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【2019年】限定正社員と働き方改革|企業側が準備するべきポイントは?

[公開日]2019.07.26
[更新日]2019.09.18

限定正社員とは

働き方改革が叫ばれる中、「限定正社員」が社会から注目されるようになっています。「限定正社員」とはなんでしょうか。

「正社員」とは、一般的に、労働条件に何らの制約もない標準的労働者を指します。非正規労働者とは、正社員と比較して,何らかの条件が異なる労働者すべてを指します。例えば、1日の労働時間,出勤日数,担当業務,契約期間に条件が定められている場合です。

「限定正社員」とは、この2つの中間に属する形態で、契約期間が無期である点は正社員と同様ですが、勤務地や仕事内容、勤務時間などの条件が限定されている社員を意味します。

なぜいま「限定正社員」が注目されているか

限定正社員に注視するのには、積極的な理由と消極的な理由があります。消極的な理由は「無期転換ルール」であり、積極的な理由は「働き方の多様性」です。

消極的理由:無期転換ルール

まず、消極的な理由からみていきます。

平成25年に改正・施行された労働契約法により、有期労働契約が反復更新されて通算5年を超えたときは、労働者の申込みにより(※自動的に無期化するわけではないことに注意)、期間の定めのない労働契約(無期労働契約)に転換されるルールが導入されました。

無期転換された場合の社員の処遇はどうなるのでしょうか。

実は、無期転換されても、完全に正社員化するわけではありません。

あくまで、契約期間が無期化するだけですので、勤務地、仕事内容や勤務時間の契約内容は従前のままとなります。

したがって、この社員は、通常「限定正社員」となります。

企業としては、こうして発生する限定正社員に対する手当をしておく必要があります。

この手当の方法は後で述べますが、注意すべき点が2点あります。

1つは、5年経過により当然に有期から無期へ転換されるわけではないことです。

労働者から申し込みを受けて初めてこのルールが適用されます。

この申込がない間は、非正規労働者のままであり、限定正社員ではありません。

もう1つは、労働期間が無期となることにより、労働者の解雇がほぼ認められない長期雇用が前提となるので、会社として当該社員をどう戦力化するのか、会社の経営戦略と労働者本人のキャリアデザインをどうやってマッチさせるかが課題となってきます。

積極的理由:働き方の多様化

企業が、限定正社員に注視すべき積極的な理由は、現代の社会において、働き方の多様化が求められていることです。

共働き世帯の増加や政府が推し進める働き方改革、保育園問題や介護問題が時代の背景にある中で、労働力は売り手市場となっています。

そのため、優秀な人材の確保が急務となっている企業は、労働者のワーク・ライフ・バランスに合った労働条件を提示する必要があります。

企業としては、自社にとって、労働者について、必要不可欠な労働条件と許容できる労働条件を明確に分けたうえで、人事戦略を図る必要があります。これによって、企業と労働者は、以下のようなメリットを得ることができます。

企業側のメリット 労働者側のメリット

◇優秀な人材の確保、定着          

◇多様な人材の活用

◇地域に根ざした事業展開

◇技能の蓄積、承継

◇無期転換後の受け皿

◇ワーク・ライフ・バランスの実現      

◇雇用の安定に繫がる

◇処遇の改善

◇キャリア形成・キャリアアップ

◇多様な働き方の実現

他方、限定正社員の存在により、次のようなデメリットが発生する可能性があるため、このリスクをヘッジするためにも適切な人事戦略が必要になります。

企業側のデメリット 労働者側のデメリット

◇人事権の制約(配置転換ができない等)

◇雇用の流動性の低下(労働契約を終了させにくくなる)

◇雇用管理の複雑化(雇用形態が複数になるため)

