飲食店で外国人スタッフを雇用したい!雇用メリットや手続きの注意点を解説

飲食店 × 外国人スタッフ

深刻な人手不足が続く飲食業界で注目を浴びる「外国人雇用」。2019年に出入国管理及び難民認定法(以下入管法)が改正され、条件を満たせば飲食業界でも外国人を正社員として雇用できるようになったことで外国人労働者の受け入れが拡大しています。

本記事では、飲食店で「外国人を雇用するメリット」や「注意すべきポイント」について分かりやすく解説します。

日本の外国人労働者数は約166万人!外国人労働者は年々増え続けている

外国人労働者の推移(厚生労働省:「外国人雇用状況」の届出状況まとめ より作成 ※2019年10月末時点)

昨年、厚生労働省が行った調査によると日本で働く外国人労働者は2019年10月末時点で約166万人に達しました。雇用する事業所数も約24万カ所を超え、過去最多を更新しています。

業種別では製造業を中心に、卸売業・小売業、宿泊業・飲食サービス業で多くの外国人労働者が活躍しています。 今後も少子高齢化に伴い慢性的な人手不足が懸念される日本において、外国人労働者の受け入れはさらに加速するでしょう。

飲食業界で注目される「外国人雇用」

日本の労働力を確保するためには、「外国人雇用」に目を向ける必要があります。 外国人の雇用に前向きな気持ちではあるけれど、雇用の手続き方法がよく分からないという飲食業の採用担当者は多いのではないでしょうか?

このあと外国人を雇用するメリットや雇用する際に注意すべき点について、順番に解説していきます。

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飲食店で外国人を雇用するメリットと注意すべきこと

外国人雇用のメリット

外国人のお客様に対応できる

完璧な言語対応は外国人雇用の最大のメリットです。日本語を話せない訪日外国人のお客様への対応や接客において、言語対応をはじめスムーズなコミュニケーションを図れるため、満足度の高いサービスを提供できます。

労働力の確保・若い人材の確保

日本で働く外国人労働者の特徴は、20代〜30代の若年層が多く、言語のなかでも習得が難しいとされる日本語を学ぶなどモチベーションが高い人材が多いことです。このような外国人労働者を積極的に雇用することで、若手人材の確保と人手不足や採用難の解消が期待できます。

組織が活性化する

外国人スタッフの接遇や接客を、日本人スタッフが見て学ぶことで訪日外国人のお客様に対するノウハウを蓄積できます。また、外国人労働者の意欲に刺激や影響を受けて職場に良い活力が生まれたという事例もあり、組織全体の活性化が期待できるでしょう。

異文化交流ができる

異文化や外国語に馴染みの薄い日本人スタッフにとっては、語学力の向上や多様性を理解する貴重な機会です。日本とは異なる外国の文化や習慣、価値観に触れることは、外国人と日本人との相互理解を促進し、それぞれの成長につながるでしょう。

海外進出を担う人材育成

店舗の海外進出においては、その国の出身者を雇用することが最も有効です。現地の言葉だけでなく、その国の文化を知っていれば情報収集やマーケティングを行う際に力強い味方となってくれるでしょう。

外国人を雇用する際に注意すべきこと

業界や業種によって注意すべき点は多少異なります。 ここでは、飲食業において外国人を雇用する際に「注意すべきこと」を3つ挙げて解説します。

日本人と異なる雇用の手続き

外国人労働者の雇用は、日本人の雇用手続きと同じではありません。留学生、技能実習性、特定技能などのビザの種類によって手続きの方法が異なり、書類も煩雑です。外国人雇用に関連する法令・制度についての知識やノウハウがなければ、後々トラブルに発展する可能性があるため特に注意しましょう。

雇用の手続き方法については、このあとの「外国人を雇用する方法(手続きと注意点)」で詳しく解説します。

業務上必要な日本語や接客マナーを教える

業務上の基本的な会話は日本語であるため、日本人のお客様や日本人スタッフとのコミュニケーションは最も注意すべきポイントです。すでに外国人雇用を行っている店舗でも、採用の際に最も重視することは「日本語能力」と「コミュニケーション能力」の2つを挙げています。

