採用戦略で使える8つのフレームワークとは? 活用例を課題別に解説

採用戦略で使える8つのフレームワークとは? 活用例を課題別に解説

採用難の昨今、「求人応募が集まらなくなった」「採用できても早期退職してしまう」といった悩みを慢性的に抱える企業が増えてきています。

その課題の要因は、予算でもリソースでもなく、実は「採用戦略」にあるのかもしれません。

そこで今回は、これから採用戦略を本格的に練っていきたい企業向けに、すぐに使える8つのフレームワークを紹介します。

どのフレームワークをどんな場面で使えばいいのか、例やケーススタディを用いて分かりやすく解説しますので、フレームワーク活用が初めての方も、ぜひ参考にして実践でご活用ください。

採用戦略にフレームワークを取り入れるべき4つの理由

なぜいま、採用活動にわざわざビジネスフレームワークを取り入れる必要があるのでしょうか。

それは、働き手の減少や採用の“売り手市場”化により、「欠員が出たから募集する」「去年と同じ媒体に出す」という対症療法的な動きでは、もう求職者に選んでもらえなくなってきてしまっているからです。

フレームワークを用いて論理的に戦略を組み立てることによって、主に以下4つの効果が期待できます。
戦略的な攻めの採用で人材不足を解消し、組織や会社の成長につなげていきましょう。

①自社の「勝ち筋」を見つけ、採用数を最大化できる

採用戦略にフレームワークを使う最大の利点は、客観的な視点を持てることです。

自社の強みと、競合他社の動き、求職者のニーズなどを整理すれば、「どの層に」「何を」「どうやって」アピールすれば勝てるのかという「勝ち筋」が見えてくるでしょう。

これにより、効率的に採用数を最大化できる可能性があります。

②ミスマッチを防止し、定着率を高められる

「とにかく人が来ればいい」という戦略のない採用は、入社後のミスマッチを生み、離職につながりやすくなってしまいます。

採用戦略にフレームワークを用い、ペルソナを詳細に定義しておけば、自社のカルチャーに合う人材が明確になるほか、面接官ごとのブレも最小限に抑えられるでしょう。

③採用活動を効率化し、費用対効果を高められる

採用戦略があれば、「今やるべきこと」と「やらなくていいこと」が明確になります。
フレームワークを使うことで、必要な採用媒体やアプローチ手法も論理的に導いていけるでしょう。

採用効率の高いチャネルに適切な予算を投下できれば、費用対効果を高められる可能性があります。

④社内への説明責任を果たし、評価や予算を適正化できる

採用は人事だけで完結するものではありません。
また、採用活動のための十分な予算がなければ、必要な施策を実行することもできません。

だからこそ、採用部門の社内評価を適正化して予算を獲得するためにも、フレームワークを用いて論理的に採用状況を経営層へ説明しましょう。

会社に採用の重要性を伝え、全社での協力体制を作っていくことが重要です。

一般的な採用戦略構築フロー

採用戦略は一般的に以下のフローで構築していきます。
しかし、これらを「なんとなく」進めてしまうと、抜け漏れが生じたり、担当者によって認識がバラバラになったりするもの。

適切にフレームワークを使うことで、考えるべき観点が明確になり、チーム内での認識統一もスムーズになるでしょう。

1. 体制構築 採用チームの編成、役割分担
2. 現状分析 過去の採用データ、競合状況、市場環境の把握
3. 計画策定 採用人数、ターゲット、スケジュールの決定
4. KPI設計 応募率、採用率、内定承諾率など測定指標の設定
5. 施策実行 求人作成、スカウト送信、面接など選考プロセスの実行
6. 振り返り 結果の検証と改善策の立案

採用戦略で使える8つのフレームワークと活用シーン

実際の採用戦略に役立つ8つの代表的なフレームワークを紹介します。
それぞれの特徴や活用すべきシーンを整理しながら見ていきましょう。

なお、今回はイメージが湧きやすいよう、以下の架空の企業「A社」をモデルケースとして、フレームワークごとの活用例を記載していきます。

自社に置き換えてシミュレーションしてみてください。

【A社のモデルケース】
業種: IT企業(SIer)
規模:社員数300名程度
採用課題:知名度不足で大手企業や有名ベンチャー企業に優秀なエンジニア人材を奪われている
目標: 即戦力エンジニアの中途採用

