「DXを知らない」は74.1%。中小企業のDX推進には認知向上が不可欠|中小企業におけるDX実態調査

2018年、経済産業省から発表されたDXレポートでは、2025年の壁(2025年に大規模な経済損失が生じる可能性)が提起されました。それ以来、国内ではさまざまな企業がDX(デジタルトランスフォーメーション)を推進し始めています。

DXとは、企業価値や競争力の向上を実現するために、テクノロジーによって従来のビジネスモデルや働き方を変革することです。コロナ禍で加速するデジタル化への対応や、人手不足の解消は中小企業の喫緊の課題。DXは中小企業にこそ必要な取り組みといっても過言ではありません。

そこで株式会社ネットオンでは、クラウド型採用サイト作成ツール『採用係長』の登録ユーザーである中小企業の採用担当者を対象に、DXに関する実態調査を実施しました。

中小企業におけるDXの認知度や取り組み内容について、アンケート結果をもとに紹介します。

68%の事業所が”DX”という言葉を「聞いたことがない」

“DX”という言葉を聞いたことがあるかどうかについて質問したところ(n=294)、「いいえ(=聞いたことがない)」と回答した事業所は、68.0%。中小企業においては、DXの知名度が低いことが明らかになりました。

Q1. ”DX”という言葉を聞いたことがありますか?

円グラフ(Q1. ”DX”という言葉を聞いたことがありますか?)

DXの知名度を従業員規模別にみた場合では、以下のような違いが見られました(ここでは、回答が20事業所以上あった事業規模のみを表示しています)。

従業員規模別DX認知度

従業員規模が大きくなるにつれて、DXの知名度も高くなっていることが分かりますね。50名以上の企業では「聞いたことがある」が50%を超えており、「聞いたことがない」事業所を上回っています。

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「聞いたことがある」事業所の80.9%は、”DX”の意味も知っている

Q2.DXの意味をご存知でしたか?

円グラフ(Q2.DXの意味をご存知でしたか?)
“DX”という言葉を聞いたことがある事業所へ、DXの意味について質問したところ(n=94)、80.9%が「はい(=知っている)」と回答。「聞いたことがある」事業所においては、非常に高い割合で認知されていることが分かります。

一方で、DXを知らない(「聞いたことがない」+「意味を知らない」)事業所は全体の74.1%を占めており、認知向上の必要性を感じる結果となりました。

ここでは業種別の認知度も確認しておきましょう(回答が10事業所以上あった業種のみを表示)。

業種別DX認知度

『採用係長』利用事業所における認知度は製造業がもっとも高く、52.6%でした。50%を超えたのは製造業と人材業の2業種のみで、その他の業種は40%未満となっています。

DXの取り組みが進んでいる事業所は、10%未満

Q3.自社において、DXへの取り組みは進んでいると感じられますか?

円グラフ(Q3.自社において、DXへの取り組みは進んでいると感じられますか?)
続いて、自社のDXの取り組みについて進捗状況を尋ねたところ(n=94)、「進んでいる」事業所は、わずか9.6%に留まりました。これは全体の3.1%です。
DXを知っているケースでも取り組みには至っていない、中小企業の現実が浮き彫りになっています。DXの認知度の低さとともに、取り組みが進んでいない点も中小企業の課題として浮かび上がってきました。

DXの取り組みは、「ITツールの導入」や「IT人材の活用」など

Q4.DXへの取り組みとして具体的に実行していること、またはこれから実行しようとしている事があれば教えてください(自由回答)

自社で実施中の取り組み、または実施予定の取り組みについては、「書類のデジタル化」「ITツールの導入」「DX推進のためのIT人材の採用・活用」をはじめ、41の回答が得られました。業務の効率化や自動化による生産性の向上を目指し、DXを進める様子がうかがえます。
<自由回答・一部抜粋>
※カッコ内は、業種/従業員規模/所在地

・アンケート集計のデジタル化(レジャー・エンタメ/10名未満/福岡県)
・WEB面接、電子契約書(運輸・物流/10名未満/熊本県)
・ネット予約、レセコン、デジタルレントゲンの導入(医療/10名未満/新潟県)
・給与明細のデジタル化、勤怠管理システムの導入、コールシステムのクラウド化、基幹システムの刷新(介護・福祉/30~49名以下/東京都)
・研修会、会議等へのオンライン参加(医療/100~299名以下/宮城県)
・給与明細のデジタル化(介護・福祉/100~299名以下/兵庫県 他)
・アルコールチェッカーと連動した出退勤管理システム(その他/30~49名以下/群馬県)
・VPN環境、リモートワーク、スケジュールアプリ、共有ストレージ、電子印鑑、ペーパーレス保管(建築・建設/10~29名以下/大阪府)
・登降園システムの導入(教育/10~29名以下/東京都)

DX導入の障壁は、「IT人材がいない」「コスト」「現場の理解」など

DXを実施するうえでの課題には、「DXに対応できる人材の確保」「コスト」「スタッフのITリテラシーが低い」などが挙げられました。
DXの必要性を感じていても、担当できる人材がいないケースや現場の理解を得ることが難しいなど、企業ごとにさまざまな課題があることが分かります。

Q5.DXへの取り組みで障壁となったこと、または障壁と感じている事があれば教えてください(自由回答)

<自由回答・一部抜粋>
※カッコ内は、業種/従業員規模/所在地

・スタッフが新しい取り組みに消極的(医療/10名未満/新潟県)
・PC操作とデジタル導入の意義への理解度を社内で一定レベルまで引き上げること
・経費の問題(製造/10~29名以下/大阪府)
・紙ベースでの対応を過去にしていたので、その移行に時間がかかっている(旅行・観光/50~99名以下/長野県)
・社員のITリテラシーの低さ、新しい事に取り組むことへの抵抗感(建築・建設/10~29名以下/大阪府)
・システム知識、エンジニア不足(その他/10~29名以下/東京都)

DXを知らない事業所のうち、40%以上はDXに「興味がある」

Q6.DXについて興味はありますか?

