2022年冬季賞与、中小企業の61.5%が「支給する」と回答。増額理由の最多は「従業員の意欲向上のため」

エネルギー価格の高騰や円安を背景とした経営コストの上昇は未だにピークが見えず、先行き不透明な状況が続いています。コロナ禍からの回復がみられる一方で、コストの適切な価格転嫁が進まず、苦境にある中小企業は少なくありません。
そうした中、多くの一般企業はまもなく冬季賞与の支給時期を迎えます。今冬の賞与支給について、中小企業はどのように計画しているのでしょうか。

株式会社ネットオンでは、2022年冬季賞与について、採用業務クラウド「採用係長」の登録ユーザーである中小企業の採用担当者を対象にアンケート調査を実施しました。

アンケート回答者属性

今回、アンケートにご回答いただいた事業所様の属性は以下の通りです。
従業員規模が20名以下の事業者様を中心に、「飲食」、「建築・不動産」、「運輸」、「工場」など様々な業種の事業者様にご回答いただきました。また、地域につきましても、都市部を中心に全国的に散らばり、あらゆる地域の事業者様にご回答いただきました。

業種

従業員規模

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61.5%の事業所が2022年冬季賞与を「支給する」と回答

Q1.2022年の冬季賞与は支給しますか?

はじめに、2022年の冬季賞与の支給の有無について質問しました(n=239)。

グラフ(Q1.2022年の冬季賞与は支給しますか?)

賞与を「支給する」と回答した事業所は、61.5%。「支給しない」事業所が4割に迫ることが明らかになりました。中小企業の厳しい状況が浮き彫りになっています。
さらに賞与支給の有無を業種別に確認したところ、業種ごとに以下のような違いが見られました(ここではアンケート対象の29業種のうち、5事業所以上から回答があった12業種をグラフ化しています)。

グラフ(業種別賞与支給の有無) ※()内の数字は回答数を表示

「工場・製造」は、90%以上が「支給する」と回答しています。 一方、「建築・不動産」「人材」「飲食」「IT」の各業種では「支給する」が50%を下回り、業種ごとに明暗がはっきりと分かれる結果となりました。

支給額は、前年冬季と比べて「変わらない」が63.9%

Q2. 前年の冬季賞与支給額と比較して、今年の支給額に変動はありますか?

続いて、「支給する」と回答した事業所(n=147)へ、前年の賞与支給額からの変動について質問しました。

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結果は「支給額は変わらない」がもっとも多く、63.9%が回答。「増額予定」は25.2%、「減額予定」は10.9%です。
賞与を支給する事業所においては、「変わらない」または「増額予定」の事業所が多数を占める結果となっています。
賞与額の変化について、もう少し詳しくみてみましょう。 以下は、賞与額の変化を業種別に比較したグラフです(ここでは、支給する25業種のうち、5事業所以上から回答があった9業種をグラフ化しています)。

グラフ(業種別賞与支給額の変化/昨冬比) ※()内の数字は回答数を表示

増額予定の割合がもっとも多かったのは、「工場・製造」です。
今回のアンケートでは、唯一「変わらない」を「増額予定」が上回りました。 一方、「介護・福祉」では、「減額予定」が「増額予定」を大きく上回っています。
こうした変動とは対照的に、「運輸」では大半の事業所が「変わらない」と回答。「電気・ガス・石油・水道」に至っては、「変わらない」事業所が100%です。

増額理由の1位は、「従業員の意欲向上のため」

Q3.増額理由として当てはまるものを選択してください(複数回答)

グラフ(Q3.増額理由として当てはまるものを選択してください(複数回答))

Q2で「増額予定」と回答した事業所(n=37)へ、理由について質問したところ、「従業員の意欲向上のため」がもっとも多く、78.4%が回答しました。
次に多かったのは「業績が伸びた(回復した)ため」で、48.6%です。昨今の不安定な社会情勢の中でも、増額予定の事業所においてはその半数近くが、業績が伸びている(回復している)ことが分かります。
一方でこの結果は、業績に関わらず増額を予定している事業所も同程度であると読み取ることができるでしょう。

