同一労働同一賃金に対応済みの事業所は、わずか37.6%|同一労働同一賃金の導入実態調査

同一労働同一賃金の導入実態調査

正社員と非正規雇用労働者との間の不合理な待遇差を禁止する、同一労働同一賃金(パートタイム・有期雇用労働法)。2020年4月に施行され、大企業には適用済みの本制度が、2021年4月1日から中小企業においても適用されます。

そこで、クラウド型採用マーケティングツール『採用係長』を開発・提供する株式会社ネットオンでは、225の事業所を対象に同一労働同一賃金についてのアンケート調査を実施しました。

今回は同一労働同一賃金への対応状況をはじめ、調査結果からみえてきた制度に対する企業の期待や課題について紹介します。

同一労働同一賃金に対応済みの事業所は、37.6%

まずは、同一労働同一賃金への対応状況について質問したところ、対応済みの企業はわずか37.6%に留まりました。 ※非正規雇用者がいない事業所の「未対応」回答は除外(n=181)

【Q1】同一労働同一賃金への対応状況は?(単一選択)

一方、まだ対応できていない(「未対応」または「対応中」と回答した)事業所は全体の52%。中小企業におけるパートタイム・有期雇用労働法の施行日である4月1日を目前に、導入が進んでいないことが明らかになりました。

さらに対応状況を都市部(東京都・愛知県・大阪府/n=54)と都市部以外(n=127)で比較すると、以下のような違いがみられました。

都市部とそれ以外の対応状況

都市部の事業所(グラフ左)では44.4%が「対応済み」となっており、都市部以外の事業所(グラフ右)を9.8ポイントも上回っています。

反対に、まだ対応できていない事業所(「未対応」+「対応中」)の割合では、両者に大きな差はみられませんでした。

ただし、その内訳をみると、「対応中」は都市部以外のほうが多いことが分かります。このことからは、都市部と比べて対応に時間がかかっている、もしくは対応開始が遅かったなどの理由が考えられるのではないでしょうか。さらに状況を把握できていない「不明」の回答も多く、同一労働同一賃金の導入における地域差をうかがい知る結果となっています。

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「未対応」の理由は、「情報収集ができていない」が最多

未対応の理由に関する質問では(n=51)、「情報収集が出来ていない」が1位でした。 2位に「自社も対象なのか分からない」、3位には「どうやって対応すればいいのか分からない」が続いており、この結果からは同一労働同一賃金の制度や導入方法について、企業側の理解が進んでいないことが分かります。

【Q1-2】「未対応」の理由は?(複数選択)

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導入メリットは、「労働者の働きがいづくり」が1位

導入メリットや期待している点を質問したところ(n=225)、「労働者の働きがいづくり」がもっとも多く挙げられました。

【Q2】同一労働同一賃金の導入メリットや期待していることは?(複数選択)

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一方で、全体の30.2%が選択した「特にメリットや期待を感じていない」が2番目に多い結果に。企業がメリットや期待を感じられないことは、同一労働同一賃金の導入が37.6%に留まっている理由のひとつとして考えることができます。

また1位と2位の結果について、「未対応」と「対応済み」の事業所では、以下のような違いがありました。 同一労働同一賃金のメリット実感比較

「対応済み」の事業所は、「未対応」の事業所に比べて「労働者の働きがいづくり」をメリットと感じている割合が高く、反対に「メリットを感じていない」割合は低いことが分かります。 同一労働同一賃金は、導入後にそのメリットを実感しやすい制度であるといえるのではないでしょうか。

半数以上の事業所が「人件費の増加」を課題と感じている

同一労働同一賃金への対応における課題は、「人件費の増加」が1位。全体の51.1%がこの回答を選択しました。

【Q3】対応にあたって課題に感じていることは?(複数選択)

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2位から7位を占めたのは、同一労働同一賃金に対応するための制度設計や運用に関する課題です。制度の導入および運用方法に対して、多くの企業が疑問や不安を抱えている実態が浮彫になりました。

「正社員希望者の減少」や「人件費増による新規採用の停止」などを懸念

採用活動や人材確保における懸念に対しては、37の回答が得られました。一部抜粋して紹介します。

【Q4】同一労働同一賃金の導入による、採用面での懸念は?(自由記述)

今後の新規採用

  • 同一賃金にすると、新規採用が難しくなり人材を確保できない(小売/青森県)
  • 採用時の規則の明文化をどこまでする必要があるのかが分からない(理美容・エステ/栃木県)

正社員への影響

  • 正規雇用希望者の減少(その他/福島県)
  • 正規社員のモチベーション低下(その他/東京都)
  • 正社員が離れていく気がする(その他/東京都)

上記のように、今後の採用や正社員への影響を懸念する声が多くみられました。 またここで紹介していない回答の中には、制度内容の理解不足とみられる回答が散見され、制度の趣旨や運用手順が企業側へ十分に浸透していないことも、同一労働同一賃金導入の障壁となっていることを感じる結果となりました。

まとめ

今回の調査では、『採用係長』を利用する事業所を対象に、同一労働同一賃金の導入実態に関するアンケートを実施しました。対応済み事業所がわずか37.6%という結果からも分かる通り、同一労働同一賃金の導入はスムーズに進んでいるとは言い難い状況です。 導入が進んでいない背景には、制度に対する企業側の理解不足が影響している点が挙げられます。またQ4の自由回答からは、“同じ業務を行っているすべての従業員の待遇を一律にする制度”と認識している企業が少なくないことも分かりました。

同一労働同一賃金は、そのような制度ではありません。例えば基本給について、ガイドラインの概要では以下のように説明がなされています。

基本給が、労働者の能力又は経験に応じて支払うもの、業績又は成果に応じて支払うもの、勤続年数に応じて支払うものなど、その趣旨・性格が様々である現実を認めた上で、それぞれの趣旨・性格に照らして、実態に違いがなければ同一の、違いがあれば違いに応じた支給を行わなければならない。

引用元:厚生労働省(「同一労働同一賃金ガイドライン」の概要[2])

この内容からも分かる通り、本制度が基本給について求めているのは、同じ業務を行っている全従業員の待遇を一律にすることではなく、実態に応じた基本給を支払うことなのです。

不当な格差の解消は、非正規社員の生産性向上や適正評価による企業イメージの向上、ひいては人材確保など、企業側にもさまざまなメリットがあります。まずは同一労働同一賃金を正しく理解することが、導入に向けての第一歩になるのではないでしょうか。

注)本調査は、『採用係長』登録ユーザーを対象として実施しています。

調査概要

調査名 同一労働同一賃金における導入実態調査
調査対象 『採用係長』利用事業所における人事・労務担当者様(業種区分無し)
有効回答数 225
調査期間 2021年2月9日(火)〜2021年2月23日(火)
調査方法 インターネット調査

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馬嶋 亜衣子(samusillee)

採用・キャリア関連、医療分野を中心に執筆を行うフリーランスライター。 各種メディアの取材ライティングやSEOライティング、採用HPのライティングなどに携わっています。

監修者
監修者
辻 惠次郎

ネットオン創業期に入社後、現在は取締役CTOとしてマーケティングからプロダクトまでを統括。
通算約200社のデジタルマーケティングコンサルタントを経験。特に難しいとされる、飲食や介護の正社員の応募単価を5万円台から1万円台に下げる実績を作り出した。
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