日本社会の少子高齢化に伴い、介護サービスの需要が高まっている一方で、介護業界全体で人手不足が続いています。
それらの課題を解決するために効果的なのが、介護派遣です。
「人手が足りず、派遣スタッフを採用したい」
「派遣スタッフを採用するまでの流れを知りたい」
こういったお悩みを持つ事業所は多いのではないでしょうか。
そこで今回は、介護人材を派遣するサービス「介護派遣」について、特徴やメリット・デメリットなどを、介護業界の現状を踏まえて解説します。
人手不足にお悩みの介護事業所は、ぜひ当記事をお役立てください!
目次
介護派遣とは何か?
介護派遣とは、人材派遣会社に雇用された介護人材を、依頼のあった介護事業所に派遣する仕組みのことです。
「人材派遣会社の介護特化バージョン」とイメージすると良いでしょう。
事業所にスタッフが派遣されるまでの基本的な流れは、下記のとおりです。
1 自社が求める人材について派遣会社とヒアリング 2 派遣会社のデータベースに登録された人材からベストな人材を選出 3 自社とのマッチング 4 職場見学や契約締結 5 勤務開始 |
介護派遣の主な特徴
介護派遣サービスの特徴について「給与」と「働き方」の観点から説明します。
給与は派遣会社から支給
上図のとおり、派遣スタッフの給与は、派遣会社から支給されます。
これは、雇用契約自体が、派遣会社と介護スタッフの間で結ばれるためです。
派遣先の介護事業所は、派遣スタッフに対する指揮命令権を持ちます。直接的な雇用関係はありませんが、事業所は、派遣スタッフが業務にあたるために、適切な指示や管理をする義務を担います。
介護派遣には2種類の働き方がある
介護スタッフの派遣方法には、「登録型派遣」と「紹介予定派遣」の2種類があります。
自社の目的によってどちらの介護派遣を利用するかが変わるので、違いを明確にしておきましょう。
①登録型派遣
登録型派遣は、介護スタッフが介護事業所に派遣されている期間だけ、介護スタッフと介護派遣会社に雇用関係が生まれる仕組みです。
一般的に「人材派遣」という言葉が使われるときは、多くの場合、この登録型派遣を指します。
派遣期間が終われば、介護派遣会社と派遣スタッフの雇用関係は終了し、派遣スタッフは新たな就業先を探します。
②紹介予定派遣
紹介予定派遣とは、派遣期間を終えた派遣スタッフが派遣先と直接契約を結ぶことを前提とした形態です。
事業所からすると、派遣期間に自社とのマッチ度や能力などを見極めたうえで契約を決めることができます。ただし、両者の合意がないと直接雇用に切り替わりません。
詳しくは次の段落で解説しますが、紹介予定派遣の派遣期間は登録型より短く、最大6か月と決められています。
1つの派遣先の同部署で働ける期間が決まっている
2015年の改正労働者派遣法により、同一の組織単位で働ける期間は「最長3年」「最短31日」と定められています。この「同一の組織単位」とは「部署」を指すため、部署を異動すれば、同じ企業で3年以上就業してもらうことが可能です。
最長期間について、派遣業界では「3年ルール」とも呼ばれています。
ただし、「派遣会社と派遣スタッフ間で無期雇用派遣契約が結ばれている場合」「派遣スタッフの年齢が60歳以上の場合」は3年ルールが適用されません。
また、介護事業所において、過半数労働組合等への意見聴取のうえ、3年を限度として派遣期間を延長することも認められています。
【参考】
派遣先の皆様へ|厚生労働省
派遣社員と正社員・パート・アルバイト・契約社員の違いは?