減額理由は、「業績の向上(回復)が見込まれていないため」が最多

Q4.減額理由として当てはまるものを選択してください(複数回答)

Q2で「減額予定」と回答した事業所(n=16)に対しても、その理由について質問しました。

グラフ(Q3.減額理由として当てはまるものを選択してください(複数回答))

もっとも多かったのは「業績の向上(回復)が見込まれていないため」。2位および3位には、「物価高騰や円安の影響のため」「新型コロナウイルスの影響のため」が続いており、中小企業の厳しい状況を表しています。

約6割が基本給の「1カ月~2.5カ月未満」で支給を予定

Q5.冬季賞与の支給額について教えてください

グラフ(冬季賞与の支給額について教えてください)

賞与支給額(基本給換算〇カ月)についての質問では(n=120)、「1カ月以上1.5カ月未満」がもっとも多い結果となっています。
賞与を「支給する」事業所の61.6%が1カ月以上2.5カ月未満の支給を予定。2.5カ月以上の支給(「2.5カ月以上3カ月未満」+「3カ月以上」)は、8.4%に留まりました。
また「その他」の一部には、支給額での回答が10件含まれており、内訳は、10万円未満が5件(50.0%)、10万円以上20万円未満が3件(30%)、20万円以上が2件(20%)でした。
支給予定(変動なし/増額予定/減額予定)別に、それぞれの支給額についても確認しておきましょう。

グラフ(2022年冬季賞与の支給額/支給予定別)

増額予定の事業所は、今回の賞与は「1.5カ月以上2カ月未満」がもっとも多く、減額予定の事業所では「1カ月未満」が最多であることが分かりました。

賞与を支給する事業所は、「原資の確保」や「査定の仕組み」が課題

Q6. 従業員への賞与支給についての課題やご意見があればご記入ください(自由回答)

賞与を「支給する」事業所へ(n=147)、賞与支給についての課題や意見を求めたところ、業績に関する課題や賞与査定に関わる評価制度の問題についての回答が多く集まりました。 ここでは40件の回答の中から、一部を抜粋して紹介します(可読性を高めるため、文言を調整済み)。

賞与査定に関する課題
※カッコ内は、業種/従業員規模/所在地

・賞与の査定方法に課題を感じている(医療/10~19名/東京都)
・評価基準を再考しなければならない(建築・不動産/5~9名/大阪府)
・客観的な評価方法の確立が必要である(工場・製造/200~299名/岐阜県)
・チームで動く仕事のため、個人の頑張りを評価しづらい(IT/5~9名/東京都)
・実力主義型の評価が進まない(工場・製造/30~49名/大阪府)

業績に関する課題

・原資の確保が容易ではない(工場・製造/30~49名/岐阜県)
・業績が上がらないため賞与の支給が困難(その他専門・技術サービス/20~29名/福岡県)
・利益率が低下しているため財源の確保が困難である(人材/200~299名/愛知県)
・増額はしたいが、売上が上がらない(介護・福祉/30~49名/兵庫県)

その他

・他同業者に比べて金額が低いため、賞与支給後に退職者ができないか心配(運輸/30~49名/三重県)
・スタッフのやる気を増やしたいからこそ支給する(その他専門・技術サービス/5~9名/神奈川県)
・売上が伸びない中での賞与支給は、今後の期待が大部分を占めている(飲食/10~19名/千葉県)
・利益構造を見直し、増額を目指す(IT/5~9名/東京都)

 

支給しない理由は「寸志や手当で還元」、できない理由は「利益が少ない」など

Q7.従業員への賞与支給についての課題やご意見があればご記入ください(自由回答)

Q1で賞与を「支給しない」と回答した事業所(n=92)にも、同じく賞与支給に対する課題や意見を求めたところ、支給できない事情や支給しない理由など30件の回答が得られました。 ここでは一部を抜粋して紹介します(可読性を高めるため、文言を調整済み)。

