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通勤手当の非課税限度額は「通勤手段別+支給日(支払われるべき日)判定」で決まる
令和7年改正(令和7年11月19日公布/11月20日施行)により、令和7年4月1日以後に支払われるべき通勤手当から、非課税限度額(交通用具の距離区分)が引き上げられました(ただし一定の除外あり)。
- 公共交通(電車・バス・有料道路):合理的な運賃等(上限150,000円/月)
- 交通用具(マイカー・自転車等):距離区分で4,200〜38,700円/月
- 併用(公共交通+交通用具):合理的な運賃等+距離区分の合計(上限150,000円/月)
国税庁:通勤手当の非課税限度額の改正について(特設ページ)/ 通勤手当の非課税限度額の引上げについて(PDF)/ タックスアンサー No.2582/ タックスアンサー No.2585
早見表(限度額一覧)
公共交通(電車・バス・有料道路)/通勤用定期券:合理的な運賃等(上限150,000円/月)
| 区分 | 非課税となる1か月当たりの限度額 |
|---|---|
| 交通機関(電車・バス等)または有料道路を利用 | 合理的な運賃等(上限150,000円) |
| 通勤用定期乗車券(交通機関を利用) | 合理的な運賃等(上限150,000円) |
補足(実務の判断軸):合理的な運賃等は「運賃・時間・距離等の事情に照らして最も経済的かつ合理的な経路・方法」で算定します。新幹線・特急の運賃等も合理的なら含み得ますが、グリーン料金は含めない扱いです(国税庁タックスアンサー No.2582)。
交通用具(マイカー・自転車等):距離区分で4,200〜38,700円/月
| 片道の通勤距離(通勤経路に沿った長さ) | 非課税となる1か月当たりの限度額 |
|---|---|
| 2km未満 | (全額課税) |
| 2km以上10km未満 | 4,200円 |
| 10km以上15km未満 | 7,300円 |
| 15km以上25km未満 | 13,500円 |
| 25km以上35km未満 | 19,700円 |
| 35km以上45km未満 | 25,900円 |
| 45km以上55km未満 | 32,300円 |
| 55km以上 | 38,700円 |
併用(公共交通+交通用具):合計(上限150,000円/月)
| 区分 | 非課税となる1か月当たりの限度額 |
|---|---|
| 交通機関(または有料道路)+交通用具(マイカー・自転車等) | 合理的な運賃等+距離区分の金額(上限150,000円) |

適用時期(遡及)と「支払われるべき」の判定ルール
令和7年改正は、令和7年11月20日施行ですが、令和7年4月1日以後に支払われるべき通勤手当に遡って適用されます(国税庁「通勤手当の非課税限度額の引上げについて(PDF)」)。
ただし、次の通勤手当には改正後限度額を適用しないことが明示されています。
- 令和7年3月31日以前に支払われた通勤手当
- 令和7年3月31日以前に支払われるべき通勤手当で、令和7年4月1日以後に支払われるもの
- 上記の通勤手当の差額として追加支給されるもの
「支払われるべき(支給日ベース)」の基本:給与規程等で支給日が決まっているか
国税庁「通勤手当の非課税限度額の引上げに関するQ&A(令和7年11月)」では、概ね次の考え方が示されています(Q3)。
- 契約・慣習等で支給日が定められている:その支給日で判定
- 支給日が定められていない:その支給を受けた日で判定
- 給与規程の改訂により過去に遡って増額し差額を支給する:原則は差額の支給日(支給日が定められていない場合は改訂の効力発生日)で判定。ただし「令和7年4月1日前に支払われるべき通勤手当の差額として追加支給するもの」は除外扱い
国税庁:通勤手当の非課税限度額の引上げに関するQ&A(PDF)
典型例:3月分を4/10支給/4月分を3/10支給(どっちが改正後?)
