【法律】時間外労働の上限規制とは?改正内容・罰則規定など中小企業が気を付けるべきポイントを解説

時間外労働の上限規制の告知

2018年に成立した働き方改革関連法に基づき制定された、時間外労働の上限規制。大企業ではすでに2019年4月1日から適用されており、中小企業は2020年4月1日からの施行が決定しています。

今回の法改正では、法律によって時間外労働の上限が規定されました。一部適用外の業務を除くすべての企業において、従業員は時間外労働の上限を超えて働くことができなくなります。

また複数の指標で時間外労働の上限が設けられるため、これまで36協定によって時間外労働について合意済みの企業においても、新たな協定が必要です。

時間外労働の上限規制に係る法改正前後の変更点を踏まえ、施行に向けて中小企業がすべきことを紹介します。

「時間外労働の上限規制」の目的とは

時間外労働の上限規制の目的は、厚生労働省が公開する『時間外労働の上限規制 わかりやすい解説』において、以下のように説明されています。

長時間労働は、健康の確保を困難にするとともに、仕事と家庭生活の両立を困難にし、少子化の原因、女性のキャリア形成を阻む原因、男性の家庭参加を阻む原因となっています。

長時間労働を是正することによって、ワーク・ライフ・バランスが改善し、女性や高齢者も仕事に就きやすくなり労働参加率の向上に結びつきます。

このため、今般の働き方改革の一環として、労働基準法が改正され、時間外労働の上限が法律に規定されました。

引用元:厚生労働省・都道府県労働局・労働基準監督署(時間外労働の上限規制 わかりやすい解説)

日本が抱えるさまざまな課題の原因となっている長時間労働を是正するために、法改正が行われたということですね。

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時間外労働の上限規制における3つのポイント

時間外労働上限規制の改正前後(厚生労働省) 画像出典:厚生労働省 働き方改革特設サイト(時間外労働の上限規制)

労働基準法改正後の時間外労働の上限規制について理解を深めるために、3つのポイントを解説します。

ポイント1 上限を超える残業はできない

時間外労働の上限が法的に定められたことで、従業員は上限を超える残業ができなくなりました。改正前後を比較してみましょう。

  改正前 改正後
法定労働時間上限 1日8時間/週40時間 1日8時間/週40時間
時間外労働の上限(原則) 月45時間/年360時間 月45時間/年360時間
時間外労働の上限(臨時的な特別の事情がある場合) 年6回(6ヵ月)まで

・年720時間以内

・月100時間未満(休日労働を含む)

・複数月平均80時間以内(休日労働を含む)

法的強制力 なし(行政指導のみ) あり(罰則)

「残業時間の上限は、原則として月45時間・年360時間。臨時的な特別の事情がなければこれを超えることはできない」とされており、この原則は法改正前後で変わりありません。

改正前後におけるもっとも大きな変化は、時間外労働の上限規制が法的強制力をもった点です。法律化に伴い上限時間が明確に定められたことで、上限時間を超える時間外労働はいかなる事由においても規制されることになります。

ポイント2 特別条項付き36協定も、上限が適用される

法定労働時間を超えた労働が見込まれる企業では、36協定(時間外労働・休日労働に関する協定)を労使間で締結し、届出をしているはずです。

中には、臨時的な特別の事情がある場合に限って残業時間の上限超過を認める「特別条項付き36協定」の締結を行っているケースもあるでしょう。

従来の労働基準法では、特別条項付き36協定を締結していれば、残業時間の上限を超えての労働が可能でした。しかし、今回の法改正によって特別条項付き36協定においても、以下のように時間外労働の上限が設けられることになります。

  • 時間外労働が年720時間以内
  • 時間外労働と休日労働の合計が月100時間未満
  • 時間外労働と休日労働の複数月の平均が80時間以内(「2ヵ月平均」「3ヵ月平均」「4ヵ月平均」「5ヵ月平均」「6ヵ月平均」のすべてにおける、ひと月当たりの平均)
  • 時間外労働が月45時間を超えることができるのは、年6ヵ月が限度