①TMP設計

TMP設計は、「Targeting」「Messaging」「Processing」の頭文字を取ったフレームワークです。

採用活動の土台となる「誰に・何を・どのように届けるか」を一貫して設計するために用います。

採用戦略を根本から見直したいときに最初に取り組むべきフレームワークとも言えるでしょう。

  • Targeting(ターゲティング)
    どんなスキルや志向性を持つ人物か
  • Messaging(メッセージング)
    そのターゲットに刺さる自社の魅力は何か
  • Processing(プロセシング)
    どの媒体・手法でアプローチし、どう選考するか

なお、ターゲットが定まっていないのにどの求人媒体を使うか決めようとすると、採用戦略全体にブレが生じてしまいます。

原則、T→M→Pの順序で設計していきましょう。

【A社の場合の活用例】
これまで漠然と「エンジニア経験者募集」と謳っていたところを、TMPで整理。

  • Targeting
    開発経験3年目前後。「今の環境では下流工程ばかりで成長できない」と悩む、技術向上意欲の高い若手エンジニア。
  • Messaging
    元請け案件100%。上流から実装まで一気通貫で携わり、”強いエンジニア”になれる環境。
  • Processing
    エンジニア特化型スカウト媒体を活用。まずカジュアル面談でキャリアの悩みに寄り添いつつ、A社の環境をアピール。納得感を持たせてから選考へ。

②ペルソナ分析

TMPの「Targeting」をさらに深く掘り下げるのがペルソナ分析です。
年齢、性別、居住地といったデモグラフィック情報だけでなく、価値観、悩み、休日の過ごし方、情報収集の方法まで詳細に設定し、「架空の人物像」を作り上げます。

これにより、求人原稿やスカウト文で伝えるべきメッセージが明確になり、現場と人事での「求める人材像」の統一にも役立ちます。

【A社の場合の活用例】
現場エンジニアへのヒアリングをもとに、以下のようなペルソナを設定。

氏名:佐藤 健太
年齢:25歳
居住地:東京都
趣味:ゲーム、アニメ
現職:二次請けのSIer企業
年収:400万円台
経験:Java開発経験あり
悩み:下流工程ばかりで成長実感が得られにくい
価値観:上流工程への挑戦機会を重視、年収よりもスキルアップを優先
転職活動のスタンス:転職サイト、エージェント、スカウトサービスに複数登録しているが、時間がないため積極的な活動はできていない。いい話があれば聞いてみたい。

③3C分析

3C分析は、「Customer(顧客)」「Competitor(競合)」「Company(自社)」の3つの視点から、現状置かれている環境を導き出すマーケティングの基本的なフレームワークです。

採用においては主に「求職者が求めていること」に対して、「競合他社にはない自社の強み」をどう提供するかを考えるために活用されます。

  • Customer(求職者)
    求職者の動向、志向性、市場規模
  • Competitor(採用競合)
    競合の採用条件、魅力、弱点
  • Company(自社)
    自社のリソース、強み、弱み、提供できる価値

【A社の場合の活用例】
最終面接まで進んだ候補者が大手SIerに流れてしまうケースが多発していたため、採用戦略を立て直すために、3C分析で現状を洗い出し。

  • Customer(エンジニア)
    エンジニア市場は超売り手の状況。年収アップのみならず、「成長できるか」を転職の軸に置く層も一定数存在。
  • Competitor(有名Webベンチャー)
    華やかで知名度が高く、採用市場においても人気だが、大規模ゆえに業務が細分化されており、担当範囲が狭い傾向がある。
  • Company(A社)
    知名度はないが、少人数チームで要件定義からリリースまで任せる文化がある。ベンチャーと比べて社員の定着率は高く、育成に時間をかける余裕がある。

④4C分析

4C分析は、企業側の視点である「4P(Product、Price、Place、Promotion)」を、顧客(求職者)側の視点である「4C(Customer Value、Cost、Convenience、Communication)」に置き換えたフレームワークです。

3C分析が「市場における自社の立ち位置」を分析するのに対し、4C分析は「求職者の体験の質」を高めることに焦点をあてたもの。

4C分析を使って求職者の立場から自社の採用を見直すことで、ボトルネックを発見できるでしょう。

  • Customer Value(顧客価値)
    入社することで得られるメリットは何か?
  • Cost(負担)
    入社までにかかる労力や時間、心理的負担は?
  • Convenience(利便性)
    応募や面接へのハードルは容易か?
  • Communication(コミュニケーション)
    企業と双方向の対話ができるか?

