労働条件通知書の記入例と書き方|2024年・2026年10月の改正に対応

労働条件通知書の記入例と書き方を解説する記事のアイキャッチ

労働条件通知書は、従業員の雇用にあたって発行が必要な書類のひとつです。労働条件の明示は法律で義務付けられており、企業は労働条件通知書を従業員にかならず発行する必要があります。

しかし、労働条件通知書は記載項目が複雑であるため、書き方が分からずに困っている人は多いでしょう。記載する項目は2024年4月に追加され、2026年10月にはパート・有期雇用の従業員に対する明示事項がもう1つ増えます。

本記事では、労働条件通知書の概要と書き方について、実際の様式・記入例を用いて解説します。労働条件通知書の取り扱いに困っている企業の人事担当者は、ぜひ参考にしてください。

労働条件通知書とは?

労働条件通知書とは、新たに雇用する従業員に労働条件を明示するための書類です。あらかじめ賃金や勤務時間などを明示することで、従業員の立場を守る目的があります。

雇用する従業員に対する労働条件の明示は、労働基準法第15条によって義務付けられているため、書面を発行しない場合は違法です。そのため、各企業には確実な対応が求められます。

なお、労働条件の明示は、アルバイト・パートなどの雇用形態にかかわらず、全従業員に対して必要です。そのため、各企業では様式などを用意し、すぐに発行できる体制を整えておくことが望ましいと言えます。

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労働条件通知書と雇用契約書の違い

労働条件通知書とよく間違われる書類のひとつに、「雇用契約書」があります。
それぞれまったく違う書類であるため、混同しないように注意してください。

労働条件通知書と雇用契約書の主な違いは、以下のとおりです。

 

労働条件通知書

雇用契約書

目的

法律に基づき労働条件を明示することで、従業員の立場を守るため。

雇用契約への合意を確認するため。企業と従業員の認識ズレによるトラブル防止の役割もある。

書面での通知義務

原則として書面で通知しなければならず、口頭での通知は認められない。従業員が希望した場合に限り、ファクシミリや電子メールなどでも通知できる(電子メールなどは、出力して書面を作成できるものに限る)。

書面で通知する義務はなく、口頭でも問題ない。

罰則

30万円以下の罰金が科される可能性がある(労働基準法第120条第1号)

罰則なし

雇用契約書は、企業が従業員を雇用する際に、お互いが合意したことを明らかにするための書類です。書類に残すことで雇用合意への認識の相違をなくし、のちのトラブルを防止する役割も担っています。ただし、雇用契約書は法律で義務付けられていないため、書類で通知しなくても違法ではなく、口頭でも問題ありません。

一方で、労働条件の通知は労働基準法第15条で義務付けられています。そのため、書面を発行しなかった場合は、違反として30万円以下の罰金が科される可能性があります。労働条件通知書の発行を怠ると、通知すべきだった従業員だけでなく、多くの従業員から信頼を失いかねないため、かならず発行してください。

労働条件通知書に記載する項目

ここからは、労働条件通知書に記載する項目を整理します。

労働条件通知書に記載が必要な項目は「絶対的明示事項」として、労働基準法施行規則第5条に定められています。

かならず記載する項目(絶対的明示事項)

具体的な項目は、以下のとおりです。

【労働条件通知書の絶対的明示事項】

  • 契約期間
  • 労働契約更新の基準(有期雇用の場合。更新回数または通算契約期間の上限を定めているときは、その上限を含む)
  • 就業場所(雇入れ直後の場所と、変更の範囲)
  • 業務内容(雇入れ直後の業務と、変更の範囲)
  • 始業および終業時刻
  • 休憩時間
  • 所定労働時間を超える労働の有無
  • 休日・休暇
  • 従業員を2組に分けて労働させる場合の就業時転換に関する事項
  • 賃金の決定方法や計算方法
  • 賃金の締切日および支払日
  • 賃金の支払方法
  • 昇給に関する事項
  • 退職に関する事項(解雇条件なども含む)

