建設業の若者離れの原因と対策を分かりやすく解説!

建設業界において若者離れが深刻な問題となっています。
実際に現在「若い人材が採用できない……」「若手がすぐに離職してしまう……」と悩んでいる企業・個人事業主は多いのではないでしょうか。

建設業全体としては、今後も若者離れが続くと見込まれています。
早いうちに対策を練ることで、世代交代や新陳代謝がうまくいき、長期的な企業成長につなげられるでしょう。

当記事では、若者離れの原因や対策について詳しく解説します。
未来を左右する若者離れの問題に対して、実践的なアプローチを学ぶためにお役立てください。

建設業の若者離れの現状

まずは建設業における若者離れの現状について整理します。
いくつかのデータをもとに、「人手不足」「若年層の就業状況」の2つの観点から解説します。

人手不足が深刻

下記は国土交通省が公表する建設労働需給調査結果です。
令和6年6月時点で人材の不足率は1.0%。平成23年からの推移を見ても、ほとんどの時期で不足していることが分かります。

(出典:建設労働需給調査結果(令和6年6月調査)|国土交通省

この人材不足は「有効求人倍率」にも表れています。
2024年5月の全産業の平均有効求人倍率は「1.05倍」です。一方で、同時期の建設業の有効求人倍率は「4.68倍」であり、多くの企業・個人事業主が新たな人材を求めています。
(出典:一般職業紹介状況(令和6年5月分)について「参考統計表」|厚生労働省

若年層の就業状況

下記は建設業の年齢層分布を示したグラフです。
建設業は29歳以下が少ない一方で55歳以上が多く、他産業よりも高齢化が顕著です。

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(出典:建設業の現状 建設労働|建設業デジタルハンドブック

55歳以上の割合については右肩上がりで上昇しています。今後もこの状況は続くと見込まれます。

建設業の若者離れの原因

建設業における若者離れの原因は複合的です。
自社の現状について整理する際も、さまざまな可能性を探る必要があります。ここからは主な要因を詳しく解説します。

建設業への負のイメージ

建設業に対する負のイメージは、若者離れの大きな要因の一つです。

建設業は長年「3K(きつい・汚い・危険)」と呼ばれてきました。この印象はいまだに根強く、若者の職業選択に大きな影響を与えています。

実際に、建設業に対して次のようなイメージを持つ人は多いでしょう。

  • 肉体労働が中心で体力的にきつい
  • 現場が汚れやすく、衛生面での不安がある
  • 高所作業や重機操作など、危険を伴う作業が多い

近年の若者はワークライフバランスを重視する人が増えていますから、これらの負のイメージにより、建設業がキャリアの選択肢から外れてしまうのです。

労働時間が長い

建設業界は他業界と比べて労働時間が長い傾向にあります。

下記はここ20年の労働時間の推移です。
多少改善傾向にあるものの、2023年時点で平均値よりも年間250時間ほど長いことが分かります。

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(出典:建設業の現状 建設労働|建設業デジタルハンドブック

収入が少ない

建設業界全体を見ると賃金が高いわけではありません。下記のグラフをご確認ください。

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(出典:建設業の現状 建設労働|建設業デジタルハンドブック

建設業男性労働者の年間賃金総支給額は、全産業平均と同水準です。
労働時間が長いにもかかわらず賃金が平均と同程度であれば、建設業を選ばない若者は増え続けるでしょう。

休日が少ない

建設業は昔から休日が少ない傾向にあります。
理由はさまざまですが、ひとつが納期の問題です。三次下請け、四次下請けというように多重下請けが当たり前になっている建設業界では、各業者に課せられる納期が短いことが少なくありません。

人手不足に悩む中でもこの納期を守るために、休日も仕事にあてる業者が少なくないのです。

【参考】
働き方改革・建設現場の週休2日応援サイト|国土交通省

業務効率が悪い

建設業界は他業界に比べてデジタル化が難しい側面があります。
また、デジタル化が可能な業務があったとしても、職人業であるがゆえに抵抗を示す人が少なくありません。

現に多くの建設現場では、下記のようにアナログな業務プロセスが残っています。

  • 紙ベースの書類作成や管理
  • FAXやメールでの情報伝達
  • 手作業による測量や図面作成

当然、中には「人が行う」からこそ意義のある業務も多いでしょう。
一方で、若者の働きがいや成長実感を損なう要因ともなり得るため、デジタル化する仕事と人が行う仕事のバランスを考えることが重要です。