- 令和7年4月10日に「令和7年3月分」を支給(給与規程どおり):支給日が4/10なので「令和7年4月1日以後に支払われるべき」に該当 → 改正後を適用(Q4)
- 令和7年3月10日に「令和7年4月分」を支給(給与規程どおり):支給日が3/10なので該当しない → 改正前を適用(Q5)

毎月の給与計算:非課税・課税の分け方(計算式つき)
通勤手当は、限度額まで非課税、超える部分は給与として課税されます(国税庁タックスアンサー No.2582/No.2585)。実務上は、毎月この式で固定するとブレません。
計算式(毎月)
- 非課税通勤手当=min(通勤手当の支給額, 非課税限度額)
- 課税通勤手当(超過分)=max(0, 通勤手当の支給額 − 非課税限度額)
超過分は、通勤手当を支給した月の給与に上乗せして源泉徴収(所得税・復興特別所得税)します(No.2582)。
具体例で確認:超過分の計算(最低2例・併用あり)
例1:交通用具(マイカー)片道30km、通勤手当20,000円/月
前提:片道30km(25km以上35km未満)→非課税限度額19,700円/月(国税庁タックスアンサー No.2585)。
- 非課税=min(20,000, 19,700)=19,700円
- 課税=max(0, 20,000−19,700)=300円
例2:併用(電車+マイカー)で合計上限15万円が効くケース
前提:電車の合理的な運賃等145,000円/月。マイカー片道30km(限度額19,700円/月)。通勤手当の支給額は合計170,000円/月(電車145,000+マイカー25,000)。
併用の限度額:合理的な運賃等145,000+距離区分19,700=164,700円ですが、上限150,000円/月が適用(国税庁タックスアンサー No.2582)。
- 非課税=min(170,000, 150,000)=150,000円
- 課税=170,000−150,000=20,000円
例3:改正の遡及で「年末調整で戻す」典型(国税庁の記載例)
国税庁「年末調整で精算する際の源泉徴収簿の記載例(PDF)」の設例では、通勤距離片道50km、通勤手当30,000円/月の場合、改正前限度額28,000円で課税されていた2,000円/月が、改正後限度額32,300円では課税不要となり、4月〜10月の7か月分(2,000円×7=14,000円)が新たに非課税として年末調整で精算する流れが示されています。

令和7年改正の実務:いつ、何を、どう精算する?
施行日前に旧限度額で処理していても「毎月さかのぼってやり直し」は不要
国税庁Q&A(Q10)では、施行日前(令和7年11月19日まで)に旧限度額で源泉徴収していた「令和7年4月1日以後に支払われるべき通勤手当」について、遡って税額の再計算を行う必要はなく、年末調整の際に改正後限度額を適用した場合の過納付税額を精算する、としています。
年末調整ができない人(年中退職など)はどうする?
国税庁「通勤手当の非課税限度額の引上げについて(PDF)」では、年末調整の機会がない人は確定申告により精算する整理が示されています(中途退職など)。
源泉徴収票の「支払金額」・退職者の再交付
同PDFでは、源泉徴収票の「支払金額」欄は非課税部分の通勤手当を除いた金額を記入し、既に交付済みの場合は訂正して「再交付」表示で再交付する旨が示されています。
精算フロー(チェックリスト)
出典:国税庁「通勤手当の非課税限度額の引上げについて(PDF)」、国税庁Q&A(Q10・Q11)、国税庁「源泉徴収簿の記載例(PDF)」。
1)対象者抽出(最初にここを固める)
- □ 令和7年4月1日以後に支払われるべき通勤手当がある(支給日ベースで確認)
- □ 交通用具(マイカー・自転車等)利用者、または併用者(影響が出やすい)
- □ 施行日前に旧限度額超過分を「課税通勤手当」として処理していた可能性がある
2)新たに非課税となる金額を計算
- □ 施行日前までに課税していた通勤手当のうち、改正後限度額なら非課税になる部分(差額)を集計
- □ 国税庁の設例(片道50kmで2,000円×7か月=14,000円など)を参考に、月別→合計の順で確認
3)年末調整に反映(源泉徴収簿/給与ソフト)
- □ 源泉徴収簿の余白に「非課税となる通勤手当」として計算根拠と金額を記入(可能な場合)
- □ 「年末調整」欄の「給料・手当等①」には、総支給金額から新たに非課税となる金額を差し引いた後の金額を記入
給与ソフトで余白記載ができない場合:国税庁Q&A(Q11)では、正しく年調年税額が算出されていれば、記載を省略しても差し支えないとしています。

証憑・社内ルール:迷わないための運用設計
「合理的な運賃等」を説明できる状態にする(公共交通)
- 通勤届に「経路」「利用区間」「定期種別」「金額」を明記
- 経路変更(引越・異動)時は、変更日と支給反映日を記録(「支払われるべき」判定にも効く)
- 新幹線・特急を含める場合は、合理性の説明を残す(グリーン料金は含めない扱い:国税庁タックスアンサー No.2582)
片道距離の根拠を固定する(交通用具)
- 「通勤経路に沿った長さ」で片道距離を決める(国税庁タックスアンサー No.2585)
- 距離算定方法(地図サービス/社内基準)を統一し、根拠を保存
「基本給に含める/合算支給」の場合は“区分識別できる”形に
通勤手当と別手当を合算して定額支給する場合でも、給与明細等で通勤費実費相当額が通勤手当として区分識別できるなら、非課税通勤手当として認められ得る旨が示されています(国税庁 質疑応答事例「通勤手当と住宅手当を合算して支給する場合の取扱い」)。
よくある質問(FAQ)
Q1. 通勤手当の非課税限度額はいくら?(改正後の結論)
A. 公共交通は合理的な運賃等(上限150,000円/月)。交通用具は距離区分で4,200〜38,700円/月。併用は合理的な運賃等+距離区分の合計(上限150,000円/月)です。
Q2. 令和7年改正はいつから適用?(遡及は?)