しかし、初めからネイティブレベルの日本語を習得している外国人労働者は多くありません。採用前に面接などで日本語能力やコミュニケーション能力を確認する必要はありますが、言語や接客マナーは働きながら覚えていくもの。店舗側も外国人スタッフに歩み寄る姿勢と努力が大切です。

例えば、お客様に対してなぜお辞儀をしなければいけないのか、クレームに対して謝罪する理由や必要性について外国人スタッフが理解できるように根気よく説明することが必要です。

文化や価値観、意識の統一

外国人スタッフへ日本の文化や風習を教えるとともに、店舗側も外国人スタッフの出身国の文化や風習への理解が必要です。例えば、宗教上の理由から食べられないものがあったり、お祈りの時間が必要な場合もあります。また、人前で叱られるのがタブーとされている国も珍しくありません。それぞれの国の文化や風習への理解を怠れば、離職やトラブルに繋がります。

外国人労働者を雇用する際は、事前に出身国の文化や信仰に関する理解を深め、職場全体に協力を呼びかけましょう。

外国人を雇用する方法 <手続きと注意点>

外国人雇用には「在留資格」が必要!

外国人労働者が日本で働く場合、入管法上の法的資格である「在留資格」が必要です。就労できない在留資格や、一定条件のもと就労可能な在留資格があるので注意して確認しましょう。

就労制限がない在留資格

  • 永住者
  • 定住者
  • 日本人の配偶者等
  • 永住者の配偶者等

Point:4つの資格は就労の職種制限がない

「永住者」、「定住者」、「日本人の配偶者等」、「永住者の配偶者等」の4つの資格には就労に職種の制限がないため飲食業のどの職種にも就労が可能です。

就労可能な在留資格

  • 外交
  • 公用
  • 教授
  • 芸術
  • 宗教
  • 報道
  • 高度専門職
  • 経営管理
  • 法律会計業務
  • 医療
  • 研究
  • 教育
  • 技術、人文知識、国際業務
  • 企業内転勤
  • 興行
  • 技能実習
  • 技能

「技能」とは、日本の機関や団体などと契約することによって産業の特殊分野で活動できる資格のことです。飲食業において「技能」の在留資格は、外国料理の外国人調理師・料理人(コック、パティシエ等)が日本で調理師・料理人として働くために必要です。

どんなに優秀な人材であっても要件を満たしていなければ調理師・料理人として雇用することができません。また、雇用後も法律に則って外国人雇用を維持する必要があります。ポイントを押さえて詳しく解説します。

Point①:外国人調理師・料理人雇用には「技能資格」が必須

具体的に中華料理で例えると、中華料理のフルコースを調理することができる技術は特殊分野の「技能」として認められますが、ラーメンや餃子などの単品料理しか作れない場合には認められない可能性があります。

料理のほかにも、貴金属の加工を行う職人なども該当します。 しかし、上記で述べた「就労制限がない在留資格」を持っている場合は除きます。

Point②:調理師・料理人として10年以上の実務経験が必要(タイ料理を除く)

日本の外国料理店で外国人労働者が調理師・料理人として働くためには、外国特有の料理や食品に関し、その調理や製造について「10年以上の実務経験」が必要です。

どんなに素晴らしい調理技術があったとしても、実務経験が10年に満たない場合は「技能」の在留資格を取得することができません。 しかし、タイ料理だけは例外で5年以上の実務経験があれば在留資格を取得できます。

Point③:実務経験の証明は前勤務先から「在職証明書」を取得する

実務経験については、以前勤務していたレストランなどから「在職証明書」を取得することで証明できます。在職証明書には、在職先の住所、電話番号、在職期間等を明記し、証明者のサインと職務上の地位を記載してもらってください。