建設業の若者離れ対策

ではここからは、効果的な若者離れ対策について紹介します。

労働環境の改善

建設業の若者離れを食い止めるためには、まず労働環境の改善が不可欠です。
これまでの「当たり前」を見直して、自社でできることから改善していきましょう。
具体的には以下の施策が効果的です。

  • 週休二日制の導入
  • 残業時間の削減
  • 有給休暇の取得推進
  • 福利厚生の充実

現在、国土交通省の主導により、全ての工事で週休二日を確保することが促進されています。これにより、若者にとって魅力的な職場環境の実現が期待されます。

ワークライフバランスの向上
労働時間の適正化や休暇取得の促進により、ワークライフバランスの向上を図ることが重要です。
ワークライフバランスを重視する人が増える中、この点を改善することで多様な人材を呼び込める可能性が高まるでしょう。

なお、取り組むべき課題として以下の点が挙げられます。

  • 長時間労働の是正
  • 休日の確保
  • 柔軟な勤務体制の導入
  • 育児・介護との両立支援

業務効率の改善

業務効率の改善にあたって国単位で進められているのが、「ICT (Information and Communication Technology)」の活用です。

ICT化は、情報通信技術を活用してコミュニケーションを円滑にすることで、例えば「工事管理システム」を使えば、施工に関連する情報が一元管理され誰でもアクセスできるようになります。

ICTを活用することで、下記のようなメリットがあります。

  • 情報共有がスムーズになる
  • 作業効率が向上する
  • 安全性が向上する
  • 若手技術者の育成につながる

ICTの導入にあたって初期費用はかかりますが、長期的に見るとメリットが大きく、結果的に費用対効果が大きくなるケースが少なくありません。

【参考】
建設ICTとは?|中部i-Construction研究会事務局

身体的負荷の軽減

建設業の若者離れの一因として、身体的負荷の大きさが挙げられます。
業界として高齢化が進む中、若者離れに限らず「身体的負荷」の解決に悩んでいる企業は多いでしょう。

この問題に対処するため紹介したいのが「パワーアシストスーツ(PSA)」の導入です。
これにより、作業者の身体的負担を軽減することが可能となります。パワーアシストスーツの有効性は検証段階の側面もありますが、以下の効果が期待できます。

  • 腰や膝への負担が軽くなる
  • 体の故障を理由とした離職を減らせる
  • 作業効率が向上する
  • 労働災害の防止になる
  • 女性や高齢作業者の就労支援につながる

※国土交通省ではパワーアシストスーツの現場検証事例を公表しています
建設施工における苦渋作業の負担軽減にむけ~パワーアシストスーツ現場検証の事例を公表します~

将来のための支援制度を設ける

若者の建設業への定着を促進するためには、将来を見据えた支援制度の整備が重要です。
「ここで働いた将来の自分」がイメージできるほど、日々の仕事へのモチベーションが高まります。

将来のための支援制度はさまざまですが、下記がその一例です。

  • キャリアパスの明確化
  • 研修制度の充実化
  • 資格取得費用の補助
  • 資格試験対策講座の開催
  • 資格取得者への手当支給

建設業の魅力をアピールする方法

建設業に若手人材を呼び込むには、「仕事の魅力」を発信することが重要です。
とはいえ、ただ発信すればいいわけではありません。
上手にアピールするために、下記の手段やポイントを考慮してみることがおすすめです。

SNSでの発信

建設業の魅力を若者に伝えるためには、若者が日常的に利用するSNSでの情報発信が効果的です。
SNSを活用すれば、建設業の魅力について視覚的に、かつ親しみやすい形で伝えることができます。

