有効求人倍率の高止まりが続いていた新卒採用。コロナショックによって買い手市場への転換が予想されましたが、再び売り手市場へと回復しつつあります。そうした状況の中、多くの企業が若手人材の確保に向けて力を入れ始めているのが、高卒採用です。
株式会社ジンジブは、若手人材の採用に課題を抱える企業に対し、高卒採用の総合支援サービスを提供しています。高校生のための求人情報サイト『ジョブドラフト』の運営や、日本最大級の合同企業説明会『ジョブドラフトFes』を主催。高卒採用市場における数少ない民間の採用支援会社であり、高卒採用のプロフェッショナルです。
今回は、累計3,500社以上の支援実績を誇る同社の佐々木満秀社長に、高卒採用の特色と今後の新卒採用についてお話をうかがいました!(取材日:2021年8月4日)
目次
独自ルールが厳格に運用される高卒採用
高卒採用の基本について教えてください
高卒採用では、採用活動が学校主導で行われることが一般的です。先生が企業と生徒の間に入り、求人情報の提供や職場見学の引率、応募のやりとりを行います。先生から生徒に提供される求人情報は、ハローワーク(公共職業安定所)で承認を得た求人票。その情報をもとに生徒は原則一社に応募します。この「一人一社制」は高卒採用の代表的な独自ルールですが、ほかにも厳密な選考スケジュールや面接時の禁止事項など、さまざまな点で大学生の新卒採用とは異なります。
これらのルールを決めているのは、行政(厚生労働省・文部科学省)、経済団体、学校組織です。社会経験に乏しい高校生が適切な職業を選択できるよう、三者協定で厳格にルール化されています。
学校主導と民間主導では、どのような違いがありますか?
先に述べた高校生の一般的な就職活動のことを“学校斡旋”といいます。これに対して“自己開拓”といわれる就職活動は、高校生が自ら企業についての情報を収集し、企業と直接やりとりを行う方法です。
民間企業が主導する採用活動は“自己開拓”に分類され、高卒採用の独自ルールも基本的には適用されません。また“学校斡旋”では先生との関係構築が欠かせませんが、それに悩まされることなく、比較的自由に採用活動ができる点は民間主導の魅力ではないでしょうか。私たちでは“学校斡旋”、“自己開拓”での採用活動どちらの支援も行っています。
高校生にも職業選択の自由が保障されています。“自己開拓”での就職は全体の10~20%程度で、現状はそれほど多くありませんが、民間企業の参入が今後増えれば、両者を併用した採用活動が一般的になっていくでしょう。
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中小・ベンチャー企業に残された、最後のブルーオーシャン
なぜ、高卒採用が注目されているのでしょうか?
慢性的な人手不足を背景に、若手人材の確保に向けて高卒採用に取り組む企業が増加しています。大卒採用での競争の厳しさから、高卒採用に目を向ける動きもありますが、実はそれだけではありません。
これからのAI、IoT時代は、知識が仕事に与える影響は少なくなり、個人の能力が仕事の成果を左右するようになります。そんな未来を見据えたとき、若くて吸収力があり、さらにデジタルネイティブである高校生のポテンシャルは、企業にとって非常に大きな魅力です。採用における学歴の優先順位の低下と人手不足の加速によって、高校生への注目はさらに高まっていきますよ。
どのような企業にとってチャンスといえますか?
現状の高卒採用では、IT業界や総合職・営業職などの求人がほとんどありません。また高卒採用を実施している中小・ベンチャー企業もごくわずかです。ところが当社主催の合同企業説明会では、これらの企業のブースに毎回多くの高校生が集まります。つまり、大卒採用で苦戦している業界や中小・ベンチャー企業にも、高卒採用にはまだブルーオーシャンが残されているということです。
さらに業種業界を問わず、もうひとつの狙い目が地方採用。県内就職が中心の高卒採用では、都道府県ごとに求人倍率が異なります。求人倍率の高い首都圏の企業はこれを逆手にとり、競争が少ない地域の高校生へアプローチすることで、効率的な人材確保が可能です。高卒採用の県外就職は、全体の20パーセント未満(※)。実に80パーセントが県内就職であり、ここにも企業が採用競争に勝つ道が残されています。
求人数と求職者の需給バランスを考えれば、大卒・高卒ともに人手不足が加速し、人材確保が一層厳しくなることは間違いありません。高卒採用への戦略的な取り組みこそ、採用難を打開するカギとなるのです。
※就職者のうち県外に就職した割合:19.4%(令和2年度 文部科学省 学校基本調査 就職先別県外就職者数より)
高卒採用なら少ない費用と労力で、短期間での人材確保が可能
高卒採用のメリットを教えてください
まず、採用コストを低く抑えることができます。採用支援サービスを利用した新卒採用の場合、大卒の採用単価が80万円かかるのに対して、高卒採用では20~30万円程度。大卒の半分以下の費用です。
もう一つは、採用効率の良さ。高卒採用の面接は1回が基本です。さらに内定辞退がほとんどないため、大卒採用のように内定者フォローに労力を費やす必要もありません。少ない費用と労力で、短期間に人材確保ができるのは、高卒採用ならではのメリットでしょう。
課題にはどのような点が挙げられますか?
