近ごろ、「SDGs(Sustainable Development Goals)」を耳にする・目にする機会が格段に増えてきましたね。
詳しくは分からないけれど、街中や電車の中吊り広告などで「カラフルな画像を見たことがある」という方もいるかもしれません。
(出典:持続可能な開発目標(SDGs)達成に向けて日本が果たす役割|外務省)
SDGsは、「持続可能な開発目標」を意味します。現在、世界中で目標達成に向けた取り組みが行われている最中です。
SDGsは、企業の人事・採用業務とも結びつきが強い取り組みですが、特に重要視していなかった人は多いのではないでしょうか。世界共通の目標であるSDGsを達成するためには、企業の人事・採用担当者が関係する制度内容を理解したうえで、組織に浸透させる必要があります。
本記事では、SDGsが人事・採用とどのように関係しているのかを解説します。SDGsに取り組んでいる企業事例も紹介するため、人事・採用担当者は、ぜひ参考にしてください。
目次
最近話題のSDGsとは?
SDGsとは、「Sustainable Development Goals」の略称であり、「持続可能な開発目標」を意味します。2015年9月開催の国連サミットで採択され、国連に加盟している全193ヵ国が2030年までに達成する目標として掲げられました。
SDGsは、下記のとおり17の目標で構成されています。
SDGsを構成する17の目標 |
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(出典:持続可能な開発目標(SDGs)達成に向けて日本が果たす役割|外務省)
このように、貧困や環境問題、人権問題など、平和を実現するためのさまざまな要素がSDGsに盛り込まれています。日本でも、官民が連携を取りながらSDGsに取り組んでいる最中です。
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実は人事・採用との関連が深いSDGs
SDGsは、企業の人事・採用面にも深く関わっています。特に関係が深い目標は下記の4つです。
【人事・採用との関係が深い4つの目標】 目標3:すべての人に健康と福祉を 目標5:ジェンダー平等を実現しよう 目標8:働きがいも経済成長も 目標10:人や国の不平等をなくそう
ここからは、上記4つの目標について、人事・採用とどのように関係しているかを解説します。具体的な業務も挙げるため、自社の状況をイメージしながら整理してみてください。
目標3:すべての人に健康と福祉を
人を雇う立場にある企業は、すべての従業員が心身の健康を保つために配慮しなければなりません。労働基準法を超える残業を行わせていないか、有給休暇取得による適度なリラックスを図っているかなど、さまざまな視点から気を配ることが重要です。 健康増進のためには、健康や福祉に関する福利厚生を、企業独自に導入する方法もあります。健康・福祉に関する代表的な福利厚生は、下記のとおりです。
- 健康診断や人間ドックの費用負担
- フィットネスクラブの費用負担
- 社内窓口の設置や企業専任カウンセラーの配置
- 社員食堂の導入
など 従業員のニーズや組織の予算などを考慮しながら、導入を検討してみてください。
目標5:ジェンダー平等を実現しよう
「ジェンダー平等の実現」も企業が取り組むべき重要な目標です。雇用機会や賃金、その他待遇において性別を理由にした格差をなくす、セクハラを是正するなどの取り組みが挙げられます。
LGBTといった、性的少数派の人が働きやすい職場環境の整備も重要です。たとえば、「彼氏(彼女)は作らないの?」と性別を限定する質問や、「結婚しないんですか?」など結婚を前提とした発言は、相手を悪意なく傷つけている場合があります。性的少数派は、従業員だけでなく顧客や取引先にいることも理解しておかなければなりません。
企業としては、組織全体の風潮や従業員の価値観を根本的に変える工夫が必要です。リーダー層や人事部門だけでなく、全従業員の理解を深めるために取り組みを進めてください。
なお、労働施策総合推進法では、求人票における性別や年齢の制限を禁止しています。たとえば、「30歳以下の男性限定」「女性のみ応募可」のような記載は認められません。特定の層にアプローチしたい場合は、対象となる層が「入社したい」と思えるような、魅力的な文章の記載が重要です。
※求人票に記載する性別欄については以下の記事で解説しています。
年齢・性別は制限できない?求人で特定の層を集めたいときの注意点と書き方
目標8:働きがいも経済成長も
目標8として定められている「働きがいも経済成長も」も、人事・採用と関わりが深い目標のひとつです。人事部門は、組織の職場環境を整備するための重要な役割を担っています。
