離職やパフォーマンス不足など、新入社員に関するお悩みを持つ人事担当者の方も多いのではないでしょうか。
そんな悩みを解決できると注目されているのが「オンボーディング」です。この記事ではそのメリット・デメリットや注意ポイントを解説します。
目次
オンボーディングとは?
オンボーディングとは、新卒・中途を問わず新しく入社した社員に対する受け入れ施策のことです。
「船や飛行機に乗っている」の意味を持つ「on board」が派生した言葉で、船や飛行機の乗客や乗組員が早く慣れるようにサポートするという意味から、現在は人事用語としても使用されるようになっています。
新卒入社の場合、ほとんどの会社で新入社員研修などが用意されていますが、中途入社の場合はやり方を各部署に任せており、社内で統一していないケースが多いです。
オンボーディングが充実していないことで新たに入社した社員が早期に離職してしまう、パフォーマンスが上がりづらいなどの問題が出てきます。
オンボーディングの施策事例を挙げると、新入社員研修などに代表されるような教育プログラムだけでなく、ランチ会を行う・メンターをつける・上司との面談を行うなどもあります。こうしたコミュニケーションも含めて会社になじみやすくする取り組みすべてが、オンボーディングと呼ばれています。
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オンボーディングを実施するメリット
そんなオンボーディングの実施には、どんなメリットがあるのでしょうか。ここでは、3つのメリットをご紹介します。
早期離職の防止
オンボーディングを実施する理由として多いのが、早期離職を防ぐということです。離職する理由は、人間関係やコミュニケーションによるものが多い傾向にあります。(※)特に新しい社員が会社になじめない、あるいは受け入れられていると感じられない場合、それを放置してしまうと早期離職につながる可能性が高いです。
※参考:厚生労働省ホームページ「令和2年上半期雇用動向調査結果の概況 4−(3)転職入職者が前職を辞めた理由 (PDF)」
https://www.mhlw.go.jp/toukei/itiran/roudou/koyou/doukou/21-1/dl/gaikyou.pdf
オンボーディングでうまく既存社員とコミュニケーションが取れるようになった、ランチ会などで相談しやすくなったなどの経験ができれば、なじみにくい印象がなくなり、早期離職の防止にもつながります。
パフォーマンスの向上
パフォーマンスの向上については、単純なコミュニケーションではなく期待されている役割や仕事の目的の共有が重要です。新入社員は入社してすぐ上司との面談でそれらを共有してもらうことで、どう行動すれば良いかの指針ができ、明確な行動に移しやすくなります。
また、期待されていることを知れば、指示がなくても能動的に動けるようになるため、パフォーマンスを発揮しやすい状況が作れます。会社になじんでから面談をするよりも、早期に面談を行うことで、パフォーマンスの向上が期待できます。
相互に支援する文化の醸成
オンボーディングの実施は、新たに入社してくる社員だけでなく、既存社員にも良い影響を与えます。それは、相互に支援する文化が会社や組織に根付くという影響です。
サポートをしてもらったら自分も何かお返しがしたいと思うのは、自然なことです。例えば自分が持っている情報を共有する、教えてもらったことを次の新しい社員に伝えるなど、相互に支援する流れが生まれやすくなります。
その流れが続いていけば、いつしか定着して文化に変わります。文化になればオンボーディング以外の部分にも相互支援が浸透するため、既存社員にとっても働きやすい良い環境となります。働きやすい環境づくりができれば、新しい社員だけでなく既存社員の離職防止につながる可能性も出てきます。
オンボーディングを実施するデメリット
メリットばかりに感じるオンボーディングですが、どんなデメリットがあるのでしょうか。オンボーディングの実施に伴うデメリットを、2つご紹介します。
丁寧に仕組みを設計し、コンテンツを用意する必要がある
オンボーディングを行うとなると、仕組みの設計・コンテンツの準備という2つの業務負荷が生じます。
オンボーディングを成功させるには既存社員の負担なども考慮し、無理なく長期的に取り組めるような設計が重要です。コミュニケーションを取る以外に社内の文化を知るための研修が必要であれば、そうしたコンテンツの準備にも時間を割く必要があります。
設計によって、目的を明確にしてから実施しなければ、労力をかけるだけで成果が出ない可能性があります。
オンボーディングのメリットでご紹介したように、早期離職の防止であればどんな理由で離職する人が多いのかを調べ、それを払拭するのにはどんな取り組みが良いのかを考えてから仕組みを設計する必要があります。
また、パフォーマンスの向上を目的にする場合も、何のパフォーマンスを向上させるのか。なぜパフォーマンスを向上させなければならないのかという理由まで決めてから、実施内容を検討するという順番で進める必要があります。
既存社員の協力を得る必要がある
仕組みの設計やコンテンツの準備にも関連しますが、オンボーディングの実施は既存社員の協力なくして実現できません。既存社員の協力を得るためには、実施目的の理解や既存社員へのメリット訴求も必要になってきます。
目的を設定せずに「やったほうが良い」という理由だけでスタートすると、主業務がある中で時間を割く必要があるため、なかなか既存社員の協力も得られにくく継続しにくいという問題が出てきます。
こういったデメリットを払拭するためにも目的の明確化、仕組みの丁寧な設計、そして協力を得るための説明が必要になってきます。
オンボーディング実施の際に注意すべきポイント
ではオンボーディングを実施する際に、注意すべきポイントにはどんなことがあるのかをご説明します。
既存社員の経験を参考に実施内容を決める
仕組みの設計・コンテンツの準備でお伝えした、パフォーマンス向上・離職防止の要素特定も重要ですが、実際既存社員が感じた「パフォーマンス向上・離職防止に何があったら良かったか」を確認することも重要です。
一般的に効果があるとされる取り組み内容であっても、会社や部署などによって効果的かどうかはわかりません。実施する会社・部署に合った内容でなければ効果が出ない可能性もあるため、既存社員の意見を参考に内容を設計するようにしましょう。
その中で「別部署のメンター的存在がいてその助言に助けられた」という意見が多ければ、異なる部署のメンターを用意する方法。「同じ部署の人の結束が固いように感じ、なじみにくかった」という意見が多かった場合は、同じ部署内ではランチ会のメンバーを交代しながら部署になじんでもらうなどのオンボーディングが効果的かもしれません。
このようにどんな点が入社後の仕事でネックになったかを聞いて設計すれば、効果的なオンボーディングができるはずです。
短期ではなく継続的なサポート体制の構築
オンボーディングは入社してすぐ行う短期的なイベントとしてではなく、継続的なサポートとして行う体制を整えることが重要です。短期的なフォローだけでは、パフォーマンスの向上・早期離職の防止にはつながりません。
新入社員がその会社になじみ、既存社員と同じように自走できるようになるまでは半年~1年程度かかる場合もあります。数週間のサポートだけでなく長期的に相互コミュニケーションを取って仕事を進めることが重要という認識を持ってもらい、協力してもらえるよう働きかけていきましょう。
まとめ
新しい社員が入社した際、スムーズに業務に取り組めるようサポートするオンボーディング。そのメリット・デメリットを知った上で、自社に合った方法を模索して行えば、期待した成果が徐々に現れてくるはずです。
効果的なオンボーディングを社員に実施し、いち早く会社になじんで活躍してもらえるように取り組んでみてはいかがでしょうか。
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