◇正社員との処遇格差

◇正社員と比較した場合の解雇の容易さ

◇給与やキャリアパスの面で正社員と比較した場合の不利

人事戦略の最大のポイントは、企業と労働者のニーズ(≒労働条件)をマッチさせることであり、その要素は主に3点です。

「勤務時間」「勤務地」「職務内容」です。

すなわち、特定の地域、特定の時間、または、特定の業務に従事する限定正社員を導入することになります。

ここがミスマッチとなってしまうと、優秀な人材の確保に至らないか、離職率が高くなり、結果的に人事戦略の失敗に繋がります。

例えば、育児・介護を重視する社員に対しては、「勤務時間」の制限すなわち、所定労働時間を限定、残業なし、所定勤務日数を限定する等や、「勤務地」の制限すなわち、転勤なし、特定の事業所限定、一定のエリア内限定の転勤等を設定することが考えられます。

また、自身のキャリアアップを望む従業員に対しては、「職務内容」の限定すなわち、業務限定(例:定型業務のみ)、部署限定、特定の職種のみ(例:講師)等を設定することが考えられます。

これら3つを組み合わせて働き方を制度化し、条件を明確にし、適性な評価をすることで従業員のモチベーションアップにも繋がります。

企業の行うべき法律上の2つのこと

企業としては、上記の積極的理由、消極的理由いずれにしても、限定正社員を受け入れる体制をとる必要があります。

法律上、最も注意するべきは、①「就業規則等の作成・改変」と②「同一労働同一賃金の原則への対応」になります。

「就業規則等の作成・改変」

就業規則とは、会社と従業員とのルールを定めるものですが、法律上ここに定めないと効果を有しないものが多くあります。

服務規律や懲戒権、一定の職務命令もこれに属します。特に、限定正社員については、「無期」とされる以上、定年制がどのように適用されるかを明記しなければ、定年があるのかないのか、ないのであれば言葉どおり「無期」で雇用しなければならないのかが極めて不明瞭になります。そこで、就業規則を改変等する際にはまず、限定正社員に適用される就業規則を明確化する必要があります。

例えば、「正社員版」と「パート社員版」しか定めがなければ、どちらがどのように適用されるか不明です。

「同一労働同一賃金の原則への対応」

同一労働同一賃金の原則とは、同一企業・団体におけるいわゆる正規雇用労働者と非正規雇用労働者との間で、不合理な待遇差を認めないとするものです。限定正社員の場合は、無期であり、より正社員に近い立場になりますので、厳格にこの原則が適用される可能性が高いと考えられます。

したがいまして、労働条件、特に賃金を設定する際には、限定正社員の限定の程度と賃金の差が合理的に説明できる範囲に設定する必要があります。

具体的には、勤務時間についていえば、所定労働時間の長短に応じて比例的に基本給の差を設けることは合理的ですし、また、残業ができないことや、勤務時間が短いことによる業務の限定等のマイナス面を考慮し、若干の調整を加えることも合理的と考えられます。

また、勤務地、職務について、限定の度合いにより合理的な係数を決め、正社員の給与に乗じて基本給を決めるなどが考えられます(例:エリア内転勤限定は0.9を乗じる)。

限定正社員の受け入れのために

以上の法制度の変化や労働者の意識の変化、社会の風潮の変化から、これまで日本の企業の主流であった、まず人を雇ってからどんな仕事を任せるかを考えるメンバーシップ型雇用から、今後は、まず詳細に仕事を定義付けてその仕事に対して必要な人が割り付けられるというジョブ型雇用にシフトしていくことが予想されます。

そして、ジョブ型雇用を適切に行うためには、労働契約の際に職務内容を詳細に記した職務記述書を作成することがスタンダードになってくると思われます。

職務記述書を作成するためには業務の棚卸しを行い、仕事を細かく定義わけすることが求められるようになります。これは、企業にとっては負担にもなりますが、業務プロセスの見直しやRPAの活用等効率化にも繋がる道でもあります。

限定正社員は、関連する法律を踏まえ、経営上のメリット・デメリットをしっかりと理解した上で雇い入れを行えば、人材の多様化、採用対象の拡大、業務効率化に対する大きな武器にもなる可能性を秘めています。皆さんの職場でも、積極的な活用を検討してみてはいかがでしょうか。

 

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