A. 令和7年11月20日施行で、令和7年4月1日以後に支払われるべき通勤手当から適用です。
Q3. 「支払われるべき」の判断は、何月分か?支給日か?
A. 原則は支給日で判定です(支給日が定められていればその日、定めがなければ受給日)。「何月分か」だけで判断しないのがポイントです(国税庁Q&A Q3)。
Q4. 3月分を4/10支給(後払い)している。改正後になる?
A. 給与規程どおり4/10支給なら、4/10が支給日なので改正後が適用されます(国税庁Q&A Q4)。
Q5. 4月分を3/10支給(前払い)している。改正後になる?
A. 3/10が支給日なので、改正後は適用されず改正前が適用されます(国税庁Q&A Q5)。
Q6. 未払いだった過去月分を後日まとめて支給した。改正後でいい?
A. 「本来の支給日」がいつかが鍵です。国税庁Q&Aには未払分の設問があり、本来の支給日が4/1前なら改正後は適用されないケースがあります(国税庁Q&A Q8等)。社内の給与規程と突き合わせて類型判定してください。
Q7. 改正前に課税した通勤手当は、毎月さかのぼって源泉税をやり直す?
A. 不要です。年末調整で精算します(国税庁Q&A Q10)。
Q8. 年末調整の機会がない退職者はどうする?
A. 年末調整で精算できない場合は確定申告で精算する整理が示されています。
Q9. 併用(電車+車)で、電車分が15万円以内なら全部非課税?
A. 併用は「合理的な運賃等+距離区分」の合計が非課税ですが、合計上限は15万円/月です(国税庁タックスアンサー No.2582)。
Q10. 超過分の課税はいつ行う?
A. 超過分は、通勤手当等を支給した月の給与に上乗せして源泉徴収します(国税庁タックスアンサー No.2582/No.2585)。
Q11. 交通費を「給与に含めて一律支給」している。非課税にできる?
A. 実務上は「通勤に対応する部分が区分識別できるか」が重要です。国税庁の質疑応答事例では、給与明細書等で通勤費実費相当額を区分識別できるなら非課税通勤手当として認められ得る旨が示されています(国税庁 質疑応答事例)。
Q12. 通勤手当は社会保険(標準報酬月額)にも同じ扱い?
A. この記事は所得税(源泉)の非課税限度額の整理です。社会保険は制度が別なので、「税で非課税=社保でも同じ」とは限りません。社内の社保担当フロー(年金事務所・保険者の取扱い)で必ず確認してください。
Q13. パート・アルバイトでも月15万円/距離区分は同じ?
A. 非課税限度額は月を単位にして計算する旨が示されています(国税庁タックスアンサー No.2582)。雇用形態にかかわらず、通勤手当として支給する場合は同様に限度額判定します。
Q14. テレワーク中心で月の出社日が少ない。通勤手当(定期代)は合理的?
A. 合理的な運賃等は「通勤の事情」に照らして判断します(国税庁タックスアンサー No.2582)。定期と実費精算のどちらが合理的かは会社の運用・出社頻度で変わり得るため、経路・頻度・支給根拠を残し、判断に迷う場合は税務署等へ確認してください。
出典(国税庁)
- 通勤手当の非課税限度額の改正について(特設ページ/令和7年11月)
- 通勤手当の非課税限度額の引上げについて(PDF)
- 年末調整で精算する際の源泉徴収簿の記載例(PDF)
- 通勤手当の非課税限度額の引上げに関するQ&A(PDF)
- タックスアンサー No.2582(電車・バス通勤者の通勤手当)
- タックスアンサー No.2585(マイカー・自転車通勤者の通勤手当)
- 質疑応答事例:通勤手当と住宅手当を合算して支給する場合の取扱い
注意書き(個別判断について)
本記事は国税庁の公表資料にもとづく一般的な整理です。支給方法(前払い/後払い/差額支給/未払精算)、通勤実態(経路・頻度)、社内規程の定め方により結論が変わることがあります。判断に迷う場合は、出典資料を確認のうえ、税務署・税理士等の専門家へご相談ください。
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