【2025年】育児介護休業法改正のポイントを解説 ~企業に生じる義務と対応すべきこと~

2025年4月から「育児介護休業法」が改正され、企業には新たな対応が求められることになりました。
今回の改正の大半は、すべての企業を対象とした内容です。新たに義務の対象となる企業が拡大する改正もあり、中小企業の人事担当者は対応に向けて準備を進める必要があります。

育児・介護と仕事の両立支援は、育児・介護中の従業員の離職を防ぐことにつながるため、法改正への対応は企業にとって重要事項といえるでしょう。

本記事では、2025年施行の育児介護休業法改正のポイントと改正に伴う企業の対応について解説します。

育児介護休業法とは

育児介護休業法とは、企業で働く人の仕事と育児・介護の両立支援を目的として制定された法律です。
育児・介護に携わる期間における休業や労働条件、その他企業が担う義務が定められています。

正式名称は「育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律」です。

育児介護休業法改正の目的

1992年の育児休業法の施行以来、社会変化に合わせた法改正が度々実施されています。 2025年は新たな改正が段階的に施行。

今回の改正は「育児期の柔軟な働き方の実現」「男性の家事・子育てへの参画促進」「仕事と介護の両立支援」を主な目的としています。
男女とも仕事と育児・介護が両立できるように支援を強化することで、育児・介護の時期に時間的な制約を抱える従業員の離職を防止する効果も期待されています。

2025年育児介護休業法改正のポイント

2025年の育児介護休業法改正は、4月と10月に段階的に施行されます。

これにより企業は、雇用環境整備や個別周知・意向確認などの「義務」または「努力義務」を果たすことが必要です。

2025年4月から生じる義務

子の看護休暇対象の見直し

看護休暇とは、けがや病気などの理由で子どもの看護が必要な場合に取得できる休暇です(年次有給休暇とは異なる休暇)。
改正後は対象となる子の範囲や取得理由、取得対象者が拡大。これに合わせて企業は就業規則等の改定を行う必要があります。

子の看護休暇対象の見直し

画像出典:厚生労働省(育児・介護休業法 改正ポイントのご案内)

所定外労働の制限(残業免除)の対象拡大

育児期間中は従業員が事前に申出を行えば、残業の免除を受けることが可能です。
改正後はその対象となる従業員の範囲が拡大。企業には就業規則等の見直しが求められます。

所定外労働の制限(残業免除)の対象拡大

画像出典:厚生労働省(育児・介護休業法 改正ポイントのご案内)

育児休業取得状況の公表義務の拡大

これまで従業員数が1,000人を超える企業には、育児休業の取得状況を公開する義務がありました。
改正後は従業員300人超の企業へと拡大し、より多くの企業が対象となります。
公表内容は、男性の「育児休業等の取得率」または「育児休業等と育児目的休暇の取得率」です。

介護離職防止のための個別の周知

画像出典:厚生労働省(育児・介護休業法 改正ポイントのご案内)

介護離職防止のための雇用環境整備

介護離職防止のための雇用環境整備は、今回の改正で新たに設けられた義務です。
介護休業や仕事との両立を支援する制度が適切に運用されるよう、企業は以下のいずれの措置を講じることが必須となりました。

1 介護休業・介護両立支援制度等に関する研修の実施
2 介護休業・介護両立支援制度等に関する相談体制の整備(相談窓口設置)
3 自社の労働者の介護休業取得・介護両立支援制度等の利用の事例の収集・提供
4 自社の労働者へ介護休業・介護両立支援制度等の利用促進に関する方針の周知

引用元:介護離職防止のための雇用環境整備

介護離職防止のための個別の周知・意向確認

従業員から介護に関する相談等があったとき、および従業員が介護に直面するよりも早い段階において、情報提供と意思確認を行うことが義務化されました。

(1)介護に直面した旨の申出をした労働者に対する個別の周知・意向確認

制度内容、利用方法、給付金に関する3つの周知事項と、周知方法および意向確認の方法が定められています。
従業員から介護についての相談があった場合には、必ず個別に周知し、休業の取得・制度の利用について本人の意向を確認することが求められます。

介護離職防止のための情報提供

画像出典:厚生労働省(育児・介護休業法 改正ポイントのご案内)

(2)介護に直面する前の早い段階(40歳等)での情報提供

従業員が40歳になる前の段階においても介護に関する制度の情報提供を行う必要があります。
介護休業や両立を支援する制度に対する理解を深めることが狙いです。

短時間勤務制度の代替措置にテレワークを追加

画像出典:厚生労働省(育児・介護休業法 改正ポイントのご案内)

要件の緩和(対象企業のみの義務)

短時間勤務制度の代替措置にテレワークを追加

3歳未満の子を育てながら働く労働者に対する短時間勤務制度について、制度の対象外となる(適用が困難な業務に従事する)従業員の場合は、労使協定を締結したうえで代替措置を講じることが義務図けられています。
改正後はその代替措置の選択肢に「テレワーク」が追加されました。テレワークを代替措置として講じる場合には、就業規則の改定が必要です。

介護休暇を取得できる労働者の要件緩和

画像出典:厚生労働省(育児・介護休業法 改正ポイントのご案内)