派遣社員と他の雇用形態の違いを、下表にまとめています。
各項目を比較すると、派遣社員の働き方は他の雇用形態と大きく異なることが分かります。
派遣社員 | 正社員 | パート・ アルバイト |
契約社員 | |
雇用契約先 | 派遣会社 | 勤務会社 | 勤務会社 | 勤務会社 |
給与支払先 | 派遣会社 | 勤務会社 | 勤務会社 | 勤務会社 |
労働条件の交渉 | 基本的には派遣会社(派遣スタッフと一緒に行うことも) | 自分で勤務会社に行う | 自分で勤務会社に行う | 自分で勤務会社に行う |
契約期間の有無 | 有 | 無 | 無 | 無 |
介護派遣を利用するメリット
ここからは、介護派遣を使って人材を集めるメリットについて紹介します。
自社のニーズに合わせた採用ができる
自社の希望を伝えたうえでスタッフを紹介してもらうため、求める人材を確保できることがメリットです。また、就業期間が決まっていることから、スポットで依頼するといった柔軟な採用活動が可能になります。
「入所者が増える繁忙期に合わせて3か月就業してもらいたい」
「半年後にサービス拡大を目指しているので、派遣期間終了後に正社員になりたい方に応募してほしい」
このような活用の仕方ができるのです。
派遣社員という雇用形態ならではのメリットだと言えます。
残業管理を徹底できる
派遣スタッフは、介護派遣会社との間で雇用契約を結んでいるので、その契約内に残業ができない旨が記載されていれば、企業は残業をさせることができません。
一見するとデメリットのように聞こえるかもしれませんが、介護事業所は不規則な勤務形態やイレギュラーな対応が多く、残業管理が難しい傾向にあります。
そのため、企業にとって必要のない残業を防止でき、残業管理を徹底することができます。
残業管理がしやすいと、労務管理における効率性が高まり、組織全体の働きやすい職場づくりへとつながります。
生活スタイルに合わせられるため離職率低下防止が期待できる
求職者は、働く曜日や時間帯、勤務場所などの希望を伝えたうえで、条件に合う介護事業所とのマッチングを進めます。
そのため、自社に紹介されるスタッフは、本人の生活スタイルが自社とマッチする場合が多いのです。
また、紹介予定型の派遣会社を利用する場合、派遣期間のうちに「自社に合うかどうか」を入念に確認できます。晴れて直接雇用となった場合、離職する可能性が低く、長期にわたって活躍してくれるでしょう。
下記の記事では、Indeedで派遣登録者を増やすメリットについて解説しています。
⇒Indeedで派遣登録者を増やすメリット | 4つの事例から見る効果とコツ
担当者が入ることでトラブルに対処しやすい
採用活動においては、企業がどれだけ気を付けていても、書類ミスや認識齟齬、業務のミスマッチなど、大なり小なりトラブルが起こる可能性はゼロにはできません。
介護派遣を利用すれば、派遣スタッフとの間に専門の担当者が入ってくれるため、トラブルを最大限に抑えられます。
例を挙げると、労働者側から「思っていた業務と違う」という声があった場合、担当者が間に入り、認識齟齬が発生した原因の解明や派遣スタッフへの説明をしてくれる場合があります。
合わない社員は更新停止、契約解除などがしやすい
「派遣社員が自社に合わない」と感じた場合、契約期間満了日の30日前までに派遣会社に連絡することで、契約更新を停止できます。
また、自社の都合によって契約期間の途中で解除する場合、就業先の確保や休業手当の支給などの措置を講ずることで認められます(派遣法第29条の2)。
介護の仕事は、お年寄りの身体を直接支えたり、家族のケアをしたり、責任が大きい仕事ばかり。社員が合わない場合、利用者にも負担をかけてしまうかもしれません。
社員への伝え方や対応には十分に注意しなければなりませんが、更新停止や契約解除ができるのをメリットに感じる事業所は多いでしょう。
【参考】