このうち、昇給に関する事項を除く項目は、書面で交付しなければなりません。

また、通算契約期間が5年を超える有期労働契約を結ぶときは、無期転換を申し込めることと、無期転換したあとの労働条件も明示します。

(出典:労働基準法施行規則第5条|e-Gov法令検索

2024年4月に追加された項目

上のリストのうち、次の項目は2024年4月1日から明示が必要になったものです。それ以前の様式を使い続けている場合は、欄そのものが足りていない可能性があります。

  • 就業場所・業務内容の変更の範囲:雇入れ直後の内容だけでなく、将来的に変わりうる範囲まで書きます。全従業員が対象です。
  • 更新上限の有無と内容:有期雇用で更新回数や通算契約期間の上限を定めている場合に書きます。
  • 無期転換を申し込めること:通算契約期間が5年を超える有期労働契約を結ぶタイミングごとに書きます。
  • 無期転換したあとの労働条件:上と同じタイミングで書きます。

厚生労働省は、モデル労働条件通知書のなかでこれらの欄を赤字にしています。手元の様式に赤字の欄が見当たらなければ、2024年3月以前のものです。

厚生労働省のモデル労働条件通知書のうち、2024年4月に追加された更新上限や無期転換、就業の場所と業務の変更の範囲の欄(2026年7月31日取得)

厚生労働省「モデル労働条件通知書」より該当箇所を抜粋(2026年7月31日取得)

定めがある場合に記載する項目(相対的明示事項)

このほかにも、社内に定めがある場合に明示する「相対的明示事項」があります。書面での交付までは求められていませんが、あとから認識の食い違いが出やすい部分なので、労働条件通知書にまとめて書いておくと確認の手間が減ります。

  • 退職手当の対象者、決定や計算、支払の方法と時期
  • 臨時に支払われる賃金、賞与、最低賃金額
  • 従業員に負担させる食費や作業用品など
  • 安全・衛生
  • 職業訓練
  • 災害補償、業務外の傷病扶助
  • 表彰、制裁
  • 休職

【2026年10月1日から】パート・有期雇用に追加される明示事項

2026年10月1日から、パートタイム・有期雇用の従業員を雇い入れるときの明示事項が1つ増えます。根拠はパートタイム・有期雇用労働法の施行規則で、改正省令は2026年4月28日に公布されました。

追加されるのは、待遇の相違の内容や理由について説明を求めることができる旨です。パート・有期雇用の従業員には、これまでも次の4項目を文書などで明示する必要がありました。ここに1項目が加わる形で、既存の項目がなくなるわけではありません。

  • 昇給の有無
  • 退職手当の有無
  • 賞与の有無
  • 相談窓口

厚生労働省はリーフレットのなかで、労働条件通知書の記載例として次の文面を挙げています。

次の窓口に対して通常の労働者との間の待遇の相違(内容・理由)等について説明を求めることができる。
部署名    担当者職氏名    (連絡先    )

「通常の労働者」は、自社での呼び方(「正社員」など)に置き換えて書いてもかまいません。

この明示を怠った場合、10万円以下の過料の対象になります。労働基準法第15条違反の罰金とは別の制度です。

厚生労働省は、この改正に対応したモデル労働条件通知書もすでに公開しています。10月以降に使う様式は、そちらに入れ替えておきましょう。

(出典:同一労働同一賃金特集ページ|厚生労働省リーフレット「パートタイム・有期雇用労働者に関するルールが変わります」[PDF]。2026年7月31日取得)

労働条件通知書の様式と記入例

様式は厚生労働省のモデル労働条件通知書を使う

労働条件通知書に決まった書式はありませんが、記載もれを防ぐには厚生労働省が公開しているモデル労働条件通知書を使うのが確実です。改正のたびに更新されるため、自社で作った様式を使い回すよりも安全です。

雇用形態によって様式が分かれているので、パート・アルバイトを雇う場合は短時間労働者用を選びます。2026年10月1日以降は、前の章で触れた改正対応版に切り替えます。

労働条件通知書の記入例

実際の記入例は、以下のとおりです。自社で労働条件通知書を作成する際の参考にしてください。

労働条件通知書の記入例(契約期間や就業場所、業務内容、労働時間の記入部分)