【A社の場合の活用例】
4C分析で求職者視点での魅力を洗い出したうえで、応募や選考のフローを改善。

  • Customer Value
    「技術力が身につき成長できる」という価値を、社員インタビュー動画で可視化。
  • Cost
    履歴書作成の手間を減らし、エンジニア向け求人媒体でのエントリーフォームは最低限の情報入力で済むように変更。
  • Convenience
    在職中のエンジニアが参加しやすいよう、平日19時以降や土日のオンライン面接を解禁。
  • Communication
    一方的な選考ではなく「相互理解の場」にするために、選考前のカジュアル面談を実施。信頼関係を構築。

⑤SWOT分析

SWOT分析は、内部環境(強み・弱み)と外部環境(機会・脅威)を掛け合わせて現状を分析するフレームワークです。

採用戦略においては、自社の強みを活かし、弱みをカバーする打ち手を検討する際に活用します。

  • Strengths(強み)
    競合より優れている点、自社独自の得意分野
  • Weaknesses(弱み)
    競合より劣っている点、不足しているリソース
  • Opportunities(機会)
    自社に追い風となる採用市場の変化、トレンド
  • Threats(脅威)
    自社の採用を阻害する競合や市場の動き、法改正など

【A社の場合の活用例】
SWOT分析で現状を洗い出し、明らかになった「弱み」をどうカバーするか検討。

  • Strengths(強み)
    高い技術力、安定した顧客基盤、離職率の低さ。
  • Weaknesses(弱み)
    知名度や給与提示額でメガベンチャーに劣る。
  • Opportunities(機会)
    DX需要の拡大でニーズ増加。売上規模も毎年拡大。
  • Threats(脅威)
    採用市場のレッドオーシャン化。フルリモート可の企業への人材流出。

⑥ファネル分析

ファネル分析は、採用プロセスを段階ごとに分解し、各段階の人数と通過率を可視化するフレームワークです。
「ファネル(漏斗)」の名の通り、認知から入社に向かって人数が絞られていく様子を図式化します。

採用活動のKPIを設定したいとき、または採用プロセスのどこに課題があるかデータをもとに特定したいときに有効でしょう。

認知(PV数など)
  ↓
興味・関心(お気に入り登録数など)
  ↓
応募(エントリー数)
  ↓
書類選考・面接(通過数)
  ↓
内定・入社(承諾数)

【A社の場合の活用例】
採用数が少ない要因をファネル分析で洗い出したところ、書類選考と最終面接に課題があることが判明。

ペルソナに合った募集要項とすること、現場(一次面接)と経営層(最終面接)の認識のギャップを埋めることで改善。

PV数:5,000PV
お気に入り登録数:200件
エントリー数:100件
書類選考通過数:30件(少ない)
一次面接通過数:20件
最終面接通過数:3件(少ない)
内定承諾数:2件

⑦カスタマージャーニー

カスタマージャーニーは、候補者が企業を認知してから入社を決断するまでの行動・思考・感情を時系列で整理するフレームワークです。

候補者目線で選考プロセスを見直したいときに有効と言えるでしょう。

特に、選考中の辞退や内定辞退が多い場合、どの段階で候補者の気持ちが離れているかを特定できます。

【A社の場合の活用例】
カスタマージャーニーで候補者の気持ちを洗い出すことで、面接後のフォロー不足が発覚。
改善の必要性が可視化された。

  • 応募時
    知らない企業名。複数エントリーしたなかの1社として認識。
  • カジュアル面談後
    「上流工程に挑戦できそう」という期待感。
  • 面接後
    合否連絡が2週間かかり不安。他社も検討。
  • 内定後
    他に選考を進めていた大手企業に入社するため、内定辞退。

⑧5A理論

5A理論は、「Aware(認知)」「Appeal(訴求)」「Ask(調査)」「Act(行動)」「Advocate(推奨)」の5段階で構成される、購買プロセスのフレームワーク。

採用戦略においては、ゴールの「推奨」を「入社」と置くことで活用できます。

  • Aware(認知)
    会社の存在を知る
  • Appeal(訴求)
    会社を好きになる、興味を持つ
  • Ask(調査)
    口コミや評判を調べる(OpenWorkやSNS検索)
  • Act(行動)
    エントリーする
  • Advocate(推奨)
    入社する