派遣会社の事業所の皆様へ《派遣契約の中途解約に伴い派遣労働者を用意に解雇しないでください》|首都圏労働局
介護派遣を利用するデメリット
介護派遣を利用することは介護事業所の人材不足解消につながりますが、いくつかのデメリットもあります。
ここでは、介護派遣を利用した際に起こりうるデメリットについて紹介します。
ボーナス・退職金がなくモチベーション低下につながる
派遣会社と介護事業所の調整によりますが、一般的に、派遣スタッフに対してボーナスや退職金は支払いません。
これは、派遣社員の基本給にボーナス分が上乗せされているためで、現に、派遣社員の時給は、パートやアルバイトと比べて多いことがほとんどです。
ボーナス・退職金の支払いがないと、自社にとって人件費を節約できるメリットがあります。しかし、派遣スタッフにとっては、いくら頑張っても一定の賃金しか受給できないので、モチベーションの低下につながる可能性があります。
専門的な業務を任せられない
雇用できる期間が決まっていることや、契約更新が停止になる可能性があること、派遣会社との間で結んだ契約内容に沿って就業させなければならないことなどから、どうしても専門的な業務を任せにくくなります。
もし派遣スタッフに専門的な業務を任せようと考えているならば、マッチングの時点で、「どのような業務を任せるのか」「何の資格が必要なのか」などを明確に伝えておき、契約内容に盛り込む必要があります。
認識相違があるとトラブルが発生する可能性がある
自社と介護スタッフの間に派遣会社がはいってコミュニケーションを取ることが多いため、認識齟齬が生じる可能性があります。
例えば、「自社の業務にマッチしない介護スタッフが派遣された」「残業できると聞いていたのに、採用後に残業できないと言われた」といった事態になることがあるでしょう。
認識齟齬を防止するためには、マッチングの段階でいかに自社の希望を派遣会社と擦り合わせるかが大切です。
契約終了により長く働いてもらえない
登録派遣型の人材会社を利用する場合、どれだけ理想的な人材を確保できたとしても、原則として最大3年の派遣期間が終わったら、それ以上は就業してもらうことができません。
「この人に現場を引っ張るリーダーになってもらいたい」
「行く行くは管理職を任せたい」
そう思えるようなスキルや人柄を持っていても、実現させるのは難しいでしょう。
どれだけ優秀な人材と出会えても、自社で働いてもらえる期間に上限があるのは、多くの事業所にとって悩みどころとなるはずです。
介護派遣に向いている人・向いていない人の特徴
介護派遣を利用している人材の傾向を知るために、介護派遣に向いている人・向いていない人の特徴について、それぞれ紹介します。
介護派遣に向いている人の特徴
・一時的な雇用関係であっても、高いプロ意識を持って働ける人 ・兼業や副業をしたい、またはプライベートの時間をしっかり確保したい人 ・扶養内で働きたいなど、収入をコントロールしたい人 ・短期間で特定の業務経験を積みたい人 ・異動のない環境で働きたい人 ・新しい環境への適応力がある人 |
介護派遣と通常雇用の大きな違いは、やはり雇用関係が一時的であり、かつ労働機会を調整しやすいことです。
限られた期間の中でも高い意識を持って働ける人や、仕事以外の時間もしっかりと確保したい人は、介護派遣の利用が向いています。
介護派遣に向いていない人の特徴
・ひとつの会社内でステップアップしたい人 ・組織の一員として働きたい気持ちが強い人 ・施設利用者や職員と長期的な関係を築きたい人 ・新しい環境に飛び込むことが苦手な人 ・専門性のある業務に集中的に取り組みたい人 |
ひとつの企業に長く勤務したいと思っている人や、帰属意識を持って働きたい人など、正社員的な働き方を希望している人は介護派遣に向いていない可能性が高いです。
採用側からすると、「3年後に開始するサービスのリーダーとして準備を任せたい」というように、長期的なビジョンの下で雇用するには適していないでしょう。
介護業界の現状は?