ポイント3 罰則規定がある

これまで時間外労働の上限について設けられていた基準は、法律ではなく大臣告示です。そのため違反した企業に対して行政指導は行われるものの、罰則はありませんでした。

今回の改正では時間外労働の上限が法律で定められ、違反者には6ヵ月以下の懲役または30万円以下の罰金が課せられます。

施行開始時期と適用外の業務

時間外労働の上限規制は、中小企業においては2020年4月1日からの施行が決定しています。

ただし、2020年4月1日以降に締結する36協定には時間外労働の上限規制が適用されますが、3月31日以前に締結した36協定の終了日が4月1日以降の場合は、その協定の初日から1年間は引き続き有効とされており、終了日までは上限規制が適用されません。

また自動車運転業務、建設事業、医師など、一部の業種では5年間の猶予期間が設けられています。加えて、新技術・新商品開発等の研究開発業務は上限規制の適用外とされ、医師の面接指導や有給休暇の付与などが新たに義務付けられました。

時間外労働の上限規制に向けて中小企業がすべきこと

 時間外労働の上限規制は、法定労働時間を超えて従業員を働かせることのない企業もしくは規制適用外の業務でない限り、すべての企業が法律に即して対応しなければなりません。

法改正に対応するためには、それに向けた手続きや社内整備が必要です。

新36協定の締結

今回の法改正で時間外労働に上限が設けられたことにより、36協定で取り決める内容にも変更が生じています。 新しい36協定で定める必要のある事項は、以下の通りです。

  • 労働時間の延長、または休日に労働させることができる事由
  • 労働時間の延長、まは休日に労働させることができる労働者の範囲
  • 対象期間(1年間に限る)
  • 協定期間の起算日
  • 有効期間
  • 対象期間における「1日」「1ヵ月」「1年」について、労働時間を延長して労働させることができる時間または休日

さらに、原則となる時間外労働の限度時間(月45時間・年360時間)を超えて臨時的に時間外労働させる必要がある場合は、特別条項を協定します。特別条項の協定に必要な事項は、以下の通りです。

  • 1ヵ月の時間外労働+休日労働の合計時間数 (100時間未満で設定)
  • 1年の時間外労働時間 (720時間以内で設定)
  • 限度時間を超えることができる回数(年6回以内で設定)
  • 限度時間を超えて労働させることができる場合の事由
  • 限度時間を超えて労働させる労働者に対する健康および福祉を確保するための措置
  • 限度時間を超えた労働に係る割増賃金率
  • 限度時間を超えて労働させる場合における手続き

黄色のハイライトの項目が、新しく設定された取り決め事項です。他の項目については旧36協定と内容は同じですが、法的強制力を持つようになりました。

届出の新しい様式

届出は「限度時間を超えない場合(一般条項)」と「限度時間を超える場合(特別条項)」の2つの様式が用意されています。施行後は残業や休日労働の必要性に応じて新しい様式での届出が必要です。 新しい様式での具体的な記載方法は、厚生労働省のホームページで紹介されています。

厚生労働省 36協定届の記載例(様式第9号[第16条第1項関係])

厚生労働省 36協定届の記載例(特別条項)(様式第9号の2[第16条第1項関係])

労働時間の適切な管理

時間外労働が上限を超えないようにするためには、これまで以上に厳格な労働時間管理が求められます。施行後は休日労働を含めた時間外労働の複数月平均を常に把握し、上限を超えないように管理する必要があるからです。

しかし、管理のために業務が増えてしまっては本末転倒ですので、アナログ管理は現実的とはいえません。勤怠システムの導入や既存システムの改修を検討し、新たな制度に適応できる体制を整備しましょう。

業務効率化

新制度に対応するための手続きや管理体制の構築と平行して、残業そのものを減らす取り組みにも力を入れる必要があります。

業務フローの見直しやITによる業務の自動化、社員のスキルアップなど、会社全体で生産性の向上を図りましょう。

たとえ現状の時間外労働が法律による上限の範囲内であったとしても、この取り組みは欠かせません。業務改善を進めて残業時間が削減されれば、従業員の満足度もアップするはずです。

まとめ

労働時間の上限が法律として定められたことは、企業と従業員の両方にとって非常に大きな変化です。

新たな協定や管理体制の整備などは、企業にとっては時間外労働の上限規制を遵守するための取り組みといえます。しかし、法改正に合わせて働きやすい環境作りを推進することによって社員定着率や生産性の向上などが見込めるなど思わぬ副産物的な効果を得られる可能性も高いでしょう。

また時間外労働を削減するには、新たな人材を採用して業務を分散することも有効な対策のひとつです。

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