円グラフ(Q6.DXについて興味はありますか?)

DXを知らない企業へDXの意味を説明し、改めてDXへの興味を確認したところ(n=218)、「興味がある」は43.1%でした。中小企業におけるDXへの関心は、決して低くないといえるでしょう。この結果からも、中小企業のDXが遅れている背景に認知不足があることが推察できます。

また業種別に興味の有無を確認したところ、以下のような結果となりました(回答が10事業所以上あった業種のみを表示)。

業種別DXへの興味

「興味がある」事業所の割合がもっとも多かったのは、医療業でした。さらに2位の飲食業も50%を超えています。Q1(”DX”という言葉を聞いたことがありますか?)の結果を振り返ると、医療業におけるDXの認知度は31.8%。飲食業にいたっては、10.8%でした。
また「興味がない」の割合が高い、介護・福祉業、建築・建設業、運輸・物流業はいずれも人手不足が深刻な業種です。DXの認知向上はもちろん、DXに対する正しい理解の必要性も感じる結果といえるのではないでしょうか。

DXの取り組みは、「当面の間は進まないと思う」が半数以上

Q7.今後自社においてDXが進むと思われますか?

円グラフ(Q7.今後自社においてDXが進むと思われますか?)
DXを知らない事業所へ、今後DXが進むと思うかどうか尋ねたところ(n=218)、「当面の間は進まないと思う」が62.8%。実効性については、DXへの関心の高さに反する結果となりました。
一方で対応スピードは異なるものの、37.2%はDXが進むことを予想しています。

進まないと思う理由は、「必要性がない」「予算がない」など

Q7の理由には、147の回答が得られました。

Q8.Q7の理由を簡単に教えてください

<自由回答・一部抜粋>
※カッコ内は、業種/従業員規模/所在地

半年以内に進むと思う理由

・コロナの影響により、デジタル化が大幅に進行すると思う(建築・建設/10名未満/長崎県)
・デジタル化することで管理や効率が上がると思う(建築・建設/10名未満/北海道)
・短期決戦でないと損失に向かうから(清掃/10名未満/東京都)

1年以内に進むと思う理由

・デジタル化しないと時代に取り残されると思う(教育/10名未満/埼玉県)
・まだ未知だが、必要性は感じるから(理美容・エステ/10名未満/北海道)
・できれば、100%テレワークにしたいと考えているから(その他/10名未満/三重県)

3年以内に進むと思う理由

・デジタル化できるところはデジタル化すべきだとは思っているが、技術職や接客業は中々難しいとは思う(理美容・エステ/10名未満/大阪府)
・現在デジタル化が進んでいるが、もう少し時間がかかりそう(その他/10名未満/愛知県)

当面進まないと思う理由

・DX自体が分からない(介護・福祉/10名未満/栃木県)
・デジタル化でなくても対応できるほどの規模だから(その他/10名未満/大阪府)
・現状で特に不便さを感じていない(医療/10名未満/千葉県)
・システムがアナログでデジタル化を進めるための予算がない(レジャー・エンタメ/10~29名以下/熊本県)

まとめ

今回の調査では、中小企業におけるDXの認知度や取り組みについてアンケートを実施しました。その結果、DXを知っている(「聞いたことがある」+「意味を知っている」)事業所は、26.9%。そのうち「取り組みが進んでいると思う」事業所は、わずか9.6%です。中小企業におけるDXの認知度の低さが浮き彫りになりました。
一方でDXへの関心は高く、認知が進めば中小企業においてもDXが進むことが期待できるかもしれません。

また自社での取り組みに関する回答からは、DXには大規模なITツールが必要だと考える事業所や、自社の業務には関係がないと思っている担当者が少なくないことがみてとれます。こうした先入観も中小企業のDXを妨げる要因のひとつになっているようです。
DXの目的は企業価値や競争力の向上であり、デジタル化はその手段に過ぎません。まずはDXを正しく理解すること。そのうえで、中小企業の負担にならないITツールやデジタル化手法を導入してスモールスタートし、そこで成功体験を得ることがDXの加速につながるのではないでしょうか。

『採用係長』の提供を通じて企業の採用業務をDXする株式会社ネットオンでは、DXの第一歩を踏み出す中小企業をサポートし、採用課題の解決に貢献してまいります。

調査概要

調査名 サービス業における営業時間と採用意欲に関する実態調査
調査対象 『採用係長』利用事業所の人事・労務担当者様
有効回答数 294
調査期間 2021年10月15日(金)~10月21日(木)
調査方法 インターネット調査
調査結果の注意点 %を表示する際に小数点第2位で四捨五入しているため、単一回答の場合は100%、複数回答の場合は合計値に一致しない場合があります。

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この記事を書いた人
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馬嶋 亜衣子(samusillee)

採用・キャリア関連、医療分野を中心に執筆を行うフリーランスライター。 各種メディアの取材ライティングやSEOライティング、採用HPのライティングなどに携わっています。

監修者
監修者
辻 惠次郎

ネットオン創業期に入社後、現在は取締役CTOとしてマーケティングからプロダクトまでを統括。
通算約200社のデジタルマーケティングコンサルタントを経験。特に難しいとされる、飲食や介護の正社員の応募単価を5万円台から1万円台に下げる実績を作り出した。
Indeedはもちろん、インターネット広告やDSP広告を組み合わせた効率的な集客や、Google Analytics等の解析ツールを利用した効果分析、サイト改善を強みとしている。

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