少子高齢化の進行に伴い、高齢者が増加する一方で労働者は減少しているため、介護職の需要は年々高まっています。
では、介護業界の具体的な現状について、市場規模や有効求人倍率などを踏まえて解説します。
市場規模は拡大傾向に
2025年度の介護業界の市場規模は18.7兆円にも上ると見込まれています。
2014年度における市場規模が8.6兆円であることを考えると、数年のうちに大きく市場が拡大していると分かります。
下記は、厚生労働省が公開している人口の推移予測です。
(出典:我が国の人口について|厚生労働省)
2025年に65歳以上の人口が29%に、2040年には35%になると見込まれています。
見込み通りいけば、今後も介護需要が大きくなり続け、市場規模はさらに拡大するでしょう。
介護業界の有効求人倍率について
厚生労働省が実施する調査によると、介護業界の有効求人倍率は下記のとおりです。
2018年 | 2019年 | 2020年 | 2021年 | 2022年 |
4.01倍 | 4.31倍 | 4.03倍 | 3.60倍 | 3.64倍 |
2015年が2.59倍だったことを考えると、ここ数年高い倍率で推移していると分かります。
2020年から2021年にかけて倍率は下がっていますが、これは新型コロナウイルス感染症の流行による経営難によって、多くの企業の採用が停滞したことが原因だと見込まれます。
現に、2021年から2022年にかけては上昇していますし、少子高齢化が今後さらに進行することを考えると、有効求人倍率は同水準を維持するか、より高まるのではないでしょうか。
介護業界の抱える課題
市場規模が拡大傾向にある一方、多くの介護事業所を悩ませているのが「人手不足」です。
下記は、公益財団法人 介護労働安定センターが、介護事業所の人手不足について調査したものです。
(出典:令和3年度「介護労働実態調査」結果の概要について|公益財団法人 介護労働安定センター)
6割以上の事業所が人手不足を感じていることが分かります。
業界全体で人手が不足している中、事業所には「採用した人材にいかに能力を発揮してもらうか」「人の手がかからない業務をいかに効率化するか」などが求められています。
ちなみに同調査では、「労働者の労働条件等の悩み、不安、不満等」という項目においても、「人手が足りない」が52.3%で最多です。人手不足は、事業所側だけでなく、労働者にとっても悩みの種になっているのです。
介護派遣は売り手市場に
一人の介護人材に対して、複数の事業所が採用を争っている状況であることから、介護派遣は売り手市場となっています。
介護派遣を利用する事業所の中には、「大まかな希望を派遣会社に頼めば、理想的な人材を紹介してくれるだろう」と考える人もいるかもしれません。
ですが、派遣スタッフに複数の就業先がある現状では、求める人材像を明確にしたうえで細かく条件設定しなければ、理想的な人材とのマッチングが難しいといえるでしょう。
介護業界の人手不足を解消するコツは?
介護派遣を活用して人手不足を解消するために、事業所側が押さえておきたいポイントを紹介します。
・自社の現状を整理して、求める人材像を明確にする ・派遣スタッフに任せる業務内容を明確にして、派遣会社と派遣スタッフに事前に伝える ・派遣スタッフの受け入れ体制を確立させる ・「登録型派遣」「紹介予定派遣」のどちらが適しているかを吟味する |
※介護事業所が採用活動を成功させるポイントについて、下記の記事で詳しく解説しています
⇒介護業界が抱える人手不足の課題を解決するための4つの採用ポイント
まとめ
社会的に介護需要が大きくなる中、「人手不足」は今後も多くの介護事業所を悩ませることになると見込まれます。
介護派遣をうまく活用することは、介護事業所が安定的に成長するうえで、ひとつの鍵となるかもしれませんね。
なお、採用面でお悩みの介護事業所に、是非一度使っていただきたい採用マーケティングツールが『採用係長』です。
採用係長は、最短2分でオリジナル採用サイトを作れるツールで、『求人ボックス』や『スタンバイ』といった5つの求人検索エンジンとボタン一つで連携できます。 当社ネットオンのスタッフが運用をご支援し、皆様の抱える採用課題を解決いたします!
介護職の豊富な採用実績もあり無料お試しプランもご用意していますので、気になった方はお気軽にお問い合わせください。
→採用係長に関するお問い合わせはこちらから
介護業界における導入事例
採用係長は、採用業務を効率的に進める30個以上の機能を搭載。介護業界においても、多くの事業所様にご利用いただいております。
同じカテゴリ内の人気記事