定着ともに難易度が高い業界です。平成30年の経済産業省の調査によれば全体の82%が非正規雇用、有効求人倍率は4倍以上とデータ上も雇用が安定していないことが明らかです。
飲食業界の採用状況を改善するためにはどうしたら良いのでしょうか。今回は飲食業界が抱える採用課題とその解決方法についてお伝えします。
目次
なぜ飲食業界は採用が難しいのか
飲食業界で新規の人材を採用するのが難しい理由はなんでしょうか。応募数は集まっているように見えても、実際に採用まで至らないケースも非常に多いようです。
残業が他業種と比べて長い
正社員での待遇というところで見ると、他業種に比べて整備されていない飲食店が多いです。厚生労働省の平成30年就労条件総合調査によると、宿泊業・飲食サービス業の年間休日数の平均は97.1日となっています。これは全業種の中で最も少ない数字です。1週間あたりの所定労働時間も39時間56分で全業種の中で最も長い数字となっています。
さらに飲食店で有給休暇が使える店舗は少ないイメージがありますが、こちらもデータ上で証明されています。飲食サービス業の年次有給休暇の消化率は32.5%となっており、全業種の中で最も低い割合となっています。
飲食業界で身を立てていくという野心がある方はともかく、業界こだわりなく就職・転職活動を行なっている層にとっては、他業種と比較した時にメリットが少ない業界に見えてしまうかもしれません。
即戦力を求めすぎている
教育制度が整っている飲食店や、従業員が若年層ばかりで占められている飲食店であれば、採用側としても応募者のスキルはあまり気にかけないでしょう。しかし、お店によってはそれなりに洗練された接客スキルや料理人としてのスキルなどマルチタスクな能力が求められます。
応募者の意欲があっても採用側が「即日現場に出せない」と判断し採用を見送るケースもあるでしょう。このように新人教育に回すリソースや成長を待つ余裕がない飲食店で採用が難しくなっています。
拘束時間を考えると給与が安い
固定給で安定しているように見える社員の給与でも、1日の拘束時間が15時間程度に達するケースもザラです。給与の額自体も業界の平均から見ると低く、割に合わないと感じる人が多いでしょう。
令和元年の四季報によれば調査対象の64業種のなかで外食産業は57位の年収平均となっており、491万円という年収平均も全体の平均の600万円を下回るものです。
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なぜ飲食業界は人材が定着しないのか
常に人を募集しているイメージのある飲食業界ですが、せっかく入社しても定着しない原因はどこにあるのでしょう。
長期で働くつもりの人材が少ない
飲食業界は学生やフリーターのアルバイトに多くを頼っています。学生であれば卒業後はやめてしまうことも多く、フリーターも夢を追っている間や定職が見つかるまでの間のつなぎとして働いているケースがほとんどです。
また、中途採用で飲食業界に転職した層の場合、必ずしもポジティブな要因ではなく「他にどこも内定をもらえなかったから」「学歴や職歴不問であるのが飲食業界しかなかったから」という理由で決めたケースも多く見られます。こういった層は必ずしも意欲や適性があるとは限らないため、定着しづらいです。
さらに、平成27年の飲食店.comの調査によると、飲食店の正社員で3年以下の退職割合は6割に上っています。より待遇がいい飲食店や別業界に自発的に転職するケースに加え、能力がある人材の場合は引き抜きや独立の誘惑が非常に多いため、一箇所のお店に引き止めるのが困難のようです。
他業界に比べて過酷な労働条件
未経験で入社したものの、給与が安く休日が少ないため生活が成り立たない、健康を害してしまったというケースもよく聞きます。結婚や出産というライフステージの変化にも対応しづらく、家族のことを考えた時に飲食業界で継続して勤務することを断念するのは自然な成り行きかもしれません。
将来のビジョンを描きにくい
入社後にどのようなキャリアがあるのかが不透明なことも多いです。大手企業であれば店長、エリアマネージャー、本社勤務など他業種に近いキャリアパスがあり得ますが、小規模な飲食店の場合は店長になった後の目標や収入アップの道筋が分かりにくいケースもあります。このまま勤めていても将来がないと感じた人材はお店を離れることになります。
飲食事業者が採用率と定着率を上げるために行うべき取り組み
飲食事業者が行うべき取り組みの理想は労働環境や賃金を改善することですが、利益率を考えた時に難しいのも事実です。薄利で経営しており1店舗当たりの売り上げは税金対策程度にしかならないというケースも多いでしょう。労働環境や賃金などの面以外でまず行える対策をご紹介します。
多様な働き方、人材を受け入れる
国の働き方改革の施策もあり、社員であっても週3日や時短での勤務を認める「限定社員」のような雇用が各業界で増えつつあります。現時点で設定しているシフトや日数の枠でうまく採用ができないのであれば、雇用形態を柔軟にすることで解決できるかもしれません。
これまで一人の人区で埋めていたシフトを2人で埋める、業務を細かく切り分けて効率化を図るなど、これまでのやり方を見直すのです。
また、外国人や高齢者などは働きたい人材がまだまだ多くいる状況ですので、外国人・高年齢労働者の受け入れ態勢を整えることで採用・定着に結びつきやすくなるでしょう。
表彰やイベントでスタッフを承認する
給与が上がらず労働状況が過酷でも、定着率を高める方法があります。それはスタッフの頑張りを承認することです。これは表彰式のようなイベントで実現することができます。例えば一時期話題になった居酒屋甲子園はスタッフの承認を行うわかりやすい例です。
スタッフが普段の業務の中で頑張ったことや実現した成果に対して、みんなの前で承認する場にするのが良いでしょう。「きちんと評価してくれているからもっと頑張ろう」「表彰された○○さんのようになりたい」というようなポジティブな空気が生まれるのが理想です。
キャリアパスを構築する
こうしたスタッフのモチベーションを高める取り組みをしつつ、社内でのキャリアパスも考える必要があります。これは会社の成長段階とも密接に関係しており、特に創業期を抜けて成長期に入った飲食企業の場合は急務です。成長期は店舗展開も拡大し採用人数も増えますが、創業期と同じ感覚で人材に対する取り組みを行っていると採用も定着も失敗します。
成長期には創業期ほど創業者のビジョンや属人的な魅力が行き渡らないため、途中から入った社員は社内で日々不安を抱きやすくなります。これまではなんとなく成り立っていたことでも、見える化することが必要です。キャリアパスは最優先で見える化すべき項目といえます。
仮に自社内でキャリアパスを提示することが難しい場合でも、独立への道筋を示すことで定着率を高めることが可能です。平成27年の飲食店.comの調査によると、飲食店の正社員希望者は53%が将来的な独立を視野に入れています。「このお店で働くことで独立が現実的になる」と社員が感じられれば独立までは定着してくれるかもしれません。
まとめ
飲食業界の募集記事を見ると「未経験歓迎」や「楽しさ」「やりがい」を前面に出したものが多く見られます。それはそれで良いのですが、今回紹介したような求職者が不安に感じている飲食業界の課題について解消されるような求人募集記事であるかも考慮すべきでしょう。
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