選考の時点でミスマッチが起こると、早期離職につながります。ミスマッチ自体は大卒にもある課題ですが、短期間で就職先を決める高校生の就職では、どうしてもミスマッチが起こりやすいですね。
また大学生と比べて社会経験が少ないことも、高校生の特徴です。社会人マナーやパソコンスキルなどは期待できないため、入社後の教育コストは大卒よりも高くなります。
加えて、高卒採用は18歳での採用です。2022年4月から成人年齢が18歳に引き下げられますが、飲酒・喫煙の年齢制限は引き続き20歳以上となるため、コンプライアンスの観点からも会社での管理が必要です。
22卒の求人数は大幅に回復も、オンライン化への対応に遅れ
2022年3月卒業の高卒採用の状況について教えてください
求人数は一部の業界を除いて、昨年の落ち込みから大幅に回復しました。しかし、緊急事態宣言の発令で学校訪問や職場見学などが制限される中、学校斡旋での就職活動では応募までのプロセスのオンライン化が進んでおらず、企業も高校生も苦労しています。
大学生では当たり前のオンライン就活。なぜ高卒採用では進まないのですか?
学校斡旋の就職活動では、高校生が利用するパソコンやタブレットを学校側で用意する必要がありますが、多くの高校ではさまざまな理由からそれができていないからです。一方、自己開拓での就職活動を行っている生徒は、そのような制限がないためオンラインで情報収集を行っています。
変化を柔軟に受け入れ、若手人材から選ばれる企業へ
5年後、新卒採用はどのように変化しているでしょうか?
大卒採用は就職サイトを通じた従来の採用に代わって、ダイレクトリクルーティングが主流になっていくとみています。
一方、高卒採用は、民間の採用支援会社を介した採用が増え、多様な業種業界へ都道府県をまたいで就職することが一般的になっているはずです。現在の大学生の就職活動に近づくイメージですね。
変化に対応するために、中小企業がすべきことはありますか?
これからは柔軟な働き方や多様性に対応できない企業は、就職先の選択肢から外れていきます。逆にいえば不人気といわれる業界でも、時代に合わせて変化を受け入れていくことで、若手人材から選ばれる可能性がでてくるのです。中小・ベンチャー企業は、柔軟かつスピーディな対応が得意なはず。その強みを活かして、選ばれる企業へと自ら変化することが求められると思います。
高校生が企業を見る目を養うことも必要ではないでしょうか?
働くことの意義やキャリア形成など就職に関する知見が増えれば、ミスマッチの防止につながります。そのため、高校生向けの啓発活動をこれまで以上に積極的に行う予定です。高校生が夢と希望をもって社会にでられるよう、しっかりと環境を整えていきたいですね。
高卒採用を検討中の中小・ベンチャー企業へアドバイスをお願いします
若手人材の採用は、今後ますます難しくなっていきます。これからは若手採用に注力できるかどうかが、事業成長の分かれ道になるといっても過言ではありません。18歳なら、10年経過してもまだ28歳。エネルギーに満ちた若い力は、企業に夢と希望を与えてくれる存在です。未来を見据えて今から動き出し、厳しい時代をポジティブに前進していただきたいですね。初めは予算をかけなくてもよいですから、まずはやってみることがとても重要ですよ。
当社では、高校生と直接交流できる国内最大級の合同企業説明会『ジョブドラフトFes』を主催しています。10月には、東京・大阪・福岡の3都市での開催を予定。会社の知名度ではなく、“人”の魅力で採用を行う中小・ベンチャー企業にとって、若手人材に自社の魅力をアピールできる絶好の機会です。今なら2022年度の入社にも間に合いますので、ぜひご参画ください。
■高校生のための求人情報サイト 『ジョブドラフト』 ■国内最大級の高校生向け合同企業説明会 『ジョブドラフトFes』
高卒採用については以下の記事でも解説しています。
⇒高卒採用のスケジュールとルールを解説|そもそも採用する方法は?
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