【A社の場合の活用例】
知名度不足が課題だったため、採用ブランディングにおける施策を5A理論で再設計。

  • Aware(認知)
    SNS広告を活用し、まず社名を認知してもらう。
  • Appeal(訴求)
    採用サイトにおけるコンテンツで動画やインタビューを増やして好きになってもらう。
  • Ask(調査)
    SNSの口コミは定期的に収集・分析。ネガティブな意見も参考にする。
  • Act(行動)
    採用サイト内にエントリーしやすい動線を設計。
  • Advocate(推奨)
    面接後の手厚いフォローで入社しやすい雰囲気を醸成。

【課題別】ケースに応じて異なる採用戦略フレームワーク活用例

前章では8つのフレームワークを紹介しましたが、すべてを一度に取り入れる必要はありません。

重要なのは、自社が抱える課題に応じて適切なフレームワークを選び、活用することです。

本章では、採用現場でよくある3つの課題を取り上げ、それぞれどのフレームワークをどう活用すべきかを解説します。

①知名度の高い競合他社に求職者が流れてしまい、応募数が少ない

活用すべきフレームワーク:3C分析

大手やメガベンチャーなど知名度の高い企業と採用でバッティングすると、「自社に知名度がないからだ」と考えてしまいがちですが、戦うべきは知名度だけではないかもしれません。

3C分析で求職者・競合・自社を分析し、差別化できそうなポイントを見つけましょう

たとえば、大手にはない育成制度やスピード感、裁量、文化などは、「知名度」に打ち勝つ強みとして、武器にできるかもしれません。

②最終面接まで行った人材が現場のジャッジで不採用となる/長く続かない

活用すべきフレームワーク:ペルソナ分析

たとえば、人事は「ポテンシャル採用」を考えているのに現場は「即戦力」を求めている、といった認識のズレがあると、選考プロセスがうまく機能しません。

ペルソナ分析で採用すべき人物像を詳細に言語化し、人事・現場・経営層で共有することで、評価基準のブレを防ぎましょう

まずは現場にヒアリングのうえ、関係者全員でペルソナを構築していけるのが理想です。

③採用活動の重要性を体系的に説明できず、予算を確保できない

活用すべきフレームワーク:SWOT分析

「経営層に採用の重要性を理解してもらえず、予算が確保できない」という悩みを抱える採用担当者も少なくないのではないでしょうか。
「なぜ今、採用に投資すべきなのか」を論理的に説明できないと、必要な施策を実行できません。

この場合はSWOT分析が有効です。
自社の内部環境(強み・弱み)と外部環境(機会・脅威)を整理することで、「今、採用に投資すべき理由」を客観的なデータとロジックで説明できるようになるでしょう。

採用戦略にフレームワークを取り入れ、確実な成果につなげよう

本記事では、採用戦略に役立つ8つのフレームワークや具体的な活用方法を解説しました。

採用難易度が高まる現代において、経験や勘だけに頼った「感覚の採用」には限界があります。

一方、フレームワークを用いて現状を客観的に分析すれば、自社が戦うべき場所や、アピールすべき本当の魅力が明確に見えてくるはずです。

自社の「勝ち筋」が見えれば、選ぶべき採用手法やツールも自然と定まり、迷いがなくなっていくでしょう。

ぜひ採用活動に「戦略」という武器を取り入れ、理想の人材獲得を実現させてください。

フレームワークで洗い出した課題の解決には、採用支援ツールの採用係長がおすすめ。
求人の出稿や応募者管理だけでなく、採用ブランディング(採用ホームページ作成など)や、採用プロモーション(SNS広告など)も一気通貫で支援可能です。

戦略的な採用を実現したい採用担当者の方は、ぜひご検討ください。

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この記事を書いた人
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安光あずみ

求人広告代理店で7年間務めたのち、フリーライターとして活動中。代理店在籍時は掲載型媒体やIndeedの営業、採用広告バナーのディレクション等を担当。さまざまなニーズの求人広告を取り扱った知見を活かし、採用に役立つ記事を執筆します。

監修者
監修者
辻 惠次郎

ネットオン創業期に入社後、現在は取締役CTOとしてマーケティングからプロダクトまでを統括。
通算約200社のデジタルマーケティングコンサルタントを経験。特に難しいとされる、飲食や介護の正社員の応募単価を5万円台から1万円台に下げる実績を作り出した。
Indeedはもちろん、インターネット広告やDSP広告を組み合わせた効率的な集客や、Google Analytics等の解析ツールを利用した効果分析、サイト改善を強みとしている。