2025年に入り、トランプ政権の相互関税政策や為替相場の乱高下など、日本経済は先行き不透明な状況が続いています。さまざまな影響が懸念される中、多くの企業が夏季賞与の支給時期を迎えました。
人手不足や物価高騰、政府による賃上げ要請など、多くの課題を抱える中小企業は、2025年の夏季賞与についてどのように計画しているのでしょうか。
株式会社ネットオンでは、採用マーケティングツール「採用係長」の登録ユーザーである中小企業の採用担当者を対象に夏季賞与に関するアンケート調査を実施しました。
目次
アンケート回答者属性
今回、アンケートにご回答いただいた事業所様の属性は以下の通りです。
従業員規模20名以下の事業所様を中心に「人材」、「介護・福祉」、「医療」、「工場・製造」など様々な事業所様にご回答いただきました。
また、地域につきましても、都市部を中心に全国的に散らばり、あらゆる地域の事業者様にご回答いただきました。
業種
従業員規模
都道府県
62.2%が賞与を「支給する」
はじめに、2025年の夏季賞与の支給予定について質問したところ、62.2%の事業所が「支給する」と回答しました(n=45)。
2024年5月に実施した前回調査(n=242)では、「支給する」が47.9%でした。有効回答数が大きく異なるため単純に比較することはできませんが、今回の調査では夏季賞与を支給する事業所が過半数を占める結果となっています。
支給額は、昨年と「変わらない」が64.3%
Q1で「支給する」と回答した事業所へ、前年からの変動について質問しました(n=28)。もっとも多かったのは「変わらない」で、64.3%です。「増額予定」の事業所は、32.1%でした。
増額理由1位は、「従業員の意欲向上のため」
Q2で「増額予定」と回答した事業所へ、理由について質問しました(n=9)。
増額理由の1位は「従業員の意欲向上のため」で、前回調査と同様の結果です。
一方、前回2位だった「業績が好調なため」は、今回の調査では4位へ。さらに前回4位だった「物価高騰による生活費増加に対応するため」が2位へと、順位の入れ替わりがみられました。
増額する金額は「1万円~5万円未満」が最多
続いて増額する金額について質問したところ(n=9)、もっとも多かったのは「1万円~5万円未満」でした。
前回調査においても「1万円~5万円未満」が約半数を占めており(48.8%)、中小企業における夏季賞与の増額幅は、引き続き控えめな水準に留まっていることが分かります。
基本給換算で「0.5カ月~1カ月未満」の増額が最多
昨年からの変動について、支給月数(基本給換算〇カ月分)についても質問しました(n=9)。
もっとも多かったのは「0.5カ月~1カ月未満」です。前回調査では「2カ月以上」の増額もありましたが、今回は1.5カ月を超える増額はありませんでした。
なお、昨年からの変動について「減額予定」と回答した事業所は、1事業所のみでした。
減額理由は「業績の向上が見込まれていないため」。昨年よりも「5万円~10万円」の減額で、基本給換算では「0.5カ月~1カ月未満」の減額となっています。
賞与を支給する事業所の約7割が「1.5カ月未満」の支給を予定
Q1で夏季賞与を「支給する」と回答した事業所へ(n=28)、支給額(基本給換算)について質問したところ、もっとも多かったのは「1カ月未満」でした。
賞与を支給する事業所の67.9%が1.5カ月未満(「1カ月未満」または「1~1.5カ月未満」)での支給を予定しています。
前回調査では、「1~1.5カ月未満」がもっとも多く、2.5カ月以上を支給する事業所もありました。昨年と比べて賞与を支給する事業所の割合は増加したものの、支給額については昨年の水準を下回る結果となっています。
アメリカの関税政策は「影響がない」が68.9%
すべての事業所へ、アメリカ政府による相互関税政策の影響について質問しました(n=45)。
「ほとんど影響がない」「全く影響がない」を合わせて、全体の約7割が「影響がない」と回答しています。
一方で、「現時点では不明」が20.0%、「多少影響がある」が11.1%です。約3割の事業所は、関税政策による影響が懸念される状況であることも明らかになっています。
具体的な影響については、「賞与支給水準の引き下げ(2事業所)」、「従業員の賞与支給見送り(1事業所)」、「その他(3事業所)」の回答がありました。
賞与支給に関する意見・課題は、「努力しているが厳しい」「今のペースで最低賃金が上がると賞与が出せなくなる」など
すべての事業所へ賞与支給についての課題や意見を聞いたところ、7件の回答を得ることができました(自由回答/n=45)。ここではその中から一部を抜粋して紹介します(可読性を高めるため、文言を調整済み)。
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- 中小企業においては、メディアが報じるほど賃金アップができていない企業の方が多いと感じる(人材/50~99名/広島県)
- 努力しても赤字が続いており、賞与の支給は厳しい(医療/10~19名/東京都)
- 賞与は最低賃金の対象に含まれないため、このペースで最低賃金が高くなると賞与をなくして給与に含めるようになるかもしれない。補助金も、給与アップが前提のものが多くなってきている感がある(医療/5~9名/栃木県)
- 業績により支給としてはいるが、実際に賞与を出せるかは不透明。地方の中小企業は賞与がでないことも多い(人材/50~99名/宮崎県)
※カッコ内は、業種/従業員規模/所在地
まとめ
今回の調査では、2025年の夏季賞与についてアンケートを実施しました。その結果、62.2%の事業所が「支給する」と回答。支給額(基本給換算)は、「1カ月未満」が最多となりました。
昨年からの変動は「変わらない」が64.3%、「増額予定」が32.1%です。その割合については前回調査から大きな変化はみられないものの、増額理由では「物価高騰による生活費増加に対応するため(2位)」と「業績が好調なため(4位)」の順位が逆転しています。また自由回答では、賃上げや賞与の増額が続く大手企業との格差がうかがえる回答もありました。
混乱が続くアメリカの相互関税政策については、約7割の事業所が「影響がない」と回答しましたが、昨今の中東情勢の緊迫化により先行き不透明な状況は今後も続くとみられます。そうした中での賞与の原資確保は、中小企業にとって大きな負担となるでしょう。
一方で、事業継続に不可欠な人材の確保・定着には、賞与が重要な要素であることも事実です。生産性向上や適切な価格転嫁、各種支援策の積極的な活用など、中小企業にはより一層の工夫が求められています。
株式会社ネットオンは、今後も継続的な調査を通じて中小企業の動向を見守り、人材確保の課題解決に寄り添うサービスの提供に努めてまいります。
調査名 | 2025年夏季賞与に関するアンケート調査 |
調査対象 | 『採用係長』利用事業所の人事・労務担当者様 |
有効回答数 | 45 |
調査期間 | 2025年5月15日(木)~6月15日(日) |
調査方法 | インターネット調査 |
調査結果の注意点 | %を表示する際に小数点第2位で四捨五入しているため、単一回答の場合は100%、複数回答の場合は合計値に一致しない場合があります。 |
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