例えば、代表的なSNSである「Instagram」や「X(旧Twitter)」を利用する際は、下記のような活用方法があります。

■Instagram活用例

  • 現場の日常や完成した建築物の写真を投稿
  • 従業員のストーリーや働きがいを紹介
  • 建設技術や最新機器のデモンストレーション動画の共有
  • ハッシュタグを効果的に使用(例:#建設業の魅力 #建設現場の日常)

■X(旧Twitter)活用例

  • 業界ニュースや自社の取り組みをリアルタイムで発信
  • 建設に関する豆知識やトリビアの共有
  • 若手社員の声や成長ストーリーの紹介
  • 建設業界のイベントや説明会の告知

建設業界全体を見ると、SNS活用率は他業種に比べて低い傾向にあります。
SNSを効果的に活用すれば、他社との差別化を図ることができる可能性が高いと言えます。

自社サイトでの発信

自社のWebサイトは、企業の顔となる重要な情報発信ツールです。

特に若手求職者は、その企業の求人に応募する前に、自社サイトで詳細な情報を集める傾向にあります。
すでに自社サイトがある場合でも「若者が応募したいと思うか」という視点で見直してみましょう。

建設業の魅力を効果的に伝えるためには、以下のような工夫が必要です。

  • 完成した建築物や施工中の現場を写真・動画で紹介
  • 従業員インタビューの掲載(職種や経験年数をできるだけ多様に)
  • 自社の持つ強みや特殊技術について分かりやすく解説
  • 地域貢献や環境保護活動などの取り組みを紹介

パンフレットの作成

デジタル媒体が主流となった現在でも、建設業界においては紙媒体のパンフレットが重要な役割を果たしています。
特に就職活動中の学生や転職を考えている若者に向けて、建設業の魅力を効果的に伝えるツールとなります。

【効果的なパンフレット作成のポイント】

目的 内容
ビジュアルを重視する パンフレットが効果的な大きな理由は「視覚的に情報を伝えることができる点」です。魅力的な写真や図表を積極的に掲載して、求職者に視覚的に訴えましょう。
明確な構成 「この項目では何を伝えたいのか」など、明確な意図を持って構成をつくることがポイントです。企業理念、事業内容、福利厚生など、伝えるべき情報を整理しながら考えましょう。
若手社員の声 実際に働いている若手社員のインタビューや日常を紹介します。生の声を届けることで、求職者が「入社後の自分」をイメージしやすくなります。
QRコード活用 パンフレットを読んで「この会社良いかも!」と思ったタイミングが、スムーズに次のアクションにつなげるチャンスです。詳細情報へのリンクや動画コンテンツ、応募フォームなどのリンク先をQRコードに埋め込みましょう。

企業説明会の実施

自社のことを知ってもらうためには、会社や仕事の魅力について温度感を持って直接伝えることが大事。そこで、企業説明会を開催する方法も効果的です。

オンラインと対面のハイブリッド形式で実施すれば、より多くの参加者を集めることができます。

【効果的な企業説明会のポイント】

  • 参加者との質疑応答や意見交換の時間を十分に設ける
  • 現場体験の機会を提供して自社の特徴について見てもらう
  • 同年代の社員との座談会やグループディスカッションの機会を設ける
  • 最新の建設技術や機器のデモンストレーションを行う

まとめ

建設業の若者離れは深刻な問題となっており、その原因は労働環境や業界イメージ、収入面など多岐にわたります。
建設業は基幹産業であり、日本の経済成長において欠かせない存在です。その魅力や重要性を若者に伝えて関心を引き、業界のイメージアップを図ることで、自社の若者離れが少しずつでも解決に向かえば幸いです。

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この記事を書いた人
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コンノ

公務員として4年間、人事労務の実務経験あり。 これまで100名以上の事業者をインタビューしており、「企業や個人事業主が本当に悩んでいること」を解決できる記事を執筆します。

監修者
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辻 惠次郎

ネットオン創業期に入社後、現在は取締役CTOとしてマーケティングからプロダクトまでを統括。
通算約200社のデジタルマーケティングコンサルタントを経験。特に難しいとされる、飲食や介護の正社員の応募単価を5万円台から1万円台に下げる実績を作り出した。
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