必ず全ての書類に目を通し、整合性があるかどうかを確認しましょう。整合性がない場合は書類の信憑性に疑義があるとして不許可になってしまうため、注意しましょう。

【調理師として「技能」の在留資格を取得するためのポイント】
✔️行おうとする活動が当該在留資格に該当するかどうか
✔️日本人が従事する場合に受ける報酬と同等額以上の報酬があるか
✔️採用する外国人に10年以上の調理師としての実務経験があるか
✔️採用する企業側の事業の適正性、継続性、安定性はあるか

check!入管法の改正で新たに新設された2つの在留資格

日本の深刻な人手不足を補うため、2019年4月に入管法が改正され、新たに2つの「特定技能」という在留資格が設けられました。それが「特定技能1号」と「特定技能2号」です。この特定技能を取得した外国人は、特定産業分野(※1)でのみ就労が認められます。

・特定技能1号

特定産業分野(※1)に属する相当程度の知識又は経験を必要とする技能を要する業務に従事する外国人向けの在留資格

・特定技能2号

特定産業分野(※現在は「建設」と「造船・舶用工業」の2分野のみ受入れ可)に属する熟練した技能を要する業務に従事する外国人向けの在留資格。

(※1) 特定産業分野

  1. 介護
  2. ビルクリーニング
  3. 素形材産業
  4. 産業機械製造業
  5. 電気・電子情報関連産業(14分野)
  6. 建設(特定技能2号のみ受入れ可)
  7. 造船・舶用工業(特定技能2号のみ受入れ可)
  8. 自動車整備
  9. 航空
  10. 宿泊
  11. 農業
  12. 漁業
  13. 飲食料品製造業
  14. 外食業

就労制限がある在留資格

・特定活動(※一定条件のもと就労可能)

ほかの在留資格に該当しない活動の受け皿として、法務大臣が個々の外国人について活動を指定する在留資格のことです。

「インターンシップ」や「ワーキングホリデー」も特定活動に該当します。この「特定活動」によって政府は「出入国管理及び難民認定法(入管法)」を改正することなく、日本に在留可能な活動の種類を増やせます。

農林水産省が日本食や食文化を海外に普及させることを目的に推進する『日本の食文化海外普及人材育成事業(※日本の食文化海外普及人材育成事業実施要領』の要件を満たしていれば、特定活動の在留資格で指定された日本料理専門店などで最長5年間、働きながら日本に滞在できます

Point:特定活動の詳細については「指定書」の記載内容で確認!
在留カードには「特定活動」としか記載されていないため注意が必要です。パスポートに添付されている「指定書(※)」の記載内容を確認しましょう。
(※)指定書:滞在理由や期間について第三者が見て理解できるように、「特定活動」の詳細が記載されているパスポート添付書類のこと

就労できない在留資格

  • 文化活動
  • 短期滞在
  • 研修
  • 家族滞在
  • 留学(※「資格外活動許可」を得れば働くことが可能)

Point:「留学」でも飲食店でのアルバイト就労は可能。ただし、アルバイトできる時間は原則1週間当たり28時間以下!

在留資格に含まれていない収益活動は禁止されています。しかし、留学生が学費等の必要経費を補う目的でアルバイトをする場合には、資格外活動の許可を受けることができます。

あらかじめ資格外活動の許可を受けた留学生は、許可された収益活動を行うことが認められます。 そのため「留学」の在留資格でも入国管理局で「資格外活動の許可」を得れば働くことができますが、週に28時間以上働くことは法律で禁止されているため注意が必要です

夏休みなどの「学則による長期休業期間」は1日8時間まで拡大されます。これは日本語学校・専門学校・短大・大学・大学院のすべてに適用されます。

 < 資格外活動許可の条件は2つ >
①資格外活動を行うことによって本来の在留活動が妨げられないこと 
②臨時的に行おうとする活動が適当と認められること

資格外活動が許可されれば在留カード裏面の資格外活動許可欄に「許可」と記載されます。留学生は、有効な在留期間期限まで許可された活動を行うことができます。しかし、単純労働や風俗関係業務に従事する場合は、上記の条件に当てはまらず許可されないことがあります。