この記入例は令和3年時点の様式にもとづいており、就業場所は「本社」、従事すべき業務の内容は「総務事務」とだけ書いています。2024年4月以降は、ここに変更の範囲を並べて書く必要があります。有期雇用なら更新上限無期転換の欄も加わります。書き方の型としてはそのまま使えますが、実際に交付する様式は前の章で案内した厚生労働省の最新版を使ってください。

労働条件通知書の記入例(賃金・退職に関する事項の記入部分)

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労働条件通知書はいつ渡すか、電子メールで渡せるか

労働条件通知書は、労働契約を結ぶときに交付します。労働基準法第15条が「労働契約の締結に際し」と定めているため、入社日より前、遅くとも雇用契約を結ぶ時点までに渡すのが原則です。

内定を出したあと、入社日当日にまとめて渡す運用にしている企業もありますが、入社してから条件を知る形になるため、従業員が条件を確認して判断する時間がありません。内定通知と合わせて渡しておくと、認識の食い違いを防げます。

交付の方法は書面が原則です。ただし、従業員が希望した場合に限り、ファクシミリや電子メール、SNSのメッセージ機能などでも交付できます。電子メールなどで送る場合は、受け取った側が出力して書面を作成できるものに限られるため、本文に直接書くのではなく、PDFなどのファイルを添付するのが安全です。

なお、希望を確認せずに電子メールだけで送るのは認められていません。確認は口頭でも構いませんが、あとから争いになったときのために、記録は残しておきましょう。

労働条件通知書を発行する際の注意点

労働条件通知書は、絶対的明示事項を網羅したうえで、労働条件が分かるように記載すれば問題はありません。
ただし、トラブル防止やスムーズに手続きを進める観点から、以下のポイントに注意してください。

  • 就業規則との相違はないか確認する
  • 従業員に労働条件通知書を保管しておくように伝える
  • 古い様式を使い回していないか確認する

労働条件が就業規則と異なる内容ではないか確認してください。
従業員の待遇は、自社における就業規則をもとに決まります。就業規則を無視した労働条件の設定は、労使トラブルを引き起こす可能性があるため、注意が必要です。

また、労働条件通知書を発行する際は、かならず保管しておくことを従業員に伝えましょう。今後、労働条件を理由にしたトラブルなどが発生した場合は、労働条件通知書が、トラブル解決の判断材料となります。

3つ目は、2024年4月の改正で新しく問題になった点です。以前ダウンロードした様式や、社内で長く使っている様式には、変更の範囲や更新上限の欄がありません。欄がなければ、書き忘れたことにも気づけません。項目を足すより、様式そのものを最新版に入れ替えるほうが早いです。

まとめ

クリップボードに挟んだ書類へ記入するイラスト

労働条件通知書は、新たに雇用する従業員に対して労働条件を明示するための書類です。労働条件の明示は、労働基準法第15条に定められた企業の義務であるため、発行しなければ違法となります。

労働条件通知書とよく間違われる書類に「雇用契約書」があります。雇用契約書は、お互いが雇用に合意したことを明確にするための書類であり、発行しなくても違法ではありません。制度を間違えないように注意しましょう。

記載する項目は2024年4月に追加され、2026年10月にはパート・有期雇用の明示事項がさらに1つ増えます。様式は厚生労働省のモデル労働条件通知書を使い、改正のたびに最新版へ入れ替えてください。

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この記事を書いた人
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辻 惠次郎

ネットオン創業期に入社後、現在は取締役CTOとしてマーケティングからプロダクトまでを統括。 通算約200社のデジタルマーケティングコンサルタントを経験し、Indeed・求人ボックス・スタンバイなどの求人検索エンジンを活用した採用支援を強みとする。特に難しいとされる、飲食や介護の正社員の応募単価を5万円台から1万円台に下げる実績を持つ。 求人検索エンジンを活用した採用集客や、Google Analytics等の解析ツールを用いた効果分析・サイト改善を強みとしている。

監修者
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