賞与支給に関する課題
※カッコ内は、業種/従業員規模/所在地

・委託契約の場合でも、寸志などを支給すべきか迷っている(その他/20~29名/兵庫県)
・人員不足への対応に追われ、利益を出すことの優先順位が下がっている(飲食/100~199名/埼玉県)
・利益が少なく、賞与を支給できない(運輸/~4名/岐阜県)
・職員の定着と売上確保の両方が課題(医療/~4名/香川県)
・値上げがうまくいっていない(工場・製造/10~19名/神奈川県)
・従業員のモチベーション担保が難しい(人材/20~29名/東京都)

賞与を支給しない理由

・業務委託のため支給なし(運輸/10~19名/埼玉県) ・スタッフのほとんどがアルバイトのため支給していない(飲食/5~9名/山形県)
・都度寸志を支給しているため冬季の賞与はない(建築・不動産/~4名/埼玉県)
・賞与は支給せず、成果型で随時インセンティブに反映している(冠婚葬祭/~4名/新潟県)
・手当を支給し、随時還元している(人材/50~99名/新潟県)

まとめ

今回の調査では、2022年冬季賞与の支給についてアンケート調査を実施しました。その結果、61.5%の事業所が賞与を支給することが分かりました。支給額の前年比較では、「変わらない」がもっとも多く、63.7%を占めています。
「増額予定」は支給する事業所の25.3%で、理由としてもっとも多かったのは「従業員の意欲向上のため」。2位には「業績が伸びた(回復した)ため」が続きました。賞与を支給する事業所の割合や増額理由からは、コロナ禍からの一定の回復が見て取れるでしょう。

ただし、業種別では、90%以上の事業所が賞与を支給する「工場・運輸」に対し、「建築・不動産」「人材」「飲食」「IT」では50%を下回るなど、業種間の格差が浮き彫りになりました。 また賞与に関する自由回答では、「売上が上がらない」「財源の確保が困難」などの課題が散見され、支給する事業所・支給しない事業所ともに、円安の進行やエネルギー価格の高騰による値上げ局面で苦慮する様子がうかがえる結果にもなっています。

そうした中で、増額する事業所の78.4%が「従業員の意欲向上」を理由としている点からは、賞与が従業員のモチベーションに与える影響について、多くの中小企業が意識しており、人材確保や定着の観点から賞与の支給を重視していることが分かります。 昨今の中小企業を取り巻く状況を踏まえると、支給額が「変わらない」と回答した事業所においても、業績に関わらず賞与額の維持に努力を払う事業所が少なからずあると推察できるのではないでしょうか。

コスト増による収益圧迫に苦しむ中小企業にとっては、引き続き厳しい状況が続くことが予想されますが、人材の確保・定着は企業の存続に欠かすことのできない要素です。採用業務クラウド『採用係長』を運営する株式会社ネットオンは、中小企業の変革に寄り添い、人材確保の側面から中小企業の成長に貢献してまいります。

調査名 冬季賞与の支給に関するアンケート調査
調査対象 『採用係長』利用事業所の人事・労務担当者様
有効回答数 239
調査期間 2022年11月1日(火)~11月14日(月)
調査方法 インターネット調査
調査結果の注意点 %を表示する際に小数点第2位で四捨五入しているため、単一回答の場合は100%、複数回答の場合は合計値に一致しない場合があります。

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馬嶋 亜衣子(samusillee)

採用・キャリア関連、医療分野を中心に執筆を行うフリーランスライター。 各種メディアの取材ライティングやSEOライティング、採用HPのライティングなどに携わっています。

監修者
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辻 惠次郎

ネットオン創業期に入社後、現在は取締役CTOとしてマーケティングからプロダクトまでを統括。
通算約200社のデジタルマーケティングコンサルタントを経験。特に難しいとされる、飲食や介護の正社員の応募単価を5万円台から1万円台に下げる実績を作り出した。
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