中小企業の人事・採用DX、「取り組んでいる」はわずか10.5%。給与デジタル払いは83.1%が「利用したくない」

デジタル技術の活用による生産性の向上を通じて、ビジネスや組織に変革を起こす「DX(デジタル・トランスフォーメーション)」。
2018年に経済産業省から「DX推奨ガイドライン(現在は「デジタルガバナンス・コード2.0」)が公表されて以降、国内では大手・中堅企業を中心にDXの取り組みが進んでいます。

コロナ禍の変化は、多くの企業にとってDXの必要性を認識する契機となりました。
また国の成長戦略である社会全体のデジタル化が加速しており、その一環として制度化された「給与(賃金)のデジタル払い」の解禁も2023年4月に迫っています。

企業のDXを支援するサービスが次々と登場する中、中小企業の取り組みはどこまで進んでいるのでしょうか。

株式会社ネットオンでは、クラウド型採用サイト作成ツール『採用係長』の登録ユーザーである中小企業の採用担当者を対象に、人事・採用DXに関するアンケート調査を実施しました。

目次

アンケート回答者属性

今回、アンケートにご回答いただいた事業所様の属性は以下の通りです。
従業員規模が20名以下の事業者様を中心に、「建築・不動産」、「飲食」、「介護・福祉」、「運輸」など様々な事業者様にご回答いただきました。また、地域につきましても、都市部を中心に全国的に散らばり、あらゆる地域の事業者様にご回答いただきました。

業種

従業員規模

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都道府県

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DXという言葉を「聞いたことがある」事業所は、41.3%

Q.DX(デジタル・トランスフォーメーション)という言葉を聞いたことがありますか?

はじめに、DXという言葉を聞いたことがあるかどうかについて質問したところ(n=172)、「はい(=聞いたことがある)」と回答した事業所は41.3%でした。

グラフ(Q.DX(デジタル・トランスフォーメーション)という言葉を聞いたことがありますか?

株式会社ネットオンが2021年10月に実施したアンケート調査(n=294)では、「はい(=聞いたことがある)」が32.0%です。
前回と比べて9.3ポイントの増加を確認することができましたが、依然として「聞いたことがない」事業所が過半数を占めています。

「聞いたことがある」事業所の69.0%は、DXの意味も知っている

Q.DXの意味を知っていますか?

「はい」と回答した事業所へ(n=71)、DXの意味を知っているかどうかについて質問しました。結果は、「はい(=知っている)」が69.0%です。

グラフ(DXの意味を知っていますか?)

事業所全体の認知度(「言葉を聞いたことがある」かつ「意味を知っている」事業所の割合)は、28.5%でした。
前回調査と比較して2.6ポイント上昇はしましたが、中小企業におけるDXの認知度は現在も低く、引き続き課題であることが明らかになっています。

DXに取り組んでいる事業所は、わずか10.5%

Q.自社でDXに取り組んでいますか?

全事業所にDXの意味を説明したうえで、取り組み状況について質問しました(n=172)。
「取り組んでいる」事業所は、わずか10.5%です。
一方、「取り組んでおらず、現時点では取り組む予定もない」事業所は、68.6%に上りました。

グラフ(Q.自社でDXに取り組んでいますか?)

また、DXに「取り組んでいる」と回答した事業所へ、導入ツールについて質問したところ、「採用管理(採用サイト作成、応募者管理」、「Web面接」、「適性検査」、「労務管理(入社手続き、社会保険手続き)」、「マイナンバー管理」、「勤怠管理(シフト管理、タイムカード)」、「給与計算」、「eラーニング」などの回答がありました。

各ツールにおける具体的な効果は、「業務効率化」や「業務時間の短縮」など

Q.どのような効果があったか教えてください

DXに「取り組んでいる」と回答した事業所へ、導入効果に関する質問したところ、各ツールにおける具体的な効果としては、以下のように「業務効率化」「業務時間の短縮」「効率化・データ化で業務が楽になった」などの回答が多く見られました。

DX導入による効果

今後、人事/採用ツールを導入する予定が「ある」は33.3%

Q.DXの取り組みとして、今後人事/採用系ツールを導入する予定はありますか?

「取り組んでいないが、今後取り組む予定」と回答した事業所には、人事/採用系ツールの導入予定について質問しました(n=36)。
「ない(=導入予定がない)」は、66.7%。「ある(=導入予定がある)」と回答した事業所を大きく上回る結果となっています。

グラフ(Q.DXの取り組みとして、今後人事/採用系ツールを導入する予定はありますか?)

また、「ある(=導入を予定している)」と回答した事業所へ、導入予定ツールについて質問したところ、「適性検査」や「勤怠管理(シフト管理、タイムカード」)、「人事評価」などの回答がありました。

今後も取り組む予定のない事業所のうち、71.2%がDXに「興味がない」

Q.DXの取り組みに興味がありますか?

DXに「取り組んでおらず、今後も予定はない」と回答した事業所には、DXの取り組みに興味があるかどうかについて質問しています(n=118)。
興味が「ある」と回答した事業所は、28.8%に留まりました。

グラフ(Q.DXの取り組みに興味がありますか?)

また事業所全体では、「取り組み予定がない」かつ「興味がない」事業所が48.8%を占め、中小企業においてDXが停滞している現状を示す結果となっています。

過半数が「給与のデジタル払い」の内容を知っている

Q.2023年4月から解禁される「給与のデジタル払い」の内容を知っていますか?