資格外活動の許可の手続き方法

「資格外活動許可申請書」に在留カードを添付し、入国管理局・支局に申請。手数料は不要です。

重要チェック!「在留カード」確認ポイント8点

外国人を面接する際は、はじめに必ず「在留カード」の提示を求めましょう。 特別永住者の方を除き、在留カードを持っていない場合は原則として就労できません。もし、「在留カード」の確認を怠り不法就労させた場合は、事業主も処罰の対象になります。採用した外国人が不法就労者であることを知らなかった場合でも「在留カード」を確認していないなどの過失がある場合は処罰の対象になります。在留カードは下記の8点を確認しましょう。

  1. 氏名
  2. 生年月日
  3. 性別
  4. 国籍・地域
  5. 住居地
  6. 在留資格
  7. 就労制限の有無
  8. 在留期間

在留カードの表面

在留カード表面
画像出典:在留カードとは? | 出入国在留管理庁

在留カード裏面
画像出典:在留カードとは? | 出入国在留管理庁

6.の在留資格が「留学」だった場合は、7.の就労制限の有無は「就労不可」と記載されています。その際は、在留カード裏面の「資格外活動許可欄」を確認しましょう。「就労不可」であっても、「資格外活動許可欄」に次の記載がある場合のみ就労可能です。ただし、就労時間や就労場所には制限があるため注意しましょう。

記入① 「許可(原則週28時間以内・風俗営業等の従事を除く)」
記入② 「許可(資格外活動許可書に記載された範囲内の活動)」

※「資格外活動許可書」も一緒に確認しましょう。 7.の就労制限の有無欄に「一部就労制限」がある場合は、下記の内容を確認しましょう。

記入① 「就労制限なし」の記載がある場合:就労内容に制限はありません。 
記入② 「在留資格に基づく就労活動のみ可」:在留資格業務内容を確認しましょう。 
記入③ 「指定書記載機関での在留資格に基づく就労活動のみ可」(在留資格「技能実習」) 
記入④ 「指定書により指定された就労活動のみ可」:(在留資格「特定活動」)

外国人の雇用手続きの流れ

  1. 在留資格の確認
  2. 労働契約の締結(労働条件の相互確認・雇用契約書の作成)
  3. 就労ビザ申請
  4. 受入準備
  5. 雇用開始(入社後の手続など)

繰り返しますが、外国人を採用する前に必ず就労できる在留資格があるかどうかを必ず確認しましょう。在留資格の種類が「永住者」、「定住者」、「日本人の配偶者等」、「永住者の配偶者等」の4つの資格であれば就労に職種の制限がないため、日本人と同じように働くことができます。

また、採用後のトラブルに発展しないためにも、外国人労働者と店舗側が1日の労働時間やシフト日数、給料などの労働条件や仕事内容について納得した上で「雇用契約書」を作成しましょう。雇用契約書のフォーマットは、日本人の雇用契約書と同じもので問題ありません。この「雇用契約書」は就労ビザを申請する際に必要なので、就労ビザ申請前に作成しておきましょう。

就労ビザに問題がなければ、労働者の氏名・在留資格・在留期間などをハローワークへ提出して雇用の契約は完了です。

まとめ

少子高齢化による人手不足やグローバル化の進展によって、日本のインバウンド市場はますます大きく発展するものと予測されます。今後はこれまで以上に飲食業界で外国人労働者の採用や雇用への取り組みが重視されるでしょう。課題も多い外国人労働者の雇用には入管法の理解が欠かせません。

また、外国人スタッフとの意思疎通が難しいと悩む店舗側も、相互理解を深め成長するためには積極的に勉強会や研修などを実施し、外国人スタッフの教育やサポートに注力する必要があるのではないでしょうか。

今回は、飲食店で「外国人を雇用するメリット」や「雇用の際に注意すべきポイント」を中心にご紹介しました。今回の記事が外国人スタッフ雇用の参考になれば幸いです。

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監修者
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辻 惠次郎

ネットオン創業期に入社後、現在は取締役CTOとしてマーケティングからプロダクトまでを統括。
通算約200社のデジタルマーケティングコンサルタントを経験。特に難しいとされる、飲食や介護の正社員の応募単価を5万円台から1万円台に下げる実績を作り出した。
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