介護休暇を取得できる労働者の拡大

介護休暇の取得は、制度の適用を除外できる労働者が決められています。
今回の改正によりその要件が緩和され、2025年4月以降は「継続雇用期間が6カ月未満」の従業員にも制度が適用されることになりました。

当該労働者を適用除外とする労使協定を締結している企業は、労使協定の再締結が必要です。

軟な働き方を実現するための措置

画像出典:厚生労働省(育児・介護休業法 改正ポイントのご案内)

2025年4月から生じる努力義務

育児のためのテレワーク導入

3歳未満の子どもを養育する従業員がテレワークを選択できる制度の導入が努力義務となりました。

介護のためのテレワーク導入

テレワークを選択できる制度の導入は、要介護状態の家族を介護する従業員に対しても努力義務となっています。

2025年10月から生じる義務

柔軟な働き方を実現するための措置等

柔軟な働き方を実現するため、3歳から小学校就学前の子を養育する従業員に対する措置を2つ以上設けることが新たに義務付けられます(以下5つの中から2つを選択)。
従業員はそのうち1つを選択して利用することが可能。措置を明確にし、就業規則の改定を行います。

軟な働き方を実現するための措置

画像出典:厚生労働省(育児・介護休業法 改正ポイントのご案内)

また、この措置に関する個別の周知・意向確認も義務付けられています。
対象となる従業員に対し、適切な時期に措置の内容や制度の周知、本人の意向確認を個別に行いましょう。

柔軟な働き方に関する個別の周知・意向確認

画像出典:厚生労働省(育児・介護休業法 改正ポイントのご案内)

仕事と育児の両立に関する個別の意向聴取・配慮

従業員の子どもや家庭の事情に応じた両立支援ができるよう、対象従業員への個別ヒアリングが義務付けられました。

仕事と育児の両立に関する個別の意向聴取

画像出典:厚生労働省(育児・介護休業法 改正ポイントのご案内)

また本人の意向への配慮も求められます。
勤務時間帯や勤務地(配属)、業務量の調整、制度の利用内容や労働条件の見直しなど、自社の状況に応じて対応を行う必要があります。

育児介護休業法改正に備えて企業が対応すべきこと

前章で解説した義務・努力義務のうち、「育児休業取得状況の公表義務」以外は、すべての企業を対象とした義務または努力義務です。
改正にともない必要な対応を確認しましょう。

就業規則と労使協定の見直し

制度や措置の対象者拡大、要件緩和となる改正については、就業規則および労使協定の見直しが必要です。

  • 子の看護休暇
  • 所定外労働の制限
  • 短時間勤務制度の代替措置(代替措置が必要な業務がある場合)
  • 柔軟な働き方を実現するための措置
  • 介護休暇を取得できる労働者の要件緩和(継続雇用期間が6カ月未満の労働者を適用除外とする労使協定を締結している場合)

見直しに際して必要となる規則の規定例や労使協定の例、社内における届出、通知書の様式例は厚生労働省のホームページで公開されています。
以下のページを参考に準備を進めましょう。

厚生労働省(育児・介護休業等に関する規則の規定例)

従業員への周知と研修

新たな制度を適切に運用するためには、社内への周知および研修の実施が不可欠です。
研修の対象は制度運用に関わる従業員が中心ですが、制度内容の周知はすべての従業員に対して実施しましょう。
育児・介護休業に関する理解促進と、制度のスムーズな利用につながるはずです。

育児休業取得状況の把握と公表準備

育児休業取得状況の公表義務がある従業員300人超の企業は、「育児休業等の取得割合」または「育児休業等と育児目的休暇の取得割合」の公表が必須です。
公表方法はインターネットなどだれでも閲覧できる方法と定められており、厚生労働省が運営する「両立支援のひろば」での公表も推奨されています。

公表内容・方法について検討を進め、公表に向けた準備を行いましょう。

育児休業取得状況の公表内容

画像出典:厚生労働省(2025年4月から、男性労働者の育児休業取得率等の公表が従業員が300人超1,000人以下の企業にも義務化されます)

まとめ

2025年4月から段階的に施行される育児介護休業法改正は、企業で働く人々の育児・介護と仕事の両立支援の強化を目的としています。

新たな制度を適切に運用するためには制度の整備だけでなく、社内全体への周知と理解の促進が欠かせません。
誰もが当たり前に利用できる制度運用を目指し、環境整備に努めましょう。

また両立支援の取り組みは、従業員の働きやすさにつながることはもちろん、人材確保の面でも企業の魅力を高める要素となるはずです。
法改正への対応は、自社の育児・介護支援制度の見直しや拡充を検討する良いきっかけにもなるのではないでしょうか。

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この記事を書いた人
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馬嶋 亜衣子(samusillee)

採用・キャリア関連、医療分野を中心に執筆を行うフリーランスライター。 各種メディアの取材ライティングやSEOライティング、採用HPのライティングなどに携わっています。

監修者
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辻 惠次郎

ネットオン創業期に入社後、現在は取締役CTOとしてマーケティングからプロダクトまでを統括。
通算約200社のデジタルマーケティングコンサルタントを経験。特に難しいとされる、飲食や介護の正社員の応募単価を5万円台から1万円台に下げる実績を作り出した。
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