特に関係が深い業務のひとつが、人事評価制度の導入・運用です。頑張りやスキルなどが正確に評価され、待遇とも連動することで、従業員は働きがいを実感できるようになるでしょう。
一方で、自分の頑張りが適切に評価されなければ、働きがいは感じられず、離職してしまう可能性もあります。結果として、組織の生産性は下がり、経済成長にもつながらないでしょう。 自社における従業員の「働きがい」に関係する業務の在り方を、一度見直してみてください。
目標10:人や国の不平等をなくそう
SDGsでは、あらゆる要素における人・国の不平等是正を目標として掲げています。企業においては、賃金や待遇などの取り扱いについて、従業員間の不平等をなくすための取り組みが必要です。企業における人・国の不平等をなくす取り組みとしては、たとえば下記が挙げられます。
- 男女の均等な採用や昇給・昇格
- 雇用形態による待遇格差是正
- 外国人労働者と日本人労働者の待遇格差是正
- 障害者雇用の促進
など 不平等をすべてなくすためには抜本的な改革が必要であり、長い時間を要します。企業として取り組めることをひとつずつ整理し、着実に改革を進めていきましょう。
人事・採用に関連したSDGsの企業事例
日本では、すでにいくつかの企業がSDGsに関連した人事・採用に取り組んでいます。自社におけるSDGsの取り組みを具体的にイメージするために、ここからは企業事例を見ていきましょう。 今回紹介する事例は、「アートコーポレーション株式会社(アート引越センター)」「東京個別指導学院」「佐川急便」の3社です。
アートコーポレーション(アート引越センター) 様
(出典:アートコーポレーション 公式サイト)
引越大手のアートコーポレーション様では、「ごみゼロ」「事故ゼロ」を目指して、環境や安全を重視した取り組みを進めています。2020年、2021年と「健康経営優良法人」に選定されており、SDGsに対して積極的に取り組んでいる企業の代表です。具体的な取り組みの一例を下記に挙げています。
【業界初となる定休日の設置】
アートコーポレーション様は、業界で初となる定休日の導入を実施しました。繁忙期をのぞく毎週火曜日または水曜日を定休日とするよう、全支店に義務付けており、労働環境の改善を図っています。
【女性活躍推進プロジェクト「Weチャレンジ」の実施】
「Weチャレンジ」は、女性従業員で構成された社内プロジェクトです。「誰もがいきいきと暮らしやすい環境づくり」を目指し、2015年から開始されました。主体的な活動が特徴的であり、社会貢献活動や広報活動など、対外的な活動も積極的に実施しています。
東京個別指導学院 様
(出典:東京個別指導学院 公式サイト)
個別指導塾を運営している東京個別指導学院様は、将来を担うこどもに関わる企業として、持続可能な社会への貢献に取り組んでいます。東京個別指導学院様のSDGsに関する代表的な取り組みのひとつが「パートナーズ・アルムナイ組織」です。
【パートナーズ・アルムナイ組織】
「パートナーズ・アルムナイ組織」は、退職した講師OB・OGと良好な関係を維持するための組織です。現役講師に向けたセミナーなどを通して、アルムナイが活躍している業界について、知識の伝達や情報共有を行っています。
業界を超えた繋がりによって、従業員一人ひとりが自分なりの「やりがい」を見つけやすくなる点が特徴です。
佐川急便 様
(出典:佐川急便 公式サイト)
運送大手の佐川急便様も、SDGsに関する人事・採用面での取り組みを進めている企業のひとつです。佐川急便様は、「貨客混載と地域振興」や「モーダルシフトの推進」、「レジリエンス強化とエネルギーの多様化」など多くの取り組みを行っています。特に注目すべき取り組みのひとつが、「生涯現役社会の構築」です。
【生涯現役社会の構築】
佐川急便様では、シルバーセンターなどに登録している高齢人材を、自社の配達員として雇用しています。働く場所の提供による生涯現役社会の実現だけでなく、地域コミュニケーションの活発化や人手不足の解消など、幅広い相乗効果を生んでいる点が特徴的です。また、雇用した高齢者には、自転車や徒歩で小さい荷物の運送を任せるため、環境への負担軽減にもつながっています。
まとめ
SDGsは、「持続可能な開発目標」を意味し、国連に加盟している全193ヵ国が2030年までに達成すべき共通目標です。より良い地球環境を作るための17目標が設定されており、企業としても、経営に落とし込みながら取り組みを進める必要があります。
人事・採用と特に関係が深い目標が、「すべての人に健康と福祉を」「ジェンダー平等を実現しよう」「働きがいも経済成長も」「人や国の不平等をなくそう」の4つです。 本記事では、各目標の達成に向けて積極的に取り組んでいる企業を3社紹介しました。ぜひ、自社でSDGsに取り組む際の参考にしてください。
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