中小企業のSaaS利用率、27.4%。導入上位は「採用管理」と「勤怠管理」|人事・採用領域におけるSaaS型サービスの利用実態調査

SaaS(Software as a Service)とは、ソフトウェアをクラウドサービスとして提供する、サービスの形態を指します。ユーザーはソフトウェア自体を購入することなく、必要な機能をインターネット経由で利用することが可能。政府が推進するDX(デジタルトランスフォーメーション)を語るうえで欠かすことのできないテクノロジーのひとつです。

中小企業では、高額な初期投資や人的リソース不足などがIT導入の障壁となっていますが、SaaSは導入が容易で、利用料金もその多くがサブスクリプション形式であることから、手軽に利用することができます。人手不足で他業務との兼務も珍しくない中小企業の人事採用担当者こそ、利用が推奨されるサービスといっても良いでしょう。

そこで株式会社ネットオンでは、中小企業の人事・採用領域におけるSaaS型サービスの利用実態について、採用業務クラウド「採用係長」の登録ユーザーである中小企業の採用担当者を対象にアンケート調査を実施しました。

88.4%が“SaaS”という言葉を「聞いたことがない」

はじめに“SaaS”という言葉を聞いたことがあるかどうかについて質問したところ(n=190)、「いいえ(=聞いたことがない)」と回答した事業所が88.4%に上りました。中小企業における“SaaS”の知名度の低さが明らかになっています。

Q1.”SaaS”という言葉を聞いたことがありますか?

円グラフ(Q1.”SaaS”という言葉を聞いたことがありますか?)

“SaaS”の意味を知っている事業所は、わずか8.4%

次にSaaSの意味について質問したところ(n=190)、91.6%が「いいえ(=知らない)」と回答。中小企業の大半がSaaSを知らないという結果になりました。

Q2.SaaSの意味を知っていますか?

円グラフ(Q2.SaaSの意味を知っていますか?)
「はい(=知っている)」と回答した事業所は10%を下回りましたが、「聞いたことがある」事業所のうち、72.7%はSaaSの意味も知っています。つまり、同じ中小企業でもSaaSの認知には大きな開きがあるということです。

27.4%がSaaS型サービスを利用。利用業務1位は、「採用管理」

次にSaaSの意味を説明したうえで、現在利用中のサービスについて質問したところ(n=190)、27.4%の事業所がSaaS型サービスを利用していることが分かりました。

そのうち、もっとも多く利用されているサービスは、16.3%の事業所が回答した「採用管理(採用サイト作成、応募者管理)」です。続いて、「勤怠管理(シフト管理、タイムカード)」が12.1%、「給与計算」が7.4%でした。

Q3.SaaS型サービスを利用している業務を教えてください(複数選択)

棒グラフ(Q3.SaaS型サービスを利用している業務を教えてください(複数選択))

今後の予定は、80%以上が「導入しない」

今後の導入予定についての質問では(n=190)、82.6%が「いいえ(=導入の予定なし)」と回答。導入を予定している事業所は、17.4%にとどまりました。導入意欲の低さが鮮明になっています。

Q4.今後SaaS型サービスを積極的に導入する予定はありますか?

円グラフ(Q4.今後SaaS型サービスを積極的に導入する予定はありますか?)

今回のアンケートで回答があった22業種のうち、「はい(=導入する予定)」と回答したのは13業種でした。その中から回答が10事業所以上あった8業種のみをグラフ化し、業種別の傾向を確認します。

棒グラフ(利用状況別導入予定)

ここで紹介している業種はどれも人手不足の課題を抱えていますが、導入予定がもっとも多い業種でも30%に届いていないことが分かります。もっとも少ない業種に至っては、0%です。SaaSの普及にはさらなる時間が必要だといえるでしょう。

導入予定のSaaS型サービスは、「採用管理」と「Web面接」が同率1位

Q4で「はい(=導入する予定)」と回答した事業所へ、どの業務で利用を予定しているかについて質問したところ(n=33)、1位は「採用管理(採用サイト作成、応募者管理)」と「Web面接」が同率で並びました。採用選考における業務効率化や業務精度の向上を進めたいと考える採用担当者のニーズがうかがえます。

Q5.どの業務でSaaS型サービスを利用する予定ですか?

棒グラフ(Q5.どの業務でSaaS型サービスを利用する予定ですか?)