2023年4月から解禁される「給与のデジタル払い」の内容を知っているかどうかについて質問したところ(n=172)、52.9%の事業所が「はい(=知っている)」と回答しました。

グラフ(Q.2023年4月から解禁される「給与のデジタル払い」の内容を知っていますか?)

DXという言葉を「聞いたことがある」事業所は50%を下回りましたが、DXの一環で解禁された制度の内容については過半数が「知っている」と回答。これは興味深い点といえます。
制度化によって労働基準法が改正されたため、導入の有無に関わらず、その情報に触れたり検討したりする機会が多かったことが要因としてあるのかもしれません。

給与のデジタル払いは、83.1%が「利用したくない」

Q.「給与のデジタル払い」を利用したいですか?

「給与のデジタル払い」の内容を説明したうえで、利用の意向について質問したところ(n=172)、「利用したい」事業所は16.9%。大半の事業所が「利用したくない」と考えていることが明らかになりました。

グラフ(Q10.「給与のデジタル払い」を利用したいですか?)

「利用したい」または「利用したくない」理由には、以下のような回答がありました。

「給与のデジタル払い」を利用したい理由

  • 楽そう、簡単だから
  • 手数料が少ない、コストの削減
  • 支払いの利便性が良い、都合の良いタイミングで処理できる など

「給与のデジタル払い」を利用したくない理由

  • よく分からない、詳しく理解できていない
  • セキュリティ面が不安、信用できない
  • 現在の支払い方法で支障がない、従業員が望んでいない
  • 事務作業が増える
  • 従業員への周知が難しい など

DXの課題は、「人材がいない」や「始め方が分からない」など

Q.DXの取り組みには、どんな課題がありますか?(複数回答)

DXを進めるうえでの課題についての質問では(n=157)、「DXやITの知識がある人材がいない」がもっとも多く、僅差で「何から始めてよいか分からない」「DXに取り組んでいく方針がない」が続きました。

グラフ(Q1.DXの取り組みには、どんな課題がありますか?)

予算と効果に関する課題以上に、DXの進め方や人材確保の面で課題を抱える事業所が多いことが分かります。

DXの取り組みに対する考えは、「DXがよく分からない」「余力がない」など

Q.DXの取り組みに関してご意見があればお聞かせください(自由回答)

DXの取り組みに関する考えを聞いたところ、22件の回答を得ることができました。
ここではその一部を紹介します(可読性を高めるため、文章の一部を調整しています)。
※カッコ内は、業種/従業員規模/所在地

  • 言葉の定義は分かるが、実態としてどこまでが、何がDXになるのかよく分からない(人材/5~9名/東京都)
  • 内部の仕組みを変えることに対する予算取りが厳しい(建築・不動産/100~199名/東京都)
  • 自社だけの問題ではないので難しい(介護・福祉/10~19名/大阪府)
  • 業務が忙しく、新しいことに取り組む余力がない(清掃/300~499名/青森県)
  • DX自体が当社に合っていると思わない(その他専門・技術サービス/5~9名/三重県)

まとめ

今回の調査では、中小企業におけるDXの取り組み状況や給与のデジタル払いについてアンケートを実施しました。
その結果、DXに取り組んでいる事業所は、わずか10.5%に留まりました。
「取り組んでおらず、現時点では取り組む予定もない」事業所が過半数を占め、中小企業におけるDXの停滞が鮮明になっています。

一方、DXの認知度については、前回調査(2021年10月)から多少の変化がみられました。
前回は、「DXという言葉を聞いたことがある」かつ「意味を知っている」事業所は、25.9%でした。今回は28.5%となっており、わずかではありますが上昇しています。
またDXの取り組みとして人事/採用系ツールを導入した事業所は、生産性向上やコスト削減を実現しており、ひとつでも取り組みを始めることがいかに重要であるかを示しています。

社会が急速に変化する中、DXは中小企業にこそ必要な取り組みです。
しかしながら、多くの中小企業はDX人材の不足や取り組み方が分からないなどの課題を抱えています。
中小企業のDXを加速させるためには、取り組みを始めるためのより具体的なサポートや働きかけが必要なのではないでしょうか。
株式会社ネットオンは、『採用係長』の提供を通じて採用業務のDXをサポートし、中小企業の変革に向けた取り組みを後押ししてまいります。

調査概要

調査名 人事/採用DXに関するアンケート調査
調査対象 『採用係長』利用事業所の人事・労務担当者様
有効回答数 172
調査期間 2023年2月6日(月)~2月16日(木)
調査方法 インターネット調査
調査結果の注意点 %を表示する際に小数点第2位で四捨五入しているため、単一回答の場合は100%、複数回答の場合は合計値に一致しない場合があります。

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この記事を書いた人
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馬嶋 亜衣子(samusillee)

採用・キャリア関連、医療分野を中心に執筆を行うフリーランスライター。 各種メディアの取材ライティングやSEOライティング、採用HPのライティングなどに携わっています。

監修者
監修者
辻 惠次郎

ネットオン創業期に入社後、現在は取締役CTOとしてマーケティングからプロダクトまでを統括。
通算約200社のデジタルマーケティングコンサルタントを経験。特に難しいとされる、飲食や介護の正社員の応募単価を5万円台から1万円台に下げる実績を作り出した。
Indeedはもちろん、インターネット広告やDSP広告を組み合わせた効率的な集客や、Google Analytics等の解析ツールを利用した効果分析、サイト改善を強みとしている。

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