3位以下には「人事評価」、「勤怠管理(シフト管理、タイムカード)」が続きました。

各事業所が導入を予定しているサービス数は、以下の通りです。

棒グラフ(導入を予定しているSaaSの数)

5個以上の導入を予定している事業所が20%を超えており、一度に複数業務のSaaSを導入する事業所も少なくないことが分かります。人事・採用関連業務を総合パッケージとして提供しているSaaSもあるため、そういったサービスの利用を予定しているのかもしれません。

さらに、現在の利用状況別に今後の予定を確認してみたいと思います。

棒グラフ(利用状況別導入予定)
「導入する」の割合は、SaaS型サービスを利用中の事業所のほうが多く、利用していない事業所を23.7ポイント上回りました。
サービスの利用経験があるほうが他の業務においても必要性を感じやすく、導入に対する抵抗感も低くなると推察することができます。

人事・採用業務の課題は、「人材確保」「時間とコストの無駄遣い」「人材の定着・育成」など

人事・採用業務における課題についての質問では35件の回答があり、その多くが応募獲得に関する内容でした。ここでは回答の一部を抜粋して紹介します(可読性を高めるため、文言を調整しています)。

Q6.人事・採用業務において、解決したいお悩みや業務効率を改善したいことがあれば教えてください(自由回答)

求人募集時の課題
※カッコ内は、業種/従業員規模/所在地
・応募が少なく、求める人材が採用できない(その他/5名以下/群馬県)
・返信のない人や面接に来ない人、採用後に来ない人に費やす時間を無くしたい(コールセンター/50~99名/広島県)
・面接の段階で業務への適性を見極めるのが難しい(医療/10~19名/神奈川県)
・面接のドタキャンが多い(製造/20~49名/大阪府)
・費用をかけたのに採用できないという状況を回避したい など
採用後の課題
※カッコ内は、業種/従業員規模/所在地
・人材の定着、育成が課題(介護・福祉/100~299名/広島県)
・採用後の評価システムを改善したい(運輸・物流/50~99名/三重県)
・人事評価を見直したい(不動産/10~19名/埼玉県) など

まとめ

今回の調査では、中小企業におけるSaaSの認知度やサービスの利用状況などについてアンケートを実施しました。その結果、SaaSの認知度は非常に低く、意味を知っている事業所はわずか8.4%でした。実際には27.4%の事業所が人事・採用領域において何らかのSaaS型サービスを利用していることが分かりましたが、30%にも満たない利用率からは、中小企業における業務改革の現状を窺い知ることができます。

株式会社ネットオンが2021年10月に実施した「DXに関する実態調査」では、DXが進まない理由として、コスト面やIT人材不足などの課題が挙げられました。SaaSはそうした問題をクリアし、さらに中小企業の競争力を高めることが可能なサービスです。
ところが今回の調査では、今後SaaSを「導入する予定」と回答した事業所は17.4%にとどまり、現状の利用率だけでなく、将来的な導入意欲も低いことが明らかになりました。
その一方で、SaaS型サービスを利用している事業所の30%以上は、「今後も導入する」と回答しています。

これらの結果からは、中小企業の人事・採用領域において業務改革を進めるには、SaaS型サービスの認知度向上はもちろん、サービスの利便性やベネフィットを感じ取る“体験”が不可欠であることが読み取れます。加えて、それが良い体験であることが重要でしょう。SaaS型サービスの多くは無料プランが用意されており、体験自体のハードルは高くないはずです。そのため中小企業への浸透には、体験に至るまでの「きっかけ」と、サービスを利用して得た「成功体験」の両方が必要なのではないでしょうか。

経済産業省が「DX推進ガイドライン」を公開した2018年12月から、3年が経過しました。その中で提起した“2025年の壁”(2025年に生じる可能性がある大規模な経済損失)までは、残すところあと4年。株式会社ネットオンは今後も継続して調査を実施し、中小企業の動向を見守る所存です。SaaS型サービスである採用業務クラウド『採用係長』の提供を通じて採用課題の解決に貢献することで、中小企業がさらなる業務改革へと踏み出すきっかけづくりにも寄与してまいります。

調査概要

調査名 人事・採用領域におけるSaaS型サービスの利用実態調査
調査対象 『採用係長』利用事業所の人事・労務担当者様
有効回答数 190
調査期間 2022年2月9日(水)~2月15日(火)
調査方法 インターネット調査
調査結果の注意点 %を表示する際に小数点第2位で四捨五入しているため、単一回答の場合は100%、複数回答の場合は合計値に一致しない場合があります。